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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科61巻11号

2007年10月発行

雑誌目次

連載 Clinical Exercise・2

Q 考えられる疾患は何か?

著者: 新田悠紀子

ページ範囲:P.855 - P.856

症例

患 者:16歳,男性

主 訴:全身の皮疹

既往歴:特記すべき事項なし.

家族歴:特記すべき事項なし.

現病歴:1990年頃より背部に落屑を伴った皮疹が出現し徐々に全身へ拡大してきた.1995年1月下旬より左眼の視力が低下したため眼科受診し,皮疹の精査のため2月下旬に皮膚科も受診となった.

現 症:四肢と背部の皮膚は乾燥し角化性小丘疹,爪甲大落屑を認める.

原著

爪白癬に対する経口抗真菌薬の治療効果および患者満足度―イトラコナゾールパルス療法とテルビナフィン連続療法の多施設共同群間比較試験

著者: 渡辺晋一 ,   川島眞 ,   原田昭太郎

ページ範囲:P.858 - P.867

要約 本邦での承認用法用量でイトラコナゾール(ITCZ)およびテルビナフィン(TBF)を投与し,爪白癬に対する治療効果および患者の不満・不安の変化について二群間比較試験を行った.第1趾爪の混濁比が5.0以上の爪白癬患者を,ITCZ400mg/日3サイクルパルス療法群とTBF125mg/日6か月連続投与群に無作為割付して比較検討した.両群ともに混濁比は治療経過とともに有意に減少し,12か月後の総合臨床効果における著効率はITCZパルス療法群63.0%,TBF連続投与群61.7%であった.副作用発現率は,ITCZパルス療法群の3.3%に比べてTBF連続投与群では6.5%と高かった.副作用による投与中止も,ITCZパルス療法群は蕁麻疹による1例であったが,TBF連続投与群では顔面紅潮1例,血圧・血糖値上昇の1例,悪心1例と多かった.また,ITCZパルス療法群の不安解消効果はTBF連続投与群より有意に高く,副作用の不安もITCZパルス療法群の治療が終了する3~6か月後ではITCZのほうが有意に高く解消していた.試験終了後には,好ましい投与方法として60%の患者がITCZパルス療法を選択した.今回,本邦用法用量におけるITCZパルス療法とTBF連続投与の治療効果は投与期間完了例では差がみられなかった.しかし,安全性ではITCZパルス療法群でより高い評価が得られ,爪白癬による不満・不安の解消効果もITCZパルス療法群でより高く評価された.

今月の症例

Mucinous nevusの1例

著者: 田村舞 ,   山上淳 ,   石河晃 ,   天谷雅行 ,   田中勝

ページ範囲:P.869 - P.872

要約 16歳,男性.右腰臀部に大豆大までの常色から淡褐色の丘疹・小結節が集簇して多発し,片側性に帯状の分布を呈した.組織学的には表皮突起延長を伴い,真皮乳頭層にヒアルロニダーゼで消化されるムチンの沈着を認めた.その特徴的な臨床・病理組織学的所見より,mucinous nevusと診断した.病変部の電顕所見でプロテオグリカンと思われる物質の間質への沈着および組織球様細胞と線維芽細胞の増生を認めた.mucinous nevusはムチン沈着を伴う結合織母斑の一型と位置づけられ,自験例はその典型的な臨床および病理像を呈した.

症例報告

腸穿孔を伴ったfood-dependent exercise-induced anaphylaxisの1例

著者: 黒木のぞみ ,   新田悠紀子 ,   小池文美香 ,   大野稔之 ,   奥田容子 ,   倉橋直子 ,   片岡政人

ページ範囲:P.873 - P.875

要約 21歳,男性.小麦摂取直後,5分間小走りしたところ,30分後に全身に紅斑を生じ,腹痛,下痢,意識消失をきたした.白血球数13,000/μl(好酸球3.5%),IgE251IU/ml,小麦IgE-RAST0.10UA/ml,スギRAST52.80UA/ml,ω-グリアジンエピトープペプチド特異抗体価2.73UA/mlを呈した.大腸内視鏡にて直腸に浅い潰瘍を認めた.入院後,急激な腹痛を生じ,腹部X線でfree airを認め,開腹手術を施行し,直腸前壁に穿孔がみられた.プリックテストは小麦で陽性,アスピリン100mg内服後の小麦のプリックテストは強陽性であった.運動負荷後の小麦のプリックテストも陽性を示した.以上より,小麦による食餌依存性運動誘発アナフィラキシー(food-dependent exercise-induced anaphylaxis:FDEIA)と診断した.検索した限り,腸穿孔を伴ったFDEIAの症例はなく,報告した.

Nonepisodic angioedema associated with eosinophiliaの1例

著者: 井川哲子 ,   橋本喜夫 ,   山本明美 ,   飯塚一

ページ範囲:P.876 - P.879

要約 30歳,女性.初診の1か月前から手足の浮腫と蕁麻疹様紅斑が出現し,当科を受診した.両前腕と下肢の著明な浮腫を認め,初診前の1週間で3kg体重が増加していた.末梢血好酸球増多(26%3,146/μl),IL-5高値を認め,臨床経過と病理組織検査結果からnonepisodic angioedema associated with eosinophilia(NEAE)と診断した.蕁麻疹様紅斑は塩酸エピナスチンで消退したが,四肢の浮腫と末梢血好酸球増多が続くため,トシル酸スプラタスト内服を開始した.約1か月半で手足の浮腫は消失,末梢血好酸球の減少,IL-5値の正常化が得られた.NEAEの本邦報告例について,episodic angioedema associated with eosinophilia(EAE)の報告例と比較検討した.また,その病態についても若干の文献的考察を加えた.

亜鉛欠乏の関与が考えられた再発性アフタ性口内炎

著者: 堀仁子 ,   橋本喜夫 ,   飯塚一

ページ範囲:P.880 - P.882

要約 40歳,男性.幼少期から頬粘膜や舌に口内炎を繰り返していた.近医耳鼻科で加療するも再発を繰り返すため,当院歯科口腔外科から紹介された.金属パッチテストはすべて陰性.血清亜鉛は基準値下限,トリプトファンは低値であった.消化管を含めた全身精査では異常を認めなかった.polaprezinc(プロマック®)の投与を開始したところ,口内炎は劇的に改善した.3か月後に再発を認めたが,全体として良好な経過を示している.

抗TNF-α抗体療法によって関節リウマチを伴う乾癬が軽快した2例

著者: 牛尾一康

ページ範囲:P.883 - P.886

要約 乾癬に関節リウマチ(RA)を合併した2例に抗TNF-α(tumor necrosis factor alpha)抗体療法を行い,2例とも皮膚症状・関節症状は著明に改善した.症例1:52歳,男性.投与2回終了後の6週で,DAS28(Disease Activity Score in 28 Joints),PASI (Psoriasis Area Severity Index)はそれぞれ投与前の6.43(high disease activity),22.7から1.92(low disease activity),3.4に改善した.RAは臨床的寛解といえる.症例2:61歳,男性.投与3回終了後の14週で,DAS28,PASIはそれぞれ投与前の6.88(high disease activity),13.8から4.94(moderate disease activity),1.5となった.2例ともPASIスコアは75%以上の改善を示した.患者の満足度はきわめて高く,抗TNF-α抗体療法は乾癬にも有用な治療法と考えられる.

顕微鏡的多発血管炎を合併した全身性強皮症の1例

著者: 田中摂子 ,   永井弥生 ,   清水晶 ,   遠藤雪恵 ,   周東朋子 ,   田村敦志 ,   石川治

ページ範囲:P.887 - P.890

要約 77歳,女性.全身性強皮症(SSc)の診断から13年後にMPO-ANCA陽性を確認し,さらに3年後に紫斑の出現とともに急速な腎機能の悪化をきたした.紫斑の組織所見では真皮上層の小血管に壊死性血管炎がみられ,顕微鏡的多発血管炎(MPA)と診断した.また,経過中MPO-ANCA上昇時に一致して抗Sm抗体,抗SS-A抗体が陽性化した.ステロイドパルス療法およびシクロホスファミド併用にて症状は改善したが,その後,突然死亡した.原因は不明である.SScでは無症候性のMPO-ANCA陽性例もあるが,血管炎を示唆する症状の出現には十分な注意を払う必要がある.

タンポン使用を契機に発症したtoxic shock syndromeの1例

著者: 山口哲司 ,   星野洋良 ,   林裕嘉 ,   森布衣子 ,   木花いづみ ,   齋藤優 ,   荻原通

ページ範囲:P.891 - P.894

要約 34歳,女性.月経のためタンポン使用.4日目より発熱,全身に紅斑が出現した.5日目,薬疹の疑いで近医より転院搬送された際は血圧低下,意識混濁も認めた.toxic shock syndrome (TSS)を疑い,ただちに持続血液濾過透析を開始,抗生剤,IVIG投与を行った.腟内に感染徴候はなかったが腟培にて黄色ブドウ球菌を検出したため,腟洗浄も開始した.入院2日目より全身状態は著明に改善し,経過良好にて20日目退院した.検出された黄色ブドウ球菌はTSST-1,SE-C産生株であった.TSSは迅速な診断,治療の開始を要するが,薬疹との鑑別に苦慮する場合は詳細な問診,皮膚生検などが有用と考えた.また,当院での最近のTSS3症例について発症時の血清サイトカイン濃度を比較検討したところ,特にIL-6と重症度の相関が示唆された.

動眼神経麻痺をきたした帯状疱疹の1例

著者: 田辺健一 ,   新井達 ,   安芸良一 ,   勝岡憲生 ,   杉本和久

ページ範囲:P.895 - P.897

要約 68歳,男性.右三叉神経第1枝領域の帯状疱疹にて抗ウイルス薬の点滴を1週間施行され,皮疹は軽快したが,右上眼瞼の腫脹が残存した.その後,眼球運動障害,瞳孔拡大,そして対光反射消失などの動眼神経麻痺症状が生じた.そこでプレドニゾロン(PSL)40mg/日の内服を開始した.精査により髄膜炎も確認されたため,ステロイドパルス療法と抗ウイルス薬の追加投与を行ったところ,諸症状は改善した.眼瞼腫脹を伴ったり炎症が強い三叉神経第1枝領域の帯状疱疹では,皮疹消退後も外眼筋麻痺や髄膜炎などの合併症の発症に注意を払うべきと考えた.

血小板減少をきたしたマムシ咬傷の1例

著者: 嘉陽織江 ,   加藤陽一

ページ範囲:P.898 - P.900

要約 80歳,男性.左足マムシ咬傷にて創部の出血が続き,疼痛が強くなったため,受傷90分後に受診した.初診時,バイタルサインは安定しており,左足内果部に皮下出血を伴う2個の牙痕があり出血が持続していた.左足関節までの軽度腫脹を認めた.血小板4.2×104/mm3と減少していたが,凝固系は正常であった.尿潜血反応では(3+)で溶血を認めた.直ちにマムシ抗毒素6,000単位を点滴静注したところ,3時間後には血小板数11.8×104/mm3まで回復した.尿潜血反応も次第に低下し,第10病日に退院となった.マムシ咬傷において,局所の腫脹が顕著でなく血小板減少をきたす症例は「血小板減少型」と提唱され,マムシ毒素が直接血管内に注入されることにより生じると考えられている.咬傷による局所症状が軽度であっても,急速に血小板減少を呈する場合には,抗毒素の早期使用を考慮すべきである.

シクロスポリンが奏効したsuperficial granulomatous pyodermaの1例

著者: 田子修 ,   永井弥生 ,   遠藤雪恵 ,   五十嵐直弥 ,   田村敦志 ,   石川治

ページ範囲:P.901 - P.903

要約 51歳,男性.初診半年前から臀部,下肢に暗紫紅色の皮疹が出現し潰瘍化した.初診時,鶏卵大までの扁平に隆起する局面が多発し,びらんおよび潰瘍を伴っていた.組織学的には真皮上層に好中球性膿瘍と異物型巨細胞を混じる類上皮細胞肉芽腫がみられた.プレドニゾロン内服にて軽快したが,PSL減量中に両下腿に壊死組織を伴った深い潰瘍が出現し,シクロスポリン併用にて軽快した.自験例は,通常のsuperficial granulomatous pyodermaと比較して難治性の経過をとった点が特徴的であった.

象皮病の1例

著者: 木下華子 ,   竹中秀也 ,   加藤則人 ,   岸本三郎 ,   浅野麻衣子 ,   長谷川剛二

ページ範囲:P.904 - P.907

要約 33歳,女性.幼少時より肥満あり.25歳時に右下腿を虫に刺され,蜂窩織炎を起こした.その後も発赤,腫脹を繰り返し,右下肢は徐々に象皮様を呈するようになった.フィラリア症の治療を受けたこともあったが,効果はなかった.その後,肥満と右下肢の浮腫が増悪して歩行困難となり,当院を紹介され入院した.身長162.7cm,体重198kg,右下腿部の周径85cm.抗フィラリア抗体は陰性であった.食事療法に加え,利尿薬,抗血小板薬,ステロイドの全身投与および圧迫療法により,下肢の浮腫は徐々に軽快している.

悪性黒色腫肝転移に対するシスプラチン肝動注により血小板減少と肝酵素上昇がみられた1例

著者: 峯垣裕介 ,   谷岡未樹 ,   松村由美 ,   是枝哲 ,   宮地良樹

ページ範囲:P.908 - P.910

要約 60歳台,女性.左上腕の数十年来の黒色斑が2年前より増大し,近医にて切除され結節型悪性黒色腫と診断された.当院へ紹介され,拡大切除術(stageⅡA,T3aN0M0,リンパ節郭清は行わず),およびDAV-Feron療法を3クール施行した.転移所見および尿中5SCD上昇はなかった.術後22か月後より尿中5SCDが上昇し,さらに2か月後にはFDG-PETとCTにて肝臓と腋窩リンパ節への転移が強く疑われた.DAV-Feron療法1クール後,腋窩リンパ節摘出とシスプラチン(CDDP)70mg/m2肝動注(TAI)を施行した.直後から重度の血小板減少と著しい血清中肝逸脱酵素上昇が生じたが,TAI後13日目には自然軽快した.

Human papilloma virus (HPV)60陽性であった指腹に生じた表皮囊腫の1例

著者: 芳賀貴裕 ,   奥山隆平 ,   江川清文 ,   相場節也

ページ範囲:P.911 - P.913

要約 57歳,男性.約30年前より調理師として働いている.6年前に,右手第Ⅰ指指腹に鶏眼様の皮疹が生じ,液体窒素による冷凍凝固術を施行された.1か月前から,同部が腫れ痛みを伴うようになった.表面に異常はみられず,皮下に結節を触れた.病理組織学的には,線維性の厚い被膜に覆われた表皮囊腫であった.in situ hybridizationでHPV60が陽性であることから,囊腫発生にHPV60が関与していることが示唆された.

Intravascular histiocytosisの1例

著者: 山本真有子 ,   岩垣正人 ,   池田光徳 ,   小玉肇

ページ範囲:P.914 - P.916

要約 74歳,女性.関節リウマチの既往はない.うつ病治療薬が変更された後に体幹,四肢に散在性に小型の紅斑が出現した.真皮深層に拡張した脈管を認め,そのなかにCD68陽性の単球/マクロファージが凝集していた.拡張した脈管の内皮細胞はCD31,CD34および第Ⅷ因子関連抗原が陽性であったことから血管であると考えた.薬剤により発症したintravascular histiocytosisと診断した.薬剤を中止し,紅斑は2週間で消退した.

耳前部に発生したsolitary fibrous tumor of the soft tissueの1例

著者: 田村愛子 ,   津嶋友央 ,   冨田浩一

ページ範囲:P.917 - P.920

要約 78歳,女性.右耳前部皮下に初診の1年前から腫瘤が出現し,徐々に増大した.初診時には,右耳前部に径2cmほどの表面平滑な皮下腫瘤を触知し,下床との可動性はやや不良であった.病理組織学的に,腫瘍細胞は星芒形から卵円形の細胞で不規則に配列し,花むしろ状の構造を示すところや,拡張した血管の周囲に腫瘍細胞が増殖する,hemangiopericytoma-like patternを示した.核の大小不同,点状にクロマチンが濃縮し,軽度の異型性もあった.免疫組織化学的に腫瘤を構成する細胞のほとんどは,ビメンチン陽性,CD34陽性であった.以上より,solitary fibrous tumor of the soft tissueと診断した.腫瘍を全摘し,24か月経過するが,再発はない.

悪性黒色腫を思わせた乳癌皮膚転移の1例

著者: 福原麻里 ,   早川和人 ,   塩原哲夫 ,   藤野節

ページ範囲:P.921 - P.924

要約 64歳,女性.17年前に乳癌の手術歴がある.左胸部の植皮部周囲に生じた色素斑を主訴に来院した.当初は悪性黒色腫を疑ったが,病理組織学的所見では表皮直下から真皮中層にかけて異型性のある腫瘍細胞が増殖し,ところどころで胞巣や管腔を形成していた.表皮直下には多数のメラノファージを認め,腫瘍巣内にはメラノサイトが増生していた.腫瘍細胞はCK7陽性,CK20陰性,エストロゲンレセプターおよびプロゲステロンレセプター陽性で,S-100蛋白,HMB45,MART-1はいずれも陰性であり,乳癌の皮膚転移と診断した.乳癌の手術後14~15年経て転移をきたすことは珍しく,しかも転移巣内にメラノサイトの増生を認めたことが特異な臨床像をもたらしたと考えた.特異なメラノサイトの増生と遅発性転移を起こした機序について,若干の考察を加えた.

膵癌皮膚転移の1例

著者: 野村友希子 ,   松村哲理 ,   田村文人 ,   由崎直人 ,   近藤仁

ページ範囲:P.925 - P.928

要約 58歳,男性.2006年2月に膵体部癌の診断にて膵体尾部切除術を施行した.術後化学療法を行っていたが,肺転移,肝転移が出現した.その後も化学療法を継続していたが,11月に入り左背部の疼痛を伴う皮下結節が出現した.局所麻酔下に切除し,病理標本では異型性を伴う腺細胞が管腔構造を形成していた.免疫組織化学染色でCEA(+),CA19-9(+),CK7(+),CK20(一部+)であり,膵癌の皮膚転移と診断した.切除により背部の疼痛は軽減したが,切除後16日目に原疾患の悪化により永眠した.

全身の多発結節を契機に見いだされた慢性骨髄単球性白血病の1例

著者: 椛沢未佳子 ,   田中智子 ,   並木剛 ,   佐藤貴浩 ,   横関博雄 ,   村山淳子 ,   谷口裕子

ページ範囲:P.929 - P.932

要約 74歳,男性.2005年3月頃より,背部に掻痒を伴う拇指頭大までの淡紅色斑が全身に拡大した.紅斑は一部辺縁に粟粒大の小膿疱が連圏状に配列するものもみられた.プレドニゾロン内服・ナローバンドUVB療法を施行し一時軽快したが,再度増悪した.初診時,ほぼ全身に孤立性で爪甲大までの浸潤を伴う紅斑,結節が多発し,発熱と全身リンパ節腫脹がみられた.血液検査で白血球・単球が増加し,病理組織で真皮全層に類円形で大型の核を有するCD33,CD68陽性異型細胞が密に浸潤していた.骨髄生検では単球系細胞が17%で,FAB分類より慢性骨髄単球性白血病(CMMoL)と診断した.本症例の皮膚病変をCMMoLの特異疹と考えた.

治療

肛門管癌の直接浸潤に対するMohs' paste使用経験

著者: 馬渕恵理子 ,   辻真紀 ,   甲斐裕美子 ,   井上千津子

ページ範囲:P.934 - P.936

要約 69歳,女性.8年前に肛門管癌に対し外科にて手術が施行された.5年前に局所再発し,放射線療法や化学療法が行われたが,効果が乏しかった.その後腫瘍が増大し,出血,非常に強い疼痛,悪臭,多量の滲出液を伴うようになったため,Mohs'pasteを試みた.腫瘍は縮小し,出血や疼痛に対する恐怖も取り除かれ,身体的,精神的苦痛を緩和することができ,末期癌患者のQOL改善に役立った.

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あとがき

著者: 川島眞

ページ範囲:P.940 - P.940

 東京医大病理のご出身である若新多汪先生(珍しいお名前だが,わかしん かずひろ先生と読む)からお手紙を頂戴した.内容は,「PAS染色」を学会発表などで“パス染色”と呼ぶのは不適切であり,せめて“ピー・エイ・エス染色”と呼ぶべきと考えるので,注意を喚起してほしいとのことであった.私が日皮会の理事の立場にあり,学会などでのこれまでの口うるさい発言の数々を高く評価?されてのご依頼と理解し,また日頃,自分自身でも気になっていたことでもあり,ここに記したい.

 若新先生は,PAS染色=per-iodic acid Shiff(シッフ氏の過ヨウ素酸)染色であり,paraamino salicylic acid(パス=抗結核薬)とは明確に区別すべきだとのご意見である.まさにその通りで,われわれが皮膚科医になった昭和50年代は,確かに学会でも医局カンファレンスでも“ピー・エイ・エス染色”と呼んでいた記憶がある.いつの間にか,意味を考えずに語呂のよい“パス染色”に変わってしまったようである.同様な術語の間違いはしばしば見聞きする.これは,現在若き皮膚科医の教育的立場にいるわれわれに,大いに責任がある.確かに30年前に比較すると皮膚科学は目覚ましい発展を遂げ,さまざまな事実が明らかになってきているが,新事実のきらびやかさに目を奪われるあまりに,足元の基本がおろそかになりつつあるのかも知れない.新旧取り混ぜて教育してゆくことの大切さを,あらためて教えていただいたお手紙であった.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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