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症例報告
重複癌を伴った臍部悪性黒色腫の1例
著者: 川端一生1 濱田正明1 野本浩生2 諸橋正昭2
所属機関: 1新潟県立中央病院皮膚科 2富山医科薬科大学医学部皮膚科学教室
ページ範囲:P.909 - P.911
文献購入ページに移動76歳,男性.初診の約1年前から臍部に黒色腫瘤を自覚した.色調に濃淡のある辺縁不整の黒色腫瘤であり,悪性黒色腫が強く疑われた.術前の画像検査にて,左腎に腫瘍性病変が発見された.辺縁約2cm離して臍部腫瘍の全切除を行い,同時に左腎の摘出も行った.臍部の腫瘍は悪性黒色腫,左腎の腫瘍は腎細胞癌の病理組織診断であり,直接の関連はないものと考えられた.悪性黒色腫の術後診断はpT4,N0,M0,stageⅢであった.その解剖学的構造から,臍部の悪性腫瘍は転移性腫瘍の比率が高いとされている.臍部に生じる原発性腫瘍の中には悪性黒色腫も挙げられるが,その報告例は少なく,重複癌との合併例は本邦では本症例が初めてである.現在のところ,悪性黒色腫における重複癌の合併には特別な臨床的意義はないとされているが,治療に際しては問題となり,当症例でも治療に苦慮する面が多く,症例の蓄積による治療方針の確立が待たれると考えられた.
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