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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科59巻3号

2005年03月発行

雑誌目次

連載

Dermoscopy Specialistへの道Q&A(第12回)

著者: 斎田俊明 ,   古賀弘志 ,   宮嵜敦

ページ範囲:P.221 - P.223

Qどんなダーモスコピー所見が認められますか?

診断は何でしょう

臨床情報

 59歳,男性.約10年前,左足底に黒褐色斑が生じているのに気づいた.その後,ごく徐々に拡大してきた.

 初診時,右足底前方部に,大きさ30×25mmの濃淡差のある不整形状の黒褐色斑が認められた(図2).隆起性病変や浸潤は伴わない.

原著

浜松医科大学医学部附属病院アトピー性皮膚炎教育入院患者の退院後の状態

著者: 大島昭博 ,   堀部尚弘 ,   伊藤泰介 ,   八木宏明 ,   橋爪秀夫 ,   瀧川雅浩

ページ範囲:P.225 - P.229

要約

 浜松医科大学皮膚科にてアトピー性皮膚炎の教育入院を行った83名に対して,現在の状態についてアンケート調査を行った.退院後,70%が通院を継続し,25%は通院していなかった.退院後の状態について患者自身,主治医ともに40%以上がよくなった(n=82)と答えており,よくなった理由として外用剤の使い方の改善や定期的な通院をしていることを挙げていた.多彩な面から評価を行うseverity scoring of atopic dermatitis indexは入院中に改善し,退院時,現在ともに維持されていた(n=24).一方,1つの増悪因子に影響されるそう痒(n=80),状態不安(n=79)は入院時に比べて退院時は減弱したが,退院後に再び増強した.また,特性不安(n=79)も治療後に減弱したが,状態不安と異なり,退院後も減弱したまま維持された.疾患を正しく理解し,治療すれば症状が改善するとともに,患者の不安も軽減させることができると考えられた.

今月の症例

女性のタール作業従事者に生じた多発性皮膚癌の1例

著者: 濱田学 ,   三苫千景 ,   竹内史子 ,   古江増隆

ページ範囲:P.230 - P.233

要約

 85歳,女性.55年前から約30年間ケーブル加工業に従事していた.左前腕の受傷後に腫瘤が出現し,皮膚生検より有棘細胞癌と診断した.さらに右前腕,右鼻根部にも有棘細胞癌がみられ,このほか四肢の露出部には色素斑や角化性局面が多発していた.今回の多発性皮膚癌の発症には日光曝露に加えて,多年にわたる職業性のタール曝露の関与が疑われた.慢性タール皮膚症から生じた皮膚悪性腫瘍の本邦報告例は7例あり,有棘細胞癌が多く,すべて男性である.

広範囲に疣状局面を認めたクロモミコーシスの1例

著者: 伊藤友章 ,   茂田江理 ,   田嶋磨美 ,   丸山隆児 ,   槇村浩一 ,   伊藤義彦 ,   坪井良治

ページ範囲:P.234 - P.237

要約

 80歳,男性,農業従事者.50年前より左大腿部に紫紅色斑が出現したが放置していた.受診時に左腰部から臀部,左大腿,左下腿にかけて75×50cmの境界明瞭な角化性紅斑局面を認めた.KOH直接鏡検でsclerotic cellを認め,生検組織はsclerotic cellを含むmixed cell granulomaの像を呈した.真菌学的に培養4週間で黒色調のコロニーが得られ,培養形態および分子生物学的所見よりFonsecaea pedrosoiと同定した.脳,肺に転移を疑う所見はなかった.治療は塩酸テルビナフィン250mg/日の内服治療にて改善を認めた.Internal transcribed spacer 1 (ITS1)領域塩基配列の解析を用いた分子生物学的手法は,自験例のように発育速度も遅く,特徴的な分生子が得られにくい菌種の同定が可能であり有用と考えた.

症例報告

ピスタチオによりアナフィラキシーを起こした1例

著者: 種瀬啓士 ,   小林誠一郎 ,   高江雄二郎 ,   石河晃 ,   田中勝 ,   山崎雄一郎 ,   石河亜紀子

ページ範囲:P.239 - P.241

要約

 37歳,女性.約2年前より外食中のアナフィラキシー症状,救急搬送,エピネフリン投与を繰り返している.疑わしい食品のプリックテストにて,ピスタチオペーストが原因と判明した.プリックテストでも呼吸困難と血圧の低下を認めた.重篤なアナフィラキシーに対しては急性期のエピネフリン自己投与が有効であるが,本邦ではほとんど行われていないのが現状である.エピネフリン自己投与の体制整備が望まれる.

甘草によるアナフィラキシーの1例

著者: 里博文 ,   瀬戸英伸

ページ範囲:P.242 - P.244

要約

 31歳,男性.感冒にてニューカイテキZ (R)を内服したところ,10分後に膨疹が出現し,全身熱感,呼吸困難感を自覚した.意識混濁も認めたが,放置していた.翌日近医にてアナフィラキシーと診断された.その後も同薬剤の空き袋を洗浄中に全身の膨疹が再燃し,自然軽快した.スクラッチテストにてニューカイテキZ (R)および含有成分である甘草に陽性所見を認めたことにより,甘草によるアナフィラキシーと診断した.甘草の主化合物であるグリチルリチンに対するスクラッチテストは陰性であり,甘草に含まれるグリチルリチン以外の化合物によるアナフィラキシーであると考えられた.甘草の薬疹の報告は,自験例を含めても本邦で3例しか認められず,まれと考えられた.

センノシド,イチョウの葉エキス(R)による薬疹

著者: 平山美奈子 ,   竹中基 ,   片山一朗

ページ範囲:P.245 - P.247

要約

 70歳,男性.1999年8月,軀幹・四肢の紅斑が多発したため近医内科を受診した.ステロイドの全身投与で軽快したが,減量すると症状の再燃を繰り返したため当科紹介となった.ステロイド中止後4日目に症状が再燃した.病理組織所見では真皮上層に好酸球・リンパ球を中心とした炎症細胞浸潤を認め,末梢血でも好酸球が増加していた.貼布試験ではセンナ,センノシド,イチョウの葉エキス (R)にて陽性,内服テストでセンノシド,イチョウの葉エキス (R)にて陽性であった.以上より,センナ,センノシド,イチョウの葉エキス (R)による薬疹と診断した.センノシドは他剤へ変更,イチョウの葉エキス (R)は中止し,皮疹は再燃していない.

1歳の乳児に生じた汎発型環状肉芽腫の1例

著者: 松永亜紀子 ,   上田正登 ,   錦織千佳子 ,   澄川康祐

ページ範囲:P.248 - P.250

要約

 1歳3か月,女児.1歳1か月頃から両下肢に発疹が多発した.初診時,両下肢に中心部が陥凹を示す褐紅色局面と丘疹が散在して認められた.同様の皮疹が両前腕から上腕にも出現した.病理学的に,真皮内に膠原線維の変性巣とムチンの沈着を認め,柵状配列の像を呈した.環状肉芽腫と診断し,無治療にて経過をみたところ,約2か月で自然消退した.

家族性Ⅱa型高脂血症に伴う結節性黄色腫

著者: 大山奈緒子 ,   永井弥生

ページ範囲:P.251 - P.254

要約

 34歳,男性.母,弟,長男に高脂血症がある.小学生の頃より右肘部に結節を認め,それが徐々に増大し,腹部にも出現した.23歳時,高脂血症を指摘され加療したが,数か月で中断した.初診時,右肘頭部,腹部に黄色調を呈する隆起性結節を認め,組織所見では真皮全層にわたる泡沫細胞が増殖していた.総コレステロール359mg/dlと上昇あり,家族性Ⅱa型高脂血症に伴う結節性黄色腫と診断した.アトルバスタチン(リピトール (R))内服を開始し,黄色腫は保存的に経過観察中であるが,変化はない.

歯牙病変との関連を考えたMelkersson-Rosenthal症候群の1例

著者: 武藤潤 ,   木花いづみ

ページ範囲:P.255 - P.257

要約

 59歳,女性.7年前より顔面神経麻痺があった.2年前より続く上口唇の腫脹が悪化したため当科に受診した.初診時,上口唇のびまん性腫脹と外側に紅色結節を認めた.皮膚生検を施行し,病理組織学的に稠密なリンパ球浸潤の中に類上皮細胞肉芽腫が形成されていた.以上よりMelkersson-Rosenthal症候群と診断し,症状が遷延したためステロイド内服を開始したところ,上口唇の腫脹は軽快した.歯肉炎があり,歯科治療後に症状が悪化する傾向を認めたことから,歯牙病変との関連を考えた.

皮疹軽快とともに血清中RANTES,eotaxin,IL-13値の低下を認めた好酸球性膿疱性毛包炎の1例

著者: 赤石諭史 ,   東直行 ,   矢部朋子 ,   井村純 ,   川名誠司

ページ範囲:P.258 - P.262

要約

30歳,男性.顔面の紅斑,掌蹠の膿疱とそう痒をきたして来院.既往歴にアトピー性皮膚炎(AD)があった.近医で掌蹠膿疱症として加療後,当科へ紹介された.顔面の紅斑部,および足底の膿疱部からの病理組織検査の結果,好酸球性膿疱性毛包炎(EPF)と診断した.インドメタシン内服,外用とジアフェニルスルホンの内服で軽快した.経過中測定した末梢好酸球数,血清中IFN-γ,IL-4,IL-5,IL-13,Eotaxin,RANTESのうち,皮疹の改善とともに末梢好酸球数,血清IL-13,eotaxin,RANTESは低下したが,IL-4は軽度増加した.血清IFN-γ,IL-5は検出レベル以下であった.血清RANTESは初診時60ng/mlときわめて高値であったが,末梢好酸球の低下と最も相関し,皮疹の軽快とともに低下した.以上よりRANTES,eotaxin,IL-13がEPFの病態に深くかかわっている可能性を考えた.

潰瘍性大腸炎に併発した壊疽性膿皮症の4例

著者: 米田和史 ,   知野剛直 ,   亀井和可奈 ,   山田鉄也 ,   名倉一夫 ,   楊美雪

ページ範囲:P.263 - P.266

要約

 症例1:25歳,女性.17歳から潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UC)を発症していた.両下腿に浸潤性紅斑と潰瘍を形成.真皮中層から皮下にかけて好中球を主体とし,リンパ球を混じる著明な炎症細胞浸潤があった.血管壁は膨化し,好中球が浸潤していた.壊疽性膿皮症(pyoderma gangrenosum:PG)とUCの病勢に相関はなかった.症例2:51歳,男性.49歳からUCを発症していた.頭部,顔面,両上肢,体幹に膿疱と潰瘍が形成されていた.真皮全層に好中球を主体とした著明な炎症細胞浸潤がみられ,膿瘍を形成していた.周辺部では血管周囲にリンパ球主体の細胞あり.PGとUCの病勢に相関があった.症例3:28歳,男性.19歳からUCを発症していた.両下腿に潰瘍形成があった.PGとUCの病勢に相関はなかった.症例4:39歳,女性.初診1か月前から血便,1週間前から顔面,頭部に膿疱と潰瘍が多発した.PGとUCの病勢に相関あり.本邦におけるPGの報告は過去5年間に236例あり,79.3%に合併症を認めた.そのうちUCが21.6%と最も多く,骨髄異形成症候群が10.2%,大動脈炎症候群とCrohn病が6.4%,以下膿瘍,リウマチ性関節炎,肺疾患,糖尿病などがみられた.

爪甲の変化を初発症状とし,PGE1が奏効したCronkhite-Canada症候群の1例

著者: 亀田利栄子 ,   矢吹法孝 ,   相場節也

ページ範囲:P.267 - P.269

要約

 67歳,女性.爪の変形と手掌の色素沈着について当科で経過をみていたが,その後下痢と体重減少を生じた.消化管精査にて胃,腸に多数のポリープを認め,Cronkhite-Canada症候群(以下CCSと診断し,この時点で以前味覚障害で当院耳鼻科に受診していたことに気づいた.入院のうえ,蛋白製剤,副腎皮質ホルモンを投与した.症状は軽快せず,胃切除を検討したが,患者が手術を拒否した.PGE1を試みたところ症状が改善した.

単クローン性クリオグロブリン血症の1例

著者: 冨田郁代 ,   簗場広一 ,   森田礼時 ,   白崎文朗 ,   佐藤伸一 ,   竹原和彦 ,   稲沖真

ページ範囲:P.270 - P.273

要約

 78歳,男性.体幹,四肢の網状皮斑と皮膚潰瘍が出現し当科を受診した.単クローン性クリオグロブリンを認めた.腎・神経障害などの内臓病変はなく,保存的治療により潰瘍は軽快した.基礎疾患として膠原病,肝炎,多発性骨髄腫を示唆する所見はなかったが,本態性M蛋白血症が認められた.本態性M蛋白血症は予後のよい病態であるが,1年でおよそ1%に血液悪性疾患を発症するといわれているので,今後の経過観察が必要であると考えた.

悪性腫瘍を伴ったamyopathic dermatomyositisの2例

著者: 増田邦男 ,   白濱茂穂 ,   八木宏明 ,   小口尚

ページ範囲:P.274 - P.277

要約

 悪性腫瘍を伴ったamyopathic dermatomyositisの2例を報告した.第1例は胃癌,第2例は結腸癌を合併していた.両症例ともにGottron徴候,顔面・体幹の紅斑,病理組織学的に基底層の液状変性と血管周囲の細胞浸潤を認めたが,筋症状や筋原性酵素の上昇はなかった.Amyopathic dermatomyositisは悪性腫瘍の合併は少ないとされていたが,近年,本症例と同様の合併例が報告されている.Amyopathic dermatomyositisにおいても内臓悪性腫瘍の検索は重要と考えられた.

隆起性皮膚線維肉腫と鑑別を要したcellular benign fibrous histiocytoma

著者: 小沢桂 ,   石川由華 ,   高橋政史 ,   秋葉均 ,   中村晃一郎 ,   金子史男 ,   鈴木幹

ページ範囲:P.278 - P.280

要約

 31歳,男性.受診の約2か月前より左上腕部に小豆大の皮疹が出現した.生検で真皮深層から脂肪組織内に異型の少ない紡錘形の核を持つ細胞が密に増殖しており,隆起性皮膚線維肉腫またはcellular benign fibrous histiocytoma (CBFH)が疑われたが,免疫染色所見と併せてCBFHと診断した.CBFHは良性であるが,局所再発率が高いとされている.また,病理組織学的に隆起性皮膚線維肉腫や悪性線維性組織球腫,皮膚平滑筋肉腫などとの鑑別を要するため,慎重に経過観察していくことが必要である.

器質化塞栓像を伴ったnonvenereal sclerosing lymphangitis of the penisの1例

著者: 山本亜偉策 ,   保坂浩臣 ,   末木博彦 ,   飯島正文 ,   金沢日英

ページ範囲:P.281 - P.283

要約

 50歳,男性.初診の1週間前より陰茎冠状溝に自覚症状のない索状硬結が出現し漸次増大した.初診時,陰茎の冠状溝に沿って,全周の2/3に索状硬結が認められた.索状物は被覆皮膚と癒着していた.病理組織では弁構造を有し,壁が肥厚し,拡張,蛇行した脈管や内腔が閉塞し,器質化塞栓を伴う脈管が認められた.第Ⅷ因子関連抗原で明らかな陽性所見は認められず,罹患脈管はリンパ管由来が示唆され,nonvenereal sclerosing lymphangitis of the penisと診断した.

上口唇に生じた硬化性血管腫(sclerosing hemangioma)の1例

著者: 松原多汪 ,   国府田務

ページ範囲:P.284 - P.286

要約

 48歳,男性.上口唇人中のやや左側に直径6mmの半球状紅色丘疹が生じた.臨床的には血管腫を示唆したが,組織学的に硬化性血管腫と診断した.硬化性血管腫は線維性組織球腫の一型であるが,これに属するものとして皮膚線維腫(dermatofibroma),小結節性表皮下線維症(subepidermal nodular fibrosis)がある.しかし,自験例は以下の特異点も認められた.すなわち,①硬化性血管腫としては出血像がないこと.したがって,ヘモジデリン貪食像が存在しないこと,②通常の皮膚線維腫と異なり,周辺線維間への新生線維芽細胞および膠原線維の浸潤性増殖がなく,周囲との境界がかなり明瞭であること,③本腫瘍の構成成分は成熟膠原線維,線維芽細胞,小血管のみで,sclerotic fibromaへの移行を示唆する像であること,である.

CO2レーザー照射が有効であった子宮癌手術後に生じたacquired lymphangiomaの1例

著者: 中山りわ ,   永岡譲 ,   足立真 ,   北見周 ,   秋山正基 ,   岩田充

ページ範囲:P.287 - P.289

要約

 75歳,女性.13年前,子宮癌のため広汎子宮全摘出術を受けた.初診の約6か月前より大陰唇部に小水疱が多発してきた.病理組織像では真皮内に第Ⅷ因子関連抗原陰性の拡張した管腔構造を多数認めた.子宮癌手術の既往歴からacquired lymphangiomaと診断し,CO2レーザーの照射を行い有効であった.今後,同様の病変に対し,CO2レーザーは試みてみるべき治療法と考えられた.

悪性化した巨大尖圭コンジローマの1例

著者: 福本大輔 ,   藤井由美子 ,   荒瀬誠治 ,   橋本一郎 ,   佐々木賢二 ,   江川清文

ページ範囲:P.290 - P.293

要約

 46歳,男性.30歳時,肛門周囲に茶褐色の母指頭大結節を生じ当科を受診した.尖圭コンジローマの診断の下,約3年間ブレオマイシン局注,5-FU軟膏,冷凍凝固療法などで治療したが,ほとんど効果はなく,その後は放置していた.13年後の再診時,肛門を中心に21×9cmのカリフラワー状腫瘤がみられ,一部では潰瘍・びらんを生じていた.また陰茎にも小指頭大までの硬い疣状結節が多数あった.組織学的には,多くの部分で典型的な尖圭コンジローマの所見であったが,一部では細胞異型を認めた.HPV6陽性.悪性化した巨大尖圭コンジローマと診断した.外科的切除,インターフェロン療法,CO2レーザー,液体窒素凍結療法を併用し略治に至った.治療抵抗性の尖圭コンジローマに対して,巨大化,悪性化を考え,十分な経過観察と積極的な治療の検討が必要と思われる.

血管拡張性肉芽腫の臨床像を示した単発性神経鞘腫の1例

著者: 安念美雪 ,   岩原邦夫

ページ範囲:P.294 - P.296

要約

 55歳,男性.左第4指爪根部に直径15mmの淡赤色腫瘤を認め,さらにその上に小腫瘤が重なっていた.組織学的には,腫瘍細胞は紡錘形から長楕円形の核を有し,柵状に配列し,Verocay bodyも存在し,S-100蛋白染色は陽性所見を得た.本邦皮膚科領域で発表された108例と併せて統計的に考察した.統計上では性差はなく,軀幹,四肢に好発し,手指爪根部はまれで,4例であった.

ダーモスコピーが有用であった外陰部基底細胞上皮腫の1例―本邦における大陰唇基底細胞上皮腫の文献的考察

著者: 阿部浩之 ,   中村妙子 ,   加藤保信 ,   古川裕利 ,   中村晃一郎 ,   金子史男

ページ範囲:P.297 - P.300

要約

 67歳,女性.約2年前,右大陰唇に自覚症状のない黒褐色皮疹に気づいた.初診時20×10mm大,辺縁軽度隆起性で潰瘍を伴う黒褐色局面を認めた.ダーモスコピーでは基底細胞上皮腫(BCE)の所見を呈しており,病理組織学上もBCE(充実型)であった.外陰部BCEに関する統計的考察に関しては諸説があり,陰嚢発生BCEの文献的考察も2編あるが,大陰唇におけるその統計は調べた範囲ではなかった.今回,われわれは1988年以降の本邦における大陰唇部BCEの文献的考察を行うとともに,陰嚢部BCEとの差異を検討した.

頭蓋骨にまで浸潤したbasosquamous cell carcinomaの1例

著者: 王生淳子 ,   北野十喜一 ,   玉田康彦 ,   松本義也 ,   原一夫

ページ範囲:P.301 - P.303

要約

 59歳,男性.初診の2年ほど前より左側頭部に潰瘍が出現.近医より有棘細胞癌(SCC)を疑われ,当院に紹介された.左側頭部に直径10×14cmの巨大潰瘍がみられ,CT,MRIにて頭蓋骨への浸潤が認められた.病理組織像では基底細胞癌(BCC)と有棘細胞癌様の細胞(squamoid cell)が連続して認められたことから,basosquamous cell carcinoma (BSCC)と診断した.BSCCはBCCの亜系として認識されているが,通常のBCCより臨床的悪性度が高いとされているため,長期的な経過観察が必要と考えられた.

Interval nodeに転移を認めた悪性黒色腫の1例

著者: 八田尚人 ,   森俊典 ,   高田実 ,   竹原和彦 ,   石倉多美子

ページ範囲:P.304 - P.306

要約

 73歳,女性.腰正中部原発の結節型悪性黒色腫を切除し,センチネルリンパ節生検を行った.同定された両鼠径部のセンチネルリンパ節は転移陰性であったが,2年後に側腹部の皮下に転移が出現した.初回治療時のリンフォシンチグラフィにおいて鼠径部のほかに側腹部にも集積がみられた.これらの結果より,鼠径に至るリンパ系路に存在したinterval nodeがセンチネルリンパ節であり,転移したものと考えた.体幹はinterval nodeが高頻度にみられるため,リンフォシンチグラフィ施行時には注意が必要である.

左上眼瞼に生じたMALT lymphomaの1例

著者: 井上禎規 ,   宮本亨 ,   奥山典秀 ,   河原祥朗 ,   高田晋一

ページ範囲:P.307 - P.309

要約

 74歳,男性.左上眼瞼に皮下結節が生じ,2000年3月に当科を受診した.良性腫瘍を考えて経過観察していたが,結節が大きくなるため,2001年4月に切除術を施行した.組織学的所見では,胚中心様構造を有する濾胞を認め,その濾胞は中型で類円形の核を持つ腫瘍細胞よりなっていた.免疫組織化学的所見では,CD79a陽性,CD3陰性,CD5陰性,CD10陰性,cyclin D1陰性であった.組織学的にMALT lymphomaと診断した.その後,加療予定であったが,2年間,患者が来院せず2003年4月に再診した.左上眼瞼に再発した結節を認めたが,他部位には明らかな転移は生じていなかった.眼球近傍であることから全摘出は困難と考えて,放射線と抗癌剤にて加療し略治した.MALT lymphomaは低悪性度のリンパ腫とされるが,眼瞼近傍に生じた場合は機能的予後の面から初期治療が特に重要であると考えた.

眼窩のMALTリンパ腫の1例

著者: 嶋田八恵 ,   割田昌司 ,   石井朗子 ,   遠藤歩 ,   秋元幸子 ,   石川治 ,   長谷川正俊

ページ範囲:P.310 - P.312

要約

 68歳,女性.数か月前より右上下眼瞼が徐々に腫脹した.初診時,右上下眼瞼に可動性良好な複数の皮下腫瘤を触知した.MRI画像上,右眼窩内にも腫瘍塊を認めた.組織学的に小~中型の単核球がびまん性に浸潤増殖し,浸潤する細胞はL26陽性であった.臨床および組織学的所見から,眼窩に生じたmucosa-associated lymphoid tissue lymphoma(以下MALTリンパ腫)と診断し,放射線療法が奏効した.これまでの報告例と自験例を文献的に比較検討し考察を加えた.

治療

大臀筋穿通枝皮弁を用いた毛巣洞に対する治療経験

著者: 長島史明 ,   高田温行 ,   稲川喜一 ,   岡博昭 ,   森口隆彦

ページ範囲:P.313 - P.315

要約

 3症例の毛巣洞に対して,大臀筋穿通枝皮弁による再建を行った.症例1は35歳男性,6×12cmの組織欠損に対して6×15cmの皮弁をデザインし再建した.症例2は22歳男性,3×15cmの組織欠損に対し,7×15cmの皮弁をデザインし再建した.症例3は22歳男性,3×6cmの組織欠損に対して4×8cmの皮弁をデザインし再建した.3症例のうち症例1,3において術後創感染により一部創離開を認めたが,いずれも皮弁の壊死は認めなかった.なお,現在まで再発は認めず,良好な経過である.

尋常性白斑に対する簡易吸引水疱作製法による吸引水疱蓋植皮術

著者: 宮倉崇 ,   葉狩良孝 ,   三原基之

ページ範囲:P.316 - P.318

要約

 45歳,女性.右顔面,頸部に生じた分節型の尋常性白斑に対して,吸引水疱蓋植皮術を行った.吸引水疱は,単一三方活栓法にて作製した.白斑部を15番メスで擦過して表皮を除去して移植床とし,吸引水疱蓋を植皮した.植皮後には植皮片のメラノサイトの機能は維持され,良好な結果が得られた.本法は,現在報告されている尋常性白斑に対する水疱蓋植皮術の中で,もっとも簡便な方法と考えられる.

臨床統計

足底に生じたBowen病―東海大学医学部付属病院皮膚科におけるBowen病の集計

著者: 平林香 ,   梅澤慶紀 ,   松山孝 ,   小澤明

ページ範囲:P.319 - P.322

要約

 49歳,女性.約5年前から左足底の皮疹に気付き,徐々に拡大したため近医を受診した.足白癬と診断され加療したが改善せず,当科を受診した.鱗屑のKOH真菌検鏡で真菌を認めず,接触皮膚炎を考え治療したが,軽度に改善しただけであった.再診時,皮疹は境界明瞭な不整形の角化を伴う紅斑性局面であることからBowen病を疑い,皮膚生検を施行し,同症と診断した.これを機に東海大学医学部付属病院皮膚科開設以来28年間(1975年2月~2003年12月)のBowen病129例144病変について検討を行った.このうち,足底に生じたBowen病は今回報告した1例のみであった.そこで,本邦報告例について調べたところ,足底に生じたBowen病は自験例を含め11例で,このうち単発で足底に生じた症例は3例のみであった.したがって,足底に単発したBowen病はまれと思われた.

AD Forum:小児アトピー性皮膚炎患者保護者アンケート調査

著者: 瀧川雅浩 ,   川島眞 ,   古江増隆 ,   飯塚一 ,   伊藤雅章 ,   中川秀己 ,   塩原哲夫 ,   島田眞路 ,   竹原和彦 ,   宮地良樹 ,   片山一朗 ,   古川福実 ,   岩月啓氏 ,   橋本公二

ページ範囲:P.323 - P.329

要約

 皮膚科ないし小児科医療施設を受診した小児アトピー性皮膚炎患者の保護者にアンケート調査を行い,926名から回答を得た.抗ヒスタミン薬は全体の42.2%が服用していた.ステロイド外用薬は84.7%,非ステロイド外用薬は55.8%,保湿薬は81.2%の小児患者が使用しており,非ステロイド外用薬の使用割合は皮膚科より小児科が有意に高かった.98.9%の小児患者が自覚症状としてかゆみを訴えており,布団に入った時やお風呂上がりなどの体が温まったときにかゆみを感じる患者が多かった.食事指導は小児科受診患者のほうが受けている割合が高かった.アトピー性皮膚炎で困っていることとして「かゆみがあって集中できない」が一番多かったが,子どもの年齢によって悩む内容が異なっており,子どもの年齢が上がるほど「からかわれた」,「恥ずかしい」を挙げる割合が高かった.

これすぽんでんす

「皮下脂肪肉芽腫症の1例」を読んで

著者: 滝脇弘嗣

ページ範囲:P.330 - P.330

村山・湊原論文『皮下脂肪肉芽腫の1例』1)を興味深く拝読しました.筆者はかつて恩師とともにWeber-Christian病(WC)の本邦報告例を集計しましたが,脂肪肉芽腫という病理組織像以外にキーポイントとなる共通点が少ないうえ,さまざまな背景因子や検査異常が混合して,一疾患としてまとまりがないことに気づきました.恩師は「WCは独立疾患でなく,さまざまな原因による反応性皮膚病変の1つである」と碣破されました2).欧米での「脂肪織炎」研究の流れでも,RookやFitzpatrickの教本ではWCの診断名を便宜的に残していますが独立性は認めておらず,最近の総説3)やシンポジウム4)になると,WCやRothman-Makai症候群(RM)は誤ったカテゴリーとして削除されております.また,かつてWCと診断されていた30例を再検討したところ,結節性紅斑(EN)が多く,その他も原因不明の脂肪織炎ではなかったとの報告もあります5)

 村山・湊原論文では,全身に多発した皮下結節の組織像と,全身症状の欠如,ASO値の上昇から,この症例を溶連菌感染を契機とした皮下脂肪肉芽腫(RM)と診断しています.付図をみると軽度のlobular panniculitisがありますが,同時に軽い細胞浸潤を伴った小葉間結合織の線維化・肥厚という,晩期のseptal panniculitisを示唆する所見も明瞭にみられます.再燃時の臨床的特徴はENと一致しているようですし,好中球浸潤が小葉内にみられたという組織所見も,上述の論文5)ではむしろENの急性期所見として提示されています.筆者の経験でも,septal panniculitisを主所見とするが,小葉内にも部分的な脂肪細胞の壊死や細胞浸潤を伴うENは決してまれではありません.ENの1割にlipophagiaがみられるとの指摘もあります5).ENは上肢や軀幹,まれには顔面に生ずることもあり3),溶連菌感染が誘因として有名なこと3)から考えても,この症例はENと診断できるのではないでしょうか.たとえ「RM」であったとしても,近年の脂肪織炎の分類や,WC・RMの診断名(独立性)の是非に対する著者の考えを提示せず,20年前に書かれた総説を引用してWCとRMの関係を語るだけ,というのは2004年の症例報告としてはいかがなものでしょうか.同月号の編集後記によると,編集委員3名で1論文を査読する,とのことですが,委員の間でそのような議論がなかったのかと不思議に思い,投稿させていただきました.

ご意見に答えて

著者: 村山淳子

ページ範囲:P.331 - P.331

貴重なご意見ありがとうございました.われわれの論文において解説が不足していた部分をご指摘いただき感謝しております.

 さて,Weber-Christian病,Rothmann-Makai症候群(皮下脂肪肉芽腫症)の疾患独立性についてですが,これらは原因不明のlobular panniculitisで,他の特異的疾患が除外された場合にのみ用いられる病名であり,元来heterogeneousな疾患概念です.本症とされたものの多くが実際には結節性紅斑,エリテマトーデス,悪性リンパ腫,cytophagic histiocytic panniculitisなど他の診断が適切な症例であったとする考えが主流となり,次第にこの疾患名が用いられなくなりつつあるのはご指摘のとおりです.しかし,今なおWeber-Christian病として多数の報告がなされており,Rothmann-Makai症候群の名称もときに用いられています.また皮膚病理学の代表的教本であるLever最新版や最新皮膚科学大系にも双方の病名が記載されており,確定診断が困難なlobular panniculitisの暫定的診断名として,これら2つの名称はなおしばらく使用されてよいものとわれわれは考えております.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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