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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科60巻7号

2006年06月発行

雑誌目次

連載

Dermoscopy Specialistへの道Q&A(第27回)

著者: 斎田俊明 ,   古賀弘志

ページ範囲:P.541 - P.543

Qどんなダーモスコピー所見が認められますか?

診断は何でしょう

臨床情報

 75歳,女性.10年以上前,左頬に黒褐色の病変が生じた.1年ほど前から拡大が目立ち,数か月前から隆起してきた.

 初診時,左頬の中央部に大きさ6×4mmの,青黒色の扁平に隆起する局面状皮疹が認められた(図2).外形はやや不整だが,色調の濃淡は目立たない.周囲に色素斑は認められない.

アメリカで皮膚科医になって(9)―From Japan to America:American Life as a Physician-Scientist

著者: 藤田真由美

ページ範囲:P.644 - P.645

チームワークの皮膚科外来 (Teamwork)

 医療は,言うまでもなく,チームワークである.入院,手術はもちろん,外来診察でもチームワークは欠かせない.特にアメリカの医療では,保険や訴訟問題があるため,円滑で迅速な診療を行うためには医師以外に多数のスタッフが必要となってくる.コロラド大学病院皮膚科外来では,15人の医師と12人のレジデント以外に現在41人の皮膚科外来スタッフが常勤していて,私たちの診察を補助している.予約受付,診察室窓口受付,看護補助,看護師,術前保険審査,生検スライド作製(蛍光抗体とMohs手術用),保険請求,電話相談,カルテ管理などおのおのの役割は様々であるが,役割分担が明確である.実際に診察の流れを追ってみると,それぞれの役割と必要性がよくわかる.

 以前にも書いたように,皮膚科専門医の診察を受けるためにはまず主治医からの紹介が必要となる.これらの書類やカルテのコピーは,まず予約受付係の元へ送られる.その後,予約受付係は,電話で患者と予約日を決めたり変更したり,また診察日前日には予約の電話確認などをする(図1).患者は,診察日当日はまず受付で,問診票の記載,保険会社の情報を提出して,診察料の自己負担金(大抵の保険では,10~30ドルである)を支払う(図2).自己保険の場合には,最低診察料の全額(150ドルぐらい)を払わないと診てもらえない仕組みになっているが,無保険で低所得者の場合には,政府や州の救済制度に申し込んで登録してあればこれらは免除される.

今月の症例

高齢男性に発症したcutaneous Crohn's diseaseの1例

著者: 加藤まどか ,   鈴木洋介 ,   宮川俊一 ,   小井戸則彦

ページ範囲:P.545 - P.548

 78歳,男性.2002年10月頃より腹痛,下痢,下血,発熱,関節痛が出現したため入院した.経過中,両上肢,手背,手指,顔面に圧痛を伴う紅色丘疹ないし結節が多発した.結節部の病理組織では真皮全層から皮下脂肪織にかけての類上皮細胞,リンパ球からなる非乾酪性肉芽腫を認めた.腸生検にてCrohn病と診断されたことから,皮膚病変をcutaneous Crohn's diseaseと診断した.サラゾスルファピリジン2g/日内服により発熱,腹部症状の軽快とともに,皮疹も消退した.

症例報告

ステロイド投与により著明な改善を認めた早期のgeneralized morpheaの1例

著者: 伊藤宗成 ,   簗場広一 ,   川瀬正昭 ,   中川秀己

ページ範囲:P.550 - P.553

 64歳,男性.2004年9月より心窩部に自覚症状のない紅斑が出現,徐々に左鎖骨上部や両上肢などに散在性に増数し,その後,紅斑部に一致して徐々に光沢・硬化が出現した.病理組織学的には真皮全層の膠原線維の膨化・増生,真皮血管周囲のリンパ球主体の炎症細胞浸潤を認め,臨床所見と合わせてgeneralized morpheaと診断した.紅斑が広範囲に及び,硬化の進行を認めたため,早期から中等量ステロイド全身投与を開始したところ,紅斑・硬化ともに著明に改善した.投与中止後も再発はみられていない.

エトレチナート内服が有効であった皮膚硬化型慢性GVHDの小児例

著者: 田中英一郎 ,   竹之内辰也 ,   浅見恵子

ページ範囲:P.554 - P.557

 6歳,男児.1歳時に慢性骨髄性白血病を発病した.2回の同種骨髄移植後に掌蹠の角質増生と手指の屈曲拘縮,間擦部の皮膚硬化を生じ,皮膚硬化型慢性GVHDを発症した.ステロイドおよび免疫抑制剤による治療に抵抗性で進行したため,エトレチナート1日10mgの内服を開始した.数か月後には皮膚硬化の改善と関節可動域の拡大を認め,漸減にても症状の再燃はみられなかった.エトレチナートに起因すると思われる有害事象はみられず,本薬剤は小児であっても皮膚硬化型慢性GVHDの治療の有効な選択肢になりうると考えた.

トラニラストが奏効した汎発性環状肉芽腫の1例

著者: 大嶋英恵 ,   花田勝美 ,   大石祐子

ページ範囲:P.558 - P.561

 71歳,男性.糖尿病でインスリン治療を受けていたが,軀幹,上肢にそう痒を伴う丘疹が多数出現した.他医で加療を受けていたが難治であった.一時,眼科での強膜炎の治療でステロイド全身投与を受け,皮疹は軽快した.しかし,再び皮疹が増悪し,難治のため受診した.病理組織像は,真皮上層に変性した膠原線維を認め,リンパ球や組織球,類上皮細胞が帯状に浸潤し,一部では巣状に肉芽腫を形成し,多核巨細胞も散見された.明らかなpalisading granulomaは認められなかった.糖尿病に合併した汎発性環状肉芽腫と診断した.トラニラスト300mg/日内服,吉草酸ジフルコルトロン外用で治療を開始した.4週間後にはそう痒感が減少し,8週間後には一部の丘疹で平坦化し,色素沈着となった.12週間後には皮疹の新生は著明に減少した.16週間後には,すべての皮疹は色素沈着のみとなった.治療開始から1年を経過し,現在もトラニラスト内服中であるが再発は認められない.

マキサカルシトール軟膏が奏効した掌蹠点状角化症の1例

著者: 佐藤まどか

ページ範囲:P.562 - P.564

 27歳,男性.両手掌に自覚症状のない角化性小丘疹が多発していた.家族内に同症はない.丘疹の病理組織像では不全角化を示す角柱が認められた.掌蹠点状角化症と診断し,マキサカルシトール軟膏を2か月間外用したところ皮疹はほぼ消失した.

感染性心内膜炎により上下肢に紫斑を生じた1例

著者: 鈴木琢 ,   皆見春生

ページ範囲:P.565 - P.567

 62歳,男性.高血圧,僧帽弁逸脱症の既往あり.初診2週間前より黄疸および両下肢の浮腫・紫斑が出現した.両下肢のいわゆるpalpable purpuraは組織学的に出血と血管周囲性に好中球主体の炎症細胞浸潤を呈したが,核破砕像はなかった.蛍光抗体法では真皮上層の血管壁に免疫グロブリンの沈着をみた.心臓超音波検査,細菌培養などより感染性心内膜炎と診断され,血液透析と抗生物質の点滴を施行した.紫斑は数日で消失した.

潰瘍性大腸炎に伴った結節性紅斑―深部静脈血栓症を併発した1例

著者: 近藤亨子 ,   金沢博龍 ,   有川順子 ,   檜垣祐子 ,   川島眞 ,   望月直子 ,   八巻隆

ページ範囲:P.568 - P.571

 28歳,男性.初診の約3週間前より,左下腿に熱感を伴う手掌大の硬結を触れる紅斑が出現した.病理組織学的所見は葉間隔壁と小葉内の出血像と血管周囲のリンパ球,組織球の浸潤を認め,巨細胞も散見された.下痢,血便があり,精査の結果,全結腸型潰瘍性大腸炎の診断のもとに,サラゾスルファピリジン4500mg/日,プレドニゾロン50mg/日を開始した.潰瘍性大腸炎は軽快したが紅斑は遷延し,一部紫斑となり潰瘍化した.カラードップラーエコーで左腓骨静脈,左後脛骨静脈,左ひらめ筋静脈に深部静脈血栓症を併発しており,潰瘍形成の原因と考えられた.

単クローン性IgA血症を伴った壊疽性膿皮症の1例

著者: 山本都美 ,   田辺健一 ,   坪井廣美

ページ範囲:P.572 - P.575

 89歳,女性.29年前より臍ヘルニア,腹壁瘢痕ヘルニアがあり,ときどき腹痛などのイレウス症状が出現する.また,初診と同年に舌癌の根治術を施行されている.患者は,右下腿に膿瘍が出現し,同部が潰瘍となり拡大した.組織学的に真皮の壊死と好中球浸潤が認められ,臨床・病理像より壊疽性膿皮症と診断した.基礎疾患に単クローン性IgA血症の合併が認められた.炎症性腸疾患以外の消化管病変がIgA血症を引き起こし,壊疽性膿皮症発症にも関与するといわれている.自験例も臍ヘルニア,腹壁瘢痕ヘルニア,単クローン性IgA血症の合併が認められた.また,舌癌との合併は過去1例あり,自験例における壊疽性膿皮症発症原因と何らかの関係も示唆された.PSLとネオーラル(R)内服で軽快した.

腎移植後に発生した乳房Paget病の1例

著者: 荻田あづさ ,   竹崎伸一郎 ,   矢部朋子 ,   川名誠司

ページ範囲:P.576 - P.578

 54歳,女性.1989年(40歳時)に腎移植を受け,移植後より免疫抑制剤(シクロスポリン,アザチオプリン,メチルプレドニゾロン)を長期服用していた.2004年6月より,カリニ肺炎にて当院内科に入院した.入院中,右乳輪の変形と右乳頭部角化性変化に気づき,7月当科を受診した.受診時,右乳頭部の表皮は疣贅状,乳嘴状に角化しており,そう痒はなかった.病理組織像は表皮内に胞体の明るいPaget細胞を認めた.乳房Paget病と診断し,外科にて非定型的乳房切除術を施行した.術後組織標本は,一部に浸潤性の乳癌を認めたが,間質浸潤は軽度であり乳癌取扱い規約上,乳房Paget病と診断された.

腎移植患者に生じたMycobacterium chelonae皮膚感染症の1例

著者: 赤坂玲 ,   福屋泰子 ,   檜垣祐子 ,   川島眞

ページ範囲:P.579 - P.581

 63歳,男性.61歳時に腎移植術を受け,免疫抑制剤を内服中であった.2003年12月,左外果下方に角化局面が出現し,2004年1月,同部位に圧痛を伴うようになった.1週間後には,拇指頭大の発赤と熱感を伴い,中央は暗紫色調を呈してきた.蜂窩織炎の診断のもと抗生剤の内服投与を行ったが軽快しなかった.皮膚病理組織像では真皮から皮下脂肪織に好中球,核破片を主体とする膿瘍の形成を認め,その近傍にZiehl-Neelsen染色で赤染する桿菌を認めた.抗酸菌培養集菌法にてガフキー2号を検出し,分離株はDNA-DNA hybridization法にてMycobacterium chelonaeと同定した.M. chelonae皮膚感染症と診断し,塩酸ミノサイクリンの内服を行い軽快した.

汎発化をきたしたHallopeau稽留性肢端皮膚炎の1例

著者: 夏賀健 ,   阿部理一郎 ,   浜坂明日香 ,   猪熊大輔 ,   横田浩一 ,   清水宏

ページ範囲:P.582 - P.584

 38歳,男性.初診の3か月前に軽度の発熱を伴う感冒様症状が出現し,その10日後から両手爪部および爪周囲に膿疱を伴う紅斑が出現した.Hallopeau稽留性肢端皮膚炎と診断し,エトレチナート内服にて症状は一時軽快した.しかし,経過中にエトレチナートを自己判断で中止していたため,5か月後に汎発化をきたした.再度エトレチナート内服にて皮疹は速やかに軽快した.

扁桃マッサージで皮疹が再燃したアナフィラクトイド紫斑病の1例

著者: 伊藤章希 ,   福井利光 ,   河田守弘 ,   渡辺大輔 ,   玉田康彦 ,   松本義也 ,   坂野立幸 ,   朝岡昭子

ページ範囲:P.585 - P.588

 53歳,女性.両下肢に紫斑が出現した.他医でアナフィラクトイド紫斑病と診断され,ベタメタゾン内服で加療を受けたが,ベタメタゾンを減量したところ両上肢にまで紫斑が拡大し,膝関節痛も出現したため当科入院.病巣感染検索のため扁桃誘発試験を施行した.誘発試験の前後で白血球数・赤沈・体温の上昇はみられなかったが,数時間後に紫斑の再燃を認め,病理組織学的には壊死性血管炎の像であった.扁桃摘出後,紫斑は改善傾向にあり,腎症の合併も認めていない.

歯科衛生士に生じた水銀アレルギーによる皮膚炎の1例

著者: 木村聡子 ,   川上民裕 ,   上西香子 ,   村上昇 ,   河瀬歩 ,   斉藤千尋 ,   溝口昌子 ,   相馬良直

ページ範囲:P.589 - P.591

 26歳,女性.歯科衛生士.歯科用アマルガムを切削した後,両手関節屈側,肘窩,腋窩に左右対称性のそう痒を伴う境界明瞭な浮腫性紅斑が出現し,一部には小水疱を混じていた.パッチテストにて,塩化第二水銀が陽性を示した.以上より水銀アレルギーによる皮膚炎と診断した.自験例は切削時に水銀蒸気に最も接触しやすい手関節付近に顕著に皮膚症状が認められた.このことは水銀によるアレルギー性皮膚炎の発症機序に,少なからず経皮吸収の関与があることを推測させた.

成人発症の腹壁遠心性脂肪萎縮症の1例

著者: 加賀谷早織 ,   藤村卓 ,   松永純 ,   相場節也

ページ範囲:P.592 - P.594

 33歳,女性.初診の約1年半前に,右側腹部にちくちくする痛みが出現し,同部位に圧痛を生じるようになった.消化器科,婦人科での精査では痛みに関連する異常所見はなかった.初診時,右側腹部に淡い紅斑と色素沈着を認めた.腹部MRIでは,患側の皮下脂肪織の菲薄化と腹直筋の腫大を認めた.病理組織学的所見では,皮下脂肪織小葉間への軽度炎症細胞浸潤が存在した.初診から1年半経過した現在も,患側病変は陥凹し,重圧感と圧痛が続いている.

Tufted angiomaの1例

著者: 田辺みどり ,   徳永千春 ,   新井春枝

ページ範囲:P.595 - P.597

 57歳,男性.数年前から頸部に紅色局面が出現した.左頸部から頸部正中にかけて,粟粒大の小結節の密集する紅色局面がみられ,拇指頭大の局面が数個散在し,最大のものは1.5×5cm大の帯状を呈する.局面は境界明瞭,辺縁不規則で弾性軟,浸潤を触れ,圧痛はない.病理組織は胞巣形成のある管腔様の裂隙を有する細胞増殖が真皮全層に島嶼状に散在し,tufted angiomaと診断した.tufted angiomaは血管芽細胞腫(中川)との異同が議論されるが,臨床,病理像から両者の特徴を検討した.

異物によるlymphocytoma cutisの1例

著者: 舛貴志 ,   角田孝彦

ページ範囲:P.598 - P.600

 54歳,男性.初診の2か月前から右上口唇外側に紅色丘疹が出現し,近くの外科で口唇ヘルペスや毛囊炎として加療されたが改善しなかった.初診時,右上口唇外側にびらんを伴う紅色丘疹を認め,皮下に硬結を触れた.抗生剤投与で軽快せず,皮下の硬結を含めて切除した.腫瘤の半割で内部に小金属片を認めた.組織学的にリンパ濾胞様構造を認め,異物により生じたlymphocytoma cutisと診断した.草刈機から跳ねた小金属片が原因と考えられた.

Schloffer腫瘤の1例

著者: 吉田理恵 ,   田中京子 ,   木花光 ,   新浩一 ,   佐藤勉 ,   軽部美佐子 ,   中村宣子

ページ範囲:P.601 - P.603

 33歳,女性.10年以上前に虫垂炎の手術の既往がある.1か月前より同手術の瘢痕部の皮下に圧痛を伴う腫瘤が出現した.35×40mm,境界不明瞭な硬い皮下腫瘤で,CT所見よりSchloffer腫瘤が疑われ摘出した.組織学的に皮下に急性および慢性炎症像と線維化を認め,Schloffer腫瘤と診断した.Schloffer腫瘤は腹壁の瘢痕付近に発生する慢性炎症性腫瘤で,手術後数年以上経過して起こることもある.発症誘因として,自験例では腫瘤出現と糖尿病の悪化がほぼ同時期に認められたことから,糖尿病による免疫力の低下が関与していると考えた.

多発性デスモイド腫瘍の1例

著者: 福井利光 ,   玉田康彦 ,   渡辺大輔 ,   松本義也 ,   原一夫

ページ範囲:P.604 - P.606

 15歳,男性.2001年頃より左前胸部の皮下硬結に気付き,放置していたが,右肩,左上腕外側および右腹部にも境界やや不明瞭で索状に触れる弾性硬の皮下腫瘤を触知するようになり来院した.MRIによる画像診断では,腫瘤の大部分が脂肪組織内に位置していたが,右肩では一部僧帽筋の筋膜と接していた.病理組織所見では,皮下組織を主座に核異型のない均一な紡錘形細胞が膠原線維を伴い束状に増生しており,免疫染色にてCD34,α-smooth muscle actin(α-SMA)が陰性であったことからデスモイド腫瘍と診断した.

陰囊に生じたverruciform xanthomaの3例

著者: 川村絵里奈 ,   内宮礼嗣 ,   米良健太郎 ,   吉井典子 ,   金蔵拓郎 ,   神崎保 ,   米良修二 ,   内宮禮一郎

ページ範囲:P.607 - P.610

 症例1:59歳,男性.約2年前より陰囊右側の腫瘤に気付き徐々に増大した.病理組織学的に乳頭腫状の表皮増殖,表皮直下に泡沫細胞の集塊と毛細血管の増生を認めverruciform xanthomaと診断した.症例2:55歳,男性.約1年前より陰囊左側に腫瘤が出現した.症例1と同様に病理組織学的にverruciform xanthomaと診断した.症例3:76歳,男性.2002年12月にverruciform xanthomaの診断で切除したが,2004年6月に再発した.本疾患の本邦発生例は196例報告されている.これらを基に発生部位,性別,数,年齢について統計学的考察を行った.統計上,男性の陰囊部の発生例が最も多く,そのなかでは,高齢者が多かった.

腰部に生じた有茎性基底細胞癌の1例

著者: 山本純照 ,   宮川幸子

ページ範囲:P.611 - P.613

 69歳,女性.30歳頃に,右腰部に指頭大の淡紅色,有茎性結節が生じた.自覚症状を伴わず,また潰瘍化も認めないため放置していたところ,65歳頃から急速に増大,表面も黒褐色調に変化したため当科を受診した.初診時,右腰部に有茎性,弾性軟,黒褐色調の4.5×3×2.5cmの結節を認めた.局所麻酔下で腫瘍を切除した.病理組織学的に,表皮から連続性に好塩基性の基底細胞様細胞が腺腔形成を伴って増殖し,腫瘍の辺縁部には柵状配列や裂隙形成も認めたため,腰部に生じ,有茎性を呈した腺様型基底細胞癌と診断した.有茎性を呈した基底細胞癌は,本邦で28例の報告があり,その特徴も検討した.

肛囲に発生した基底細胞癌の2例

著者: 唐川大 ,   桜井直樹 ,   鳥居秀嗣

ページ範囲:P.614 - P.617

 症例1:70歳,男性.発生時期不明だが,肛門左側に黒色の紅斑丘疹局面があり,抗生剤外用を受けたが,改善せず受診した.肛囲9時方向に15×10mm大,一部に米粒大の黒色結節を伴う,辺縁黒色調の不整形の紅斑局面が存在した.病理組織所見で基底細胞癌と診断した.症例2:74歳,男性.4年前に気付いた肛囲の黒色結節を主訴に受診した.初診時,肛囲の4時,8時および12時方向に最大径20mmまでの黒色結節各1つが存在した.病理組織所見で基底細胞癌と診断した.肛囲の基底細胞癌は比較的稀と考えた.

Pseudocondyloma of vulvaeの2例

著者: 松永亜紀子 ,   林一弘

ページ範囲:P.618 - P.620

 症例1:49歳,女性.2004年2月頃より排尿時違和感が出現し,2005年2月に当院産婦人科を受診した.腟前庭部に絨毛状の小丘疹を多数認めたことから,尖圭コンジローマが疑われ,当科を受診した.症例2:19歳,女性.初診の5日前より外陰部にそう痒感があり,当院産婦人科を受診した.小陰唇のひだ状の乳頭腫状病変を認め,当科を紹介され受診した.症例1,2ともに病理組織学的に粘膜固有層を取り囲む形で粘膜上皮が有茎性に増殖する像を呈した.上皮細胞に異型性は認めず,human papilloma virus (HPV)染色で表皮細胞は染色されなかった.以上よりpseudocondyloma of vulvaeと診断した.

巨大尖圭コンジローマの1例

著者: 黒川晃夫 ,   大津詩子 ,   森脇真一 ,   清金公裕

ページ範囲:P.621 - P.623

 84歳,男性.初診時,陰茎基部に径5×3.5cm,高さ1.5cm,褐色から紅色のカリフラワー状腫瘤が認められ,亀頭部尖端,包皮,陰茎中央,陰囊,鼠径部,肛門周囲には多数の疣贅状結節が散在していた.陰茎基部,亀頭部,包皮,陰茎の皮疹を生検し,病理組織検索の結果,すべて尖圭コンジローマと診断した.PCR法で病変からヒト乳頭腫ウイルス(HPV)11型を検出した.巨大腫瘤に対しては切除術を行い,難治性の小病変に対しては活性化ビタミンD3外用療法を試みた.本症例では尿道カテーテル挿入の際,あるいはオムツ交換時にHPV感染をきたし,オムツの着用による陰部の不潔や湿潤が尖圭コンジローマを急速に巨大化させた可能性が高いと考えた.

Trichophyton tonsuransによる小児頭部白癬の1例

著者: 川端栄理子 ,   谷口芳記 ,   藤広満智子

ページ範囲:P.624 - P.626

 8歳,男児.柔道歴あり.1か月前より頭部に円形脱毛を認め,近医にて加療するも確定診断に至らず,当科を受診した.初診時,左耳後部に鱗屑を伴う淡紅色局面あり,前頭部に広範囲にblack dot ringwormを認めた.KOH直接検鏡で毛内性大胞子菌を確認し,真菌学的検査によりTrichophyton tonsuransによる白癬と同定した.イトラコナゾールで加療し,軽快した.その後,再発を認めていない.

蜂窩織炎様皮疹を呈した皮膚クリプトコックス症の1例

著者: 北見由季 ,   島田洋子 ,   香川三郎 ,   飯島正文

ページ範囲:P.627 - P.630

 69歳,男性.右前腕に虫刺症様皮疹が出現,3日後に右前腕全体が腫脹した.その約2週間後に39℃台の発熱が出現,当院救急センターを受診し,蜂窩織炎の疑いで当科に依頼された.右前腕伸側から手背にかけて,大豆大のびらんを混じる境界明瞭な紫紅色斑あり.蜂窩織炎の典型疹ではないが,抗生剤を投与され帰宅した.翌日発熱が続いたため内科に入院.抗生剤点滴で解熱したが,内科的に確定診断に至らなかった.退院後,皮疹は変化がないため当科を再受診した.右前腕伸側から手背にかけて発赤面があり内部に小膿疱,痂皮,鱗屑が散在し隆起性局面が多発していた.組織所見では真皮上層の多数の小空隙中に胞子が集簇,散在していた.PAS染色は陽性.滲出液の墨汁標本で莢膜をもつ胞子を確認した.痂皮と滲出液の真菌培養にてCryptococcus neoformansと同定した.イトラコナゾール100mg/日の内服で皮疹は著明に軽快,18週間で投与を終了,現在再燃はない.

臨床統計

旭川医科大学最近17年間の掌蹠膿疱症の統計―扁摘術の有効性の検討も含めて

著者: 橋本喜夫 ,   飯塚一

ページ範囲:P.633 - P.637

 1988~2004年までの17年間に旭川医科大学皮膚科を受診した掌蹠膿疱症(palmoplantar pustulosis:PPP)229例について,特に合併症,治療法,喫煙歴および喫煙本数に焦点を絞り統計的に観察した.治療法については扁桃摘出術を施行した27例の有効性にも検討を加えた.合併症は扁桃炎,糖尿病が多く,扁摘の有効性は70%以上であった.喫煙率は女性で93.8%と高率で,たばこ指数も400以上とヘビースモーカーであることが確認された.合併症としての扁桃炎の存在,扁摘の有効性から病因としての感染症の関与が推定される.9例の患者にHLA抗原検索も施行し,その結果から本邦のPPPは欧米における膿疱性乾癬の限局型という概念とは異なる疾患単位である可能性が示唆される.

治療

小児のアトピー性皮膚炎の外用維持療法―ヘパリン類似物質製剤の有用性

著者: 根本治 ,   森川玲子 ,   安田秀美 ,   川島眞

ページ範囲:P.638 - P.642

 小児のアトピー性皮膚炎に対する寛解維持療法としてのヘパリン類似物質製剤の有用性を検討するため,アトピー性皮膚炎に起因する炎症が鎮静し重症度が軽微な患児18例を対象に,ヘパリン類似物質製剤あるいはブフェキサマク製剤を1日2回4週間塗布し,皮膚所見(乾燥,落屑)の推移および炎症の再燃について左右比較を行った.その結果,18例中15例では4週間にわたり寛解が維持され,3例のみ4週後に両試験薬剤ともに塗布部位に再燃が認められた.また,皮膚所見の推移において両試験薬剤塗布部位ともに改善が認められ,その効果に差はみられなかった.今回,ヘパリン類似物質製剤が寛解維持に対してブフェキサマク製剤と同等の効果が得られたことから,小児のアトピー性皮膚炎の寛解維持療法として,ヘパリン類似物質製剤をはじめとする保湿剤の使用が有用であると考えた.

印象記

4th Georg Rajka International Symposium on Atopic Dermatitisに参加して

著者: 橋爪秀夫

ページ範囲:P.646 - P.648

 フランスのボルドーから約60kmに位置するアルカッションは,フランスの高級避暑地であり,海岸線を多くのカフェやレストラン,高級ホテルが並んでいる.2005年9月15~17日,季節はずれのこの地で,4th Georg Rajka International Symposium on Atopic Dermatitis (ISAD)が開催された.浜松医科大学からは私と瀧川教授,そして聖隷三方原病院皮膚科の白濱茂穂先生と藤枝市立病院皮膚科の坂本泰子先生の4名一行が到着したのは,14日の夜遅くであった.軽い夕食をとってから,ホテルの床に就いた.

 第1日目.会場のコングレスセンターは,町の真ん中にある.小さな会場は,各国から集まった参加者で驚くほど賑わっていた.150名程度であろうか.Georg Rajka先生は,かなりのお歳とお見受けしたが,お元気そうであった.ADに関して著名な先生方の勢揃いする会であるにもかかわらず,こぢんまりとした和やかな学会である.しかし私は,この第1日目が晴れの発表の舞台で,しかも英語で発表することが久しくなってしまっていたので,早朝から緊張していた.第104回日本皮膚科学会総会に招聘講演をお願いしたThestrup-Pedersen先生が,How have you been?と気軽に声をかけて下さったことで,少しほっとする.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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