icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科59巻7号

2005年06月発行

雑誌目次

連載

Dermoscopy Specialistへの道Q&A(第15回)

著者: 斎田俊明 ,   古賀弘志

ページ範囲:P.585 - P.587

Qどんなダーモスコピー所見が認められますか?

診断は何でしょう

臨床情報

 76歳,男性.数か月前,左側頸部に黒色の皮疹が生じているのに気づいた.その後,徐々に増大してきた.

 初診時,左側頸部に,大きさ29×10mmの境界比較的明瞭な黒色調の斑状ないし局面状の皮疹が認められた(図2).皮疹内には線状から蛇行状の色素沈着パターンが認められ,また一部には痂皮が付着していた.

原著

結節性筋膜炎71例の病理組織学的検討

著者: 村澤章子 ,   木村鉄宣

ページ範囲:P.589 - P.595

要約

 結節性筋膜炎(nodular fasciitis)71例の病理組織学的検討を行った.病変の部位は真皮中層から皮下組織が1例,真皮下層から皮下組織が6例,皮下組織に限局するものが59例,不明が5例であり,筋膜との連続性があるものが9例であった.周囲との境界は明瞭が9例,不明瞭が62例であった.間質の性状は粘液腫様が7例,中間型が19例,線維性が45例であった.浸潤細胞では多核巨細胞が7例,ほう沫細胞が6例にみられた.また,血管の増生が70例,赤血球の血管外漏出が60例,ヘモジデリン沈着が5例,storiform patternが7例にみられた.病理組織学的所見から,結節性筋膜炎の発症機序として,外傷などを契機として創傷治癒が起こり,肉芽組織が形成され,構成成分の中で,特に線維芽細胞,膠原線維,組織球が増生し形成された疾患であると考えた.また同様に,肉芽組織が進展して形成される一連の疾患として,皮膚線維腫,瘢痕またはケロイド,腱鞘巨細胞腫,化膿性肉芽腫があると推測した.

今月の症例

2度の妊娠に伴い発症した抗SS-A抗体,抗SS-B抗体陽性環状紅斑の1例

著者: 和田直子 ,   市川尚子 ,   小林誠一郎 ,   河原由恵 ,   谷川瑛子 ,   西川武二

ページ範囲:P.596 - P.599

要約

 24歳,女性.抗SS-A抗体,抗SS-B抗体陽性.2度の妊娠に伴い顔面に環状紅斑が出現し,2児ともに新生児エリテマトーデスの皮疹を認めた.心ブロックは認めなかった.第2子妊娠中,母の皮疹が遷延したためプレドニゾロン(PSL)10mg/日を投与し著効した.PSLは胎盤通過性に乏しく,胎児に影響を与えずに母体を治療するという点で優れていると考えられる.

男性様顔貌を呈した摩擦黒皮症の1例

著者: 小野紀子 ,   陳科栄

ページ範囲:P.600 - P.602

要約

 83歳,女性.2~3年前より顔面に,皺を避けて紅斑やそう痒を伴わない黒褐色の皮疹を認め,徐々に増悪し,男性様顔貌を呈してきたため当科初診となった.顔面の皮疹が生じ始めていた頃よりナイロン性と思われるフェイスブラシを毎洗顔時に用いていた.病理組織学的には,基底層に標本全体にわたってメラニンの沈着を認め,真皮浅層にわずかにメラニン顆粒を貪食した細胞を認めた.アミロイドの沈着は認めなかった.臨床,病理所見からフェイスブラシの使用による顔面の摩擦黒皮症と診断した.摩擦黒皮症は1977年に初めて報告されて以来,数多くの報告がなされ,患者の生活習慣の変化によってその疾患傾向も変化しつつある.今回,われわれは本症に比較的まれな顔面のみに生じ,特異な男性様顔貌を呈した1例を経験したため報告した.

症例報告

皮膚リンパ管型Mycobacterium marinum感染症の1例

著者: 早田名保美 ,   山田裕道

ページ範囲:P.604 - P.606

要約

 65歳,女性.約2か月前に左手拇指基部の擦過傷に気づいた.数週間後同部位が徐々に隆起して結節を形成し,その後同様な結節が上行性に数個出現した.2年前より熱帯魚を飼育しており,素手でよく掃除をしていたという.組織所見では類上皮細胞性の肉芽腫変化を認めた.結節より得た膿汁を小川培地(27℃)にて培養したところ,4週間後に表面平滑で黄色調のコロニーを認め,DNA-DNA hybridization法にてMycobacterium marinumと同定し,手指の何らかの外傷を契機に発症した皮膚リンパ管型M. marinum感染症と診断した.ミノサイクリン内服3か月にて結節は消退した.なお,患者が飼育している熱帯魚の水槽水からはM. fortuitumが検出された.

糖尿病患者の頭部,顔面に生じた壊死性皮膚軟部組織感染症の1例

著者: 帖佐宣昭 ,   宮国均

ページ範囲:P.607 - P.609

要約

 54歳,男性.糖尿病性腎症による慢性腎不全および糖尿病網膜症によるほぼ全盲状態がある.初診時,頭頂部に2か所,前頭部および右鼻部に壊死性皮膚潰瘍を認め,前医でMRSAが検出されていた.初回デブリードマン時,頭頂部と前頭部の潰瘍は皮下で広範囲に連続,感染性壊死病変は皮下脂肪織から帽状腱膜,さらに骨膜まで至っており,一部では骨皮質を露呈した.血糖管理と抗生剤点滴を施行し,局所的には保存的治療を継続,骨皮質露出面にも肉芽が出現し,分層植皮術を行った.本症例の重症化の要因として,糖尿病や慢性腎不全による易感染性と,患者の糖尿病やその合併症に対する適切な理解不足があると考えた.また,病変の拡大様式と頭部の解剖学的特徴との関連性を推察した.頭蓋骨の骨皮質が露出した場合でも板間管からの出血点から肉芽が形成されうることを確認した.

急性腎不全,化膿性関節炎を伴った丹毒の1例

著者: 石井貴之 ,   光戸勇 ,   伊部直之

ページ範囲:P.610 - P.612

要約

 67歳,女性.C型肝炎に伴う肝硬変のため,当院内科に通院中であった.1日前より鼻部の発赤,疼痛を自覚し,発赤は両頬部を中心に急速に拡大した.翌日には左膝関節痛も認め,無尿となり当科を受診,丹毒と診断した.入院時,組織からの培養よりA群β溶血性連鎖球菌を検出,関節穿刺液からもA群β溶血性連鎖球菌が確認された.抗生剤投与により顔面の皮疹は軽快,腎機能も改善したが,15日目に体幹,四肢に水疱が出現した.患者に水痘の既往があり,水痘の再燃と考えた.丹毒で関節痛や急性腎不全を生じることは少なく,本例は劇症型溶血性連鎖球菌感染症に近い症状を呈した.その原因として,肝硬変による自己免疫力の低下を考えた.免疫力の低下した患者では連鎖球菌感染に伴い重篤な経過をとることがあり,注意を要する.

細菌性髄膜炎,敗血疹を伴った黄色ブドウ球菌による敗血症の1例

著者: 舛明子 ,   笹井収 ,   白鳥宜孝 ,   佐藤勝久 ,   鈴木直輝 ,   加藤昌昭 ,   塚本哲朗

ページ範囲:P.613 - P.616

要約

 23歳,男性.アトピー性皮膚炎がある.高熱,意識障害,播種性血管内凝固症候群,多臓器不全を呈して入院した.四肢に湿疹性病変と膿疱,紅斑,紫斑がみられ,紫斑からの生検組織像では,真皮の小血管周囲に好中球性の膿瘍,血管炎の所見を認めた.髄液検査の結果から,細菌性髄膜炎であることが判明し,血液培養では黄色ブドウ球菌が同定された.抗生剤の多剤併用で全身症状が軽快するとともに皮疹も軽快した.自験例の皮疹は黄色ブドウ球菌性敗血疹に定型的であった.黄色ブドウ球菌の侵入経路としては,アトピー性皮膚炎の病変である可能性が考えられた.

有棘細胞癌を併発した疣贅状表皮発育異常症の1例

著者: 高橋智佐子 ,   吉田寿男 ,   二宮淳也 ,   清佳浩 ,   滝内石夫

ページ範囲:P.617 - P.619

要約

 63歳,女性.15歳頃,右下腿に癜風様皮疹が出現,徐々に全身に多発してきた.51歳時,疣贅状表皮発育異常症(epidermodysplasia verruciformis:EV)と診断された.58歳時に生じた右上眼瞼紅斑と,以前からみられた前腕部皮疹を生検した結果は有棘細胞癌とEVであり,いずれもpolymerase chain reaction(PCR)法にてhuman papilloma virus5型が検出された.有棘細胞癌には電子線照射を行い,腫瘍は消失した.EVに対してはエトレチナートの内服を行い,皮疹は消退傾向を示した.しかし,副作用のため,エトレチナート治療を中止したところ,皮疹が再燃し,有棘細胞癌が発生したため腫瘍の切除を行った.現在はしゃ光を行いながら通院中である.

壊死性筋膜炎の3例

著者: 安芸実扶子 ,   林伸和 ,   上田周 ,   川島眞

ページ範囲:P.620 - P.623

要約

 症例1:72歳,女性.糖尿病性腎障害で,1982年より人工透析中.左第3・4趾に疼痛を伴う潰瘍が出現し,急速に拡大した.デブリードマンで感染症状は軽快したが,動脈硬化症のため潰瘍の治療は困難と判断し,左下腿切断術を施行した.セラチア菌が検出された.症例2:64歳,男性.寿司屋.大酒家.外果に疼痛を伴う紅斑が出現し,急速に下腿まで拡大した.患部よりA群溶連菌が検出された.症例3:62歳,女性.既往歴に原発性胆汁性肝硬変,再生不良性貧血がある.右足背に疼痛を伴う紅斑が出現し,近医で抗生剤を点滴するも急速に拡大した.以上3例とも免疫機能の低下や局所の循環不全が壊死性筋膜炎を生じた背景と考えた.2000~2001年の2年間の105例の報告では,基礎疾患として糖尿病,肝障害の合併が多く,起炎菌では溶連菌,Vibrio,黄色ブドウ球菌が多かった.

免疫グロブリン大量療法による汗疱の3例

著者: 江原睦子 ,   佐藤淳 ,   長尾洋 ,   北村直也

ページ範囲:P.624 - P.627

要約

 神経免疫疾患に対する免疫グロブリン大量静注療法(IVIG)後に汗疱を生じた3例を報告する.2002年10月より約1年間にIVIGが施行された疾患はGuillain-Barre´症候群3例,慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)1例,およびFisher症候群1例で,汗疱はGuillain-Barre´症候群2例とCIDP1例に認められた.いずれもIVIG投与後2週間以内に手掌,手背を中心に小水疱が出現し,無治療あるいはステロイド外用にて消退した.CIDP例ではIVIG再投与にて汗疱の再現を認めた.IVIGによる汗疱は,薬疹としては特異な形態であるため,見落とされている可能性があり,注意が必要である.

ドセタキセル水和物による固定薬疹が強く疑われた1例

著者: 任恵美 ,   奈良武史 ,   中道寛 ,   池田佳弘

ページ範囲:P.628 - P.630

要約

 49歳,女性.2001年2月より,右乳癌肝転移に対してドセタキセル水和物60mgを用いた化学療法を開始されたが,8回目に当たる同年8月7日の治療翌日から肛門周囲にそう痒と紅斑を自覚するようになり,以後,化学療法のたびに出現した.2002年12月6日に15回目の化学療法が行われ,その日の夕方から同様の症状を認めたため,同年12月10日に当科を受診した.初診時,肛門周囲に辺縁のやや隆起した中央部退色傾向の紅斑を認め,紅斑上には小水疱が散在していた.組織学的には,表皮内に好酸性壊死を伴う水疱と液状変性がみられ,真皮ではリンパ球,組織球の浸潤とメラノファージを認めた.塩酸アザセトロンのみの再投与では発疹の出現がみられなかったことから,ドセタキセル水和物による固定薬疹と考えた.2003年3月18日からアドリアシンに変更して化学療法を行っているが,同様の症状はみられない.

抗HHV-6抗体の上昇をみた軽症薬疹

著者: 梅林芳弘

ページ範囲:P.631 - P.633

要約

 68歳,女性.神経痛に対してカルバマゼピン200mg/日を投与されたところ,33日後,全身に丘疹性紅斑が播種状に出現した.軽度の発熱,γ-GTPの上昇あり.AST,ALTは経過を通して正常範囲内であった.パッチテスト陽性のため,カルバマゼピンによる播種状紅斑丘疹型薬疹と診断した.抗HHV-6抗体(IgG)は当初10倍,その39日後160倍と有意に上昇した.本例はHHV-6の再活性化を示唆する所見が得られたものの,臨床症状が軽度なためdrug-induced hypersensitivity syndromeの範疇には含まれない症例である.

乳癌患者へのドセタキセル投与後に発症した皮膚筋炎

著者: 堀田隆之 ,   早川和人 ,   狩野葉子 ,   塩原哲夫 ,   永田靖彦 ,   矢嶋幸浩

ページ範囲:P.634 - P.637

要約

 48歳,女性.外科で乳癌の手術を施行されたが,1年5か月後に胸壁転移を認めた.化学療法としてドセタキセル(TXT)を投与し,3週間後に顔面,躯幹などに紅斑が出現.プレドニゾロン(PSL)30mgでいったん軽快するも,中止翌日から皮疹が再燃した.この時点で手指のGottron徴候,爪囲紅斑,肘頭,膝蓋の紅斑が明らかとなり,臨床像,組織所見および血清CPK高値などの検査所見より皮膚筋炎(DM)と診断した.自験例は乳癌に関連して生じたDMと考えられるが,経過よりTXT投与が発症の誘因となった可能性がある.一般にDMが内臓悪性腫瘍に随伴して生じることは周知のことであるが,化学療法などがDMの発症に関与したか否かはあまり検討されていない.自験例におけるTXTのDM発症への関与について若干の考察を加えた.

Wide-spread DLE型皮疹を呈したSLEの1例

著者: 亀田利栄子 ,   宮澤偵二 ,   照井正 ,   相場節也

ページ範囲:P.638 - P.640

要約

 73歳,男性.初診の3~4か月前より顔,背中を中心にびまん性に鱗屑を伴う紅斑性局面が出現した.市販の外用薬で改善しないため当科を受診.抗核抗体320倍,抗Sm抗体130.腰背部からの皮膚生検の結果,lupus erythematodesの病理組織像を示した.全身症状はなかった.皮疹はステロイド外用薬塗布により改善を認めた.

腸管Behcet病の1例

著者: 加藤篤衛 ,   三石剛 ,   田中周 ,   西成田真 ,   川名誠司

ページ範囲:P.641 - P.643

要約

 45歳,女性.約半月前より左頸部リンパ節の腫脹,疼痛,発熱があった.当科受診時,左頸部の腫脹が強く,一部には膿疱が存在していた.下肢にも一部に膿疱を伴い,癒合傾向のある結節性紅斑を認めた.口腔内アフタ,外陰部潰瘍も認められた.これらより,不全型Behcet病と診断した.眼には異常は認められず,針反応は陰性,HLA-B51も陰性であった.39℃台の発熱が持続していたことより,精査した結果,大腸全域に散在する潰瘍性病変が判明し,腸管Behcet病と診断した.コルヒチン,およびNSAIDsの内服治療の結果,解熱し,皮疹,粘膜疹,下痢症状は改善した.

露光部を中心にみられた汎発性環状肉芽腫の1例

著者: 片田桐子 ,   田村政昭

ページ範囲:P.644 - P.646

要約

 65歳,男性.2003年春頃より手背に自覚症状を欠く皮疹が出現したが放置していた.その後,上肢・躯幹に拡大したため近医内科を受診し,ステロイド軟膏外用を行ったが難治なため,2003年9月27日,当科を初診した.躯幹・上肢に大豆大までの紫紅色~淡紅色,中央やや陥凹した小結節が多発し,前胸部,手背では融合していた.病理組織学的所見では変性した膠原線維を取り囲む組織球,リンパ球を中心としたpalisading granulomaを認めた.以上の点から本症例を汎発性環状肉芽腫と診断した.露光部に多いことから紫外線の関与を考えたが,光線検査で皮疹は誘発されなかった.治療ではトラニラストは無効であったが,ジアフェニルスルホン(DDS)投与後2週間で皮疹は色素沈着を残し消退した.以後6か月経過するが,皮疹の再燃は認めていない.

脂漏性角化症様の臨床像を呈したサルコイドーシスの1例

著者: 堀田健人 ,   村田哲 ,   中川秀己 ,   大槻マミ太郎

ページ範囲:P.647 - P.650

要約

 77歳,男性.左乳輪境界部に自覚症状のない紅褐色結節を認めた.ドーム状で表面やや疣贅状,わずかな鱗屑と角栓を持ち,一見,脂漏性角化症を思わせた.病理組織学的にサルコイド結節と診断した.約1年前より両上肺野の異常陰影より肺結核を疑われ,当院内科で精査中であったが,経気管支肺生検(TBLB)を施行するも結核菌を認めず,経過観察となっていた.サルコイドーシスの特徴的な胸部X線異常所見として有名な両側肺門部リンパ節腫脹(BHL)は,長期経過例では肺門部リンパ節腫脹は消失し,肺野に線維化像を残すのみとなることが知られている.このため,画像所見のみでは診断に苦慮することも少なくない.一方,サルコイドーシスの皮疹は非常に多彩で,非典型なものも多いが,生検は他臓器病変に比べ侵襲は少なく,組織学的にサルコイドーシスの診断が可能であるため,特に胸部X線に異常所見を認める高齢者では皮疹を詳細に観察し,積極的に生検を行うべきと考えた.

結節性紅斑様皮疹を伴ったサルコイドーシスの1例

著者: 古市恵 ,   牧野輝彦 ,   松浦知子 ,   高島秀樹 ,   諸橋正昭

ページ範囲:P.651 - P.653

要約

 44歳,男性.4年前より胸部X線写真で異常陰影を認めていた.その後,労作時呼吸困難と2~3cm大の自覚症状を伴わない浸潤性紅斑が下腿に出現した.血液検査では血算,生化学で異常を認めず,アンギオテンシン変換酵素(ACE),リゾチームも正常であった.胸部CT上,両側肺門部リンパ節腫脹(BHL)と上肺野に結節影がみられ,気管支肺胞洗浄(BAL),経気管支肺生検(TBLB)では異常所見はなかった.病理組織学的所見では非乾酪性類上皮細胞性肉芽腫が真皮中層から脂肪織にかけて多数散見され,周囲にLanghans型多核巨細胞が認められた.胸部所見と合わせサルコイドーシスと診断した.呼吸器症状があり,胸部画像検査で浸潤影の拡大傾向がみられたため,プレドニゾロン(PSL)30mgの内服治療を行った.呼吸器症状は軽快し,皮疹は速やかに色素沈着となった.

眼球突出,ばち状指を伴った脛骨前粘液水腫の1例

著者: 齋藤まるみ ,   中村晃一郎 ,   金子史男

ページ範囲:P.654 - P.656

要約

 48歳,女性.初診1年前から甲状腺眼症を発症した.2か月前より四肢の浮腫が生じた.血液検査ではfree T3(FT3)およびfree T4(FT4)は正常範囲内であったが,TSH低値,TS抗体陽性であり,甲状腺のびまん性腫大,眼球突出,前腕伸側および下腿伸側に多毛を伴う浮腫性硬化を認めた.また,手足にばち状指を伴っていた.下肢皮疹部の病理組織像では,真皮は浮腫状でアルシアンブルーにより淡青色に染色された.脛骨前粘液水腫と診断し,吉草酸ベタメタゾン(リンデロンV軟膏 (R))の外用にて加療中である.

家族歴を伴わないhereditary benign telangiectasiaの1例

著者: 中嶋郁子 ,   奥山隆平 ,   照井正 ,   菊地克子 ,   森谷卓也 ,   末武茂樹 ,   田上八朗 ,   相場節也

ページ範囲:P.657 - P.659

要約

 1歳10か月の女児.生後3か月頃より紅斑が出現し,新生が続くため当科を紹介され受診した.初診時,顔面,腋窩,上肢に直径3cm程度の毛細血管拡張を伴う境界明瞭な紅斑を数個認めた.浸潤は触れず,局所の著明な熱感があった.組織学的に真皮の毛細血管の増生と拡張を認めた.紅斑は熱感を伴ううえ,1歳を過ぎても新生が続くためhereditary benign telangiectasiaと診断したが,家族に同様の皮疹は認めなかった.

背部弾性線維腫の3例

著者: 麻生和雄

ページ範囲:P.660 - P.663

要約

 弾性線維腫(elastofibroma)は腫瘍様の線維性増殖に,小円形,連珠状,紐状の不定型弾力線維の存在を特徴とし,一部に脂肪織の混在も認められる.多くは肩甲骨下に生ずる半球状,弾性硬の腫瘤で,背部弾性線維腫と呼ばれるが,その他肘頭下部,側胸部,手,足にも発症,また心内膜,弁腱索,結腸にも生じ,それらは表面が乳嘴状であるのでpapillary elastofibromaと呼ばれる.背部弾性線維腫は肩甲骨下部,広背筋,前鋸筋と胸壁の間に発生し,弾性硬,鷲卵大にも達することがある.多くは無症候性であるが,疼痛のあることもあり,肩を拳上すると弾発音を生ずることがある.悪性化は認められていない.遺伝,体質的素因に機械的刺激が加わって発症すると考えられる.本邦では沖縄,鹿児島,九州地方に多く,関東,特に東北地方ではまれである.

Sclerotic fibroma of the skinの1例

著者: 金子聡 ,   佐藤勘治 ,   新山史朗 ,   饗場伸作 ,   向井秀樹 ,   角田幸雄 ,   宮川加奈太

ページ範囲:P.664 - P.666

要約

 69歳,女性の左下腹部に生じたsclerotic fibroma of the skinの1例を経験した.弾性やや硬,半球状に隆起する5×9mm大の皮下結節で,組織学的には硝子化や膨化した膠原線維束が網目状やタマネギの断面に似た特異な構造を示していた.Rapini & Golitzの原著と本邦報告例を比較検討し,その好発部位は顔面および頭部であった.本疾患の発症機序としては過誤腫説,dermatofibromaの変性終末像説などがあるものの,本例は細胞成分が乏しく硝子化の著明な組織像であるが,免疫組織化学的所見などより増殖能を持った真の腫瘍であると考えた.

一部囊腫状を呈した神経鞘腫の1例

著者: 松﨑康司 ,   小炯木麻衣子 ,   滝吉典子 ,   六戸大樹 ,   原田研 ,   花田勝美

ページ範囲:P.667 - P.669

要約

 33歳,男性.10年前,左膝外側に皮下腫瘍出現,次第に圧痛がみられるようになった.臨床像は,表層が青色と赤褐色の色調が混在する皮下腫瘤で,中心部はドーム状に隆起していた.病理組織学的には,充実性ならびに嚢胞性構造を示す多房性神経鞘腫であった.長年膝関節の屈伸による外的刺激を受け続け,腫瘍が皮膚表層に圧排され,また腫瘍内の嚢腫様構造の形成が臨床上特異な外観を呈した誘因として考えられた.

巨大なaneurysmal fibrous histiocytomaの1例

著者: 横溝香奈 ,   花田圭司 ,   奈良武史 ,   種田晃子 ,   岸本三郎 ,   蔵本伸生

ページ範囲:P.670 - P.672

要約

 88歳,女性.初診の約半年前より存在した左拇指背側の小腫瘤が急速に増大し,出血も認めた.初診時35×40×30mm大のドーム状,弾性硬,赤紫色の腫瘤を認め切除術を施行した.病理組織所見では真皮内に紡錘形の腫瘍細胞が充実性に増殖し,storiform patternも認めた.臨床的に隆起性皮膚線維肉腫と鑑別を要したが,組織学的にCD34免疫染色陰性,下床との境界は明瞭,腫瘍内には小血管の増生が多数あり,赤血球を容れた裂隙やほう沫細胞も認め,aneurysmal fibrous histiocytoma (AFH)と診断した.AFHが急速に増大する背景には,小血管の破綻による巨大な空隙の形成のほかに,本症例のように多数増生した小血管が腫瘍を栄養し,巨大に発育させることも考えられた.

母趾に発生した隆起性皮膚線維肉腫の1例

著者: 末原郁子 ,   光石幸市 ,   小川秀興 ,   矢澤康男 ,   月出康平 ,   末原義之

ページ範囲:P.673 - P.675

要約

 39歳,男性.右足母趾に腫瘤が出現し,近医にて切除術を施行された.切除標本の病理診断は隆起性皮膚線維肉腫であり,また切除縁評価が腫瘍内切除診断されたため,追加広範切除を行った.現在,術後2年を経過するが,再発・転移は認めない.

肺癌皮膚転移の2例

著者: 常田美佐子 ,   日野孝之 ,   中村元一 ,   豊田雅彦 ,   諸橋正昭 ,   菓子井達彦

ページ範囲:P.676 - P.679

要約

 肺癌(腺癌,小細胞癌)皮膚転移の2例を経験し,その特徴(①部位,②臨床型,③組織型,④診断から皮膚転移までの期間,⑤転移後の予後)について検討した.肺癌の皮膚転移は,診断から転移までの期間が短く,皮膚転移が肺癌の診断に先行することもしばしばである.近年,肺癌の増加に伴い,転移性皮膚癌の原発巣として肺が占める割合は増えてきており,当科でも同様の傾向がみられた.また,肺腺癌の皮膚転移の補助的診断に,CK7/20,thyroid transcription factor-1 (TTF-1)の免疫染色が有用であった.

多形皮膚萎縮症を呈したCD8陽性皮膚T細胞リンパ腫の1例

著者: 岸本恵美 ,   土屋知子 ,   滝澤三久 ,   轟葉子 ,   守屋修二 ,   江藤隆史 ,   木花光

ページ範囲:P.680 - P.683

要約

 26歳,男性.17歳時より下腹部から大腿に落屑性紅斑が出現し,徐々に多形皮膚萎縮症を呈する病変に進行した.他院で局面型類乾癬と診断されていた.初診時,下腹部から両大腿にかけてと両腋窩に色素沈着,色素脱出,毛細血管拡張,紫斑を混じる境界明瞭な萎縮性落屑性紅斑が存在した.病理組織学的に真皮上層では帯状に,中層から下層では血管周囲性に異型リンパ球が稠密に浸潤し,表皮内浸潤像も認めた.浸潤リンパ球のほとんどがCD8陽性で,自験例をCD8陽性皮膚T細胞リンパ腫と診断した.内服PUVA療法を数回施行後,無疹部にみえた体幹にも茶褐色斑が出現したが,PUVA療法終了時にはほとんどの病変が色素沈着と色素脱出を残して軽快した.内服PUVA療法後に全身の病変が明らかになったのは,病変部と非病変部で最小光毒量の差があるためではないかと考えた.

臨床統計

固定性扁豆状角化症(hyperkeratosis lenticularis perstans)の1例―本邦報告例81例の文献的考察を含めて

著者: 檜垣淑子 ,   早田名保美 ,   山田裕道 ,   小川秀興

ページ範囲:P.686 - P.691

要約

 91歳,女性.約10年前より両足背に不規則形半米粒大の自覚症状のない角化性丘疹が出現し,次第にその数が増加してきた.病理組織学的に著明な角質肥厚と角質の上方への突出,顆粒層と有棘層の菲薄化,真皮上層のリンパ球を主体とした稠密な細胞浸潤が認められた.固定性扁豆状角化症(hyperkeratosis lenticularis perstans:HLP)と診断した.治療は液体窒素冷凍凝固療法とマキサカルシトール外用の併用療法を行い軽快した.本邦では自験例を含めて81例の報告があり,これらを総括し文献的考察を行った.

治療

高齢者施設での疥癬の集団発生に対するイベルメクチンの治療効果

著者: 大滝倫子 ,   谷口裕子 ,   牧上久仁子

ページ範囲:P.692 - P.698

要約

 高齢者施設で疥癬患者74例にイベルメクチン200μg/kg,1週間間隔で2回投与した結果,9例(12.2%)が未治癒,4か月後までにさらに9例(12.2%)に再発を認めた.この結果より,同剤は有効であるが,高齢者では再発の可能性があり,長期間の観察が必要であることがわかった.予防的治療として無症状者150例に1回投与を行ったが,4か月までに7例(4.7%)の発症を認めた.この結果より,高齢者では予防的治療でも2回投与が望まれる.職員102名は症状の有無に応じて1~2回投与を受けたが未治癒,再発,新たな発症はなく,健常者には極めて有効であることがわかった.入居者,職員ともに投薬前後での検査値に変動はなく,皮疹の増悪,そう痒の増加などの副作用も認められなかった.なお,イベルメクチンは疥癬の保険適用がないため,インフォームドコンセントを得たうえで投与した.

老人施設において集団発生した疥癬の治療経験

著者: 杉田康志 ,   濱田雅典 ,   岡原史郎

ページ範囲:P.699 - P.701

要約

 老人施設において86歳の男性を感染源とする短期間に2度にわたる疥癬の集団発生を経験した.1%γ-BHC軟膏,クロタミトン軟膏による治療,および予防的な治療を行い治癒した.初回疥癬集団発生時の対応の問題点として,感染源者の発見の遅れ,感染者の見逃し,対応の不徹底などが考えられた.疥癬集団発生時の施設側の問題点として,処置に対する人員,設備不足のほか,治療中に施設利用を中止することによる収入低下など経済的な問題も挙げられた.短期施設利用者中の無症状虫体保有者に対する対応は困難であるため,施設入所時に予防的処置が必要と思われた.

印象記

「第104回日本皮膚科学会総会・学術大会」に参加して

著者: 白方裕司

ページ範囲:P.703 - P.705

 2004年4月20日水曜日の朝,4日分の着替えをバッグに詰め込み自宅をあとにした.9時30分松山発羽田行の飛行機に乗り込み,機内で口演の最終チェックを行った.空の上は気流も安定し,定刻に羽田空港へ到着,横浜駅行きの空港バスに乗り込んだ.横浜には数回訪れたことがあるが,いつも空港バスを利用している.都内へ出るのと変わらないくらい便利であることを再認識する.

 昨年から,日本皮膚科学会総会は日本研究皮膚科学会とリンクし,Dermatology Weekとして合計5日間開催されている.Dermatology Weekの初日,すなわち第30回日本研究皮膚科学会総会は午後1時30分より,名古屋大学の富田靖教授会頭のもとにインターコンチネンタルホテルで開催された.翌日は会場をパシフィコ横浜へと移して無事に終了した.なんでも,今回はすでに会場が他の会で予約されており,苦肉の策で初日と2日目がちがう会場となってしまったとのこと.会場に詳しくない私としては,会場の移動が大変ではないかと感じていたが,隣接するホテルであったため,とまどうことはなかった.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?