Qどんなダーモスコピー所見が認められますか?
診断は何でしょう
臨床情報
77歳,女性.3か月ほど前,血尿を契機に外陰部に径1cmほどの紅色結節があるのに気づいた.近医にて尿道カルンクルと臨床診断され,切除された.すぐに結節が再発し,切除標本の病理組織診断が出て,当科へ紹介された.
初診時,外尿道口部に大きさ7×5×3mmの類円形状の紅色結節が認められた(図2).表面は一部びらんしている.周囲に色素斑は認められない.
雑誌目次
臨床皮膚科60巻10号
2006年09月発行
雑誌目次
連載
Dermoscopy Specialistへの道Q&A(第30回)
著者: 斎田俊明 , 古賀弘志
ページ範囲:P.875 - P.877
アメリカで皮膚科医になって(12)―From Japan to America:American Life as a Physician-Scientist
著者: 藤田真由美
ページ範囲:P.972 - P.973
医療損害保険(Medical liability insurance)
アメリカでは訴訟が多い.アメリカの訴訟では,勝てば訴訟費用も含めて負けた側が支払うことになっているので,お金がなくても弁護士が引き受けてくれれば訴訟をすることができる.マクドナルドのコーヒーが熱すぎて火傷したと訴えた81歳の婦人は,裁判に勝って約3億円の賠償金を手に入れた.それに続いて,マクドナルドの床で転んだ妊婦さんがマクドナルドを相手に訴えているところである.
私たち医者の世界でも,医療訴訟は珍しくない.人間は神ではないので,誰でもミスをすることがあるが,私たちは他人の命や人体機能を扱っているだけに,ミスをそのままではすませられない.この医療訴訟には2種類あって,一つは知識,経験不足や不注意など医師の落ち度からくる医療過誤によるものと,もう一つは,医師の落ち度ではなくても,患者の過度の期待や患者医師間の意思伝達に問題があった場合に起こるものとがある.この医療過誤を防ぐために,リスクマネジメントといって,ミスを分析して同じ誤りが起こらないようにシステムを変えたり,医師免許証や専門医制度による制約や,病院の資格委員会が医師の適性について厳重に検討したり,といろいろな措置がとられている.また,医師のほうは,積極的に卒後研修を受けて新しい知識を取り入れると同時に,万が一の訴訟に備えて医療損害保険に加入することになる.
原著
顔面の皮膚病変に対するリハビリメイク(R)の患者QOLへの影響
著者: 檜垣祐子 , かづきれいこ , 加茂登志子 , 川本恭子 , 川島眞
ページ範囲:P.879 - P.883
リハビリメイク(R)とは外見上の問題をもつ人の社会復帰を支援するメイクアップである.顔面に皮膚病変を有する女性86例(16~90歳,平均42歳,色素性病変22例,瘢痕17例,アトピー性皮膚炎7例,ざ瘡6例など)を対象に,リハビリメイク(R)のQOLへの影響を,化粧に対する満足度を含めて検討した.QOLの評価はリハビリメイク(R)前と2週間後にSkindex-16を用いて施行したほか,化粧に対する満足度をリハビリメイク(R)前,直後,2週間後にVASで測定した.Skindex-16スコアはリハビリメイク(R)前に症状19,感情52,機能34と,特に感情,機能面のQOLが低かったが,2週間後にはすべてのスケールスコアが有意に改善した.化粧への満足度はリハビリメイク(R)前の36mmから直後に90mmまで上昇し,2週間後にも有意に上昇していた.以上より,リハビリメイク(R)は患者のQOLを改善し,化粧への満足度を高めることが示された.
症例報告
マツタケによるアナフィラキシーの1例
著者: 石川博康 , 熊野高行 , 三浦歩 , 大原香子
ページ範囲:P.885 - P.887
18歳,女性.職場の宴会で出されたマツタケご飯を翌朝食したところ,20分後から顔面浮腫が出現し,1時間後にはアナフィラキシーショックを起こした.プリック・プリック試験で生マツタケが陽性を示し,マツタケアレルギーと診断した.マツタケアレルギーは本邦報告11例中9例がアナフィラキシーを発症している.アレルゲンの原因蛋白は不明だが,若年に多く,重篤な症状を生じ,注意が必要である.
Lipedematous scalpの2例
著者: 太田智秋
ページ範囲:P.888 - P.891
症例1:40歳,女性.主訴は疼痛.症例2:51歳,女性.頭皮のぶよぶよ感を主訴として来院した.いずれも頭皮表面に異常はみられず,毛髪にも異常がなかったが,境界不鮮明な軟らかいゴムまり様の弾力のある頭皮の肥厚がみられ,組織学的には皮下脂肪組織の過形成が主たる所見であった.lipedematous scalpは原因不詳の稀な疾患であり,毛の成長異常を伴わない場合と伴う場合がある.疫学的には,当初黒人女性に特徴的な疾患であるといわれたが,その後白人女性やアジア人の報告が続き,自験2例を追加すると病因としての人種との関連性は薄いと考えられた.女性に圧倒的に多いことは確かだが,その理由を説明する証拠は今のところない.
ステロイド内服が著効したgeneralized Hailey-Hailey disease
著者: 箭原弘典 , 井川健 , 佐藤貴浩 , 横関博雄
ページ範囲:P.892 - P.895
54歳,男性.30歳頃より夏季に増悪する陰股部の紅斑とびらんを認めており,母親も同様の症状があった.1年前より陰股部の病変が悪化し,それとともに全身に紅斑が拡大して汎発化した.顔面を除くほぼ全身に暗紅色のびらんを伴う紅斑と水疱を認めた.間擦部では融合して疼痛を伴う湿潤局面を形成していた.生検組織では表皮内の裂隙形成と表皮細胞の棘融解像を認め,臨床像と組織所見からgeneralized Hailey-Hailey diseaseと診断した.びらん面からは黄色ブドウ球菌と緑膿菌を検出した.抗生剤投与,ステロイド薬外用,エトレチナートの内服は無効であったが,プレドニゾロン30mg/日の内服にて著明に改善した.汎発化したHailey-Hailey病に対してステロイド内服が有効な症例であった.
水疱性類天疱瘡を合併した尋常性乾癬の1例
著者: 水野愛 , 瀧本玲子 , 河井正晶 , 秋山知加 , 駒井礼子 , 石井文人 , 橋本隆 , 高森建二
ページ範囲:P.896 - P.898
72歳,男性.約10年来の尋常性乾癬で加療中,特に誘因なく四肢,軀幹に紅斑,緊満性水疱が出現し,精査の結果,水疱性類天疱瘡と診断した.尋常性乾癬と水疱性類天疱瘡の合併例につき現在までの報告をまとめ,検討した.特徴としては,①高齢者の男性に多いこと,②乾癬病変が数年から数十年先行していること,③高血圧,糖尿病などを有し,それに対する薬剤投与歴がある例が多いこと,④乾癬に対する治療が誘因となった例があることが挙げられた.近年,尋常性乾癬に合併する水疱症として,真皮内の200kD蛋白に対する自己抗体をもつanti-p200 pemphigoidが報告されているが,本症例では200kD蛋白に対する自己抗体は陰性であった.
抗デスモグレイン1抗体が陽性を示した水疱性類天疱瘡の1例
著者: 明石玲 , 福屋泰子 , 檜垣祐子 , 川島眞 , 天谷雅行
ページ範囲:P.899 - P.902
82歳,女性.2003年7月より軀幹に紅斑が出現し,軽快しないため2004年1月当科を紹介され受診した.初診時,軀幹,四肢に手拳大までの紅褐色斑が多発・癒合し,小豆大までの緊満性水疱とびらんが散在していた.口腔粘膜疹は認めなかった.緊満性水疱の生検組織像は明らかな棘融解を認めず,表皮下水疱を呈し,蛍光抗体直接法で表皮細胞間にIgG,基底膜部にC3が沈着していた.蛍光抗体間接法にて血中抗基底膜部抗体は640倍,ELISA法にて抗BP180抗体のindex値は102,抗Dsg1抗体は150で陽性を示し,抗Dsg3抗体は陰性だった.以上より,抗Dsg1抗体が陽性を示した水疱性類天疱瘡と診断した.プレドニゾロン15mg/日(0.5mg/kg)の内服が奏効した.
全身に著明な色素沈着をきたした皮膚筋炎の1例
著者: 箭原弘典 , 井川健 , 佐藤貴浩 , 横関博雄
ページ範囲:P.903 - P.906
48歳,女性.小児期よりアトピー性皮膚炎があり,外用療法で良好なコントロールをされていた.2002年1月より眼瞼に浮腫性紅斑が出現した.2002年8月よりCKの上昇と全身の色素沈着が認められるようになり次第に増悪した.2004年1月より四肢近位筋の疼痛・筋力低下を自覚した.筋酵素上昇・筋電図・筋MRI・筋生検・皮膚生検の各所見から皮膚筋炎と診断.間質性肺炎や悪性腫瘍の合併は認めなかった.プレドニゾロン40mg/日より内服開始したところ,眼瞼の腫脹・色素沈着・筋症状は徐々に改善していった.本症例の色素沈着は皮膚筋炎によるものと考えられた.
全身性無汗症が契機となり診断したSjögren症候群の1例
著者: 五十嵐直弥 , 永井弥生 , 遠藤雪恵 , 田村敦志 , 石川治
ページ範囲:P.907 - P.910
57歳,男性.野外での作業中に顔面,手背,前腕の腫脹が出現し,めまいや倦怠感を伴うようになった.これらの症状は日陰で安静にすると軽快していた.各種光線照射試験は正常範囲であった.日光曝露による誘発テストで発熱,頻脈および顔面などの露光部に発赤・腫脹が出現し,主治医が患者に発汗のないことに気づいた.温熱発汗テストでは全身性の発汗消失がみられた.皮膚生検では汗腺周囲にリンパ球が浸潤していた.抗核抗体,抗SS-A抗体陽性,角膜びらんおよび小唾液腺の導管周囲にリンパ球浸潤がみられたことから,Sjögren症候群に伴う全身性無汗症と診断した.ステロイドパルス療法が著効し,2クール施行後には発汗がみられるようになった.
Lupus erythematosus tumidusの1例
著者: 齋藤昌孝 , 石河晃 , 西川武二 , 木村鉄宣
ページ範囲:P.911 - P.913
36歳,男性.頰部の紅斑を主訴に当科を紹介され受診した.初診時,両側頰部に浮腫性紅斑局面を数か所認め,生検では組織学的に液状変性などの表皮の変化を伴わず,真皮全層の血管および付属器周囲性の巣状のリンパ球浸潤が主体であり,真皮膠原線維間にはムチンが沈着していた.臨床および組織学的所見よりlupus erythematosus tumidus (LET)と診断した.慢性皮膚エリテマトーデスの一型とされているLETは,最近になり再び注目されている疾患概念であるが,その独立性には異論もあり,本邦での報告も非常に少ない.今後多くの症例を蓄積することによって,皮膚エリテマトーデスとの関連性や独立性に関してさらに検討を加えていく必要があると考えた.
ラノリンによる接触皮膚炎を伴った難治性下腿潰瘍の1例
著者: 鶴見純也 , 小林万利子 , 鈴木弘美 , 川村由美 , 濱崎洋一郎 , 籏持淳 , 山﨑雙次
ページ範囲:P.914 - P.916
41歳,男性.出生時より左下肢に動静脈奇形によると思われるチアノーゼがあり,6歳時に交感神経切断術を受けた.2000年,左下腿に皮膚潰瘍が出現した.当院外科にて左総腸骨静脈閉塞症,下大静脈閉塞症と診断され,大伏在静脈バイパス術を施行し,皮膚潰瘍は治癒した.しかし,2年前より左下腿に難治性の下腿潰瘍が再発したため当科入院となった.PGE1製剤の点滴,保存的治療を行うも潰瘍は拡大した.パッチテストで貼布薬キュティセリン(R),アズノール軟膏(R)が陽性を示し,それらの共通成分である精製ラノリンも陽性であった.精製ラノリンを含有する他の外用薬とイソジン(R)もパッチテスト陽性を示した.外用薬の変更,分層植皮術を行い潰瘍は治癒した.
Diabetic digital sclerosisの1例
著者: 新石健二 , 越後岳士 , 折戸秀光 , 藤本晃英 , 長谷川稔 , 藤本学 , 竹原和彦
ページ範囲:P.917 - P.919
53歳,男性.既往歴に高血圧,高脂血症(内服加療中)あり.喫煙歴あり(40本/日×30年).43歳時,2型糖尿病と診断され近医にて血糖降下薬による内服加療をされていたがコントロール不良であった.初診の1年前より,疼痛を伴う手指の浮腫性硬化と拘縮が出現した.初診時,手指から手背まで皮膚の浮腫性硬化を認めたが,Raynaud現象,爪上皮の延長,爪上皮出血点は認めなかった.臨床検査では,空腹時血糖は180mg/dl,HbA1cが9.7%,尿糖3.2g/日,抗核抗体・強皮症に伴う自己抗体は陰性で,その他全身精査において異常を認めなかった.手指の血管造影では末梢動脈の描出が不良であった.病変部病理組織にて真皮の浮腫がみられ,膠原線維束の増生を認めた.ムチン染色は陰性であった.血糖コントロールとリハビリテーションにて,手指の硬化と関節拘縮は改善傾向である.
Drug-induced hypersensitivity syndromeの経過中に生じた帯状疱疹
著者: 佐久間恵一 , 狩野葉子 , 塩原哲夫
ページ範囲:P.920 - P.923
39歳,男性.うつ病のためカルバマゼピンを22日間内服後より,発熱を伴って体幹に紅斑が出現した.風疹が疑われ内服を継続したが,紅斑が全身性に拡大したため内服44日目に当科を受診した.入院時,38℃の発熱,全身にびまん性の潮紅を認め,頸部リンパ節腫大,好酸球増多(48%)を伴う白血球増多(19,400/μl),肝機能障害などの所見からdrug-induced hypersensitivity syndrome (DIHS)を疑いカルバマゼピンを中止し,プレドニゾロン60mg/日を開始した.皮疹と肝機能は徐々に軽快し,約2週後にHHV-6IgG抗体価の上昇を認めたため,カルバマゼピンによるDIHSと診断した.経過中HHV-6抗体価の上昇に続いて,左大腿部に帯状疱疹が出現した.免疫再構築症候群やgraft-versus-host diseaseに伴って帯状疱疹が発症することが知られており,本症例の帯状疱疹も同様にウイルス再活性化の一環として発症したと考えた.
認知症患者に生じた猫引っかき病の1例
著者: 木下華子 , 竹中秀也 , 加藤則人 , 岸本三郎
ページ範囲:P.924 - P.926
67歳,女性.軽症の認知症がある.右腋窩と右肘窩に圧痛を伴う皮下腫瘤を認めた.当院内科を受診し,悪性リンパ腫を疑われ,生検目的で当科を紹介された.血液検査上,CRP0.6mg/dlと軽度上昇を認める以外の異常はなかった.生検時に皮下腫瘤より排膿を認め,改めて問診したところ,手背を猫に引っかかれていたことが判明した.病理組織検査ではリンパ節内に好中球からなる膿瘍および肉芽腫の所見を認めた.間接蛍光抗体法によるBartonella henselaeの血清抗体価は,IgG抗体が1,024倍以上であり,猫引っかき病と診断した.クラリスロマイシンおよびロキシスロマイシン内服により軽快した.
血管拡張性肉芽腫様外観を呈したaneurysmal benign fibrous histiocytomaの1例
著者: 奥山知音 , 福田英嗣 , 佐藤八千代 , 漆畑修
ページ範囲:P.927 - P.929
27歳,男性.初診の半年ほど前に右膝下方の隆起する結節に気づいた.自覚症状がなく,放置したところ徐々に増大したため,受診した.右膝下方に境界明瞭な広基有茎性,表面にびらんを伴う暗紅色結節で血管拡張性肉芽腫を考え全摘した.病理組織学的に,真皮上層~皮下脂肪組織に比較的境界明瞭な腫瘍塊があり,腫瘍塊内には毛細血管の拡張・増生,ヘモジデリンの沈着が認められた.腫瘍塊を構成している細胞は,組織球様細胞で,明らかな異型性はない.さらに,腫瘍塊の中央部に,周囲に内皮細胞を欠く裂隙に赤血球の充満をみる.以上より,aneurysmal benign fibrous histiocytomaと診断した.本邦報告例84例をまとめ,血管拡張性肉芽腫様外観を呈した機序に関し考察した.
膝に生じたグロムス腫瘍の1例
著者: 内田敦子 , 小阪博
ページ範囲:P.930 - P.932
58歳,男性.初診の1年半ほど前より右膝に疼痛を伴う皮下腫瘤を自覚していた.病理組織学的に,拡張した血管腔とその周囲に腫瘍細胞の増殖を認めた.免疫組織学的所見にて,腫瘍細胞はα-smooth muscle actin,ビメンチンに陽性,デスミンに陰性であった.これらより,グロムス腫瘍の一種のglomangiomaと診断した.過去の報告によると,膝に生じたグロムス腫瘍は数%であり,発症部位の面からみれば比較的稀な症例と考えられた.
有茎性基底細胞癌の1例
著者: 馬場俊右 , 森康記 , 赤坂俊英
ページ範囲:P.933 - P.935
72歳,男性.約5年前から右耳介後部に有茎性の腫瘤が出現し,徐々に増大してきた.近医から当科を紹介され,生検で基底細胞癌と診断した.臨床的には,有茎性でほぼ皮膚色,表面に痂皮は付着していたが明らかな潰瘍形成がなく,基底細胞癌の臨床像としては比較的稀な所見である.
Malignant melanoma of soft parts (clear cell sarcoma)の1例
著者: 足立孝司 , 宮本亨 , 藤原一人 , 奥山典秀 , 高田理恵 , 奥村能啓
ページ範囲:P.936 - P.939
80歳,女性.約2か月前より左大腿部の皮下腫瘤に気づき,生検にてmalignant melanoma of soft partsあるいは悪性黒色腫の転移を疑われた.CT,MRI,骨シンチ,PET/CT検査にて,左内果皮下腫瘤,左大腿皮下腫瘤,左鼠径リンパ節の腫脹を認めた.それ以外には明らかな転移や悪性黒色腫の原発巣を疑う所見はなかった.左内果皮下腫瘤を切除し,malignant melanoma of soft partsと左鼠径リンパ節転移と診断し,同部位の郭清術を行った.術後,左鼠径部への放射線照射,DAV-Feron療法3クールを施行した.
多発性転移をきたした乳房外Paget病の1例
著者: 渡辺彩 , マーギットニンデル , 鳥居秀嗣 , 大数加光治
ページ範囲:P.940 - P.943
56歳,男性.初診の1年前より恥丘部に落屑性紅斑を認めた.生検にて乳房外Paget病と診断した.2002年8月,広範切除,分層植皮術を施行した.転移なく外来にて経過観察していた.2005年1月,右下肢痛が出現し,全身精査にて乳房外Paget病の骨転移,傍大動脈リンパ節転移,肝転移と診断した.ドセタキセル,シスプラチンによる化学療法,放射線療法を施行するも効果は得られなかった.乳房外Paget病に対する化学療法の本邦報告例を検討した.
Bowen病を合併したMerkel細胞癌の1例
著者: 米本広明 , 新村眞人 , 中川秀己
ページ範囲:P.944 - P.946
90歳,女性.約10年前より右下腹部に自覚症状のない紅斑が出現し,1年ほど前より紅斑内に腫瘤が出現した.初診時,右下腹部に32×20mmの比較的境界明瞭な紅斑があり,そのほぼ中央に10×15×5mmの,表面にびらんを伴う腫瘤を認めた.周囲の紅斑より5mm離して切除した.病理組織学的に腫瘤部はMerkel細胞癌,紅斑部はBowen病であった.抗サイトケラチン20抗体とNSEが腫瘤部腫瘍細胞にのみ陽性であった.術後6か月後リンパ節に転移し,11か月後に永眠された.
皮膚病変から診断しえたintravascular large B-cell lymphomaの1例
著者: 竹林英理子 , 菅千束 , 小松平 , 竹村佐千哉 , 家本陽一
ページ範囲:P.947 - P.950
63歳,女性.全身倦怠感を伴い,両大腿内側,腹部にやや圧痛のある皮下硬結および紅斑を認めた.腹部には一部毛細血管拡張もみられた.病理組織像では真皮から脂肪層にかけて広範囲に,多数の血管内に大型異型リンパ球様細胞が充満し,管腔を完全に閉塞していた.一部では血管外への浸潤を疑わせた.免疫組織化学染色でL26(CD20)陽性であり,intravascular large B-cell lymphomaと診断した.骨髄穿刺で骨髄浸潤と骨髄異形成症候群が合併していた.化学療法を勧めたが,入院治療を拒否し,皮疹は著明に拡大している.
乳癌手術11年後に出現したalopecia neoplasticaの1例
著者: 六戸亜希子 , 板井恒二 , 原田研 , 花田勝美 , 渡辺庸介
ページ範囲:P.951 - P.954
47歳,女性.後頭部に紅色,類円形の脱毛斑を認めた.初診の11年前に右乳癌の切除術を受けていた.病理組織学的所見では,真皮上層から下層にかけて異型細胞の索状配列,胞巣状浸潤がみられ,腺管様構造も認められた.いわゆる“Indian filing”も観察され,転移性腺癌が考えられた.画像検査で乳癌以外に原発巣となる悪性腫瘍はなく,乳癌の腫瘍マーカーが高値を示していたことから,術後11年で頭部皮膚に転移し,alopecia neoplasticaを生じたものと考えた.
Mohs' chemosurgeryによりQOLを改善しえた転移性皮膚胸腺癌の1例
著者: 伊藤宗成 , 栁沼恭子 , 谷戸克己 , 上出良一 , 中川秀己
ページ範囲:P.955 - P.958
68歳,男性.呼吸器内科にて胸腺癌の診断を受け,放射線療法や各種化学療法を施行するも効果なく,腫瘍が体表から大きく突出してきたため,液体窒素による凍結療法を試みた.腫瘍は若干縮小したものの,逆に壊死が拡大し滲出液が増量,感染により悪臭を伴った.そこでMohs' chemosurgeryを施行したところ,腫瘍は壊死部位も含めて固定され,十分な腫瘍縮小効果に加え,滲出液の漏出・悪臭も抑制することができ,患者存命中のQOLの改善に大きく寄与することができた.
治療
V-Y advancement flapを用いて再建した外陰部Paget病の2例
著者: 一宮誠 , 小篠純一 , 武藤正彦
ページ範囲:P.960 - P.963
Paget病は,切除後の欠損部が大きくなり,女性外陰部では,機能および整容を考慮した再建に難渋する.大きな欠損には薄筋皮弁や遊離植皮術などが適応となるが,横転型の薄筋皮弁では,bulkyとなり歩行や排尿時などに支障が生じたり,また遊離植皮術では術後に拘縮をきたすことが多い.62歳,女性例にV-Y fasciocutaneous flapを,また82歳,女性例にV-Y advancement myocutaneous gracilis flapを用いて再建した.皮弁壊死や二次感染などの合併症はなく,機能的および整容的にも満足な結果が得られた.
ステロイド乳剤性ローションの体幹・四肢の皮疹に対する臨床的有用性と使用感に関する調査
著者: 川島眞 , ステロイド乳剤性ローション研究班
ページ範囲:P.964 - P.970
各種皮膚疾患患者113例(湿潤型湿疹・皮膚炎群41例,苔癬化型湿疹・皮膚炎群37例,尋常性乾癬35例)を対象として,ステロイド乳剤性ローション(アンテベート(R)ローション;0.05%酪酸プロピオン酸ベタメタゾン)の体幹・四肢に対する有用性を検討した.①皮膚症状の推移では,すべての群のすべての項目において調査開始時と比べ有意な改善が認められた.②全般改善度では,「かなり軽快」以上が湿潤型湿疹・皮膚炎群95.1%,苔癬化型湿疹・皮膚炎群72.9%,尋常性乾癬71.4%であった.③有用性の評価では,「有用」以上が湿潤型湿疹・皮膚炎群95.1%,苔癬化型湿疹・皮膚炎群81.0%,尋常性乾癬74.3%であった.④使用感の調査では,各群間に大きな差はなく,全体の約90%が「のびる」「さらっとしている」「刺激を感じない」「においが気にならない」などと回答した.また,軟膏・クリームの使用経験がある患者に乳剤性ローションの使用の希望を問うたところ,「希望する」が湿潤型湿疹・皮膚炎群75.6%,苔癬化型湿疹・皮膚炎群86.1%,尋常性乾癬80.0%であった.主な理由は「のびが良い」「べとつかない」「広範囲に塗りやすい」であり,使用したい部位としては手・腕・脚の四肢から胸・腹・背中の体幹部であった.これらの点より,アンテベート(R)ローションは,今回対象となった各種皮膚疾患に対する有効性および安全性が高く,患者の使用感も良好なことから,頭髪部のみならず体幹・四肢の皮膚疾患に対しても有用な治療剤であると考えた.
基本情報
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43巻10号(1989年9月発行)
43巻9号(1989年8月発行)
43巻8号(1989年7月発行)
43巻7号(1989年6月発行)
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特集 臨床皮膚科—最近のトピックス
43巻5号(1989年5月発行)
43巻4号(1989年4月発行)
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39巻12号(1985年12月発行)
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38巻12号(1984年12月発行)
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37巻12号(1983年12月発行)
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36巻9号(1982年9月発行)
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35巻12号(1981年12月発行)
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26巻12号(1972年12月発行)
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25巻13号(1971年12月発行)
特集 小児の皮膚疾患
25巻12号(1971年12月発行)
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25巻9号(1971年9月発行)
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特集 基底膜
25巻6号(1971年6月発行)
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24巻12号(1970年12月発行)
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24巻9号(1970年9月発行)
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23巻12号(1969年12月発行)
23巻11号(1969年11月発行)
23巻10号(1969年10月発行)
23巻9号(1969年9月発行)
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