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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科60巻11号

2006年10月発行

文献概要

症例報告

全身性強皮症患者にみられた難治性下腿潰瘍―巨大子宮筋腫と抗リン脂質抗体が誘因と考えられた1例

著者: 井上有紀子1 越後岳士1 長谷川稔1 佐藤伸一1 水本泰成2 山崎雅英3 竹原和彦1

所属機関: 1金沢大学大学院医学系研究科循環医科学専攻血管分子化学講座皮膚科学 2金沢大学大学院医学系研究科産科婦人科学 3金沢大学大学院医学系研究科内科学第3

ページ範囲:P.1002 - P.1005

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要約 37歳,女性.24歳時,抗セントロメア抗体陽性の全身性強皮症を発症した.25歳時,死産の既往あり.28歳時より両下肢深部静脈血栓症に対し近医にてワルファリンカリウムの内服をしていたが,初診2か月前から両下腿に疼痛を伴う難治性の皮膚潰瘍が多発してきた.抗リン脂質抗体陽性で,肺梗塞,両下肢深部静脈血栓症を認めたことから,抗リン脂質抗体症候群と診断した.さらにMRIにて径13cm大の巨大子宮筋腫が総腸骨静脈を圧排している像を認めたため,子宮全摘と抗凝固療法の強化により皮膚潰瘍は速やかに上皮化した.巨大な骨盤内腫瘍は解剖学的に下肢血流うっ滞の原因となり,しばしば血栓症の誘因となることが知られている.自験例では,抗リン脂質抗体症候群で凝固亢進状態にあり,さらに巨大子宮筋腫による下肢の血流うっ滞から血栓形成が促進され,難治性下腿潰瘍が生じたと考えられた.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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