icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科60巻5号

2006年04月発行

文献概要

Derm.2006

最近経験した皮膚筋炎2症例

著者: 川内康弘1

所属機関: 1筑波大学大学院人間総合科学研究科皮膚病態医学分野

ページ範囲:P.159 - P.159

文献購入ページに移動
皮疹をもとに関連する全身病の存在を診断すると,患者さんや紹介(他科)医からは感謝,称賛され,ある意味で皮膚科医冥利に尽きる瞬間であるが,現実には皮疹は多彩・変化自在で,正しい診断を下すのは容易ではなく,私などは誤診や見逃しを繰り返しているのではないかといつも危惧している.しかし,多彩な皮疹を生じる全身病のなかでも,皮膚筋炎は比較的定型的な皮疹を呈することが多く,皮疹から診断のつきやすい全身病の一つである.

 この何か月かの間に2例の新患を診る機会があった.1例目は,近所の皮膚科,内科で「湿疹」といわれ,薬を塗っているが治らないといって来院された患者さんで,診察すると,手足や背部に典型的な皮膚筋炎の皮疹のほかに見事な「彫りもの」があった.若い頃からのヘビースモーカーで,この数か月咳嗽と血痰があるとのことで,早速胸部レントゲンを撮ると,素人の私でもわかる肺門部結節影と無気肺像があった.残念ながら進行した小細胞癌で,入院から4か月ほどで亡くなられたが,入院のときは「○○組」と大書した花輪や花束が個室を埋めていて,受け持ち医と一緒にビビリまくったが,幸い初診時に「先生は,わての皮疹を見るなり膠原病どころか癌も言い当てた名医でんなあ」との絶大な信頼を得ていたので,事なきを得た.この患者さんは,組長クラスの偉い方で,死を自覚しながらも終始気丈にふるまい,病院にも迷惑をかけないよう気を遣い,組のこともきれいに済ませてから亡くなられた.一度,入院中に,博多出張で2~3日病院を留守にしたことがあり,帰ってからそのことを伝えると,「なんや,前もって言っといてもらったら,ウチの若いモンに中州で世話させましたのに……」といわれ,こちらとしては苦笑いするしかなかったが,「いったいどんな世話?」と少し想像してしまったのを覚えている.2例目は,神経内科ですでに皮膚筋炎と診断され,プレドニン(R)を1日10mg服用していたが,あるとき萎縮性紅斑が急性増悪し,全身真っ赤に腫れて,痛みと痒みで夜も眠れないとのことで当科を紹介受診した患者さんである.外来でのステロイド外用は全く効果がなく,プレドニン(R)を30mgまで増量したがこれも効果なし.入院してもらい,きっちり外用すると多少落ち着いたが,やはり勢いは止まらない.セカンドチョイスとして,DDS75mgを内服してもらうと,幸いこれが著効して紅斑,腫脹は速やかに消退して色素沈着となり,自覚症状もきれいさっぱりなくなった.患者さんに感謝されたことはもちろんだが,もともと診ていたベテランの神経内科医がわざわざ電話をかけてきて「皮膚筋炎の患者は何人も診ているが,いままでレクチゾール(R)なんて薬は知らなかった.ほかの内科医も知らないと思うので,こんなに効くなら神経内科の雑誌に報告してくれ」と言われたのは,やはり皮膚科医冥利につきる瞬間であった.(〒305-8575 茨城県つくば市天王台1-1-1)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?