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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科60巻13号

2006年12月発行

雑誌目次

連載

Dermoscopy Specialistへの道Q&A(第33回)(最終回)

著者: 斎田俊明 ,   古賀弘志

ページ範囲:P.1193 - P.1195

Q どんなダーモスコピー所見が認められますか?

診断は何でしょう

臨床情報

 81歳,男性.若い頃から左下腹部にホクロ様の病変があった. 10年ほど前より, 徐々に増大してきた.最近,気になって引っ掻いたため,少し出血した.

 初診時,左下腹部に23×13mmの黒色局面状皮疹が認められた(図2).色調はほぼ均一で,境界明瞭である.表面はやや粗造で,左方部に黄褐色の痂皮を付す.また,皮疹周囲には淡紅色の紅斑を伴う.

原著

皮膚肥満細胞症の3例―c-kit遺伝子変異の検出例と非検出例の比較

著者: 小田真喜子 ,   藤沢智美 ,   山中新也 ,   清島真理子 ,   柳堀浩克 ,   金子史男

ページ範囲:P.1197 - P.1201

症例1:19歳,男性.初診の2年前より体幹,上肢にそう痒を伴う色素斑が増加した.症例2:4か月,女児.生後まもなくより全身に褐色の色素斑が出現した.症例3:7歳,男児.生後3か月頃より全身に丘疹が出現した.3症例ともDarier徴候陽性で,組織学的には真皮上層から中層にかけて肥満細胞が密に浸潤していた.これらの細胞はトルイジンブルー染色で異染性を示し,肥満細胞症と診断した.c-kit遺伝子の検索を行ったところ,症例1ではコドン816の変異が検出された.症例2,3では変異を認めなかった.本邦で報告されたc-kit変異検出例と非検出例について比較した.c-kit変異検出例は成人に多いが,最近では小児でもc-kit変異の検出が増えている.十分な長期臨床経過の報告例が少なく,今後の検討が必要である.

今月の症例

Verrucous malignant melanomaの2例

著者: 飛田泰斗史 ,   久保宜明 ,   井内里恵 ,   滝脇弘嗣 ,   荒瀬誠治 ,   秋田浩二

ページ範囲:P.1203 - P.1206

症例1:42歳,女性.初診の約2年前に気づいた腰部の腫瘤が,徐々に増大した.腰部右側に20×12mmの境界明瞭な黒色広基性腫瘤を認めた.表面は過角化を認め疣贅状であった.症例2:87歳,女性.左膝蓋部に20×13mmの境界明瞭な黒色腫瘤を認めた.いずれの症例も周囲への滲み出しは認められず,臨床像は脂漏性角化症に類似していた.組織像では,過角化や表皮突起の延長を伴う表皮肥厚,疣贅状構築,pseudohorn cystなど脂漏性角化症と共通した所見が認められた.異型メラノサイトは表皮真皮境界部を中心に増殖していた.両症例はverrucous malignant melanomaに一致すると考えた.臨床的に脂漏性角化症と類似する悪性黒色腫の存在を認知することは重要である.

症例報告

食物アレルギーを合併したアスピリン不耐症の1例

著者: 市橋かおり ,   北嶋渉 ,   小西啓介 ,   寺澤直子

ページ範囲:P.1208 - P.1210

40歳,男性.約2年前より蕁麻疹,アナフィラキシー様症状を繰り返していた.食物アレルギー,食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA),アスピリン不耐症などを疑い,原因検索を行った.特異的IgEは,ダニ,エビ,カニで陽性であった.アスピリン内服誘発試験にてアスピリン不耐症と診断した.アスピリン不耐症の発症機序については,アラキドン酸代謝経路におけるシクロオキシゲナーゼ阻害作用に基づくとする考え方が主体であるが,吸入抗原や食物抗原に対するI型アレルギー反応をアスピリンが増強しているとする考え方もあり,自験例でも,ダニ,エビ,カニに対する反応をアスピリンが増強した可能性も考えられた.

シクロスポリン-エトレチナート併用療法にて軽快した汎発性膿疱性乾癬の1例

著者: 坂本久美子 ,   原弘之 ,   照井正

ページ範囲:P.1211 - P.1214

64歳,男性.63歳時より尋常性乾癬と診断され,外用薬にて治療していた.初診の半年前より皮疹が膿疱化し,膿疱性乾癬の診断のもと前医でシクロスポリン(ネオーラル(R))の内服を開始し,一時軽快していた.しかし皮疹が再燃し,当院にてシクロスポリンで治療を継続したが,腎不全が進行したため,血液透析の導入と,シクロスポリンの減量を余儀なくされた.やむなくエトレチナートを併用したところ,併用療法開始後6日目に膿疱の新生が減少し始め,以後,皮疹は順調に軽快した.その後シクロスポリンを中止し,エトレチナートも漸減することができた.

免疫抑制剤と血漿交換によって軽快した成人Still病の1例

著者: 根本育恵 ,   川嶋利瑞 ,   巌文哉 ,   阿部由紀子 ,   宮本千絵 ,   山本元久 ,   鈴木知佐子 ,   高橋裕樹 ,   中村準之助

ページ範囲:P.1215 - P.1218

22歳,女性.生来健康であった.初診の1週間前から39℃台の発熱を伴って両肩に紅斑が出現し,全身に拡大した.皮疹はそう痒感を伴い自然消退傾向なく融合し,一部色素沈着,落屑を有していた.その後,咽頭痛,全身の関節痛が出現した.抗生剤に反応しない高熱,好中球優位(90%)の白血球増多,CRP上昇,フェリチン上昇,AST,ALT,LDH高値を認め,リウマチ因子・抗核抗体は陰性であった.また腹部CT,エコーにて脾腫を認めた.臨床的には定型的皮疹とは言いがたかったが,検査結果および臨床経過から成人Still病と診断した.ステロイド依存性の発熱,高度の炎症所見を認め,シクロスポリンを使用するも無効であったため,インフリキシマブ,メトトレキサートを併用した.その後,感染症を併発したため,二重膜濾過血漿交換療法を施行し軽快した.

皮膚筋炎の皮疹にタクロリムス軟膏が有効であった1例

著者: 梶田裕子 ,   清水宏和 ,   玉田康彦 ,   松本義也 ,   森下宗彦

ページ範囲:P.1219 - P.1221

40歳,女性.顔面,体幹,上腕に痒みを伴う暗紫紅色斑が出現した.臨床像,病理組織,検査所見より皮膚筋炎と診断した.皮疹はステロイド外用に難治性であったが,タクロリムス軟膏の外用により著明に改善した.

強皮症を合併したKlinefelter症候群に生じた難治性下腿潰瘍の1例

著者: 西井倫子 ,   柳下武士 ,   三笠聖美 ,   水谷建太郎 ,   渡辺大輔 ,   玉田康彦 ,   松本義也 ,   室慶直

ページ範囲:P.1222 - P.1224

56歳,男性.3年前より左下腿外果部に潰瘍が出現し,植皮術を施行したが完治せず,再発を繰り返していた.入院精査にて精神遅滞,左右精巣の小指頭大と萎縮があり,染色体検査にて核型48,XXYY/47,XXYを検出し,Klinefelter症候群と考えた.また手指と下肢の硬化,抗セントロメア抗体,抗核抗体が認められ,全身性強皮症(SSc)を合併していた.以上よりSScを伴ったKlinefelter症候群に合併した下腿潰瘍と診断した.ワーファリン(R)の内服と潰瘍部のデブリドマン,ラップ療法により良好な肉芽形成がみられ,潰瘍の縮小がみられている.

右膝窩と右頸部の片側性に出現したHailey-Hailey病の1例

著者: 後藤由香 ,   櫻井英一 ,   渡部大輔 ,   赤坂俊英 ,   佐々木豪

ページ範囲:P.1225 - P.1227

37歳,男性.右膝窩と頸部右側にのみそれぞれ鶏卵大,鳩卵大のびらんを有する湿潤性紅斑局面が限局したHailey-Hailey病.皮膚モザイク症の分類では片側型に,遺伝形式では1型に相当すると考えた.治療はマキサカルシトール外用が無効であり,ステロイド内服,タクロリムス軟膏外用の併用に変更したところ,皮疹は改善した.現在はタクロリムス軟膏外用のみで,再燃はみられない.

膀胱腫瘍に対するBacillus of Calmette and Guerin治療によりGibertばら色粃糠疹様の皮疹を生じた1例

著者: 宇宿一成

ページ範囲:P.1228 - P.1230

65歳,男性.膀胱腫瘍に対してBacillus of Calmette and Guerin (BCG)製剤の膀注を受けた.治療の翌日より腹部に痒みを伴う紅斑が出現し,次第に胸腹部,背部,四肢に拡大した.初診時,体幹・四肢に拇指頭大までの紅斑が散在し,Gibertばら色粃糠疹を思わせた.病理組織学的には表皮基底層の液状変性と表皮への細胞浸潤,真皮上層から中層にかけての著明な浮腫と血管周囲性の炎症細胞浸潤,赤血球の漏出がみられた.BCG製剤の使用中止と,ステロイド全身投与および外用により皮疹は2週間で改善した.薬剤貼布試験で,48時間,72時間後ともに陽性で,Gibertばら色粃糠疹型の薬疹と考えた.

陰茎縫線囊腫の1例

著者: 服部令子 ,   足立秀禎 ,   安藤浩一 ,   原一夫

ページ範囲:P.1231 - P.1233

54歳,男性.1年前より陰茎縫線上に4mm大,表面平滑で透明な囊腫様外観を呈する小結節に気づいていた.組織学的に,表皮との連続性がない単房性皮内囊腫を認めた.囊腫壁は1~2層の立方上皮よりなり,壁の内腔側に断頭分泌を認めない.免疫組織化学で囊腫壁はCEA染色陽性であるが,S-100蛋白とα-smooth muscle actin染色陰性であった.これらより陰茎縫線囊腫と診断した.

巨大皮下皮様囊腫の1例

著者: 伊藤康裕 ,   上原治朗 ,   飯塚一

ページ範囲:P.1234 - P.1236

50歳,男性.幼少時から後頭部の自覚症状のない結節に気づいていた.結節は徐々に増大し,初診時には15×12×6cmに達し,患者は腫瘍を隠すため頭髪を長く伸ばしていた.CT上,腫瘍は骨直上にあり,全身麻酔下に全摘した.病理組織学的には囊腫壁の大部分は肉芽組織で置換され,囊腫内に毛髪断面がみられたが皮膚付属器は消失していた.

穿孔性環状肉芽腫の1例

著者: 大内結 ,   木花いづみ ,   栗原誠一

ページ範囲:P.1237 - P.1240

47歳,女性.基礎疾患はない.2004年6月より腰部にそう痒の強い皮疹が出現し,胸部,背部にも拡大した.胸部,背部,腰部の下着の圧迫を受ける部位に淡紅色,小豆大までの扁平隆起した丘疹が多発,集簇し,手掌大までの局面を呈していた.局面は中心治癒傾向を示し,辺縁の丘疹の多くは中央に痂皮を付着していた.病理組織では変性した膠原線維の排出とpalisading granulomaの像がみられた.また両膝,右母指,中指に環状肉芽腫の定型疹を認め,体幹の局面は環状肉芽腫の非定型疹の一つである穿孔性環状肉芽腫と診断した.ステロイド外用,トラニラスト内服により軽快しつつある.穿孔性環状肉芽腫の本邦報告例30例についてまとめた.

大腿部に生じたnevus lipomatosus cutaneous superficialisの1例

著者: 大川毅 ,   三砂範幸 ,   井上卓也 ,   成澤寛

ページ範囲:P.1241 - P.1243

11歳,男児.生下時より右大腿内側に常色の局面があった.成長に伴い徐々に拡大し,黄色調を呈するようになった.当科を受診し,局所麻酔下に切除した.切除標本では表皮は乳頭腫状に増殖しており,表皮突起も不定形であったが,表皮の肥厚などはみられなかった.真皮膠原線維の間に割り込むように脂肪組織が増殖していたが,脂肪細胞は成熟しており,異型性はなく,表在性皮膚脂肪腫性母斑と診断した.

基底細胞母斑症候群の1例

著者: 蘇原しのぶ ,   高須博 ,   勝岡憲生

ページ範囲:P.1244 - P.1247

37歳,男性.1歳9か月時に髄芽腫の手術歴がある.15歳時より全身性間代性痙攣が生じ,脳神経外科に通院している.27歳時,頭皮に小豆大までの弾性軟の結節が多発していることを指摘された.前頭突出,外斜視,鼻根部の開大があり,そのほかに下顎囊胞,異所性石灰化を認めた.38個の結節の切除を施行し,組織学的に基底細胞上皮腫のほかに毛包上皮腫を多数認めた.多彩な臨床所見を呈した基底細胞母斑症候群の1例を報告した.

多指症と先天性股関節脱臼,鼻翼の変形を合併したnasal glial heterotopia(いわゆるnasal glioma)の1例

著者: 佐藤まどか ,   竹内真

ページ範囲:P.1248 - P.1251

4か月,女児.出生時より鼻根部に紅色腫瘤があり当科を受診した.初診時,鼻根部からやや左内眼角寄りに8×6mmの硬い紅色調の結節を認めた.鼻根部は幅広く,皮下腫瘤が触知された.左鼻翼の変形も認められた.そのほかに生下時より右母指多指症,先天性左股関節脱臼が認められた.頭部CTにて腫瘍実質は頭蓋内とは連続性のないことが確認された.3歳時に全身麻酔下にて全摘出した.病理組織検査にてnasal glial heterotopiaと診断した.

前立腺癌皮膚転移の1例

著者: 八百坂遵 ,   中村裕之 ,   橋本晃佳

ページ範囲:P.1252 - P.1254

78歳,男性.2005年1月初め頃から腹部右側に腫瘤性病変が出現し,その周囲にも腫瘤が出現してきたため,当科を初診した.臨床的に転移性皮膚癌などを考え,腹部右側腫瘤より生検した.また,下腹痛・血尿を主訴に当院泌尿器科を受診し,血清PSA高値を認め,病理学的所見とともに前立腺癌と診断された.骨・リンパ節および肺・胸膜への転移を認めた.皮膚生検標本のPSA染色で陽性所見が得られ,前立腺癌の皮膚転移と診断した.内分泌療法が導入され,皮膚腫瘤は縮小した.

皮膚浸潤で診断された原発性乳癌の1例

著者: 鈴木由貴 ,   北見由季 ,   末木博彦 ,   飯島正文 ,   澤田晃暢

ページ範囲:P.1255 - P.1257

73歳,女性.約1年前より左前胸部に小結節が出現し,徐々に増大した.初診時,左前胸部に42×34mmのドーム状に隆起する弾性硬の皮内から皮下結節がみられ,下床と癒着していた.表面は紅色調で毛細血管拡張を伴い,中央は軽度陥凹し,痂皮を付着していた.転移性皮膚腫瘍を考え,生検した.組織所見では腫瘍細胞が胞巣状・索状に増殖し,一部に管腔構造を伴っていた.発症部位より乳癌との関連を疑った.胸部CT,マンモグラフィ所見より原発性乳癌と診断し,左胸筋温存乳房切除術を施行した.術後は内分泌療法を施行中である.

巨大皮膚腫瘤より発見された後腹膜腔原発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の1例

著者: 飯塚さとし ,   氏家英之 ,   夏賀健 ,   冨田幸希 ,   加藤直子 ,   鈴木宏明 ,   山城勝重

ページ範囲:P.1258 - P.1261

86歳,男性.軀幹および四肢に多発する紅色腫瘤のため受診した.病理組織学的に真皮から皮下脂肪織に腫瘍細胞が稠密に増殖し,腫瘍巣と表皮との間にはGrenz zoneがみられた.腫瘍細胞は異型で大型のcentroblast様細胞でCD20,CD79aが陽性であった.表在リンパ節の腫脹はなかったが,全身精査で後腹膜腔に径9cm大の腫瘤を認めた.このため,皮膚腫瘤は後腹膜腔原発のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の皮膚浸潤と診断した.全身状態が不良で,後腹膜腔腫瘍と皮膚腫瘍に対する放射線照射療法のみを施行していたが,呼吸状態が徐々に悪化し,永眠した.剖検で後腹膜腔左腎周囲,肝門部,心膜,右副腎周囲,腸間膜リンパ節などにDLBCLの浸潤を認めた.

CD10が陽性を示したatypical fibroxanthomaの1例

著者: 氏家英之 ,   加藤直子 ,   夏賀健 ,   冨田幸希 ,   皆川英彦 ,   舟山恵美 ,   國分一郎

ページ範囲:P.1262 - P.1264

79歳,男性.右耳前部に暗赤色でドーム状,表面にびらんを伴う腫瘍を認めた.病理組織学的に,表皮直下から真皮内に結節状の腫瘍塊があり,大小不同の核を有する紡錘形の線維芽細胞様細胞に加えて,異型な核を有する組織球様細胞や多核巨細胞により構成されていた.線維芽細胞様の細胞は,免疫組織学的にS-100蛋白と抗サイトケラチン抗体が陰性であったが,vimentinとCD10が陽性であった.atypical fibroxanthoma (AFX)と診断した.拡大切除後の4か月間に再発を認めていない.近年,CD10がAFXに対して感度の高い新たなマーカーとして報告されている.

環状丘疹性梅毒疹の1例

著者: 小坂素子 ,   新見やよい ,   齋藤裕 ,   川名誠司

ページ範囲:P.1265 - P.1268

34歳,男性.2か月前より頸部に自覚症状のない皮疹が出現した.ステロイド薬を外用したが皮疹が拡大したため,当科を紹介された.初診時,頸部に辺縁が堤防状に隆起し,中央に色素沈着を伴う環状の皮疹と環状に配列する丘疹を認めた.また,頭部に虫喰い状の脱毛を認めた.血液検査にてガラス板法128倍,TPHA10,240倍であった.病理組織所見では,真皮上層から中層の血管周囲に,多数の形質細胞を含む炎症性細胞浸潤を認めた.臨床所見,組織所見,血液検査より環状丘疹性梅毒疹と診断した.ベンジルペニシリンベンザチン150×104単位/日を内服し,約1か月で皮疹,脱毛は改善した.

外科的治療が奏効したクロモミコーシスの1例

著者: 永田弥生 ,   鈴木利宏 ,   五月女聡浩 ,   籏持淳 ,   山﨑雙次 ,   小池宰子 ,   平賀剛

ページ範囲:P.1269 - P.1271

36歳,男性.栃木県出身.2003年10月頃から外傷の既往なく,右上腕に鱗屑・痂皮を伴った小紅斑局面が出現した.前医でステロイド外用するも改善せず,真菌感染症などが疑われたため,2004年10月28日当科へ紹介受診となった.初診時,右上腕に径2cm大の鱗屑を伴う紅斑局面を呈していた.KOH法,病理組織にてsclerotic cellを認めた.巨大培養,スライドカルチャーからFonsecaea pedrosoiと同定した.胸腹部造影CTにて異常所見はなかった.病変の大きさから外科的治療法の適応と考え,単純切除術を施行した.術後8か月後の現在,再発はみられていない.

クロバエによる皮膚蠅蛆症の1例

著者: 斉藤絵里子 ,   守田亜希子 ,   勝田倫江 ,   塩原哲夫

ページ範囲:P.1272 - P.1275

34歳,男性.約1週間のエチオピア滞在中,左上腕外側および右側腹部にそう痒を伴う虫刺症様皮疹を自覚し,その際に一過性の39℃台の発熱があった.帰国3日後より同部位がせつ様となったため,患者自ら左上腕の刺入部と思われる中央潰瘍部を圧迫し,約5mm長の虫体を摘出した.初診時,右側腹部の皮疹からも虫体が摘出され,同部を生検した.病理組織学的に中央潰瘍部から真皮浅層にかけ連続性のトンネル形成を認めたが,新たな虫体は検出されなかった.一方,摘出された虫体はクロバエ科に属する蠅蛆(Calliphoridae)であると同定され,皮膚蠅蛆症と診断した.本症の既報告例の多くは海外で感染し帰国後に発症することから,海外渡航に伴う本症の発症には注意すべきである.

治療

RxH4(ハイドロキノン含有化粧品)の色素沈着症に対する有用性の検討

著者: 川島眞 ,   RxH4研究班

ページ範囲:P.1277 - P.1287

色素沈着症の治療としてハイドロキノンを配合した製剤は,その有効性において一定の評価がなされているが,安定性や刺激性の面で課題も多い.RxH4は,ハイドロキノンを4%配合し,安定性(室温3年)と安全性を高めた製剤(美容液)であり,本剤の各種色素沈着症に対する臨床評価を3試験にて行った.一つは肝斑(50例)に対するハイドロキノン無配合対照品とした二重盲検左右比較試験を行い,左右比較において有意に優れる結果(p<0.01)が得られた.中等度改善以上40.9%,軽度改善以上68.2%の改善率であった.同時に老人性色素斑(47例),炎症後色素沈着症(10例),雀卵斑(5例),肝斑(4例)の計66例に対して一般臨床試験を行い,中等度改善以上64.4%,軽度改善以上91.5%の改善率であった.一方,副作用による中止は,4例(3.5%:紅斑,接触皮膚炎,ざ瘡)認められたが重症例はなく,パッチテストでも感作性は確認されず,中止ないし処置を行うことにより消失した.さらに他の美容治療との併用時の安全性を検討したが,特にバリア機能の低下するレチノイン酸との併用時には皮膚状態をみながら注意深く使用すべきことが確認された.

印象記

「第7回 International Congress on Cutaneous Adverse Drug Reactions (CADR)」に参加して

著者: 浅野祐介

ページ範囲:P.1288 - P.1289

 2006年9月6日,フランス・パリで行われた第7回International Congress on Cutaneous Adverse Drug Reactions (CADR)に参加してきました.ダン・ブラウン著のベストセラー『ダ・ヴィンチ・コード』が,ロン・ハワード監督,トム・ハンクス主演で映画化された数か月後の訪問であり,その主舞台であるルーブル美術館が位置するパリは,その芸術性と神秘性がいっそう華やかさを増している印象でした.例年,秋になると曇りがちになり肌寒くなると聞いて,一抹の不安を抱いて旅立ちましたが,筆者らを迎えたのは雲一つない晴天と,半袖でも汗ばむほどの陽気でした.

 さて,このCADRはEuropean Society for Dermatological Research(ESDR)のSatellite Meetingsの一つとして,1994年より隔年で催されています.予定された4人のうち,欠席されたBrunhilde Blömeke教授を除くMaja Mockenhoupt教授,Philippe Musette教授,Jean-Claude Roujeau教授の3人のオーガナイザーにより,今回はナポレオンの遺骨が眠るInvalidesから近いMaison de la Chimieで開催されました.なかでも中心的な役割をされていたJean-Claude Roujeau博士は,パリ第7大学医学部皮膚科の主任教授で,それまで独立した疾患として考えられていたDDS症候群,Carbamazepine induced hypersensitivity syndrome, Alloprinol induced hypersensitivity syndromeなどを統一し,Hypersensitivity syndromeと称する疾患概念として提唱し,これにより薬剤性過敏症症候群(drug-induced hypersensitivity syndrome:DIHS)という重症薬疹の一型を確立するに至った薬疹の第一人者です.これにとどまらず,中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis:TEN),Overlap syndrome,Stevens-Johnson syndrome (SJS),を一連の病態として捉え,detachmentの面積による分類を行うなど,業績は枚挙にいとまがありません.現在はその指導力の下で,欧州に薬疹のネットワーク(RegiSCAR group)を作り上げ,薬疹に関し数々のStudyを世界に報告しておられ,CADRそのものも,彼の発声から始まり,今回で7回目を数えるに至っています.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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