文献詳細
今月の症例
HHV-8の感染を確認しえたHIV陰性古典型Kaposi肉腫の1例
著者: 水野万利子1 村松重典1 池嶋文子1 池田志斈1
所属機関: 1順天堂大学医学部皮膚科学教室
ページ範囲:P.480 - P.483
文献概要
83歳,男性.神奈川県出身.初診の約3年前,左足背に紫紅色斑が出現した.同部位の一部が徐々に隆起してきた.初診時,左下腿から足背に境界明瞭な紫紅色斑が散在し,一部は隆起し,局面および腫瘤を形成していた.病理組織所見では真皮内に腫瘍細胞巣がみられ,腫瘍を形成する細胞は紡錘型であった.腫瘍細胞巣内は多数の血管腔と裂隙が認められた.免疫組織学的染色としてfactorⅧとCD34を施行した.いずれもKaposi肉腫の所見に一致した.患者の病変部組織および血液サンプルよりDNAを抽出し,PCR法を施行したところ208bpにバンドが検出された.このバンドに対してシークエンスを検討したところ,HHV-8の塩基配列に一致した.患者は治療を拒否したため,治療は施行できなかった.初診より3年後の再診時,右下肢へ病変が拡大していた.その後も患者は治療を望まず,2004年8月現在,Kaposi肉腫は両上肢,体幹へも拡大している.
掲載誌情報