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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科60巻2号

2006年02月発行

雑誌目次

連載

Dermoscopy Specialistへの道Q&A(第23回)

著者: 斎田俊明 ,   古賀弘志

ページ範囲:P.109 - P.111

Qどんなダーモスコピー所見が認められますか?

診断は何でしょう

臨床情報

 53歳,女性.約1年前に右足背に黒色調の小結節が生じているのに気づいた.その後,徐々に増大し,少し出血することが何度かあった.

 初診時,右足背に径3×2mmの,ドーム状から台状に隆起する黒色小結節が見いだされた(図2).周囲に色素斑は認められない.

今月の症例

免疫不全患者にみられたサイトメガロウイルスによる肛門周囲潰瘍の1例

著者: 川合さなえ ,   山中新也 ,   藤沢智美 ,   清島真理子

ページ範囲:P.113 - P.116

要約 75歳,女性.膠原病関連間質性肺炎でプレドニゾロン40mg/日,シクロスポリン25mg/日を内服中,肛門周囲に疼痛を伴うびらん・潰瘍が出現した.血中サイトメガロウイルス(CMV)アンチゲネミア陽性,潰瘍辺縁の皮膚病理組織で真皮の血管内皮に封入体をもつ大型で不整形な細胞を認め,また皮膚組織PCR法でCMV DNAを検出した.これらの所見より,肛門周囲に形成されたびらん・潰瘍はCMV感染に伴うものと考えた.症状発現約1か月後に心筋梗塞で死亡した.皮膚CMV潰瘍は,比較的稀であるが致死的な経過をたどることが多い.免疫不全患者に生じた潰瘍性病変をみた場合,特に外陰部・肛門周囲では本症の可能性を念頭に置き,早期に診断,治療することが重要である.

症例報告

水疱を呈し口腔内病変を伴った持久性隆起性紅斑

著者: 大西正純 ,   佐藤彩子 ,   森康記 ,   赤坂俊英 ,   須藤守夫

ページ範囲:P.117 - P.120

要約 59歳,女性.四肢,腋窩などの特に物理的刺激を受ける部位に地図状,あるいは環状の浸潤性紫紅色斑を,軀幹には紅色小結節と小水疱を集簇して認めた.また,口腔内病変がみられた.病理組織学的に表皮真皮境界部の好中球を入れる裂隙,真皮の核破壊性血管炎で,持久性隆起性紅斑と診断した.5年後の皮疹は浸潤性紫紅色斑が主体となり,病理組織像は滲出性変化は減少し,フィブリン沈着と著しい核破壊性血管炎の像を呈していた.

好酸球性海綿状態を伴った表在播種型汗孔角化症

著者: 柳生理映子 ,   田中正人 ,   戸倉新樹

ページ範囲:P.121 - P.123

要約 89歳,男性.B型慢性肝炎に罹患している.四肢に瘙痒を伴う角化性隆起性皮疹が多発し,個疹は徐々に遠心性に拡大するとともに,体幹にも出現するようになった.両下肢,両前腕を中心に直径3~15mmの淡紅色から茶褐色の孤立性丘疹ないし円形皮疹が播種状に散在し,一部の皮疹は環状の堤防状隆起を呈した.病理組織学的に皮疹辺縁部表皮に錯角化円柱を認め,直下の真皮上層にリンパ球を中心とする細胞が浸潤し,表在播種型汗孔角化症と診断した.本症例に特徴的なこととして,錯角化円柱に近接して好酸球性海綿状態がみられ,好酸球の集塊する好酸球性微小膿瘍も観察された.

右下肢先天性皮膚欠損症の1例

著者: 寺内雅美 ,   中束和彦

ページ範囲:P.124 - P.126

要約 生後6日目,男児.出生時より右下腿前面に皮膚欠損がみられた.欠損部には水疱を認めず境界明瞭な暗赤色の薄い膜様組織に被覆されていた.先天性表皮欠損症と診断し,保存的に処置を行ったところ,25日目に上皮化した.以後経過観察を行っているが,瘢痕は目立たなくなり拘縮も出現していない.近年の創傷治療に関する進歩を考慮し,幼若期の皮膚障害は保存的療法が推奨される.

塩酸ジルチアゼムによるacute generalized exanthematous pustulosisの1例

著者: 井岡奈津江 ,   野田智子 ,   上田英一郎 ,   加藤則人 ,   岸本三郎

ページ範囲:P.127 - P.130

要約 69歳,女性.高血圧,狭心症にて内科通院中.乾癬の既往はない.背部より瘙痒・紅斑が出現し急速に全身に拡大,胸部には膿疱が散在し,38℃台の発熱,白血球数およびCRPの上昇を伴った.胸部の膿疱を皮膚生検し,好中球主体の角層下膿疱を認めた.感染症,薬疹を考え,内科医の承諾を得て内服薬を中止した.抗生物質,ステロイドの全身投与を開始したところ,症状は軽快した.内服薬のパッチテスト,スクラッチパッチテストにてへルベッサーR (R)で陽性,成分パッチテスト,スクラッチパッチテストにて塩酸ジルチアゼムで陽性であった.塩酸ジルチアゼムによるacute generalized exanthematous pustulosis (AGEP)と診断した.塩酸ジルチアゼムによるAGEPの報告例は,現在まで本例を含め2例である.

腎障害を合併したDDS症候群の1例

著者: 森本朝子 ,   高井利浩

ページ範囲:P.131 - P.133

要約 67歳,女性.2003年8月末頃より,体幹,四肢に瘙 痒性紅斑が出現し,抗アレルギー剤内服およびステロイド外用にて治療したが軽快しないため,レクチゾール(R)内服を開始した.内服開始の約1か月後,発熱と全身の紅色丘疹が出現し,検査所見では肝障害を認めたため,レクチゾール(R)によるDDS症候群と診断し,内服中止のうえステロイド療法を施行した.その後,皮膚症状および肝障害は軽快したが,遅れて腎障害が出現してきた.ステロイド内服の増量後,腎機能は改善傾向を認め,全経過4か月でステロイド内服を中止した.

比較的少量のステロイド全身投与が奏効したカルバマゼピン(テグレトール(R))によるTEN型薬疹の1例

著者: 倉田ふみ ,   竹中祐子 ,   黒瀬信行

ページ範囲:P.134 - P.137

要約 31歳,男性.2002年7月より統合失調症に対し,多種の薬剤が投与されていた.2003年1月よりカルバマゼピンの内服を開始した.1週間後より発熱,ほぼ全身の紅斑,水疱,びらんが出現し,当科を受診した.Nikolsky現象が顕著であり,水様性下痢,肝機能障害を伴い,口腔内にびまん性のびらんを認め,味覚障害も併発し,生検にて表皮の変性・壊死,水疱形成がみられた.プレドニン(R)30mg/日の全身投与にて速やかに軽快した.DLSTおよびパッチテストにてカルバマゼピンが陽性所見であった.

血清亜鉛補正療法併用が有効であった水疱性類天疱瘡の1例

著者: 相楽玲 ,   山本真里 ,   永田茂樹

ページ範囲:P.138 - P.141

要約 64歳,女性.くも膜下出血後の後遺症のためうつ状態になり,初診の半年前より経管栄養を開始した.1か月半前から両手足の紅斑と軀幹,四肢に水疱が出現し,前医にて水疱性類天疱瘡(bullous pemphigoid:BP)と診断された.プレドニゾロン(PSL)25mg/日の内服で治療を開始,皮疹が軽快し減量された際,手足の皮疹が再燃した.PSL50mg/日に増量後も皮疹が軽快しないため,当科を紹介された.初診時,両外眼角,両口角,下顎,両耳介に拇指頭大までの境界明瞭な暗紅色紅斑が散在し,瘙 痒がみられた.両手掌,足底には潮紅を認め,拇指頭大の水疱,びらんが混在していた.即日,水疱部より皮膚生検を施行し,病理組織学的所見はBPに合致していた.血液検査所見では血清亜鉛が22μg/dlと低値であった.PSL30mg/日に減量し,ポラプレジンク150mg/日の内服を追加したところ皮疹が速やかに軽快し,PSL5mg/日まで減量,維持できた.以上より,本症例を亜鉛欠乏が難治の原因であるBPの1例と考えた.

禁煙指導および塩酸ミノサイクリン内服が著効したMelkersson-Rosenthal syndromeの1例

著者: 小松俊郎 ,   高橋和宏 ,   赤坂俊英

ページ範囲:P.142 - P.144

要約 82歳,男性.初診の約20年前より上口唇の腫脹を繰り返し,近医にて加療されていたが改善しなかった.初診時,上口唇の腫脹と皺襞舌を認めた.歯科金属パッチテストはすべて陰性であった.病理組織学的に真皮の浮腫,solar elastosis,炎症細胞浸潤があり,肉芽腫性変化はみられなかった.不全型Melkersson-Rosenthal syndromeと診断した.ステロイド軟膏外用と抗アレルギー薬内服のみには反応せず,禁煙と塩酸ミノサイクリン内服で著明に改善した.

眼症状より診断に至ったGroenblad-Strandberg症候群の1例

著者: 鶴見純也 ,   大塚勤

ページ範囲:P.145 - P.147

要約 53歳,女性.1か月前からの左眼視力低下にて当院眼科を受診した.両側網膜色素線条,左眼底黄斑出血と診断された.3年前からの頸部の皮疹もあるため,Groenblad-Strandberg症候群を疑われ,皮膚所見の精査のため当科を紹介され受診した.初診時,両側頸部に楕円形の弾性軟の黄色丘疹が多数認められた.組織所見では真皮中深層に多数の糸屑状の好塩基性物質の集塊が帯状に沈着しており,elastica van Gieson染色で黒褐色に染色され,断裂した弾性線維であることが確認された.蛍光眼底造影で両眼網膜色素線条,左眼網膜下出血・浮腫を認めた.以上より,眼症状を合併した弾力線維性仮性黄色腫,Groenblad-Strandberg症候群と診断した.病型と重症度との関連,病因について文献的考察を加えた.

非典型的な皮疹を伴い急性増悪した皮膚筋炎の1例

著者: 吉澤奈穂 ,   田中京子 ,   樹神元博 ,   藤本篤嗣 ,   山上淳 ,   杉浦丹

ページ範囲:P.148 - P.151

要約 68歳,男性.1か月前より顔面に暗赤色斑が出現した.前額部,鼻背~鼻唇溝部に暗赤色斑を認め,頸部,上背部,上肢には紅色小丘疹が集簇した局面を形成していた.搔破痕に一致して紅色丘疹が並ぶKöbner現象もみられた.抗核抗体陽性,CPK,アルドラーゼ(ALD)の高値を認め,皮膚筋炎と診断した.皮疹の出現より半年後,長時間の歩行を契機に顔面の浮腫,筋力低下が出現し,同時にCPK9,062IU/l,ALD42.0IU/lと皮膚筋炎の急性増悪をきたした.症状増悪時には眼瞼部の紫紅色斑や上背部のscratch dermatitis,Gottron徴候など皮膚筋炎に特徴的な皮疹もみられたが,初診時の皮疹は丘疹が集簇しており,粘液水腫性苔癬も鑑別疾患として考えられた.

慢性膵炎に伴った皮下結節性脂肪壊死症の1例

著者: 池滝知 ,   伊藤明子 ,   伊藤雅章 ,   中村潤一郎 ,   栗田聰 ,   鈴木健司

ページ範囲:P.152 - P.155

要約 76歳,男性.60歳時に急性膵炎の既往と,日本酒3合/日の飲酒歴がある.約2か月前より両下腿と両足背に複数の皮下結節,右手環指・小指と左膝関節に疼痛,発赤および腫脹が出現した.血清・尿中アミラーゼ,リパーゼ,エラスターゼの高値と,X線で右手の環指・小指に骨破壊像あり.皮下結節の病理組織像で,脂肪壊死像を伴う皮下脂肪織炎を認めた.慢性膵炎の急性増悪に伴った皮下結節性脂肪壊死症と診断し,蛋白分解酵素阻害薬の投与で,各膵酵素値の低下と皮疹の消退をみた.

陰囊 陰茎切断を要したFournier壊疽の2例

著者: 斉藤まり ,   服部浩明 ,   池田政身 ,   小島圭二

ページ範囲:P.156 - P.158

要約 症例1:79歳,男性.陰囊の疼痛,発熱を主訴に受診した.前立腺癌,糖尿病がある.初診時,下腹部から陰囊に発赤腫脹があり,陰囊に壊死組織を認めた.CTにて陰囊から下腹部にかけて皮下組織内にガス像がみられた.創部よりStreptococcus oralis, Peptostreptococcus prevotii, Gram Positive bacilliが検出された.症例2:60歳,男性.陰囊の発赤,疼痛を主訴に受診した.糖尿病,アルコール性肝障害がある.初診時,下腹部から陰囊にかけて発赤腫脹があり,陰囊は全体が黒色調壊死となっていた.創部よりEnterococcus fecalis, Gram positive bacilliが検出された.2症例とも広範囲デブリードマンと陰囊陰茎郭清術施行,抗生剤などを用い全身状態が改善したあと植皮術を行った.陰茎陰囊切除を要したが,救命しえた.

歯科治療後に著明に改善した汎発性脱毛症の1例

著者: 大塚篤司 ,   江川形平 ,   谷崎英昭 ,   庄司聖 ,   高垣謙二

ページ範囲:P.159 - P.161

要約 58歳,女性.汎発性脱毛に対し,squaric acid dibutylester (SADBE)療法を含めた複合的な治療を2年間継続し脱毛症の改善はみられなかったが,歯科治療後著明に改善した.脱毛症の発症には精神的ストレスが関与し,各種の自己免疫疾患の合併や,アトピー素因をもつ患者が多いとされている.本疾患の病巣感染,特に齲歯の合併は古くから報告されている.自験例を含め歯科治療後に脱毛症が改善した報告があることを考慮すると,脱毛症の病因として病巣感染,特に歯性病巣の関与は検討すべき項目であると考える.

色素性乾皮症D群の1例

著者: 小野藤子 ,   上出良一 ,   森脇真一

ページ範囲:P.162 - P.164

要約 3歳,女児.二卵性双生児の妹.血族結婚および血族内に同症はない.生後3か月頃より日光曝露後,露出部皮膚に紅斑を生じ,時に水疱を形成し,3~4日で落屑を生じて軽快することを繰り返していた.初診時,顔面を含む露光部皮膚には紅斑,雀卵斑様色素斑,毛細血管拡張や乾皮症はみられなかった.運動の拙劣さと構音の遅れがあるものの,病的な遅れはなかった.UVB照射後の最少紅斑量は24時間後に19.5mJ/cm2と低下し,72時間後では6.5mJ/cm2とさらに低下しており,紅斑反応の遅延がみられた.患者皮膚由来培養線維芽細胞の紫外線照射後の不定期DNA合成能は有意な低下(正常の35%)を示し,プラスミド宿主細胞回復を指標としたXP相補性試験では,XPD遺伝子を導入したときのみDNA修復能の回復を認めた.以上の臨床所見,検査結果から本症例を色素性乾皮症D群と診断した.サンスクリーンを含む厳重な光線防御にて経過観察中である.

母指爪下に生じたverrucous carcinomaの1例

著者: 山中快子 ,   加藤直子 ,   谷村心太郎 ,   田村あゆみ

ページ範囲:P.165 - P.167

要約 70歳,男性.2か月前に左母指爪囲に腫脹,疼痛が出現した.臨床および病理組織学的所見からverrucous carcinomaと診断した.全身検索で転移の所見はなく,末節骨関節離断術を施行した.爪下に生じた例は稀であり,これまでに6例の報告があるのみである.

右腋窩の乳房外Paget病の1例

著者: 神林靖子 ,   小島実緒 ,   福永有希 ,   竹内瑞恵 ,   川口博史 ,   碇優子

ページ範囲:P.168 - P.170

要約 78歳,男性.直腸癌の既往歴がある.1年前より右腋窩に瘙痒感のある皮疹が出現した.徐々に増大し,当科を紹介された.右腋窩に径3cm,褐色から赤色の辺縁不整な色素斑が認められ,その辺縁部には軽度の脱色素斑もみられた.生検でPaget病と診断したが,腫瘍周囲の脱色素斑部には腫瘍細胞はみられず,また,対側腋窩の軽度の脱色素斑と皮疹のない外陰部の生検でも腫瘍細胞は認めなかった.右腋窩は切除後植皮にて再建した.術後10か月現在,再発はない.腋窩の乳房外Paget病は外陰部の乳房外Paget病の際に偶発的に見つかることがあるが,腋窩のみに認められた例は比較的稀と思われる.

A-Cバイパス手術のための両側大伏在静脈抜去後に生じた血管肉腫の1例

著者: 大原夕佳 ,   中川秀己 ,   松尾光馬 ,   本田まりこ

ページ範囲:P.171 - P.174

要約 74歳,女性.10年前に両側大伏在静脈を使用したA-Cバイパス手術後より,両下腿に浮腫がみられるようになった.2002年12月頃より左下腿に紫紅色丘疹が出現し,徐々に増加してきた.打撲などの既往はない.2003年1月に近医を受診し抗菌薬の投与を受けたが,腫脹および疼痛が増強してきたため,当科を紹介された.病理組織学的所見,免疫組織化学的所見より血管肉腫と診断した.本人および家族が侵襲の伴う治療を希望せず,緩和的X線照射を行った(左下腿中央部計55Gy,左踵部計30Gy,左膝計39Gy).しかし,照射を行っていない下腿後面を中心に腫瘍の新生がみられ,全照射終了後21日目の胸部CTにて右下肺野に転移が認められた.その後,ドセタキセルweekly療法を行ったが,癌性胸膜炎にて9月7日に永眠された.

胆囊癌の臍転移の1例

著者: 高畑ゆみ子 ,   小笠原弓恵 ,   奥田未加子 ,   内平美穂 ,   濱本嘉昭 ,   武藤正彦 ,   良沢昭銘

ページ範囲:P.175 - P.177

要約 69歳,女性.初診の18年前より胆石症を指摘されたが自覚症状がなく放置していた.初診の約4か月前に腹痛と臍部に小豆大の紅色小結節を認め,CTおよび腹部超音波検査にて胆囊癌と診断した.臍部の紅色小結節の病理組織診断は腺癌であった.胃幽門部狭窄のため,原発巣の生検は不可能で組織型は不明であったが,皮膚生検の結果から原発巣の組織型が推測でき,治療法の選択に役立った.胆囊癌の皮膚転移は比較的稀であり,本邦ではこれまでに16例が報告されている.臍部腫瘤は内臓癌発見の唯一の手がかりとなることもあり,日常診療において常に念頭に置く必要があると考えた.

皮膚病変を有さず脊椎に病変がみられた悪性黒色腫の1例

著者: 吉澤奈穂 ,   田中京子 ,   藤本篤嗣 ,   杉浦丹 ,   山下裕

ページ範囲:P.178 - P.180

要約 58歳,女性.3か月前より右上肢のしびれ,筋力低下が出現した.第6頸椎の骨破壊性の腫瘍が脊髄を圧迫していた.頸椎除圧固定術を施行し,病理組織学的に悪性黒色腫と診断した.全身検索で腰椎,肺,肝臓にも多発性の病変がみられた.脊髄に病変はなく,髄液中の細胞疹も悪性所見はみられなかった.全身の皮膚,粘膜に病変を認めなかったが,脊椎原発の悪性黒色腫は現在までに報告がない.原発巣の自然消退や,腸管や皮下原発の可能性も考えられた.

Hepatocyte paraffin1(Hep Par1),α-fetoprotein (AFP)免疫染色により診断しえた肝細胞癌皮膚転移の1例

著者: 小山哲史 ,   宮田奈穂 ,   樹神元博 ,   杉浦丹 ,   寺田忠史

ページ範囲:P.181 - P.183

要約 86歳,男性.肝細胞癌で当院入院中,右側胸部に径45×43mm大,ドーム状に隆起する弾性硬の腫瘤を認めた.下床との可動性は不良であった.病理組織学的に線維性の間質に囲まれた腫瘍塊を認め,腫瘍は好酸性に染まる細胞と,細胞質が澄明な細胞で構成されていた.肝細胞癌に感度,特異性が高いhepatocyte paraffin 1 (Hep Par1),AFP免疫染色が陽性であり,clear cell typeの肝細胞癌の皮膚転移と診断した.Hep Par1は新しい免疫染色で,肝細胞癌の皮膚転移の診断に有用である.

脳外科手術後に生じたtoxic shock syndromeの1例

著者: 大内結 ,   木花いづみ ,   嵯峨伊佐子 ,   荻原通

ページ範囲:P.184 - P.187

要約 25歳,男性.小脳腫瘍に対し2004年9月15日に手術を施行した.術後6日目より突然高熱,全身の紅斑が出現し,ショック状態となり9月22日に当科依頼となった.消化器症状,粘膜症状,BUN/Crの上昇,総ビリルビンの上昇,血小板低下も認めtoxic shock syndromeと診断した.抗生剤,昇圧薬に加えガンマグロブリン投与,血漿交換を行い,全身状態および紅斑は改善した.その後,創部感染が明らかとなり,創部の膿よりTSST-1,エンテロトキシンC産生性のMRSAが検出された.種々のサイトカインについて検討した結果,IL-2,IL-6,IFNγ,TNFαが発症時に高値であった.本症例のように,皮膚科医が皮疹より早期に本症と診断し治療を開始できる症例もあり,本症の診断にあたり皮膚科医の役割は重要であると考えた.

限局性皮膚ノカルジア症の1例

著者: 南谷洋策 ,   井上小保理 ,   小方冬樹

ページ範囲:P.188 - P.191

要約 70歳,女性.C型肝炎の既往がある.庭仕事で左肘部を虫に刺され,搔破していたところ,翌日より同部に膿瘍を形成したため当科を受診した.左肘部外側に,潰瘍を一部に伴う浸潤性紅斑局面を認めた.同側腋窩リンパ節腫脹はなかった.生検では,真皮~皮下に広範囲に好中球主体の密な炎症細胞浸潤を認めた.同部からの細菌培養で原因菌をNocardia brasiliensisと同定し,限局性皮膚ノカルジア症と診断した.セフジニル,イミペネムに抵抗性であり,ミノサイクリン点滴静注,局所にはスルファジアジン銀塗布とカイロによる局所温熱療法を施行し,約10日間で瘢痕治癒した.その後,2年間再発をみない.局所温熱療法は比較的容易に行え,副作用も少なく,抗菌薬の治療効果の増強を期待できると考えた.

ステロイド外用で修飾された異型白癬の1例

著者: 宇宿一成

ページ範囲:P.192 - P.194

要約 6歳,男児.ペットは飼育していない.右眉毛部に紅斑,丘疹を生じ,近医で吉草酸ベタメサゾン軟膏を処方された.その後,右上眼瞼にも紅斑を生じ,皮疹は瞼裂を越えて下眼瞼にも拡大した.KOH直接鏡検では白癬菌菌糸が確認された.鱗屑をSabouraudブドウ糖培地に接種したところ,集落中心部に不規則な皺襞をもち,表面絨毛状で黄白色,辺縁黄色調の集落が培養され,スライドカルチャーでMicrosporum canisと同定した.イトラコナゾール30mg/日の内服,テルビナフィンクリームの外用を2週間行い,軽快した.

治療

下腿におけるV-Y筋膜皮弁の経験

著者: 瀧田祐子 ,   一宮誠 ,   山本浩一朗 ,   武藤正彦

ページ範囲:P.196 - P.198

要約 下腿の皮膚・軟部組織欠損の修復は,植皮,局所皮弁,筋膜皮弁および筋皮弁などによって再建される.今回われわれは,下腿における腫瘍切除後,外傷およびⅢ度熱傷の9例の中等度皮膚欠損に対してV-Y筋膜皮弁を用いて再建した.下腿の下1/3の1例において,一部皮膚壊死を生じたが,他の8症例では,皮弁壊死や二次感染などの合併症は認められず,機能的・整容的にも満足のいくものであった.V-Y筋膜皮弁の手術手技は植皮術と比較するとやや難しいが,下腿の中等度皮膚欠損に対して非常に有効な再建法の一つと考えられた.

尋常性乾癬に対するビタミンD3外用薬と保湿剤の併用療法の有効性

著者: 橋爪秀夫 ,   伊藤泰介 ,   伊藤なつ穂 ,   石川学 ,   岩崎加代子 ,   小楠浩二 ,   影山葉月 ,   坂本泰子 ,   冨田浩一 ,   古川富紀子 ,   秦まき ,   島内隆寿 ,   戸倉新樹 ,   三井広 ,   椙山秀昭 ,   島田眞路 ,   瀧川雅浩

ページ範囲:P.199 - P.204

要約 浜松医科大学および関連施設,産業医科大学,山梨大学にて尋常性乾癬患者29例を対象として,マキサカルシトール25μg/g軟膏(オキサロール (R)軟膏)1日1回(夕)の単独療法と,マキサカルシトール25μg/g軟膏1日1回(夕)および保湿剤(ヘパリン類似物質含有外用薬)1日1回(朝)との併用療法を,8週間の左右比較で検討した.①皮膚所見別の推移では,紅斑,浸潤・肥厚,鱗屑において単独群,併用群ともすべての観察日で開始時と比べて有意な改善が認められた.②単独群と併用群の皮膚所見別の群間比較では,鱗屑においてすべての観察日で併用群が有意に優った.③全般改善度の群間比較では,8週後および最終時で併用群が有意に優った.④全般改善度の左右優劣比較では,8週後および最終時で併用群が有意に優った.⑤有用度の評価では,有用以上が単独群で41.4%(12/29例),併用群では62.1%(18/29例)であり,併用群が有意に優った.⑥有用度の左右優劣比較では,併用群が有意に優った.これらの点より,マキサカルシトール25μg/g軟膏と保湿剤の併用療法は,有効な治療法であると考えられた.

印象記

「第11回プラハ皮膚科シンポジウム」に参加して

著者: 佐々木哲雄

ページ範囲:P.205 - P.207

2005年9月15~17日,プラハで開催された「11th Prague Dermatology Symposium」に参加してきました.プログラム・抄録集の表紙(図1)にありますように,この会はInternational Society of Dermatology (ISD)のRegional Meetingに位置づけられています.ISDはその機関誌として「International Journal of Dermatology」を発刊しており,2005年が第44巻と歴史もありますので,ご存知の先生も多いと思います.ISDのWorld/International Congressとしては1964年の第1回がナポリ,69年の京都(会頭:松本信一教授),75年のサンパウロ,79年のニューオーリンズ,84年のメキシコシティ,89年のリオデジャネイロ(この回まではWorld Congress of Dermatologyと呼ばれていた),94年のニューデリー(この回からInternational Congress of Dermatology:ICDと呼ばれることになった.International League of Dermatological Societies:ILDSがその会議をWorld Congressと呼ぶことに決めたため),99年のカイロ,2004年の北京と続き,2009年にはプラハで開催されます.開催地からも想像されるように,ISDは“less developed countries”からの若い皮膚科医を支援することを重視する会と思われます.

 前置きが長くなってしまいました.今回の会頭は3名の連名でしたが,ほとんど会を仕切っていたのはその中のJana Hercogová教授(図2)でした.彼女はプラハのCharles大学第2医学部の皮膚科性病科の主任教授で,2002年10月にプラハで開催された「11th Congress of the European Academy of Dermatology and Venereology (EADV)」でも会頭を務めました.細身の長身で,流暢な英語で淡々と学会を進行させておりました.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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