文献詳細
連載
アメリカで皮膚科医になって(12)―From Japan to America:American Life as a Physician-Scientist
著者: 藤田真由美1
所属機関: 1コロラド大学皮膚科
ページ範囲:P.972 - P.973
文献概要
アメリカでは訴訟が多い.アメリカの訴訟では,勝てば訴訟費用も含めて負けた側が支払うことになっているので,お金がなくても弁護士が引き受けてくれれば訴訟をすることができる.マクドナルドのコーヒーが熱すぎて火傷したと訴えた81歳の婦人は,裁判に勝って約3億円の賠償金を手に入れた.それに続いて,マクドナルドの床で転んだ妊婦さんがマクドナルドを相手に訴えているところである.
私たち医者の世界でも,医療訴訟は珍しくない.人間は神ではないので,誰でもミスをすることがあるが,私たちは他人の命や人体機能を扱っているだけに,ミスをそのままではすませられない.この医療訴訟には2種類あって,一つは知識,経験不足や不注意など医師の落ち度からくる医療過誤によるものと,もう一つは,医師の落ち度ではなくても,患者の過度の期待や患者医師間の意思伝達に問題があった場合に起こるものとがある.この医療過誤を防ぐために,リスクマネジメントといって,ミスを分析して同じ誤りが起こらないようにシステムを変えたり,医師免許証や専門医制度による制約や,病院の資格委員会が医師の適性について厳重に検討したり,といろいろな措置がとられている.また,医師のほうは,積極的に卒後研修を受けて新しい知識を取り入れると同時に,万が一の訴訟に備えて医療損害保険に加入することになる.
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