文献詳細
文献概要
Derm.2005
小さな国際交流
著者: 金原彰子1
所属機関: 1りんくう総合医療センター市立泉佐野病院皮膚科
ページ範囲:P.18 - P.18
文献購入ページに移動私の勤務する病院は関西国際空港に近いこともあって,外国人の患者さんが多い.留学生や研修生,労働者など,職種や国もさまざまである.学生時代,英語は得意と自分では思っていたにもかかわらず,中学生レベルの英語しか話せない私の外来に外国の患者さんがくると,少し緊張して身構えてしまう.院内には,職員で各国の言葉を話せる人が何人かいるので,まったく日本語を話せない患者さんが来院すると通訳として診察についてくれる.困るのは,「日本語少しわかります」という患者さんである.少しわかる患者さんには通訳はつかない.「少しわかる」といっても,私の英語力と同程度であると話があまり通じない.日常会話ならまだしも医学用語になると,私の拙い英語ではなかなか理解してもらえない.こういっては申しわけないが,皮膚科に訪れるのはポツッと1つだけできたにきびや,ちょっとカサカサするといった程度のごく軽症の患者さんが多い.異国の地での慣れない生活や気候のせいで不安になるのかなとか,こちらの国ではこんな程度でも病院に行くのかなとかいろいろ考えるが,とりあえず言葉ができない分,愛想だけでもよくしようと満面の笑みを浮かべて何とか対応する.日本人とは異なり,外国人の患者さんは「原因は何ですか?」と必ず聞いてくる.これを説明するのが一苦労である.彼らは論理的な答えを聞かないと納得してくれないのである.「こんなもの,ほっといても治る!」とは口が裂けてもいえない.
モロッコからの留学生で,「このにきびの薬がほしい」と,自分の国でもらっていた薬を持ってきた患者さんがいた.日本にはない薬なので,処方できないことを説明し,日本で通常使用される薬を処方した.これが少しも効かない.「この薬しかきかないんだー!(英語)」と,彼は自分が持ってきた薬をみせてくれるが,処方できない.何度もきてくれたが,結局あまりよくならずに帰国することになった.それでも,帰国の数日前,「またモロッコにきたら連絡ください(英語)」と名刺をくれた.もちろんモロッコにも行っていないので連絡もしていないが,名刺は大事においてある.
モロッコからの留学生で,「このにきびの薬がほしい」と,自分の国でもらっていた薬を持ってきた患者さんがいた.日本にはない薬なので,処方できないことを説明し,日本で通常使用される薬を処方した.これが少しも効かない.「この薬しかきかないんだー!(英語)」と,彼は自分が持ってきた薬をみせてくれるが,処方できない.何度もきてくれたが,結局あまりよくならずに帰国することになった.それでも,帰国の数日前,「またモロッコにきたら連絡ください(英語)」と名刺をくれた.もちろんモロッコにも行っていないので連絡もしていないが,名刺は大事においてある.
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