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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科60巻5号

2006年04月発行

文献概要

Derm.2006

皮膚の“現象”から思いめぐらすこと

著者: 浅越健治1

所属機関: 1岡山大学医学部皮膚科

ページ範囲:P.142 - P.142

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皮膚疾患では,その疾患独自の病態や患者の遺伝的背景にもとづいて,種々の刺激により興味深い随伴症状や現象が引き起こされます.何々現象とか徴候と呼ばれるものは数多く,人の名前が付いたものだけでもKoebner,Auspitz,Nikolsky,等々たくさんあります.一度確立してしまえば当り前になってしまいますが,何気なく見逃してしまいそうな症状を,普遍的な現象として捉えるには眼力が必要です.現在では近代的検査法が次々と導入されて病態が解明されるとともに,新たな皮膚疾患の診断法や治療法が開発されてきています.私が皮膚科医になってからのおよそ15年でもその進歩はめざましく,皮膚科はいっそう楽しくなってきています.しかし,目で見て違いをばっちり見抜く力,そして考える力がその基盤として必要なのは言うまでもありません.

 Koebner現象は1876年にHeinrich Koebnerが記載したのが始まりだということです.最近私が研修に行った施設では,AGR129マウスという免疫抑制マウスを用いて乾癬の病態を研究していました.このマウスに乾癬患者の無疹部皮膚を移植すると,数週間で臨床的にも組織学的にも乾癬にきわめて類似した病巣が形成されます.この反応には移植した皮膚の中に常在するTリンパ球が必須で,さらにTNF-αをブロックすることで抑制されます1).これも一種のKoebner現象で,皮膚移植というtraumaticな操作が病変を形成させるのではないでしょうか.そしてそのkey factorがサイトカインの異常だけでなく,乾癬の無疹部の皮膚に常在するT細胞であることは意外でした.固定薬疹でもそうであるように,皮膚に常在するT細胞はいろいろな皮膚疾患で重要な役割をなしているのかもしれません.余談ですが,最近このモデルを使って,形質細胞様樹状細胞とインターフェロンαが乾癬の病態に深く関与することも証明されています2)

参考文献

1) Boyman O, et al: J Exp Med 199: 731, 2004
2) Nestle FO, et al: J Exp Med 202: 135, 2005

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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