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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科60巻12号

2006年11月発行

雑誌目次

連載

Dermoscopy Specialistへの道Q&A(第32回)

著者: 斎田俊明 ,   古賀弘志

ページ範囲:P.1085 - P.1087

Q どんなダーモスコピー所見がみとめられますか?
診断は何でしょう
臨床情報
 8歳,女児.2歳頃,左第5趾爪甲の内側部分に褐色の色素線条が生じているのに両親が気づいた.この色素線条は徐々に拡大し,3歳頃には趾先部の皮膚にも褐色斑が生じてきた.5歳頃には褐色の色素沈着が爪甲全体に及んだ.

 8歳の受診時には爪甲全体に褐色の色素沈着がみられ,内側方でやや色調が濃かった(図2).この部分の末梢の趾先部皮膚に約4×2.5mmの褐色斑が認められた.

今月の症例

左臀部,左大腿部に生じた片側性Darier病の1例

著者: 大原夕佳 ,   簗場広一 ,   中川秀己

ページ範囲:P.1089 - P.1091

 43歳,男性.受診3か月前より左臀部,左大腿部後面にそう痒を伴う紅色丘疹,角化性紅斑が出現,ステロイドを外用するも軽快せず徐々に増悪した.検鏡でカンジダ陽性で抗真菌薬を外用したが増悪し,さらにステロイドを外用したが変化がなかった.病理組織学的に不全角化を伴う角層の肥厚,異常角化細胞の集簇,基底層の棘融解,真皮上層のリンパ球を中心とする炎症細胞浸潤がみられ,Darier病と診断した.高濃度タカルシトール軟膏外用で角化性局面は平坦化したものの紅斑は残存し,そう痒が強いため,ウルトラパルスCO2レーザーにて蒸散術を行った.蒸散部位は瘢痕化しそう痒も軽減した.再発は認められない.

症例報告

Transient acantholytic dermatosisの1例

著者: 片山美玲 ,   青木見佳子 ,   竹内淳子 ,   岩切加奈 ,   川名誠司

ページ範囲:P.1093 - P.1095

 73歳,女性.3年前より夏季にのみ胸部に皮疹が出現していた.初診時,両膝窩を中心に両大腿,下腿,胸部に融合傾向のない角化性丘疹がみられた.病理組織像にて角層肥厚,表皮の乳頭腫状増殖,基底層直上の裂隙形成,円形体などの異常角化細胞を認め,また,蛍光抗体直接法では免疫グロブリン,補体は沈着しておらず,transient acantholytic dermatosisと診断した.白色ワセリン外用のみで初診の1か月後には皮疹は軽快し,4か月後にはほぼ消退した.

疱疹状皮膚炎―ヨード系造影剤使用を契機に発症し,ステロイド外用薬と抗アレルギー薬でコントロールが可能であった1例

著者: 加倉井真樹 ,   平塚裕一郎 ,   東隆一 ,   岩田基子 ,   梅本尚可 ,   山田朋子 ,   鈴木正之 ,   出光俊郎

ページ範囲:P.1096 - P.1099

 73歳,男性.68歳時に肝細胞癌を指摘された.ヨード系造影剤を使用したCT検査後,そう痒性皮疹が出現した.痒疹の診断で,経過をみていたところ,半年後,小水疱が多発したために再度,来院した.再診時,臀部,四肢に浮腫性紅斑と小豆大までの小水疱が認められた.病理組織像では表皮下水疱と真皮乳頭層の微小膿瘍が観察された.蛍光抗体直接法では真皮乳頭層にIgAの細線維状,一部顆粒状の沈着がみられ,疱疹状皮膚炎と診断した.以後,ステロイド外用薬と抗アレルギー薬でコントロールされている.自験例では,①肝細胞癌の合併,②ヨード系造影剤の使用後の発症と再使用による増悪,③ステロイド外用薬と抗アレルギー薬が有効であったことなどが従来の報告と較べて特異であった.

毛囊一致性に丘疹がみられた薬剤性過敏症症候群の1例

著者: 梶田裕子 ,   大嶋雄一郎 ,   玉田康彦 ,   松本義也 ,   伊東慶子 ,   堀博子

ページ範囲:P.1100 - P.1102

 57歳,男性.2003年6月初旬から脳梗塞後のめまい症状残存のため,カルバマゼピン(テグレトール (R))内服開始し,1か月半後に紅色丘疹が全身に拡大し,発熱,肝酵素上昇がみられ,当科を紹介受診された.頸部のリンパ節腫脹と顔面,軀幹を中心に毛囊一致性の紅色丘疹を認め,病理組織学的には毛囊への炎症性細胞浸潤と表皮基底細胞の壊死がみられた.薬剤性過敏症症候群(drug-induced hypersensitivity syndrome:DIHS)と診断した.多彩な臨床像と組織像を示す本疾患について,若干の文献的考察を加えた.

全身性への移行が考えられる皮膚結節性多発動脈炎の1例

著者: 水野京子 ,   永岡譲 ,   足立真 ,   永田茂樹

ページ範囲:P.1103 - P.1106

 46歳,男性.初診より数週間前に頭痛と発熱,両下腿の浮腫および疼痛が出現した.蜂窩織炎と診断し加療していたが,両下肢と両前腕に大豆大までの浸潤の強い類円形紅斑が出現し,局所圧痛と睾丸痛も存在した.右大腿部と下腿の浸潤を触れる紅斑部の生検で,小動脈の内膜にフィブリノイド壊死性血管炎が認められた.血液検査所見ではCRPの上昇がみられ,P-ANCA,C-ANCAと抗核抗体は陰性であった.尿検査,胸部X線,心電図と心エコーに異常所見はなかった.血圧も正常範囲内であった.以上より,結節性多発動脈炎の本邦診断基準を満たさず,皮膚結節性多発動脈炎と診断した.しかし,American College of Rheumatologyの診断基準では結節性多発動脈炎になるため,全身性への移行を念頭に置き,経過観察すべき症例と考えた.

下肢深部静脈血栓症によって難治性皮膚潰瘍を呈した抗リン脂質抗体症候群の1例

著者: 坪井廣美 ,   勝岡憲生

ページ範囲:P.1107 - P.1110

 30歳,男性.7年前に胸膜炎,関節炎,蛋白尿,蝶形紅斑,抗核抗体陽性であったことより全身性紅斑性狼瘡(SLE)と診断されている.初診の4か月前より左下腿に潰瘍が出現し次第に拡大した.血清梅毒反応偽陽性,血小板減少,PTT延長,ループスアンチコアグラント陽性,肺血栓塞栓症,深部静脈血栓症,膝窩静脈に微小血栓症を認めたことより,SLE患者にみられた抗リン脂質抗体症候群と診断した.下腿潰瘍はLinton手術を施行,抗リン脂質抗体症候群に対してプレドニゾロン30mg,アスピリン100mgを投与したところ,潰瘍は略治し,PTT延長の改善と血小板の増加を認めた.

IL-18値が病勢を反映した成人Still病の1例

著者: 矢田佳子 ,   小林里実 ,   宍戸悦子 ,   檜垣祐子 ,   川島眞

ページ範囲:P.1111 - P.1114

 33歳,女性.咽頭痛,頸部リンパ節腫脹とともに弛張熱が出現し,有熱時に関節痛と全身の浮腫性紅斑を伴った.紅斑の病理組織像では,真皮上~中層の血管周囲に浮腫とリンパ球主体の炎症細胞浸潤を認めた.未梢血では好中球増多とフェリチン値,CRPの上昇がみられ,感染症,膠原病,悪性腫瘍を示唆する所見はなかったことから,成人Still病と診断した.血清サイトカイン値の測定では,IL-18が123,000pg/mlと異常高値を示した.プレドニゾロン(PSL)0.6mg/kg/日の内服を開始したが,そう痒を伴う滲出性紅斑が出現し,5日間持続した.夜間の発熱,関節痛が改善しないため,PSLを1.0mg/kg/日に増量し,症状は軽快した.4年を経過した現在まで再然は認めない.

組織学的に血管炎を伴ったlymphomatoid papulosisの小児例

著者: 浅野千賀 ,   黒田啓 ,   原大 ,   多島新吾

ページ範囲:P.1115 - P.1118

 12歳,女児.初診時,右前腕に黒色痂皮を有する単発の紫紅色局面を認め,その後,四肢・顔面に初発疹より小型の紅色局面が多発,皮疹は新生・消退を繰り返している.病理組織学的には,真皮から皮下組織にかけて大小不同の異型性を有するリンパ球様細胞が密に浸潤し,異型細胞の一部はKi-1(CD30)陽性であり,血管炎の所見を一部に認めた.T細胞レセプターCβ1とJγで遺伝子再構成を認めた.

T細胞受容体β鎖およびγ鎖の遺伝子再構成が検出されたlymphomatoid papulosisの1例

著者: 小野紀子 ,   齋藤昌孝 ,   天谷雅行 ,   久保佳多里

ページ範囲:P.1119 - P.1122

 26歳,男性.初診の約4年前より体幹・四肢に自覚症状を伴わない皮疹が繰り返し出現し,近医にて急性痘瘡状苔癬状粃糠疹(PLEVA)と診断され,加療されたが,軽快せず当科を受診した.初診時,体幹・四肢に米粒大から小豆大までの紅褐色の丘疹が新旧混在して認められた.病理組織学的に,表皮内には異型リンパ球の浸潤と多数の赤血球がみられ,真皮浅層から中層の血管・付属器周囲にCD30陽性大型異型細胞が斑状に浸潤しており,lymphomatoid papulosisと診断した.遺伝子検査にてT細胞受容体β鎖およびγ鎖の遺伝子再構成が検出され,同一の皮疹のなかに少なくとも2種類のリンパ球のクローン性増殖が生じていたことを示唆するものと考えた.

臀部に生じたcutaneous ciliated cystの1例

著者: 内田敦子 ,   中塚伸一 ,   小阪博

ページ範囲:P.1123 - P.1126

 24歳,女性.左臀部の直径3cmの弾性軟の皮下腫瘤で,可動性は良好であった.MRIにて囊胞性腫瘤として描出され,内部は水と同様の信号強度を呈していた.病理組織学的所見は囊胞性病変であり,囊腫壁細胞は内腔に線毛を有する円柱上皮であった.cutaneous ciliated cystと診断した.検索しえた限りでは,自験例を含めて50例しか報告がなく,稀な疾患である.また,本症の発生機序について検討した結果,Muller管由来説を支持したい.

Eccrine porocarcinomaの1例

著者: 渡辺彩 ,   唐川大 ,   鳥居秀嗣

ページ範囲:P.1127 - P.1129

 72歳,男性.2年前より左臀部に無症状の結節が存在するも放置していた.徐々に増大しびらんを伴うようになった.初診時,6×6×3.5cm,弾性硬,下床との可動性比較的良好な広基有茎性の暗紫色調結節があり,中央部はびらんしていた.病理組織学的所見では表皮と連続性に脂肪織深層まで腫瘍塊の増生を認めた.腫瘍細胞は軽度の異型性を伴う比較的小型の類円形細胞で,束状,胞巣状に配列し,一部に管腔様構造がみられ,CEA陽性であった.以上よりeccrine porocarcinomaと診断した.

前立腺癌のホルモン療法中に出現した黒色表皮腫の1例

著者: 渡辺裕美子 ,   安念美雪 ,   山田裕道

ページ範囲:P.1130 - P.1132

 75歳,男性.2002年7月,前立腺癌と診断されLH-RH誘導体である酢酸リュープロレリン皮下注,黄体ホルモンである酢酸クロルマジノン内服にて治療が開始された.その後合成エストロゲンであるホスフェストロールを投与したところ,約2か月後に両側乳頭,乳輪部の黒色変化が出現したため受診した.初診時,両側乳頭・乳輪部に境界明瞭で黒褐色の乳嘴状角質増殖を認め,両側腋窩にも黒褐色の色素沈着と皮膚の粗造化がみられた.組織学的には乳輪部の表皮は乳頭腫状で角質が肥厚し,基底層のメラニン顆粒が増加していた.臨床所見,病理組織所見より黒色表皮腫と診断した.悪性型との鑑別を要したが,前立腺癌に対するホルモン療法の経過より,薬剤性黒色表皮腫と診断した.

肺転移を伴い,一部に自然消退傾向をみた皮膚悪性黒色腫

著者: 洞口由香 ,   前田文彦 ,   高橋和宏 ,   赤坂俊英

ページ範囲:P.1133 - P.1136

 43歳,女性.10数年前から額部に色素斑があり,徐々に拡大し表面に潰瘍性変化を伴ったが放置していた.健診で胸部陰影を指摘され,呼吸器外科で手術したところ,悪性黒色腫であった.前額部の原発巣は色調不均一で中央に灰白色調の部分をもつ径2cm大の黒褐色斑であり,病理組織学的検査で,一部に自然消退現象がみられた.切除した前額部の病変の組織標本のtumor thicknessは0.14mmであるが,自然消退傾向を示す悪性黒色腫の場合,病期確定は困難であるとともに,予後不良症例と考えた.

原発切除約1年半後に鼠径リンパ節転移を認めた病期ⅠAの右踵部悪性黒色腫の1例

著者: 舩越建 ,   佐藤友隆 ,   田村舞 ,   諏訪部寿子 ,   五味博子 ,   川久保洋 ,   今井龍介

ページ範囲:P.1137 - P.1140

 60歳,女性.右踵部の色素斑が約2年間で11×6mmとなり受診した.臨床的に悪性黒色腫と診断し,水平方向に1cm離し,骨膜を残して切除した.病理組織学的に腫瘍の厚さは1mm未満で,各種画像検査では所属リンパ節転移,遠隔転移は認めず,病期ⅠAと診断した.治療指針に従い,センチネルリンパ節生検・後療法は行わなかった.外来で経過観察していたが,約1年半後に右鼠径リンパ節への転移をきたした.右浅鼠径リンパ節郭清術を施行し,DAV-feron療法を6クール行い,現在まで再発,転移を認めていない.病期ⅠAであっても,センチネルリンパ節生検を行う必要があると考えた.

単発型および多発型nevus lipomatosus cutaneous superficialis

著者: 佐藤寛子 ,   佐藤哲也 ,   石塚洋典 ,   中村泰大 ,   高橋毅法 ,   梅林芳弘 ,   大塚藤男

ページ範囲:P.1141 - P.1144

 症例1:32歳,女性.13歳頃に右腰部と臀裂右側に小結節が数個出現した.放置するも徐々に増大,増数した.初診時,右腰部と臀裂右側に0.5~3.0cmの小結節が集簇して局面を形成していた.症例2:36歳,男性.1年前より左臀部に腫瘤が出現し,徐々に増大した.左臀部に2.0×1.5cmの弾性軟のドーム状腫瘍あり.病理組織学的にはいずれも真皮上層から下層にかけて異所性の脂肪組織が血管の近傍あるいは周囲に増殖しており,nevus lipomatosus cutaneous superficialisと診断した.本症は多発型,単発型に分類されるが,単発型の診断は臨床像と病理組織像をあわせて十分に検討する必要があり,skin tag with fat herniation,脂肪腫(fibrolipoma,angiolipoma)との鑑別が必要である.

左右対称性の分布を呈し,急速に増大したplexiform neurofibromaを伴った神経線維腫症1型の1例

著者: 北嶋渉 ,   芝崎加奈 ,   浅井純 ,   末廣晃宏 ,   岸本三郎

ページ範囲:P.1145 - P.1147

 22歳,男性.6歳時,神経線維腫症1型と診断され,縦隔・皮膚腫瘤摘出術を受けた.初診の約1年前に左上腕と左側背部の皮下腫瘤に気づいた.それらの腫瘤が急速に増大してきたため,当科を受診した.左上腕に手拳大,左側背側に鶏卵大の弾性硬の皮下腫瘤がみられた.対称性に1年前より増大してきた直径3cm大の皮下腫瘤が右上腕,右側背部にもみられた.径15mm以上のカフェオレ斑は6個以上認めたが,cutaneous neurofibromaを思わせる結節性病変はみられなかった.左上腕部の腫瘤は橈骨神経の筋枝より派生しており,近傍には蔓状,連珠状の結節が多数みられた.病理組織像より神経線維腫症1型患者に生じたplexiform neurofibromaと診断した.

病状の進行とともに血管腫が増数したPOEMS症候群の1例

著者: 山口隆広 ,   佐藤典子 ,   中山樹一郎 ,   斉藤喬雄 ,   桐生美麿

ページ範囲:P.1148 - P.1151

 46歳,男性.初診の約1年前より全身に散在する血管腫,下肢の浮腫,手足のしびれ感を自覚し,右肺胸水を近医にて指摘されたため,当院内科を受診した.皮膚症状として軀幹,四肢に多発する血管腫,背部の色素沈着,下肢の浮腫を認めた.当科にて血管腫の生検を行ったところ,組織像はPOEMS症候群の皮膚症状として特徴的なglomeruloid hemangiomaであった.異常検査所見としてM蛋白血症,血清VEGF(vascular endothelial growth factor),IL-6高値,尿中Bence-Jones蛋白陽性がみられた.内科的所見として,各種内分泌障害,肝脾腫,末梢神経伝導速度遅延を認めた.治療は各種化学療法や血漿交換療法を行ったが,血管腫は増数し続けた.外科的療法として,手術療法とレーザー療法を行った.治療抵抗性で,低蛋白血症が原因の両側胸水による呼吸不全で死亡した.自験例は病状の進行とともに,血管腫の著明な増数を認めた治療抵抗性の症例である.

高齢で症状が明らかとなったOsler-Rendu-Weber病の1例

著者: 坪井廣美 ,   米本康蔵

ページ範囲:P.1152 - P.1154

 68歳,女性.40歳頃より週に2~3回の頻度で鼻出血,口腔内出血を繰り返し,64歳時よりタール便を年に数回認めていた.今回,貧血を認めたため,当院消化器内科に入院した.その際,手指,舌などに血管拡張がみられ,皮膚科に紹介された.初診時,口唇,口蓋,舌,手指,前胸部に斑状から丘疹状の血管拡張病変が散在していた.鼻腔,消化管,肝臓にも血管拡張を認めた.

糖尿病患者に生じた非クロストリジウム性ガス壊疽の3例

著者: 西村幸秀 ,   益田浩司 ,   末廣晃宏 ,   竹中秀也 ,   加藤則人 ,   岸本三郎

ページ範囲:P.1155 - P.1158

 症例1:50歳,男性.20歳時より糖尿病.1週間前に右足底に外傷を受け,疼痛,腫脹,排膿を認めた.症例2:43歳,女性.20歳台より糖尿病.約1週間前より左足背に腫脹,疼痛が出現し,3日前より排膿を認めた.症例3:63歳,男性.26歳時より糖尿病.約2か月前より右第1趾に水疱,潰瘍が出現し,近医にて治療されたが悪化した.3例とも糖尿病のコントロールが不良であった.3例とも初診時の足のX線像にて皮下にガス像を認めた.創部の細菌培養の結果,3例いずれにおいても好気性菌のStreptococcus agalactiase (Group B)と嫌気性菌のPrevotella biviaが検出され,好気性菌と嫌気性菌の混合感染を認めた.以上より非クロストリジウム性ガス壊疽と診断し,デブリードマンおよび抗生剤投与を行った.症例1では右下腿切断を,症例3では第2~5趾の切断を要した.

角層下膿疱症様皮疹を含め,多彩な症状を呈したマイコプラズマ感染症の1例

著者: 高塚紀子 ,   篠島弘

ページ範囲:P.1159 - P.1162

 73歳,男性.39.6℃の発熱と全身の小水疱,膿疱で受診した.漿液性丘疹,中心臍窩,膿半月,虹彩状皮疹がみられ,接触皮膚炎様,ウイルス性水疱症様,角層下膿疱症様,多形紅斑様,細菌疹様皮疹が混在した奇異な臨床像であった.全身状態は良好で,呼吸器症状はない.ミノサイクリン,ステロイド剤などにより4週後に治癒した.抗マイコプラズマ抗体1,280倍,WBC11,900/mm3,Eos28%と著増を示す.組織像は角層下および表皮内膿疱と表皮直下の著明な浮腫である.マイコプラズマ感染による皮膚症状は多彩で経過も不定であるが,膿半月を伴う角層下膿疱症様症例は過去に4例報告されている.角層下膿疱症を含め,さまざまな皮膚病変の原因としてマイコプラズマ感染症を考慮すべきである.

C2脊髄神経領域の帯状疱疹に続発したRamsay-Hunt症候群

著者: 内田敦子 ,   小阪博

ページ範囲:P.1163 - P.1165

 36歳,男性.左後頭部の帯状疱疹に対してアシクロビル750mg/日の点滴投与にて加療していた.水疱はすべて痂皮化し疼痛もほとんど消退していたが,左側末梢性顔面神経麻痺を発症し,Ramsay-Hunt症候群と診断,ステロイド大量療法により早急に治療を開始し,顔面神経麻痺は完全に回復した.帯状疱疹の治療を適切に行い,皮疹が消退したにもかかわらず,顔面神経麻痺の出現を防げなかった症例である.また,C2脊髄神経領域の帯状疱疹にRamsay-Hunt症候群が合併することは稀である.

外転神経麻痺を合併した帯状疱疹の1例

著者: 向久保寿恵 ,   石黒直子 ,   有川順子 ,   川島眞 ,   高村悦子 ,   石井敏直

ページ範囲:P.1166 - P.1169

 60歳,男性.初診の1週間前より左三叉神経第1枝領域に帯状疱疹を発症し,第3病日より複視も出現した.近医よりバラシクロビル3,000mg/日,プレドニゾロン50mg/日を投与され,第7病日に初診した.皮疹は痂皮化していたが,左方視時に左眼外転障害があり,入院のうえ精査加療とした.眼科的検索の結果,帯状疱疹に伴う偽樹枝状角膜炎,虹彩炎,強膜炎と左眼外転神経麻痺を認めた.入院後アシクロビル750mg/日を7日間点滴静注し,プレドニゾロンの投与を継続したところ,偽樹枝状角膜炎,虹彩炎,強膜炎は徐々に軽快した.プレドニゾロンは計18日間,総投与量530mgで中止し,第25病日に退院した.退院時には麻痺を除く眼症状は軽快していた.麻痺については約3か月後より急速に回復し,約6か月後にはほぼ治癒した.

臨床研究

Hair castsの診断におけるトルイジンブルー染色の有用性について

著者: 浅野雅之 ,   田畑伸子

ページ範囲:P.1171 - P.1173

 6歳,女児.半年ほど前から頭髪に,洗っても取れないふけのような白い物がみられるようになり,改善しないため受診した.初診時,頭頂部を中心として散在性に,正常な毛幹を取り囲む白色小片を認めた.そう 痒などの自覚症状を伴わず,頭皮には皮疹を認めなかった.病理組織学的観察で,ヘマトキシリンに濃染する層状の角化性構造とその内側にトルイジンブルーで染色される円柱状細胞が重層する構造を認め,hair castsと診断した.トルイジンブルーにより内毛根鞘細胞が青く染色され,診断に有用であった.

治療

陥入爪治療におけるフェノール法での圧抵時間,治癒期間,再発率の比較検討

著者: 藤森佐和子 ,   下間亜由子 ,   覚道奈津子 ,   山本純 ,   小川豊

ページ範囲:P.1174 - P.1177

 フェノール法の方法,結果について報告し,圧抵時間と創傷治癒日数の関係,諸家の報告における圧抵時間と再発率の関係を比較検討した.第Ⅰ趾陥入爪55趾でフェノール圧抵時間は70~200秒(平均130秒),創傷治癒日数は7~30日(平均15日)であった.フェノール圧抵時間と創傷治癒日数の間には,正の関係が認められ,フェノール圧抵時間と再発率の間には,負の関係が認められた.処置部位の爪甲を消滅させるには,100秒以上の圧抵が必要と思われた.

尋常性乾癬におけるマキサカルシトール軟膏とステロイド軟膏によるtopical sequential therapy―QOL評価を加えて

著者: 窪田泰夫 ,   森上徹也 ,   勝浦純子 ,   松岡由恵 ,   中井浩三 ,   横井郁美 ,   丹生名都子 ,   松田保史 ,   米田耕造

ページ範囲:P.1178 - P.1185

 尋常性乾癬患者18例を対象として,マキサカルシトール軟膏(オキサロール (R)軟膏25μg/g)とvery strongクラスのステロイド外用薬を用いたtopical sequential therapy(本稿では,外用連続療法と訳す)の臨床的有用性ならびに患者QOLに及ぼす影響について検討した.併用方法は,導入期には朝はマキサカルシトール軟膏,夜はステロイド外用薬をそれぞれ1日1回外用し,落屑や浸潤が消失すると次の移行期に移る.移行期には平日の朝と夜(もしくはどちらか1回)にマキサカルシトール軟膏を単独外用し,土日は導入期と同じく朝はマキサカルシトール軟膏,夜はステロイド外用薬を塗布した.さらに紅斑の色調が薄くなると維持期に入り,マキサカルシトール軟膏を1日1回ないし2回外用し,原則12週間の外用連続療法を実施した.皮膚症状は,PASIスコアならびに医師による全般改善度で評価した.また,FinlayらのDLQIを基に作成した質問票を用いて患者QOLを評価した.その結果,すべての評価時期において試験開始時と比較してPASIスコアの有意な改善が認められた.QOLに関しても,試験開始時に比べて外用12週後にはQOLの有意な改善が認められた.本結果より,マキサカルシトール軟膏による外用連続療法は,皮膚症状の改善ならびに患者QOLの向上に有用な外用治療法となるものと考えられた.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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