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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科60巻5号

2006年04月発行

文献概要

Derm.2006

情報操作≠ムンテラ

著者: 門野岳史1

所属機関: 1東京大学医学部皮膚科学教室

ページ範囲:P.90 - P.90

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この情報過多の世の中,自らの体験より得られる情報量は些少で,ほとんどの情報はメディアなどの他者に頼らざるをえない.新聞はまだしも週刊誌,ましてやインターネットとなると,そこで得られた情報の信憑性ははなはだ心許なく,他人からの伝え聞きも話半分にしておく必要がある.とはいえ自分が知らないことは無尽蔵であり,仕事や日常生活でのさまざまな局面においてその道の人の助言は欠かせないものである.卑近な例では何か商品を購入する場合,これには情報操作という側面があり,うっかりすると売り手の言いなりになって物を買う羽目になる.それなら,自分で勝手に選べばという話になろうが,あやふやな知識で適当に物を買ってもなかなかうまくいかない.中途半端な知識ではその分野の全体像が見えていないため,結果として生兵法は大怪我の元となる.

 最近,医師の患者に対する説明義務がよく問題にされ,患者主体の医療が求められている.これは患者さんに正確な病状を伝え,治療の選択肢を示し,自ら決断してもらうものだと理解している.医師なら誰でも患者さんに病状説明および治療の選択肢について説明することが多々あろう(いわゆるムンテラ).できるだけ主観を交えないよう複数の治療の選択肢を示すのであるが,今でも多くの場合は「先生にお任せします」もしくは「先生はどれがいいと思いますか?」となるため,あらかじめどの治療法を推奨するか決めておかないといけない.自分で治療法を選ぼうとする人も,説明すればするほどどの方法を選んだらよいのか迷ってしまい,最終的にはこちらからの誘導により治療法が決まることも多い.また,患者さん一人一人に応じて話す内容を吟味する必要があり,厳しめに病状を説明したり,逆にあまり悲観的にならないよう留意することもある.そういった意味でムンテラは情報操作の性格を帯びるし,必要悪の側面ももつが,だからといってその重要性が損なわれるわけではない.自分の病気のことをよく調べている患者さんは確かに増えてきている.しかし,いかに医療情報が世の中に氾濫しているとはいえ,これらの情報を統合して医療技術とともに患者さんが理解し納得ができるよう提供するのは医師の役目にほかならないと考えるし,そうありたいと思う.(〒113-8655 東京都文京区本郷7-3-1)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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