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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科60巻3号

2006年03月発行

雑誌目次

連載

Dermoscopy Specialistへの道Q&A(第24回)

著者: 斎田俊明 ,   古賀弘志

ページ範囲:P.215 - P.217

Qどんなダーモスコピー所見が認められますか?

診断は何でしょう

臨床情報

61歳,男性.数か月前,左手掌にトゲのようなものが生じているのに気づいた.引っ搔いたりしていたところ,増大・隆起してきた.近医(整形外科)にて表面を摘除されたが,すぐに再発し,しばしば出血するようになった.

 初診時,左手掌中央部に大きさ5×5×9mmの,有茎性に隆起する紅色結節が存在していた(図2).表面は平滑だが,一部に痂皮を付す.

今月の症例

横紋筋融解症を伴ったマムシ咬傷

著者: 小田真喜子 ,   山中新也 ,   清島真理子 ,   山口均

ページ範囲:P.219 - P.222

75歳,男性.右足外顆のマムシ咬傷後,15時間で受診した.患側下肢は暗紫色で冷感を伴い,来院後も腫脹が急速に進行し,霧視,悪心,腹痛,乏尿などの全身症状を伴った.尿は赤褐色調で,筋原酵素が著明に上昇していた.受傷3日目にCPK21,813IU/l,血中ミオグロビン6,023.4ng/ml,尿中ミオグロビン15,000ng/mlと最高値を示した.大量輸液を開始し,マムシ抗毒素血清,ステロイド,セファランチン,破傷風トキソイド,抗生剤,ハプトグロブリンを投与したところ急性腎不全は免れ,患肢の腫脹は徐々に軽快し,受傷2週間後には歩行可能になった.マムシ咬傷で皮膚科を受診する例は多くはないが,受傷初期の治療が重要であり,マムシ抗毒素血清の使用,血液浄化法,減張切開の適応などの治療法について検討した.

症例報告

先天性血管拡張性大理石様皮斑の1例

著者: 小山哲史 ,   吉澤奈穂 ,   樹神元博 ,   藤本篤嗣 ,   杉浦丹

ページ範囲:P.224 - P.226

生後2日,男児.出生時より両上肢,軀幹,左下肢の広い範囲に紫紅色調,網状の大理石様皮斑を非対称性に認めた.皮疹部は陥凹し,萎縮を呈し,腹部の皮静脈は拡張していた.網状の皮斑のある左下肢は右下肢に比べ,細く短縮していた.その他の合併症はなかった.病理組織学的には毛細血管の拡張と増生,血管周囲へのリンパ球浸潤,リンパ管の拡張を認めた.1歳10か月の現在,皮斑は消退傾向にあり,患肢の異常は改善が認められた.

クロラムフェニコールによる接触皮膚炎症候群

著者: 尾川真紀子 ,   中川聡 ,   飯澤理 ,   相場節也

ページ範囲:P.227 - P.229

44歳,男性.初診の約1年前に,クロラムフェニコール錠を処方された数日後に体幹,両上肢に瘙痒性紅色皮疹が出現した既往があった.その後,右下腿の痒みを伴う皮疹に対し,クロラムフェニコールを含む種々の外用薬を使用していたところ,皮疹は次第に全身に拡大し,自家感作性皮膚炎の状態になった.使用した外用薬のパッチテストではクロラムフェニコールのみに陽性を示した.クロラムフェニコールによる接触皮膚炎症候群は,本邦ではめずらしく,また発症機転が経口感作と思われる点が,今回の症例の興味深い点であった.

ゲフィチニブ(イレッサ(R))による爪囲炎の2例

著者: 森暁 ,   川上佳夫 ,   古川裕利 ,   中村晃一郎 ,   金子史男

ページ範囲:P.230 - P.232

症例1:41歳,女性.ゲフィチニブ内服開始約2か月後に右第1趾,右環指(第4趾)に爪囲炎が出現した.ゲフィチニブ投与中止により症状は改善した.症例2:54歳,女性.ゲフィチニブ内服開始3週間後に右第1趾に爪囲炎が出現した.ゲフィチニブは継続しながら,抗生剤外用を行い症状は軽快した.ゲフィチニブによる爪囲炎の発症機序は明らかにされていないが,自験例ではいずれも歩行時に加重のかかる第1趾に症状を認めており,物理的要因も発症に関与していることが示唆された.

ホモスルファミン外用後に生じたacute generalized exanthematous pustulosisの1例

著者: 吉田隆洋 ,   籏持淳 ,   山﨑雙次

ページ範囲:P.233 - P.236

54歳,男性.約2週間前より下腹部の瘙痒性皮疹へホモスルファミン含有市販薬を塗布していたところ,外用部位に瘙痒を伴う紅斑が出現し,徐々に拡大したが外用を継続していた.数日前より急激に,発熱と全身に瘙痒性の小膿疱を伴う紅斑がみられたため来院した.病理組織学的所見は好中球の表皮内遊走と角層下膿疱および真皮上層の血管周囲性の炎症性細胞浸潤が認められた.ホモスルファミンの貼布試験陽性より,同薬剤による接触皮膚炎の後に生じたacute generalized exanthematous pustulosisと診断した.

紫斑を呈したヒトパルボウイルスB19感染症の成人例

著者: 幸田紀子 ,   佐々木一 ,   萩原正則 ,   松尾光馬 ,   本田まりこ ,   中川秀己

ページ範囲:P.237 - P.240

34歳,女性.初診の4日前に発熱(38.1℃)と右腋窩,腹部,両鼠径部,左膝窩に紫斑が出現した.紫斑部の病理組織は,真皮浅層から中層の血管周囲にリンパ球を主体とする細胞浸潤と赤血球の血管外漏出,血管内皮細胞の膨化を認めたが壊死性血管炎像はなかった.リンパ球表面マーカーでCD4優位のリンパ球浸潤をみた.免疫グロブリンおよび補体の沈着はなかった.ヒトパルボウイルスB19に対する抗体価は,IgM高値,IgG低値であったが,その後IgGは上昇し,また血清中にHPV-B19DNAが検出されたことから,本例は感染初期に紫斑を生じたと考えられた.紫斑の発生機序として,HPV-B19の血管内皮細胞感染による直接的傷害,HPV-B19感染による血小板減少,荷重や摩擦による機械的刺激が考えられた.

色素性コンジローマの1例

著者: 吉澤奈穂 ,   田中京子 ,   樹神元博 ,   藤本篤嗣 ,   杉浦丹

ページ範囲:P.241 - P.243

49歳,男性.5年ほど前より陰茎基部に皮疹が出現した.陰茎基部に黒褐色調の扁平丘疹が5つ集簇してみられBowen様丘疹症が疑われた.病理組織像は表皮の肥厚,表皮内の空胞化細胞,表皮突起の中心収束傾向を示した.細胞の配列の乱れ,核異型性は明らかではなく,クランピング細胞もみられなかった.病理組織像ではBowen様丘疹症を疑わせる悪性所見はなく,組織のパピローマウイルス遺伝子検査においてはHPV-6が検出され,色素性コンジローマと診断した.現在,尖圭コンジローマとBowen様丘疹症は連続性,近縁性が示唆されているが,本稿では,尖圭コンジローマの一亜型である色素性コンジローマについて文献的考察を加え報告する.

3本の線状病変を認めた剣創状強皮症の1例

著者: 有川順子 ,   石黒直子 ,   川島眞

ページ範囲:P.244 - P.246

9歳,男児.前額髪際より右鼻背にかけて幅8mmの線状の紅斑を認め,その右方にも同様の紅斑を認めた.臨床検査所見では一般・免疫ともに異常はない.病理組織学的所見では,真皮全層の血管,付属器周囲と脂肪組織にも稠密なリンパ球浸潤を認めた.膠原線維の明らかな膨化や増生はなかった.線状強皮症のなかでも,いわゆる剣創状強皮症の紅斑期例と診断し,プレドニゾロン0.6mg/kg/日の内服を開始した.線状の脱毛巣を残すものの硬化,陥凹はなく治癒し,5か月で内服を中止した.線状の脱毛巣は3本確認され,うち1本は先行する紅斑は明らかではなかったが,3本の線状病変を認めたものと考えた.

偽性腸閉塞を伴ったoverlap症候群と全身性強皮症

著者: 樫野かおり ,   松浦浩徳 ,   中西元 ,   辻和英 ,   野村知代 ,   森實真 ,   岩月啓氏 ,   岡田裕之 ,   松下貴史

ページ範囲:P.247 - P.251

症例1:45歳,女性.22歳時に全身性エリテマトーデスと診断された.その後,全身性エリテマトーデス,皮膚筋炎,全身性強皮症のoverlap症候群をきたし,嘔吐,下痢などの消化器症状を繰り返した.入院中に腹痛とともに腹部単純X線像にて多量のガスとniveauがみられたが,保存的治療にて腹部症状は軽快した.偽性腸閉塞と診断した.症例2:24歳,男性.21歳時に全身性強皮症と診断された.入院1か月前から胸やけ,食後の嘔吐,体重減少が出現し,腹部単純X線,腹部CTにてfree air,小腸に壁内気腫を認め緊急入院した.消化管造影では漏出を認めなかった.保存的治療にて腹部の症状は軽快した.腸管囊腫様気腫と診断した.いずれも全身性強皮症に伴う小腸病変であり,その病態を考察する.

Spiny keratodermaの1例

著者: 太田智秋

ページ範囲:P.252 - P.254

47歳,男性,建設業.3年来の手掌のざらざら感を主訴に来院した.両手掌にほぼ対称性に,1mm程度のきわめて小さい棘状の角化突起が散在し,足蹠にも同様の所見がみられた.組織学的には,中心部に不全角化を示すcornoid lamella様の角層の過角化所見があり,その下方では顆粒層が消失し,表皮は軽度に陥凹して菲薄化し,その中心部にはエクリン汗管の表皮内汗管が開口していた.表皮の空胞化や異角化は認めなかった.以上よりspiny keratodermaと診断した.10%尿素軟膏を処方したが改善せず,本人の希望により放置観察とした.痛風,高脂血症にて内服していたアロプリノール,ベザフィブラートを中止して半年後も,症状は不変であった.

タクロリムス軟膏外用が奏効した女性びらん型外陰部扁平苔癬の1例

著者: 佐藤まどか

ページ範囲:P.255 - P.258

62歳,女性.約3年前に外陰部に有痛性の皮疹が出現し,他院で加療を受けたが改善しなかった.びらん型外陰部扁平苔癬と診断し,まずステロイド外用にて治療したが,改善傾向に乏しかった.そこで0.1%タクロリムス軟膏外用に変更して治療したところ,約4週間で臨床症状,自覚症状ともに軽快した.タクロリムス外用は,外陰部扁平苔癬の比較的安全で有効な治療の選択肢の一つと考えられたので報告する.

トラニラストが有効であった顔面播種状粟粒性狼瘡の1例

著者: 佐藤可代 ,   棟方貴子 ,   秋田尚見 ,   柳谷文彦

ページ範囲:P.259 - P.261

72歳,女性.トラニラストが有効であった顔面播種状粟粒性狼瘡(LMDF)の1例を経験した.初診5か月前より,顔面に難治性の紅色丘疹が出現した.組織学的に乾酪壊死を伴う類上皮細胞性肉芽腫を認めた.テトラサイクリン,ジアフェニルスルホン(DDS)の内服を行うも副作用のため使用中止となった.トラニラストを内服したところ,投与2週目より丘疹は縮小傾向を示し,投与2か月後には著明に改善した.近年LMDFの治療には,テトラサイクリンやDDSがよく用いられているが,無効な場合や副作用の出現により使用できない場合も少なくない.トラニラストはこれらの薬剤に比べ重篤な副作用が少なく,LMDFの治療において試みる価値のある薬剤であると考えられた.

多発性脳梗塞を合併した弾力線維性仮性黄色腫の1例

著者: 水野万利子 ,   杉村亮平 ,   市村香代子 ,   大谷稔男 ,   高森建二

ページ範囲:P.262 - P.264

56歳,女性.18歳頃,肘窩,頸部に黄色の丘疹が出現し,徐々に多発集蔟した.弾力線維性仮性黄色腫(PXE)と診断されるが,特に自覚症状なく放置していた.2004年1月近医皮膚科を受診時,PXEを指摘され,合併症の精査を勧められたため当科を紹介され受診した.初診時,頸部,腋窩,肘窩に黄白色の丘疹が集蔟し,網状局面を呈していた.なお,患者は1994年多発性脳梗塞と診断され,現在脳神経内科に通院中である.合併症について精査したところ,高血圧および網膜色素線条を認めた.両親は血族結婚であるが,いずれも同症状は認められない.家族内では3人の姉に同症を認める.

Calcinosis cutisの2例

著者: 唐川大 ,   桜井直樹 ,   鳥居秀嗣

ページ範囲:P.265 - P.267

症例1:60歳,女性.3年前に気づいた右膝蓋部皮下腫瘤を主訴に受診した.初診時,右膝蓋部に径1.5cm大ゴム様硬の皮下腫瘤が存在した.病理組織所見上,真皮内に好塩基性に染まる無構造物からなる多房性の結節を認めた.症例2:57歳,女性.4年前,左側腹部皮下結節に気づいた.X線で石灰沈着を指摘され受診した.初診時,左側腹部に貨幣大,骨様硬の皮下腫瘤が存在した.病理組織所見上,真皮深層から脂肪織に,好塩基性に染まる無構造物の散在を認めた.両症例とも,先行疾患,Ca調節系の異常はなくidiopathic calcinosis cutisと診断した.過去10年間の本邦報告例をもとに統計的考察を加えた.好発部位は四肢および陰部・臀部で,病型としてはidiopathic calcinosis cutisが過半数を占めた.

皮膚線条様または瘢痕様外観を呈した石灰化上皮腫の2例

著者: 川久保恵 ,   青木見佳子 ,   山形健治 ,   川名誠司

ページ範囲:P.268 - P.270

石灰化上皮腫本体の約3倍の長さにわたって皮膚線条様または瘢痕様外観を呈した2例を報告した.症例1:25歳,女性.右肩上腕中枢側の外側皮下に1.7×2cmの黄白色結節を認め,周囲に境界明瞭,不整形,表面凹凸のある,結節の約3倍の長さの暗赤色,水疱様感触をもつ病変が存在している.症例2:23歳,男性.左背部肩甲骨上に2.5×2.6cmの黄白色結節を認め,周囲に症例1に酷似する紡錘形の瘢痕様病変が存在している.2例とも病理組織学的には,結節は石灰化上皮腫であり,暗赤色局面の真皮では毛細血管の増生,毛細リンパ管の拡張と,周囲の結合織間の浮腫を認めた.

膵癌に伴った皮下結節性脂肪壊死症の1例

著者: 岩本菜子 ,   大山正彦 ,   堀田健人 ,   山田朋子 ,   村田哲 ,   大槻マミ太郎 ,   中川秀己 ,   塩澤幹雄

ページ範囲:P.271 - P.274

皮下結節性脂肪壊死症で発症し,全身検索で膵腺房細胞癌が発見された60歳男性の症例を報告した.皮疹は一見,結節性紅斑を思わせるものであったが,下床との可動性が良好であった点,皮下結節を球状に触れた点,結節の中に波動を触知しえた点から,臨床的にそれとの鑑別が可能と考えられた.その他,生検時に黄色の液体貯留を認めたこと,病理組織にてghost-like fat cellや石灰沈着を伴う巣状脂肪壊死がみられたことも,本症の特徴的所見と思われた.膵疾患に伴った皮下結節性脂肪壊死症では,皮疹から膵疾患が発見されることもあり,その診断的価値は高いと考えられる.

Werner症候群に生じた悪性黒色腫の1例

著者: 川瀬正昭 ,   太田有史 ,   中川秀己 ,   新村眞人

ページ範囲:P.275 - P.278

59歳,男性.両親に血族結婚なし.20歳頃より徐々に白毛,指趾・耳介の萎縮,四肢の筋萎縮,皮膚硬化,胼胝,難治性皮膚潰瘍,白内障,糖尿病などの症状が出現し,臨床症状よりWerner症候群と診断された.糖尿病,肝機能障害を内科で,難治性皮膚潰瘍および外反母趾を整形外科で治療中であった.1998年4月頃より右母指の爪甲下に黒色斑が出現し徐々に拡大し,爪甲が脱落し中心部が潰瘍化して軽度の出血を伴うようになったため,1999年4月26日に当科を受診した.頭部MRIにて前頭葉に径2cm大の腫瘤および右頸部リンパ節の転移を認め,悪性黒色腫stageⅣの診断で右母指切断術のみを施行した.Werner症候群に生じた悪性黒色腫の本邦報告例は自験例を含め27例あるが,母指に生じた例は3例で脳転移を起こしたものは4例であった.

足背に生じたpolypoid basal cell carcinomaの1例

著者: 横山眞爲子 ,   前川嘉洋 ,   三角修子 ,   青井淳

ページ範囲:P.279 - P.281

55歳,男性.初診2004年2月9日.発生時期は不詳だが,初診の半年ほど前に家人が右足背の腫瘤に気づいていた.初診時,右足背に30×35mm,高さ15mm,表面はびらんを有し,皮膚常色から淡紅色を呈する有茎性結節を認めた.摘出組織の病理組織学的所見では,ポリープ状の病変内に,主にbasaloid cellの充実性の腫瘍巣が島嶼状に増殖し,稀な発生部位である足背に生じたpolypoid basal cell carcinomaと診断した.

爪部悪性黒色腫の1例―外傷を誘因とした報告例のまとめ

著者: 高井郁美 ,   勝浦純子 ,   窪田泰夫

ページ範囲:P.282 - P.284

52歳,男性.職業は大工で,作業中に何度も右第1指を打撲していた.もともと存在していた爪甲黒色線条が,2002年4月頃より拡大し,爪甲は破壊され潰瘍を形成するようになった.PET(positron emission tomography)では右第1指に一致してfluorodeoxyglucose集積陽性だが,転移・他病巣は認めなかった.右第1指基節骨レベルでの関節離断術を施行した.術後化学療法としてDAV-フェロン療法を5クール施行した.術後1年6か月で,腋窩リンパ節に転移を認め,右腋窩リンパ節郭清術を施行した.以上,繰り返す外傷により生じた右第1指の爪部悪性黒色腫の1例を報告した.1992~2002年までの10年間での爪部悪性黒色腫について統計学的考察を加えた.

前胸部に発生したmicrocystic adnexal carcinoma

著者: 石田智子 ,   平井麻起子 ,   本田えり子 ,   十一英子 ,   桜井孝規

ページ範囲:P.285 - P.288

58歳,男性.10年ほど前から前胸部に紅色腫瘤が出現し,数か月前から徐々に増大したため,受診した.同部に径1.3cmの半球状に隆起する紅色腫瘤を認めた.全切除し,病理組織学的所見よりmicrocystic adnexal carcinoma (MAC)と診断した.MACは主に高齢者の顔面に好発する皮膚付属器悪性腫瘍で,胸部に発生した例は稀と考える.MACは病理組織学的に核異型などの悪性所見に乏しく,不十分な生検では汗管腫などと誤診されやすく,腫瘍の全体像がわかるような切除生検が望ましい.MACは緩徐に発育する腫瘍だが破壊的浸潤性が強く,局所再発が非常に多いが,本例では術後2年経過した現在も局所再発・転移を認めない.

皮膚生検より診断しえたintravascular large B-cell lymphomaの1例

著者: 吉田理恵 ,   田中京子 ,   木花光 ,   中村宣子

ページ範囲:P.289 - P.292

73歳,女性.2004年8月,右鼠径部に疼痛を伴う腫瘤を認め受診した.右鼠径部に4×5cm大の弾性硬の皮下腫瘤と,両大腿の皮膚に熱感・疼痛を伴う発赤,浸潤硬結を認めた.左大腿より皮膚生検を施行した.組織学的に真皮深層から皮下脂肪織内の血管内に異型リンパ球が充満していたため,intravascular large B-cell lymphomaと診断した.本症は全身の諸臓器の小血管腔内で腫瘍細胞が増殖・うっ滞する稀な疾患で,多彩な症状を呈するが,10~40%に皮膚症状がみられる.本邦報告例中,皮膚症状を伴った例は17例ある.皮疹は毛細血管拡張,老人性血管腫,紅斑,紫斑などさまざまであるが,自験例と同様の両大腿の浸潤硬結は6例と多く,本症に特徴的な皮膚症状の一つであると思われた.

経皮的ラジオ波焼灼療法により生じた皮膚損傷の1例

著者: 石田和加 ,   古市恵 ,   野本浩生 ,   北川太郎 ,   諸橋正昭

ページ範囲:P.293 - P.295

80歳,男性.大腸癌,転移性肝癌と診断され,2か所の肝転移巣に対し,ラジオ波焼灼療法(radiofrequency ablation:RFA)を施行された.終了時に電極刺入部の皮膚に発赤を認め,翌日になり同部位に潰瘍を形成したため,当科を受診した.外用療法を行ったが,改善に乏しく,皮下茎皮弁を作成し創を閉鎖した.

臨床統計

愛知医科大学皮膚科におけるセンチネルリンパ節生検を施行した悪性黒色腫の統計的観察

著者: 久原友江 ,   水谷建太郎 ,   渡辺大輔 ,   玉田康彦 ,   松本義也 ,   大野和子 ,   原一夫

ページ範囲:P.297 - P.300

2000年1月から2004年5月までに,当科にて色素法とRI法を用いてセンチネルリンパ節生検(SLNB)を施行した悪性黒色腫17例について検討した.男性12例,女性5例,平均年齢は57歳であった.Breslow(腫瘍の厚さ)3.0mm未満は10例で,全例ともセンチネルリンパ節(SLN)転移はなく,予防的リンパ節郭清は施行していないが,約26か月の平均経過観察期間で,再発転移は認めていない.Breslow3.0mm以上は7例であり,そのうち2例がSLN転移陽性であり,その2例にリンパ節郭清を施行したところ,非センチネルリンパ節(non-SLN)転移陽性であった.1例はリンパ節郭清から約8か月後に多臓器転移で死亡,残りの1例も皮膚転移が多発,傍大動脈リンパ節転移も認めた.一方,7例中5例にSLN転移がみられず,この5例においては予防的リンパ節郭清を施行せず経過をみていたが,そのうち3例はSLNBから約1~2年半後に遠隔転移をきたして死亡した.これらの症例は血行性転移の可能性が考えられた.今回の統計の結果からは,Breslow3.0mm以上の症例においてはSLNBの結果と予後は必ずしも一致しなかったが,SLN転移陽性例では2例とも遠隔転移が起きていたことを考えると,StageII以上の悪性黒色腫の症例に対しては積極的にSLNBを行うべきと考える.

AD Forum:小児のアトピー性皮膚炎治療に対するアンケート調査研究

著者: 瀧川雅浩 ,   川島眞 ,   古江増隆 ,   飯塚一 ,   伊藤雅章 ,   中川秀己 ,   塩原哲夫 ,   島田眞路 ,   竹原和彦 ,   宮地良樹 ,   片山一朗 ,   古川福実 ,   岩月啓氏 ,   橋本公二 ,   横田俊一郎

ページ範囲:P.301 - P.309

小児アトピー性皮膚炎の治療方針に対する皮膚科医と小児科医の認識を調査し,その差異を検討するためにアンケート調査を行い,皮膚科医577名と小児科医823名の回答を得た.自然寛解は皮膚科でも小児科でも95%以上の医師があると考えていた.アレルゲン除去指導,食事指導に関しては,未就学児童に指導する割合が皮膚科医より小児科医のほうが高かった.治療薬の使い分けは,ステロイド外用薬は低年齢の軽症例に対して小児科より皮膚科の使用割合が高く,免疫調整外用薬は軽症・中等症例に対して年齢にかかわりなく小児科より皮膚科の使用割合が高かった.逆に,非ステロイド外用薬は低年齢の患者に対して皮膚科より小児科の使用割合が高かった.保湿薬や抗ヒスタミン/抗アレルギー薬は両科における使い方の差はあまりなかった.小児アトピー性皮膚炎治療に際して,皮膚科と小児科はお互いの連携が他の診療科と比べて最も多いという結果であったが,今後も両科のアトピー性皮膚炎に関する考え方,治療法などの細かい相違点を理解しながら,対話と連携を深めていかなければならない.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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