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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科60巻9号

2006年08月発行

雑誌目次

連載

Dermoscopy Specialistへの道Q&A(第29回)

著者: 斎田俊明 ,   古賀弘志

ページ範囲:P.767 - P.769

Qどんなダーモスコピー所見が認められますか?

診断は何でしょう

臨床情報

 74歳,女性.約1年前,左足首の後面に小さな結節様病変が生じているのに気づいた.時々軽度の痒みを感じ,引っかいたことがある.やや増大してきている.
 初診時,左下腿屈側下部に大きさ9×9×3mmの,境界明瞭な局面状皮疹が認められた.常色から淡紅色調で,表面は多少乳頭状の凹凸を示し,一部に痂皮を付す(図2).

アメリカで皮膚科医になって(11)―From Japan to America:American Life as a Physician-Scientist

著者: 小塚雄民

ページ範囲:P.862 - P.863

 2006年3月サンフランシスコで開催された米国皮膚科学会(American Academy of Dermatology)に参加した後,コロラド大学を訪問する機会を得た.そこで藤田真由美先生のご厚意により,コロラド大学皮膚科でアメリカの皮膚科臨床を見学させていただいた.

 筆者は毎月3~4誌の英文雑誌の抄読会を有志の方々と行うとともに,米国皮膚科学会に3年間参加し,講演・ポスター展示,数百に及ぶ企業展示を詳細に検討している.その結果,医薬品の日米格差を感じていたが,今回の見学でさらに強く感じるようになったので,この機に日本の皮膚科医からみた,医薬品の日米格差について述べてみたい.

原著

分子標的治療薬ゲフィチニブおよびイマチニブによる皮膚病変の検討

著者: 山野朋子 ,   山川有子 ,   相原道子 ,   池澤善郎

ページ範囲:P.771 - P.775

 分子標的治療薬であるゲフィチニブ(イレッサ (R)),メシル酸イマチニブ(グリベック (R))による皮膚障害についてまとめた.2002年1月から2004年12月にかけて,横浜市立大学附属市民総合医療センターにおけるゲフィチニブ投与例は46例(男性27例,女性19例)で,そのうち皮膚障害を生じたものは9例(男性4例,女性5例)であった.ざ瘡様もしくは毛囊炎様の丘疹,膿疱が5例,全身の乾燥性湿疹が2例,脂漏性皮膚炎様症状が1例,爪囲炎が2例であった.メシル酸イマチニブ投与例は50例(男性30例,女性20例)で,皮膚障害を生じたものは9例(男性4例,女性5例)であった.皮膚症状は体幹・四肢に散在する紅斑,丘疹が7例,顔面のざ瘡様発疹が2例,光線過敏症状が1例みられた.

今月の症例

陰部粘膜に生じたepithelioid blue nevusの1例

著者: 熊澤智子 ,   原幸子 ,   永江祥之介 ,   河野真司

ページ範囲:P.777 - P.779

 37歳,女性.初診の数年前より,徐々に増大する腟前庭部の黒色色素斑を自覚していた.病理組織学的にepithelioid blue nevusに合致する所見であった.本疾患はCarney症候群の一症状として報告されているが,本症例ではほかに明らかな合併症はなく,Carney症候群に伴わない,陰部粘膜に生じた稀な1例であると考えられた.

症例報告

抗血栓薬の内服中に生じたアナフィラクトイド紫斑の2例

著者: 尾上智彦 ,   大原夕佳 ,   長井泰樹 ,   堀和彦 ,   幸田公人 ,   上出良一 ,   中川秀己

ページ範囲:P.781 - P.784

 抗血栓薬の内服中に生じたアナフィラクトイド紫斑の2例を報告する.症例1:56歳,男性.アスピリン,塩酸チクロピジンを内服中.下肢を中心に上肢,腰臀部に融合傾向のある紫斑が多発した.症例2:60歳,男性.アスピリンを内服中.下腿に融合傾向の強い紫斑を生じた.両症例とも病理組織学的にleukocytoclastic vasculitisを呈し,蛍光抗体直接法では真皮乳頭層の血管内皮細胞にIgA,C3陽性であり,アナフィラクトイド紫斑と診断した.当科で過去3年間に経験したアナフィラクトイド紫斑28例の検討では,抗血栓薬を内服中の症例では紫斑が下肢以外の部位に及ぶ,あるいは点状紫斑以外に融合傾向の強い紫斑,水疱,びらん,潰瘍などを呈する傾向が示された.

Gibertばら色粃糠疹軽快後に出現した慢性色素性紫斑様皮疹

著者: 満山陽子 ,   稲岡峰幸 ,   早川和人 ,   塩原哲夫

ページ範囲:P.785 - P.788

 20歳,男性.初診の約1か月前から軀幹に皮疹が出現し,その後上肢に拡大したため,近医を受診しGibertばら色粃糠疹と診断された.初診の数日前にその皮疹はほぼ消退したが,同時期より両下腿に紫斑が出現した.当科初診時,両下腿に粟粒大の紫斑が多発,融合し,一部環状を呈した.組織学的には表皮へのexocytosisを示す真皮上~中層の血管周囲性リンパ球浸潤に加え,赤血球の血管外漏出を認めた.臨床,組織所見,経過より慢性色素性紫斑様皮疹と診断した.Gibertばら色粃糠疹が先行したことより全血中のHHV-6,7DNAをreal-time PCR法で経時的に検討したところ,HHV-7のコピー数は初診時にピーク(1.0×103/106)を示し,以後徐々に減少した.一方,同時に検索したほかのウイルスの抗体価,全血中のDNAに有意な変動は認めなかった.これらの結果から,HHV-7の再活性化がGibertばら色粃糠疹と慢性色素性紫斑様皮疹の両者に関与していた可能性が推測された.

ペグインターフェロンα-2bおよびリバビリン併用療法中に播種状紅斑丘疹型薬疹を生じた1例

著者: 高井郁美 ,   勝浦純子 ,   定平知江子 ,   米田耕造 ,   窪田泰夫

ページ範囲:P.789 - P.792

 67歳,女性.10年前に抗HCV抗体陽性を指摘され,慢性C型肝炎の保存的治療を受けていた.2005年3月よりペグインターフェロンα-2b(PEG IFNα-2b)の100μg/週,皮下注射とリバビリン(800mg/日)内服による併用療法を開始した.PEG IFNα-2b皮下注射の初回より注射部位である両上腕部に局所熱感を伴う紅斑が生じていたが治療を継続していた.併用療法開始より約2か月後,PEG IFNα-2b皮下注射8回目の翌日から体幹,四肢に小豆大までのそう痒を伴う紅斑,丘疹が出現し,徐々に拡大,癒合した.併用療法を中止しプレドニゾロン30mgより内服開始した.ステロイド外用,抗アレルギー薬の併用で軽快した.PEG IFNα-2b,リバビリン,ポリエチレングリコール(polyethylene-glycol:PEG)の貼布試験,プリックスクラッチ試験,DLSTはすべて陰性であった.PEG IFN α-2bの1回常用量の皮下注射を行った翌日,頸部・前腕に紅斑・丘疹が出現した.光線過敏性試験ではUVBでMED値の低下(<40mJ/cm2)を認めた.

Castleman病に合併した環状肉芽腫の1例

著者: 唐川大 ,   鳥居秀嗣

ページ範囲:P.793 - P.795

 63歳,男性.混合型のCastleman病にて内科入院中.3年前に出現した手背の紅色丘疹を主訴に受診した.初診時,両手背に自覚症状を伴わない,紅色丘疹および大豆大までの浸潤局面が散在していた.病理組織学的に,環状肉芽腫と診断した.生検後2週間で自然消失した.環状肉芽腫とCastleman病の合併は過去に報告例がなく,若干の文献的考察を加え報告した.

多関節に侵襲をきたした急性痛風性関節炎の1例

著者: 山本志織 ,   白井輝 ,   宮島進 ,   岡田奈津子

ページ範囲:P.796 - P.798

 67歳,男性.初診の4日前から発熱とともに右下腿外果,左足背,右手関節,右肘と多関節に腫脹,疼痛が出現した.病理組織学的に真皮に無構造物の沈着と,その周囲に組織球の浸潤を認めた.腫脹部位を穿刺したところ,白色チョーク状物質を混じた血性内容物を吸引した.結晶成分分析にて尿酸塩を確認したことより急性痛風性関節炎と診断した.非ステロイド性抗炎症薬および尿酸生成抑制薬の投与により軽快した.

血清ニコチン酸値が正常であったがニコチン酸内服が著効したペラグラの1例

著者: 舩越建 ,   佐藤友隆 ,   天方將人 ,   長嶋慶佳 ,   松尾聿朗

ページ範囲:P.799 - P.801

 66歳,男性.食欲の低下と連日のアルコール摂取ののち,下痢とともに顔面,手足に皮疹を生じた.皮疹はペラグラの典型疹と思われる紫褐色調の厚い鱗屑を付着した紅斑で,下痢が頻回に認められたが,痴呆はなかった.皮疹は日光に曝露していない手掌にもみられた.血清ニコチン酸値の低下は認めなかったが,入院のうえ,ニコチン酸を1日200mg内服開始したところ,下痢,皮疹は速やかに軽快した.血清ニコチン酸値が正常であったが,臨床像と経過よりペラグラと考えた.

後頭部の巨大な髄膜瘤を合併したRecklinghausen病の1例

著者: 奥野公成 ,   國井隆英 ,   田上八朗

ページ範囲:P.802 - P.804

 56歳,男性.幼少時より全身に褐色斑があり,その褐色斑が徐々に隆起してきたため20代で当科を初診し,皮膚生検施行のうえ,Recklinghausen病と診断された.49歳頃より徐々に増大してきた後頭部右側の腫瘤の手術治療を希望して来院したが,CT・MRIの撮影により神経線維腫ではなく髄膜瘤であることが確認されたため,手術は行わず,外来にて経過観察中である.一見,巨大な神経線維腫病変を思わせる腫瘤であったが,侵襲的な生検・治療を行う前に行った画像検査がその後の方針を決めるうえで重要であった.

面皰母斑の1例

著者: 安部万里絵 ,   岡田悦子 ,   永井弥生 ,   田村敦志 ,   石川治

ページ範囲:P.805 - P.807

 21歳,女性.生下時より右上肢から腹部にかけて帯状に配列する点状の皮疹があった.小学校低学年頃より同部にときどき発赤・腫脹を生じ,近医で切開などの加療を受けていた.初診時,右上腕屈側から前胸部,腋窩,および上腹部に,開大した毛包,黄褐色の角栓を有する面皰様皮疹が列序性に配列し,一部はBlaschko線に沿った分布を示していた.また,同部に一致して多数の皮内結節を触れた.腋窩・腹部の結節を外科的に切除したところ,組織学的には角質を充満した多数の表皮囊腫構造がみられ,成熟した脂腺が付属している像もみられた.自験例は多発性の囊腫病変を伴って広範囲に皮疹が生じており,比較的稀な症例と考え,文献的考察を加え報告した.

毛包上皮腫(trichoepithelioma)を伴った色素細胞性母斑の2例

著者: 塩見達志 ,   安齋眞一 ,   木村鉄宣

ページ範囲:P.808 - P.810

 症例1:43歳,男性.右頰部の真皮内色素細胞性母斑に線維硬化性毛包上皮腫を伴う.症例2:48歳,女性.鼻部に生じた毛包上皮腫を伴った真皮型色素細胞性母斑と診断した.色素細胞性母斑には,頻度は低いもののいくつかの上皮性腫瘍が合併することが知られている.症例1は2つの腫瘍が混在しており,症例2では2つの腫瘍が隣接して存在していた.これら2つの腫瘍が併発する機序について考察した.

PTEN遺伝子に変異を認めたCowden病の1例

著者: 岡本崇 ,   柴垣直孝 ,   川村龍吉 ,   松江弘之 ,   小嶋裕一郎 ,   塚本克彦 ,   島田眞路

ページ範囲:P.811 - P.814

 52歳,男性.父方の叔父に消化管ポリポージスあり.幼少時から手背・足背の角化性丘疹,40代から舌の丘疹,口唇の色素沈着が出現した.手背・足背の角化性丘疹は病理組織学的に角質増殖と真皮浅層の軽度細胞浸潤が認められた.また,半年前に消化管(胃・大腸)のポリポージスを指摘されたが,消化管ポリープはHyperplastic polypであり悪性所見は認めなかった.遺伝子検索を行ったところ,PTEN遺伝子のexon7に変異を認めた.PTEN遺伝子変異と特徴的な臨床所見より本症をCowden病と診断した.

顆粒細胞腫の1例

著者: 花川博義 ,   柳原誠

ページ範囲:P.815 - P.817

 31歳,男性.腹部に圧痛のある径約3mm大の皮下結節に気づいた.病理組織学的所見では,皮下脂肪組織に境界明瞭の胞巣状腫瘍塊があり,一部は膠原線維の被膜で覆われていた.腫瘍細胞は胞体内に好酸性の顆粒が充満していた.ビメンチン,S-100蛋白,neuron specific enolase,nerve growth factor receptor染色が陽性であり,神経由来の腫瘍であることが示唆された.腫瘍全摘3か月後,再発はない.

腋窩副乳に発生した線維腺腫の1例

著者: 山本純照 ,   多田百合惠 ,   飯岡弘至 ,   宮川幸子

ページ範囲:P.818 - P.820

 20歳,女性.約5年前に左腋窩に皮下結節が生じ,以後徐々に増大した.現症は左腋窩に直径約4cmの弾性硬,下床との可動性が良好な皮下腫瘤で,病理組織学的所見では,皮下に線維性皮膜に包まれた境界明瞭な結節性病変を認め,増殖した線維性結合組織のなかに,細長い間隙状の腺管腔と,類円形の多数の腺管腔がある.上皮性の腺成分は管腔側の乳管上皮細胞と壁側の筋上皮細胞により2層構造を呈し,腺腔には断頭分泌像も認める.また,腫瘍の周囲に正常乳腺構造が存在し,左腋窩の副乳に生じた線維腺腫(管内型と管周囲型の混合型)と診断した.腫瘍摘出後6か月間,再発を認めていない.

右下肢に多発したspindle cell hemangiomaの1例

著者: 米本広明 ,   石地尚興 ,   中川秀己

ページ範囲:P.821 - P.823

 60歳,男性.15年前より右足底に硬結が出現した.右足底に径40×25mmの表面粗ぞう,皮膚色境界不鮮明の結節があり,結節およびその周囲では角質が肥厚していた.その他,右膝蓋部,右下腿後面(2個),右足部(屈側,外側,足背部計3個)に径15~30mmの皮膚色~茶褐色弾性軟の表面平滑で半球状に隆起した皮下腫瘤を計6個認めた.足部MRI像でT2強調画像で強調される腫瘤を足底に認め,血管造影では足底の腫瘤は後脛骨動脈の足底動脈よりの腫瘍血管の増生であった.さらに足関節屈側および外側に前脛骨動脈より血流を受ける腫瘤がみられた.病理組織学的には,不規則に拡張した血管腔が多数みられ,小型の血管内皮細胞および波を打ったように配列する紡錘形の細胞,いわゆるspindle cellが密に増殖している部位も存在し,spindle cell hemangiomaと診断した.

Stucco keratosisを合併したspiny keratodermaの1例

著者: 大西正純 ,   時田智子 ,   高橋和宏 ,   赤坂俊英 ,   佐藤雅子

ページ範囲:P.824 - P.827

 68歳,女性.数十年前より両手掌,足底に症状を伴わない多発性点状角化性皮疹があり,最近になって増加した.娘にも同様の皮疹がある.手掌の点状角化性丘疹はcornoid lamella様の不全角化を伴う角柱と直下の顆粒層の減少がみられ,spiny keratodermaと診断した.一方,足背の扁平隆起性丘疹は,病理組織で角質肥厚,乳頭腫症,尖塔様の表皮肥厚があり,stucco keratosisと診断した.

骨転移により大腿骨骨折を繰り返した乳房外Paget病の1例

著者: 湊原一哉 ,   横山明子 ,   鈴木康司 ,   磯邊靖

ページ範囲:P.828 - P.831

 56歳,男性.1990年頃発症した右陰囊Paget病.2000年1月,拡大切除を行った.2003年2月,右鼠径~右外腸骨領域リンパ節の郭清術を施行した.術後シスプラチンおよびフルオロウラシルを用いた化学療法計3クールを放射線療法と併用して施行した.同年10月,右脛骨および大腿骨転移を生じ,12月に病巣そう爬術および人工骨移植を施行した.2004年1月より5月まで骨転移に対し,ドセタキセルの投与を行うが無効であった.3月と5月に右大腿骨を骨折した.7月2日,社会復帰を目的に右股関節離断術が施行された.9月に一時退院するも,10月に肺転移による癌性リンパ管症のため永眠された.進行期乳房外Paget病にはいまだ確立された治療がない.とりわけ,骨転移をきたすと治療に難渋することがある.皮膚科領域のみならず整形外科的領域を含めてより有効な集学的治療の確立が望まれる.

腋窩に生じた基底細胞癌の2例

著者: 鈴木琢 ,   皆見春生

ページ範囲:P.832 - P.834

 症例1:72歳,女性,症例2:78歳,女性.発症部位として比較的稀な腋窩に基底細胞癌を生じた.臨床型はそれぞれ結節型と結節潰瘍型であり,病理組織型はともに充実型であった.当科において過去10年間に経験した基底細胞癌43例では,腋窩に発症した症例は2例(4.7%)であった.

High-grade myxofibrosarcomaの1例

著者: 加藤一郎 ,   長井泰樹 ,   堀和彦 ,   松本孝治 ,   幸田公人 ,   上出良一 ,   中川秀己

ページ範囲:P.835 - P.837

 34歳,男性.1年前より左下腿に4cm大の皮膚色で隆起した腫瘤が急速に増大した.皮膚生検では真皮中層から脂肪織にかけて異型性の強い紡錘形の核および好酸性の胞体をもつ腫瘍細胞が束状に増殖していた.生検組織の免疫染色ではvimentinおよびα-SMAのみ陽性であった.間質部はアルシアンブルー陽性であった.leiomyosarcoma,myxofibrosarcomaを考え,腫瘍の肉眼的辺縁より3cm離して筋膜を含め切除した.切除標本ではα-SMAが陽性の部位は一部で大部分はmyxofibrosarcomaに相当する病理組織像を示していた.

Multicentric reticulohistiocytosisの1例

著者: 大嶋英恵 ,   武田仁志 ,   花田勝美

ページ範囲:P.838 - P.840

 63歳,女性.2004年12月頃より両膝関節痛,両手関節痛,手指のこわばりが生じ,2005年1月頃より両手に赤色丘疹が出現した.当院整形外科にて関節リウマチと診断され,他院内科で加療されていた.病理組織検査では真皮内にスリガラス様の好酸性の細胞質を有する大型の単核~多核の組織球様細胞,多核巨細胞が密に増殖していた.リウマチ因子陽性であり,関節リウマチ合併の鑑別を要したが,関節症状および皮膚症状はmulticentric reticulohistiocytosisによるものと診断した.プレドニゾロン7.5mg/日,メトトレキサート4mg/週,エタネルセプト50mg/週の投与により軽快傾向を示した.

多発性の皮内結節を契機に診断されたIgAλ型多発性骨髄腫の1例

著者: 足立孝司 ,   宮本亨 ,   福田俊一

ページ範囲:P.841 - P.843

 69歳,女性.初診の1か月前より軀幹を初発とする紅色結節に気づき,全身に多発してきたため当科を受診した.初診時,ほぼ全身に自覚症状を欠く粟粒大~母指頭大の紅色~暗紫色調の皮内結節を散在性,多発性に認めた.同じ頃から右眼の視力低下に気づいていた.病理組織学的に真皮のほぼ全層にわたってびまん性に,異形成のある形質細胞様細胞の増殖がみられた.免疫組織染色で腫瘍細胞はIgA陽性λ陽性であった.検査所見で腎不全,高Ca血症,貧血,過粘稠症候群のほか,血清免疫電気泳動ではIgAλ型M蛋白陽性であった.これらの所見よりIgAλ型多発性骨髄腫の皮膚浸潤と診断した.血液内科に転科し,MCNU-VMP療法を行ったが,初診から3か月で死亡した.

直腸炎を伴った第2期顕症梅毒の1例

著者: 三浦貴子 ,   中村晃一郎 ,   金子史男

ページ範囲:P.844 - P.846

 45歳,男性.肛門周囲に扁平でやや隆起した疣状の紅色丘疹が出現した.その後,下痢・粘血便が出現したため当科を受診した.両口角に白色のびらん,両手掌に角化を伴う乾癬様丘疹を認めた.肛門周囲の丘疹から生検を施行した.表皮は索状に肥厚し,真皮上層には形質細胞を主体とする細胞浸潤を認めた.抗Treponema pallidum抗体による免疫染色で表皮細胞間に多数のTreponema pallidumが確認された.梅毒血清反応はガラス板法64倍,TPLA15,211mU/mlと高値で第2期梅毒と診断した.直腸内視鏡では直腸肛門部付近にびらんを認め,直腸梅毒を合併した症例と考えられた.サワシリン (R)1,500mg/日を8週間内服したところ,皮疹・直腸症状は速やかに消退し,ガラス法8倍,TPLA1,084mU/mlへと減少した.

HIV感染患者に生じた第2期梅毒の1例

著者: 夏賀健 ,   芝木晃彦 ,   清水宏

ページ範囲:P.847 - P.849

 20歳,男性.同性愛者で1年前にHIV感染を指摘されている.初診の数日前から全身に皮疹が出現し,拡大傾向にあるため当科を受診した.初診時,軀幹・四肢・手掌・足底に径2mm大で鮮紅色,浮腫状で表面平滑な無症候性の丘疹が散在していた.採血上CD4/CD8:0.46,RPR:64倍,TPLA:882.02TUであり,また生検された丘疹の病理組織から免疫組織化学染色にて病原体が検出され,HIV感染患者に生じた第2期梅毒と診断した.ベンジルペニシリンベンザチン160×104単位を8週間投与したところ,皮疹・抗体価ともに改善した.

臨床統計

入院帯状疱疹患者の疼痛の経過

著者: 今中愛子 ,   宋美紗 ,   山本維人 ,   後藤章夫 ,   坂上(駒谷)麻衣子 ,   佐藤健二

ページ範囲:P.851 - P.853

 帯状疱疹の疼痛の治療に有益な情報を得るため,2000~2004年に当科入院,7日間抗ウイルス薬点滴を行った162人の患者の臨床的データを検討した.男性75人,女性87人で,平均年齢は63.0歳であった.疼痛を伴う例が83%を占めた.患者は症状自覚後1~12日の期間に受診し,点滴を開始されていた.点滴開始後平均3.3日で疼痛に改善がみられたが,発症から点滴開始までの日数との相関はなかった.退院後外来を受診した139例のうち,115人が点滴終了後30日以内に受診を終了した.発症から点滴開始までの日数と,残存疼痛の程度に相関はなかった.また,入院時,退院時,退院後の外来初診日,外来最終受診日の疼痛の関連を検討したが,有意な相関はみられなかった.発症から点滴までの日数にかかわらず,全例において疼痛の軽減がみられた.

治療

乾癬に対するビタミンD3とステロイド併用外用療法からビタミンD3単独外用療法への移行の検討

著者: 福地修 ,   中川秀己

ページ範囲:P.855 - P.861

 乾癬患者15例を対象として,マキサカルシトール軟膏とステロイド外用薬の併用療法からマキサカルシトール軟膏単独療法への移行について検討した.マキサカルシトール軟膏とステロイド外用薬の等量混合剤で寛解導入を図った後,直ちにマキサカルシトール軟膏単独に切り替えが可能であるか,それとも段階的にステロイド外用薬の量を減量した後,単独に移行すべきかについて検討した.その結果,未治療の症例や等量混合剤の使用によって著明な改善が得られた症例では,直ちにマキサカルシトール軟膏単独に切り替えが可能であり,単独切り替え後も皮疹が悪化することが少なく,長期間寛解維持できることが明らかとなった.今回の検討により,どのような症例がマキサカルシトール軟膏単独に移行可能であるのかに加え,移行の目安などが明らかとなり,各症例の背景や改善度に応じて,マキサカルシトール軟膏単独への移行をめざした治療が可能となることが示唆された.

印象記

第105回日本皮膚科学会総会・学術大会印象記

著者: 小宮根真弓

ページ範囲:P.864 - P.866

 5月31日水曜日,午前中大学で少し仕事をした後,午後の新幹線で京都へ向かった.京都駅から地下鉄で宝ヶ池へ.すでに日本研究皮膚科学会が始まっていた.Dermatology Weekとして日本研究皮膚科学会と日本皮膚科学会総会が連続して開催されるようになってから,今年で3年目である.京都での開催もDermatology Weekとしては2回目であり,すっかり定着した感がある.開催場所の宝ヶ池は,京都の市街から地下鉄で10分ほどのところにあり,京都中心部の喧騒を離れ,周囲には自然に恵まれた環境が広がっている.学会会場の国立京都国際会館に隣接する宝ヶ池では,夕刻になるとウシガエルが金管楽器の低音を思わせる音を出し,会館の入り口の天井裏ではハクセキレイが営巣していた.日常生活から少しだけトリップして,学問の世界に没頭できるすばらしい環境である.また,国立京都国際会館には大小複数の会場がほどよくあり,日本皮膚科学会総会を開催するのに適当な規模の会場である.

 今年は,例年よりもやや遅い5月31日水曜日から,旭川医科大学皮膚科学教室の飯塚一教授を会頭として日本研究皮膚科学会が始まり,内容の濃い多数の研究発表のあと,6月2日昼のJSID-JDA Joint Lectureを皮切りに日本皮膚科学会総会が始まった.会頭は愛媛大学医学部皮膚科学教室の橋本公二教授,事務局長は佐山浩二助教授である.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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