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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科60巻5号

2006年04月発行

文献概要

Derm.2006

医療費

著者: 高橋英俊1

所属機関: 1旭川医科大学皮膚科

ページ範囲:P.71 - P.71

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今,日本では医療費削減の旗印のもと,年々患者さんの医療費負担が増してきている.以前から乾癬外来を受け持っている関係から数多くの乾癬患者と接してきて感じていることは,活性型ビタミンD3剤はそれほどでもないが,シクロスポリンを使用する機会が徐々にではあるが減ってきている点である.これは決して重症の患者さんが減ってきているわけではない.投与したくても高額な治療費となるため,患者さんのほうから拒否されることが多いからである.確かに,毎回の処方で2~3万円の治療費を払うことは並大抵のことではない.したがって,新規にシクロスポリンを処方する際には職業を聞き,身なりを見つつ頭の中で大体の年収を想定し,シクロスポリンについて切り出すことが多い.そして,説明を受けて飲んでみようかと思ってもその金額に驚き迷っている場合には,だまされたと思って1か月飲んでみては,とまるで相手の財産をねらう詐欺師のような調子で語ってしまうことがある.ちなみに最近処方した患者さんは,お坊さんと会社のお偉いさんであった.

 しかし例外があった.それは生活保護の患者さんである.彼らは医療費が全額補助されているため,シクロスポリンを処方しても何ら問題はないのである.このようなことを書いてはお叱り受けるかもしれないが,年齢,身なり,生活状況などを目の当たりにして,なぜこの人は生活保護の給付を受けられたのだろうかと,いささかの疑問を感じたことがあるのは小生だけなのだろうか? 決して生活保護制度が悪いとは思わないが,税金を納めているにもかかわらず高額医療のためシクロスポリン内服を我慢し,皮疹はひどい状態にもかかわらずいつも明るく振る舞っている患者さんを見ると,何か釈然としないものがある.考えてみれば小生の家庭においても,3人の子供は第二世代の比較的新しい抗アレルギー薬を内服しているが,小生と家内は薬価が10分の1の第一世代の抗ヒスタミン薬を使っている.こんなことをふと思ったのも,抗ヒスタミン薬で少し頭がボーッとしているせいなのだろう.(〒078-8510 北海道旭川市緑が丘東2条1丁目1-1)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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