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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科60巻4号

2006年04月発行

雑誌目次

連載

Dermoscopy Specialistへの道Q&A(第25回)

著者: 斎田俊明 ,   古賀弘志

ページ範囲:P.317 - P.319

Qどんなダーモスコピー所見が認められますか?

診断は何でしょう

臨床情報

 52歳,女性.数か月前,右下腿に褐色のしこりがあるのに気づいた.その後,ほとんど変化していない.

 初診時,右下腿外側に直径約5mmの,ドーム状に軽度隆起する淡褐色の結節が認められた(図2).皮内結節として弾性硬に触知した.

アメリカで皮膚科医になって(7)―From Japan to America:American Life as a Physician-Scientist

著者: 藤田真由美

ページ範囲:P.410 - P.411

専門医としての皮膚科医

 (Dermatology as a Specialty)

 アメリカで医者をしていると,こちらに赴任中や滞在中の日本人から医療電話相談がかかることが多い.「私の友人の知人の娘さんが…旦那さんが…医者にかかりたいのだけど,英語ができないから,先生の診察室に行ってもいいですか?」こういう場合,日本のように 「はい,いいですよ.外来に言っておきますから,明日来て下さい」とはいかないので,大変である.なぜかというと,まず,アメリカ医療保険の仕組みの問題,そして,専門科受診という手続きの問題があるからである.

 アメリカでは,医療保険の種類によってカバーする医師,病院が限定される.また,皮膚科のような専門科にかかるためには,まず主治医の診察治療を受けたうえで,その主治医の専門外だから皮膚科に紹介する,という手続きをとらないといけない.アメリカ人でさえこの仕組みを理解していなかったり,煩雑さに文句を言うくらいであるから,これをアメリカの医療事情に疎い人に説明して納得してもらうのは大変である.

原著

Verrucous skin lesions on the feet in diabetic neuropathyの2例

著者: 皆川智子 ,   金子高英 ,   武田仁志 ,   中野創 ,   花田勝美 ,   山岸晋一朗 ,   八木橋操六 ,   板井恒二 ,   矢口直 ,   船越樹

ページ範囲:P.321 - P.326

要約 症例1:48歳,男性.2003年1月,左足底を受傷し,その後同部位が隆起してきた.初診時,中心部に潰瘍を伴う角化性疣状局面を2個認めた.組織学的に表皮突起は不規則に延長していたが表皮細胞に異型性を認めず,ウイルス性疣贅を示唆する細胞質封入体もみられなかった.潰瘍部では肉芽組織が形成されていた.免疫組織化学検査ではMIB1,p53,抗HPV抗体染色は陰性であった.なお,単純X線では,左踵骨底部,立方骨底部には骨膜反応がみられ,MRIでも悪性の所見を思わせたが,臨床像,組織像よりverrucous skin lesions on the feet in diabetic neuropathy (VSLDN)と診断した.症例2:49歳,男性.2000年頃より両第1趾趾腹部に角化性疣状局面が生じ,難治であった.しかし組織学的に悪性像を認めずVSLDNと診断した.本症例はタカルシトール軟膏にて改善傾向をみた.2例とも10年来のコントロール不良な糖尿病を有する.本症例はウイルス性疣贅やepithelioma cuniculatumとの鑑別を要した.

今月の症例

大型の褐色局面を呈したエクリン汗孔癌の1例

著者: 塩原順子 ,   小川香里 ,   井出葉子 ,   山浦麻貴 ,   宮嵜敦 ,   古賀弘志 ,   宇原久 ,   斎田俊明

ページ範囲:P.327 - P.329

要約 75歳,男性.20年以上前から右下腿に皮疹があり,徐々に増大した.初診時,88×54×3mmの不整形,暗紅色から黒褐色の連圏状局面を認めた.表面は不整で乳頭状,あるいは結節状の病変が混在してみられた.また,一部にびらんや角化が存在した.組織学的には表皮内上皮腫の所見を示す部分と多彩な組織像を示す真皮内浸潤部とがみられた.表皮内病変は大小不同の胞巣が主体で,クチクラ構造も認められた.浸潤部には過角化の目立つ部分や大型の管腔形成が目立つ部分など,多彩な所見がみられた.センチネルリンパ節に転移が確認されたため,根治的右鼠径リンパ節郭清術を行った.

症例報告

B細胞リンパ腫に伴った腫瘍随伴性天疱瘡の1例

著者: 石田和加 ,   野本浩生 ,   牧野輝彦 ,   日野孝之 ,   北川太郎 ,   諸橋正昭 ,   石井文人 ,   橋本隆

ページ範囲:P.331 - P.334

要約 65歳,女性.全身倦怠感と難治性口腔内びらんで当院和漢診療科に入院し,頸部リンパ節,傍大動脈リンパ節の腫脹を認め,頸部リンパ節の生検によりB細胞リンパ腫と診断された.体幹に水疱が出現し,当科を受診した.腹部水疱の生検で棘融解性水疱を認め,蛍光抗体直接法では表皮細胞間,基底膜にIgG,C3が沈着し,間接法ではヒト皮膚およびラットの膀胱移行上皮でIgGが沈着した.ELISA法では抗デスモグレイン3抗体陽性であり,免疫ブロット法で190,210kDaに反応がみられた.以上より腫瘍随伴性天疱瘡と診断した.CHOP療法を行ったが,口腔内びらんは改善せず,ステロイド治療を行ったが,閉塞性細気管支炎と思われる呼吸器障害および細菌性肺炎を併発し,4か月後に永眠した.

全身性強皮症を呈したヒトアジュバント病の1例

著者: 大内結 ,   木花いづみ ,   武藤潤 ,   今川孝太郎

ページ範囲:P.335 - P.337

要約 61歳,女性.35年前にシリコン注入による豊胸術を受けた.2年前に両側乳房の変形のためシリコン除去術を受けるもシリコンは胸壁まで浸潤し完全な除去はできなかった.2004年1月よりRaynaud現象が出現し,3月より手指の硬化を自覚.5月より皮膚硬化が急速に進行し当院を受診した.両手指から前腕近位および頸部の皮膚硬化を認めた.シリコン豊胸術後のヒトアジュバント病と診断しプレドニゾロン30mgより開始.皮膚硬化は改善している.

HIV感染者に発症した顔面壊疽性膿皮症の1例

著者: 荒木絵里 ,   玉城裕妃子 ,   高瀬早和子 ,   太田深雪 ,   堀口裕治

ページ範囲:P.338 - P.341

要約 50代,男性.左前頭部の紅色皮疹が拡大して類円形の5cm大の潰瘍となった.臨床検査でγグロブリンの高値,CRPの軽度上昇を認めた.病理組織像では真皮深層から皮下組織にかけて好中球と単核球の浸潤がみられた.悪性疾患や真菌・細菌などの感染を示唆する所見はみられず,壊疽性膿皮症と診断した.ステロイド内服治療によく反応したが,減量,離脱とともにまもなく再発した.再精査でヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗体陽性が判明し,問診で同性間性的接触の既往が明らかとなった.CD4陽性細胞は156/mm3と低値であり,抗ウイルス療法が開始された.壊疽性膿皮症などの好中球性皮膚症がHIV感染患者にみられるとの合併の報告が散見され,HIV感染に伴って免疫応答異常の存在する可能性が推察される.

インフルエンザHAワクチン接種により生じた結節性紅斑様の皮疹

著者: 津嶋友央 ,   鬼頭由紀子 ,   冨田浩一

ページ範囲:P.342 - P.345

要約 74歳,女性.インフルエンザHAワクチン接種後に発熱,咽頭痛,膝関節痛とともに,結節性紅斑様の皮疹が接種部位のほか,大腿部,上肢,左下眼瞼に出現した.皮膚生検の結果,接種部位および他の皮疹からも脂肪層小葉間結合織に炎症性細胞浸潤が認められ,結節性紅斑と同様の反応と考えた.インフルエンザHAワクチン接種による皮膚科領域の副作用は非常に少なく安全性は高いとされている.これまでにワクチン接種をきっかけに結節性紅斑,あるいは結節性紅斑様の皮疹が生じたという報告はない.

タクロリムス軟膏外用が著効したannular elastolytic giant cell granulomaの1例

著者: 小野藤子 ,   中川秀己

ページ範囲:P.346 - P.348

要約 39歳,女性.2年半前より頸部に痒みを伴う皮疹が出現した.ステロイド薬外用で皮疹は軽快したが2週間ほどで再発するため当科を受診した.初診時,頸部,項部に自覚症状の乏しい淡紅色局面が多発していた.皮疹の辺縁部はわずかに隆起し,中央はやや萎縮性で白色調を呈していた.組織像では真皮浅層から中層にかけて多核巨細胞を混ずるリンパ球,組織球がびまん性に浸潤しており,弾性線維貪食像を認めた.0.1%タクロリムス軟膏外用で皮疹はほぼ消退した.

定型疹を伴った皮下型環状肉芽腫の1例―本邦文献報告例の考察を含めて

著者: 山本純照 ,   榎本美生 ,   多田英之 ,   宮川幸子

ページ範囲:P.349 - P.352

要約 1歳11か月,女児.2004年7月頃(1歳8か月)に,蚊に刺されたと思われる右足背,右下腿伸側に自覚症状を伴わない貨幣大の紅斑が出現し,その後小豆大の皮下結節を伴った.同10月25日の当科初診時には,右足背に直径3cmの,辺縁が軽度堤防状に隆起する紅褐色斑が認められ,その中央の皮下に直径5~8mmの弾性硬,下床との可動性を有する皮下結節を3個触知した.また,右下腿伸側中央には直径3cmの皮下結節を1個,左中指の指背基部に粟粒大の淡紅色丘疹を3個認めた.皮膚生検では真皮深層から皮下脂肪織に肉芽腫病変が存在し,HE染色でエオジンに淡染する変性物質と,その周囲に組織球や線維芽細胞の柵状配列を認め,palisading granulomaの像を呈した.臨床像および病理組織学的所見から,定型疹を伴った皮下型環状肉芽腫と診断した.自験例を含めた本邦文献報告例についても検討したので,合わせて報告する.

SLE腎症に合併した多発性痛風結節の1例

著者: 加藤まどか ,   鈴木洋介 ,   宮川俊一

ページ範囲:P.353 - P.355

要約 70歳,女性.1982年にSLEを発症し,1999年よりSLE腎症および高尿酸血症の合併あり.血中尿酸値は11.9mg/dlと高値であった.当院内科にてPSL5mg内服加療中の2002年夏頃より手指,足趾,足底,足背,膝に黄白色調の小結節が出現し,徐々に増数した.病理組織学的に真皮内に淡い好酸性無構造物が結節状に沈着し,中に空隙がみられた.生検時白色チョーク様の内容物を排出した.内容物の直接鏡検で針状結晶を認めた.赤外線吸収スペクトロフォトメトリーによる内容物の分析で尿酸塩と同一のピークを認めた.

慢性色素性紫斑様の臨床を呈したサルコイドーシスの1例

著者: 松永美帆 ,   高橋貴志 ,   松永剛

ページ範囲:P.356 - P.359

要約 24歳,女性.両下肢の点状紫斑を伴う地図状紅褐色斑で慢性色素性紫斑を疑ったが,病理組織では真皮上層から皮下にかけて血管周囲に類上皮細胞肉芽腫の形成が認められ,肉芽腫性ぶどう膜炎と両肺門縦隔リンパ節腫脹もみられ,サルコイドーシスと診断した.病態としては血管周囲の肉芽腫による血管の障害が考えられた.過去報告例のなかにlivedoを呈したサルコイドーシスが数例あり,血管周囲性の病変という点で自験例に比較的近いと考えられたが,慢性色素性紫斑様の臨床を呈した報告はない.

塩酸プラゾシンとアルファカルシドールの併用療法が奏効した硬化性萎縮性苔癬の1例

著者: 木村容子 ,   上田明弘 ,   安元慎一郎 ,   橋本隆

ページ範囲:P.360 - P.362

要約 52歳,女性.外陰部に瘙痒を伴い,白色を呈する丘疹ならびにびらん局面が出現し難治のため受診した.同部の白色局面から施行した生検組織では表皮に過角化,液状変性がみられ,真皮上層の血管拡張と浮腫および透明帯の形成,血管周囲性の炎症細胞浸潤を認め,硬化性萎縮性苔癬と診断した.塩酸プラゾシン(0.5mg)1錠とアルファカルシドール(0.5μg)1錠の内服と吉草酸酢酸プレドニゾロン軟膏の外用により治療を開始したところ約1週間で瘙痒感はほぼ消失し,白色局面の範囲も縮小した.本疾患の治療として塩酸プラゾシンとアルファカルシドールの併用療法は有用と考えられた.

臍部子宮内膜症(silent type)の1例

著者: 尾上智彦 ,   堀和彦 ,   中川秀己

ページ範囲:P.363 - P.366

要約 46歳,女性.初診3か月前より臍部の青黒色調を呈する自覚症状のない皮下結節に気づいた.超音波画像所見では臍部の皮下に直径約8mm大の囊胞性腫瘤を認めた.病理組織学的所見では真皮内に囊胞様構造があり,その壁は1~数層の円柱上皮で構成されていた.免疫組織学的には抗プロゲステロンレセプター抗体および抗エストロゲンレセプター抗体が陽性であった.以上より臍部子宮内膜症と診断した.患者の希望により無治療で経過観察中である.自験例を含めた,過去20年間の皮膚子宮内膜症の本邦報告例81例に関して,若干の検討を加えた.

呼吸器症状を伴ったeosinophilic cellulitisと考えた1例

著者: 石渕裕久 ,   長谷川道子 ,   豊田愛子 ,   田村敦志 ,   石川治

ページ範囲:P.367 - P.370

要約 69歳,男性.頭部,顔面,頸部,四肢にびらん,水疱を伴う浮腫性紅斑が出現した.臨床検査所見では末梢血の好酸球増多とCRP,IgEの高値がみられた.病理組織像では表皮直下の水疱と真皮全層に多数の好酸球浸潤があったが,明らかなflame figureはみられなかった.プレドニゾロン内服により皮疹は速やかに軽快し,好酸球数,CRP値も正常化した.しかし,プレドニゾロン漸減・中止3週後に皮疹が再然し,それに伴って気管支喘息症状が出現した.喘息症状はアレルギー性肉芽腫性血管炎に特徴的であるが,eosinophilic cellulitisでは稀と思われ報告した.

低ナトリウム血症を発症した高齢者の汎発型帯状疱疹の1例

著者: 増田智一 ,   加藤英行 ,   出光俊郎

ページ範囲:P.371 - P.374

要約 89歳,男性.初診の2週間前から右上肢の疼痛があり,初診の2日前に同部に水疱が出現し急速に全身に拡大したため,近医より当科紹介受診となる.初診時,全身に小豆大前後の水疱,紅斑を認め,特に右上肢に皮疹は強かった.汎発型帯状疱疹と診断し,入院後ゾビラックス (R)の点滴治療を開始した.皮疹は軽快していったが,経過中意識障害が出現し低ナトリウム血症を認めた.帯状疱疹と低ナトリウム血症の関連に関しての皮膚科領域の報告は少ない.水痘・帯状疱疹ウイルスが髄液内に侵入し,下垂体後葉からの抗利尿ホルモン(ADH)分泌を亢進させ,ADH不適合分泌症候群(SIADH)を発症させる可能性を考えた.

マンソン孤虫症の1例

著者: 市橋かおり ,   北嶋渉 ,   小西啓介 ,   山田稔

ページ範囲:P.375 - P.377

要約 77歳,女性.初診の約1か月前より右前腕に軽度瘙痒を伴う皮下結節が出現し,近医より当科を紹介され受診した.初診時,右前腕屈側に長さ約10cmの発赤を伴った皮下結節を認め,末梢側より生検を行った.病理組織学的所見にて,マンソン裂頭条虫のプレロセルコイドを検出し,患者血清を用いたdot-ELISA法でもマンソン孤虫に陽性を示したため,マンソン孤虫症と診断した.生検後速やかに皮下結節は消退した.感染経路としては,鶏ささみの生食が疑われた.

Laugier-Hunziker-Baran症候群の3例

著者: 桜井直樹 ,   小方冬樹

ページ範囲:P.378 - P.381

要約 症例1:71歳,男性.60歳頃より口唇・頰粘膜・硬口蓋・舌・手足・爪甲・亀頭部に色素斑が多発.症例2:73歳,女性.61歳より口唇・口腔粘膜・硬口蓋・舌・手指に色素斑が多発.症例3:84歳,男性.発症時期は不明だが口唇・頰粘膜・爪甲に色素斑が多発.3例とも同症および消化管ポリポーシスの家族歴はみられなかった.2例で実施した副腎機能検査にてAddison病は否定的であり,内視鏡検査にてポリポーシスはみられなかった.以上よりLaugier-Hunziker-Baran症候群と診断した.本邦では自験例も含めて過去に50例の報告がある.

周期性血小板減少症に生じた皮下血腫の1例

著者: 荻田あづさ ,   加藤篤衛 ,   野呂佐知子 ,   片山美玲 ,   川名誠司

ページ範囲:P.382 - P.385

要約 63歳,男性.48歳時に巨核球減少性周期性血小板減少症と診断され,約4週間周期で血小板数が減少していた.初診の3日前に左大腿部を強打し,徐々に同部位が腫脹した.初診時,血小板3.7×104/μl,左大腿内側に13×12cm大の紫紅色の皮下腫瘤を認めた.臨床および画像所見から皮下血腫と診断した.血小板数の変動を予測し,血小板数の上昇時期に血腫除去術を施行した.周期性血小板減少症に伴う皮下血腫に対し,全身麻酔下にて血腫除去術を施行した本邦報告例はこれまでにはないが,血小板数の変動に注意しながら,血腫除去術を施行すれば予後良好であると思われる.

画像診断が術前診断に有用であった足底表皮囊腫の1例

著者: 竹村典子 ,   藤井紀和 ,   田中俊宏

ページ範囲:P.386 - P.388

要約 21歳,女性.小学生頃より右足底のしこりを自覚していた.初診時,右第3中足骨骨頭部の足底に皮下硬結を触知した.超音波検査にて真皮から皮下脂肪組織内に11×9.5×4.5mm大の低エコーの腫瘤を認めた.腫瘤の境界は明瞭で,後方エコーは増強し,側方陰影も明らかであった.MRIでは,皮下脂肪組織内にT1強調画像でやや低信号,T2強調画像でやや高信号の境界明瞭な腫瘤を認め,周囲はT1,T2強調画像ともに低信号を示す被膜に包まれていた.以上の画像所見より足底表皮囊腫と診断し,局所麻酔下にて摘出した.病理組織学的にも,異型性のない扁平上皮に覆われた囊胞で内部には角質が充満しており,足底表皮囊腫と診断された.術前の画像検査で,囊腫の形態や局在,周囲組織との関係を確認することにより,安全かつ容易に足底表皮囊腫を摘出できた.

陰囊から会陰部にかけて多発したmedian raphe cysts

著者: 高山かおる ,   丸山隆児

ページ範囲:P.389 - P.391

要約 10歳,男児.陰囊から会陰部の正中線上に小指頭大までの囊腫状皮内結節が数珠状に連なって多数認められた.組織学的には表皮構造を壁とする囊腫と偽重層上皮様の類円柱上皮を壁とする囊腫が混在し,おのおの胎生期の表皮成分ならびに尿道上皮成分に由来すると考えられた.このような二種類の囊腫壁が混在する症例はきわめて稀であると思われる.

円形脱毛症を伴った石灰化上皮腫の1例

著者: 三井湖麻江 ,   野中浩充 ,   末木博彦 ,   飯島正文

ページ範囲:P.392 - P.394

要約 78歳,女性.約半年前に頭頂部に小結節が出現し,直後より周囲に脱毛斑を生じた.初診時,頭頂部やや左に径3cmの円形脱毛斑を認め,中央に径5mm,境界明瞭な骨様硬の皮下結節を触知した.自覚症状はなかった.石灰化上皮腫,alopecia neoplasticaなどを疑い結節を切除した.組織学的には,皮下に線維性被膜を有し,主に陰影細胞からなる腫瘍塊がみられ,周囲に一部リンパ球の浸潤が認められた.腫瘍近傍の休止期毛周囲には巣状のリンパ球浸潤があり,円形脱毛症を伴った石灰化上皮腫と診断した.脱毛の原因として,腫瘍免疫の関与も考えられた.切除9か月後より軟毛の再生がみられているが,1年後の現在も脱毛斑が残存している.

Plexiform fibrohistiocytic tumorの1例

著者: 西村啓介 ,   安齋眞一 ,   福本隆也 ,   井上智子 ,   塩見達志 ,   水谷仁 ,   木村鉄宣

ページ範囲:P.395 - P.398

要約 29歳,女性.左肩甲骨部腫瘤切除術を施行した.組織学的には主に組織球様細胞および破骨細胞様巨細胞からなる小結節と,主に線維芽細胞様細胞からなる腫瘍細胞束が特徴的な叢状構造を形成していた.さらに免疫組織化学的にはvimentinが上記3種類の細胞とも陽性,CD68は組織球様細胞および破骨細胞様巨細胞で陽性であったことから,plexiform fibrohistiocytic tumor(PFT)と診断した.PFTは,局所再発や全身転移をきたす可能性を有する低悪性度の間葉系腫瘍であり,定期的な全身検索を含め,今後の十分な経過観察が必要であると考えた.

皮膚に限局したLangerhans cell histiocytosisの1例

著者: 山本文平 ,   藤井紀和 ,   杉浦久嗣 ,   太田茂 ,   山口玲子 ,   神谷博

ページ範囲:P.399 - P.401

要約 3か月,男児.体幹に生じた紅斑に対し,ロコイド(R)軟膏,プロパデルム(R)軟膏を外用していたところ,外用に反応しない常色から紅色の丘疹が下腹部,腰部に出現し,体幹全体に拡大した.全身状態は良好であった.病理組織検査にて表皮から真皮中層にかけて,核が大型で切れ込みのある組織球様細胞の浸潤がみられた.この細胞は,S-100蛋白陽性,CD1a陽性であり,Langerhans cell histiocytosisと診断した.全身検索では異常はみられず,皮膚限局型と考え,ステロイド軟膏外用のみで加療した.6か月後には皮疹は消失し,現在も再発はみられない.

乳房外Paget病の術後,血清CEA高値により多発性大腸癌が発見された1例

著者: 吉田益喜 ,   川田暁

ページ範囲:P.402 - P.405

要約 69歳,男性.陰囊部Paget病で拡大切除を行った.術前精査において転移を示す所見はなかった.術後6か月の血清CEA値が高値を示したため全身精査を行ったが,転移を示す所見はなかった.下血,血便,便柱の細化などはみられなかったが,大腸癌を疑い,内視鏡を行った結果,S状結腸と直腸の2か所に腺癌がみつかり外科で手術した.乳房外Paget病と大腸癌の合併に関して血清CEA値を含め考察した.

尿管癌の皮膚転移と考えた1例

著者: 稲垣千絵 ,   野田智子 ,   柴垣亮 ,   池田佳弘 ,   井上亘

ページ範囲:P.406 - P.408

要約 76歳,男性.夜間頻尿にて2003年10月1日当院泌尿器科を受診し,右尿管癌および傍大動脈リンパ節,縦隔リンパ節,Virchowリンパ節,左腸腰筋リンパ節転移と診断された.その後,化学療法が行われ,画像上評価可能病変は消失した.しかし,2004年6月初めに癌性胸水が出現し,7月に上胸部に圧痛を伴う板状硬の紅斑が生じた.皮膚生検の結果,尿管癌の皮膚転移と考えられた.尿管癌の皮膚転移はきわめて稀である.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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