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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科61巻12号

2007年11月発行

雑誌目次

連載 Clinical Exercise・3

Q 考えられる疾患は何か?

著者: 根岸泉

ページ範囲:P.945 - P.946

症例

患 者:50歳,女性

主 訴:掌蹠,顔面,背部の皮疹

既往歴:49歳時に子宮癌

家族歴:姉に乳癌

現病歴:初診の5年前から掌蹠に膿疱が出現し,その後,徐々に顔面や上背部にも紅色皮疹が出現してきた.近医にて掌蹠膿疱症の診断でステロイドの外用・内服治療を受けたが難治なため,当科へ紹介された.

現 症:掌蹠および指趾腹には角化性びまん性紅斑上に多数の膿疱を,顔面ならびに上背部には丘疹,膿疱を混じた淡紅色紅斑を認める.

原著

Ashy dermatosisの小児例―本邦で報告されたashy dermatosis34例およびerythema dyschromicum perstans39例のまとめ

著者: 伊東秀記 ,   松尾光馬 ,   中川秀己

ページ範囲:P.948 - P.951

要約 10歳,男児.既往に薬剤内服歴はない.5か月前に四肢,体幹を中心に紅斑が出現し,次第に灰褐色または褐青色へと色調が変化し,全身に拡大した.組織学的に真皮浅層の軽度のリンパ球浸潤,組織学的色素失調,基底膜の変性を認めた.臨床および病理組織学的所見より,ashy dermatosisと診断した.ashy dermatosisおよびerythema dyschromicum perstansの本邦報告例をまとめるとともに,考察を加えて報告する.

症例報告

アンピシリン・スルバクタム(ユナシンS®)によるacute generalized exanthematous pustulosisの1例

著者: 三上大輔 ,   西村幸秀 ,   花田圭司 ,   村西浩二 ,   森原潔 ,   加藤則人 ,   岸本三郎

ページ範囲:P.953 - P.955

要約 79歳,女性.右大腿に紅斑が出現し,蜂窩織炎と診断された.セフジニル(セフゾン ®)を3日間内服したが改善なく,アンピシリン・スルバクタム(ユナシンS ®)に変更した.同日夜より39℃台の発熱,鼠径部,下腹部に紅斑が出現した.紅斑は急速に体幹,四肢に拡大し膿疱を伴った.好中球優位の白血球増多,CRP高値を認め,病理組織学的に角層下膿疱を呈し,acute generalized exanthematous pustulosis (AGEP)と診断した.抗生剤およびステロイド薬投与は行わず,薬剤の中止と補液で軽快した.発症前に投与されていた薬剤に関して施行したパッチテストはすべて陰性であったが,薬剤リンパ球刺激試験および皮内テストによりユナシンS ®が原因薬剤と同定した.

潰瘍性大腸炎にみられた多形滲出性紅斑の1例

著者: 新石健二 ,   伊部直之 ,   光戸勇

ページ範囲:P.956 - P.959

要約 34歳,男性.2000年に発症した潰瘍性大腸炎で,2003年よりメサラジンの内服治療をしていた.腹部症状は,軽快と増悪を繰り返していたが,メサラジン内服量をコントロールすることにより対処していた.2006年12月より腹部症状が増悪し,それに伴い四肢に多形紅斑が出現した.メサラジンの内服を増量し,腹部症状は軽快したが,皮疹は拡大傾向を示し,眼瞼結膜の出血,四肢の浮腫,発熱を伴ったため,精査を行った.感染症や膠原病は否定的であり,結腸粘膜所見は潰瘍性大腸炎の活動期を示し,皮膚・粘膜症状と腹部症状が相関したことより,潰瘍性大腸炎に合併した多形滲出性紅斑と診断した.ステロイド内服により治療を開始し,皮疹をはじめとする身体症状は改善した.

胃癌を合併した丘疹紅皮症の1例

著者: 新石健二 ,   細川治 ,   大野徳之 ,   奥田俊之 ,   木下晴之 ,   羽場利博 ,   光戸勇

ページ範囲:P.960 - P.963

要約 72歳,男性.2005年頃より体幹・四肢のかゆみを伴う皮疹が出現した.近医皮膚科でステロイド外用と抗アレルギー薬,抗ヒスタミン薬内服にて加療していたが,難治であった.初診時(2007年1月),体幹は皺に一致して健常皮膚を残し,紅色苔癬状丘疹と浸潤性紅斑が存在した.臨床症状と皮疹の特徴より丘疹紅皮症と診断し,かゆみに対してステロイドの外用と抗ヒスタミン薬,抗アレルギー薬の内服を開始し,悪性腫瘍の精査を施行した.上部消化管内視鏡検査にて胃前壁の腫瘍が発見され,生検で腺癌と診断された.胃亜全摘術を施行後,かゆみは消失し,皮疹も消退した.

塩酸ミノサイクリンが著効したサルコイドーシスの1例

著者: 田辺健一 ,   勝岡憲生

ページ範囲:P.964 - P.966

要約 61歳,女性.2005年4月より両上肢と肩に紅色小結節が多発し,11月より両前腕の皮下結節が出現してきた.皮疹の生検にて真皮および皮下脂肪織に非乾酪性類上皮細胞性肉芽腫を認めた.X線上BHLと下肺野の網状影があり,苔癬様および皮下型の皮膚病変を伴ったサルコイドーシスと診断した.ステロイド外用とトラニラスト内服(300mg/日)を行ったが,皮下結節は難治であった.しかし,塩酸ミノサイクリン200mg/日内服にて,著明な縮小を認めた.

原発性Ⅴ型高脂血症に生じ急性膵炎を合併した発疹性黄色腫の1例

著者: 石黒恵美子 ,   濱崎洋一郎 ,   二階堂恵子 ,   石川里子 ,   籏持淳 ,   山﨑雙次 ,   清水裕晶 ,   松村美穂子

ページ範囲:P.967 - P.970

要約 15歳,女児.2006年6月初旬より発熱,腹痛,嘔吐が出現した.8月下旬に腹痛が再発したため,当院を受診し,急性膵炎,高脂血症の診断で内分泌代謝内科に入院した.臀部,肘頭部に小豆大までの黄色から淡紅色丘疹を散在性に認めたため,皮膚科を紹介された.病理組織所見で血管周囲,膠原線維間に泡沫細胞がみられた.血液検査では総コレステロール1,700mg/dl,トリグリセリド(中性脂肪)6,000mg/dlと異常高値を示し,脂質分画でカイロミクロンとVLDLの増加を認めた.膵炎の治療後に食事療法(脂肪制限20g/日)とベザフィブラート内服で高脂血症は改善し,黄色腫は約1か月後に消退した.

Linear IgA/IgG bullous dermatosisの1例

著者: 岡崎秀規 ,   佐藤直樹 ,   白方裕司 ,   村上信司 ,   橋本公二 ,   石井文人 ,   橋本隆

ページ範囲:P.971 - P.974

要約 83歳,女性.5か月前より四肢・体幹に紅斑,水疱が出現した.当科初診時,体幹・四肢に紅斑,血痂を付着するびらんが多発し,緊満性水疱も認めた.組織所見は好中球浸潤を伴う表皮下水疱で,蛍光抗体直接法では表皮基底膜部にIgG,IgA,C3の線状の沈着を認め,1M食塩水剝離皮膚を基質とした間接法では,抗基底膜部抗体はIgG,IgAクラスともに表皮側に反応した.免疫ブロット法では患者血清IgA抗体は120kDa抗原(LAD-1)に反応した.プレドニゾロン(PSL)30mg/日の内服で水疱新生は完全に抑制されたが,減量に伴い再燃した.ジアミノジフェニルスルホン(DDS)の内服併用により軽快した.

喉頭狭窄をきたした抗ラミニン5型瘢痕性類天疱瘡の1例

著者: 満山陽子 ,   堀田隆之 ,   福田知雄 ,   早川和人 ,   塩原哲夫 ,   橋本隆

ページ範囲:P.975 - P.978

要約 76歳,女性.初診の4か月前より口腔内にびらんが多発してきた.その後,嗄声の出現とともにびらんも徐々に増悪し,呼吸困難を伴ったため,当院へ救急搬送され気管切開後に入院した.口腔内のびらんと,声門上部の狭窄を認めた.口腔粘膜の組織所見で,上皮下に裂隙がみられ,蛍光抗体直接法で表皮基底膜部にIgGが線状に沈着していた.免疫ブロット法で,ラミニン5に反応がみられ,抗ラミニン5型瘢痕性類天疱瘡と診断した.ベタメタゾン3mgにて軽快はみられたものの,減量に難渋した.本症は喉頭病変が起こりやすいため,しばしば気管切開が行われるが,病勢のコントロールが難しく,気管孔閉鎖ができずQOLが著しく低下する.喉頭病変が生じる前の,口腔,皮膚病変にとどまっているうちに診断確定し,治療を開始することが重要と考えた.

眼瞼に発生した木村氏病の1例

著者: 川口敦子 ,   入澤亮吉 ,   坪井良治

ページ範囲:P.979 - P.982

要約 38歳,男性.5年前より右眼球周囲に皮下結節を自覚していた.当科初診時,右上下眼瞼および内眼角に鶏卵大,弾性軟の皮下結節と,右顎下腺部の腫脹が認められた.右眼瞼部の病理組織像では真皮浅層から皮下組織,筋層にわたって毛細血管の増生を伴うリンパ球と好酸球の密な浸潤が認められたため木村氏病と診断した.また血中好酸球数,IgE値が高値で,頭部CT検査では右眼瞼皮下に軟部陰影を示した.症状はステロイドの内服にて改善したが,その後,花粉症の時期に一致して同部位の腫脹を繰り返したため,その時期のみトリアムシノロンアセトニドの筋注を追加することで腫脹は軽快した.木村氏病は頭頸部に好発するが,そのなかで眼瞼部に生じる症例は2.7%と比較的稀である.

合併した悪性リンパ腫の診断に苦慮した皮膚筋炎の1例

著者: 三井純雪 ,   新山史朗 ,   新井達 ,   坪井廣美 ,   勝岡憲生

ページ範囲:P.983 - P.986

要約 68歳,男性.2001年12月より皮疹と四肢筋肉痛が出現した.2002年1月の当科受診時,上眼瞼の暗赤色の紅斑,ほぼ全身の落屑を伴う浮腫性の紅斑,および近位筋筋力の低下と筋原性酵素の上昇がみられ,皮膚筋炎と診断した.腹腔内リンパ節の腫大を認めたが,腹腔鏡下の生検組織像で,明らかな悪性像はみられなかった.ステロイド治療に抵抗性で,特に筋症状の改善がなく,また水疱形成がみられた.開腹生検により,B細胞性悪性リンパ腫と確定診断した.治療による悪性リンパ腫の軽快に伴って皮膚筋炎の改善がみられた.

1つの結節から発見された急性型成人T細胞性白血病/リンパ腫の1例

著者: 馬場俊右 ,   赤坂俊英 ,   佐藤恵

ページ範囲:P.987 - P.989

要約 50歳,女性.初診の1か月前から頸部に米粒大ほどの皮疹が出現し,徐々に増大したため,リンパ腫が疑われた.当科への紹介受診時,左側頸部に1cm大の弾性硬の紅色結節がみられた.病理組織学的所見では表皮から真皮にかけてびまん性に異型Tリンパ球が浸潤していた.血清抗HTLV-1抗体陽性で,末梢血中に花弁状細胞が出現しており,急性型成人T細胞性白血病/リンパ腫(ATLL)と診断した.

Treacher Collins症候群に合併した多発性石灰化上皮腫の1例

著者: 森志朋 ,   赤坂俊英

ページ範囲:P.990 - P.992

要約 34歳,男性.幼小児期より頭部に皮下腫瘤が出現し,増大し近医で切除された.その後も身体各所に腫瘤が出現し,当科を受診した.圧痛を伴う後頭部,項部,腋窩の腫瘤を切除したところ,いずれも典型的な石灰化上皮腫であった.また,顔面は眼裂の下外方向への傾斜,下顎の低形成,歯牙の異常,歯列不整,高口蓋,幅広い鼻橋と鉤鼻,低位耳介を呈し,精神発達遅延を伴い,Treacher Collins症候群に特徴的な所見がみられた.筋緊張性ジストロフィーと石灰化上皮腫との合併についての報告は多数みられるが,Treacher Collins症候群との合併例はなかった.

皮下腫瘤を主訴に受診した乳癌の1例

著者: 竹村典子 ,   藤井紀和 ,   田中俊宏

ページ範囲:P.993 - P.995

要約 67歳,女性.約3年前より自覚していた左腋窩前方の皮下腫瘤が徐々に増大してきた.初診時,左腋窩前方に3×3cm大の硬い皮下腫瘤を認めた.腫瘤表面に軽度の凹凸が存在するも,周囲組織との境界は明瞭であった.超音波検査にて真皮直下から筋膜上に,表面にわずかな凹凸を認める23.1×22.7×23.9mm大の低エコーの腫瘤を認めた.乳腺との連続性は明らかでなかった.ドップラーエコーにて内部に数か所著明な血流信号を認めた.MRIにて腫瘤は乳腺と連続性があり,T1強調画像で低信号,T2強調画像でやや低信号であった.腫瘤は針生検にて乳癌(充実腺管癌)と診断した.皮膚科医は,皮膚科を受診する可能性のある皮膚科領域以外の疾患,および表在性の臓器である乳腺の超音波検査所見にも精通する必要がある.

口囲に発症したmorpheaform basal cell carcinomaの1例

著者: 石川理穂 ,   安藤浩一 ,   原一夫

ページ範囲:P.996 - P.998

要約 63歳,女性.初診の2年前より,左上口唇周囲に光沢のある白色小結節が出現した.初診時,同部に12×11mm大の境界不明瞭で光沢のある白色結節を認めた.周囲の皮下にも浸潤を触れた.皮膚生検にて,morpheaform basal cell carcinomaと診断した.周囲の浸潤を触れる部分から5mm離して全摘した.その後7か月を経過して,再発は認めていない.

血管腫に対するドライアイス療法およびレーザー治療に伴って出現した基底細胞癌の1例

著者: 細川僚子 ,   山本奈緒 ,   貴志和生 ,   今村浩子 ,   大山学

ページ範囲:P.999 - P.1001

要約 35歳,女性.出生時より右顔面に血管腫を認め,幼少時よりドライアイス,その後レーザーにより治療されていた.25歳時より,治療部位の一部である右鼻翼近傍に黒色斑が生じ,次第に増大した.初診時,下床に軽度浸潤を伴う径7×6mmの黒褐色の小結節を認めた.拡大切除術を施行した.病理組織では表皮・真皮境界部~真皮深層部に基底細胞様細胞が胞巣状・索状に増殖しており,基底細胞癌(BCC)と診断した.血管腫に発生したBCCの報告例のほとんどは,比較的若年で過去に何らかの治療を受けていたものである.レーザー治療のBCC発症への関与も否定できなかったが,自験例ではドライアイス療法がよりBCCの発症に寄与している可能性が高いと考えられた.

溶接工に発症した基底細胞癌の1例

著者: 桃崎直也 ,   濱田尚宏 ,   黒瀬浩一郎 ,   名嘉眞武国 ,   安元慎一郎 ,   橋本隆

ページ範囲:P.1002 - P.1004

要約 36歳,男性.右鼻翼部の黒色小結節を主訴に受診した.皮膚生検にて基底細胞癌と診断した.職業歴として17年間の溶接工をしていた.基底細胞癌の発症部位としては好発部位であるが,発症年齢としては比較的若年であり,溶接の際に生じる紫外線が発症に関与している可能性があるのではないかと考え,実際の溶接の紫外線量などについて検証した.

Traumatic anserine folliculosisの2例

著者: 竹田公信 ,   藤田純 ,   望月隆 ,   柳原誠

ページ範囲:P.1005 - P.1008

要約 症例1:81歳,男性.元美術教師であり日本画を描くことを趣味とする.約1年前より正座をして絵を描いていた.初診3か月前より,左臀部に自覚症状のない白色丘疹が数個出現した.受診時,左臀部中央に直径45mmの表面がおろしがね状の局面を認め,局面内に毛孔一致性の角化性白色丘疹が存在した.絵を描くとき,丘疹部は坐骨部と踵が接する部位に一致していた.症例2:6歳,男児.顎を左手の上に乗せてよくマンガを描いていた.5歳頃より下顎に自覚症状のない丘疹が出現.下顎と手背の皮膚の接する部位に丘疹を認めていた.受診時,下顎中央部に粟粒大の毛孔一致性の角化性丘疹が集簇していた.2症例とも病理組織学的所見では毛包が囊腫状に拡大し,毛包内部は角質物質が充満しており,traumatic anserine folliculosisの診断のもと,タカルシトール軟膏を1日2回外用し,白色丘疹は扁平化した.

緑膿菌性壊疽性膿瘡と溶血性連鎖球菌性尋常性膿瘡の各1例

著者: 佐藤まどか

ページ範囲:P.1009 - P.1012

要約 症例1:82歳,女性.基礎疾患に心不全,強皮症(limited type)あり.両下腿に発赤腫脹と潮紅を伴う潰瘍,膿疱が出現した.症例2:56歳,男性.基礎疾患に糖尿病,高血圧症あり.両下肢に膿疱と紅暈を伴う潰瘍が多発していた.両症例ともに,病理組織検査では真皮内に血管壁のフィブリノイド変性を伴う壊死性血管炎が認められた.皮膚組織の細菌検査にて症例1では緑膿菌,症例2ではA群溶血性連鎖球菌が検出された.両者は起炎菌が違うため,前者は緑膿菌性壊疽性膿瘡,後者は溶血性連鎖球菌性尋常性膿瘡と異なる診断名となるが,病理組織では類似の所見を呈していた.

著明な貧血を伴ったOsler-Rendu-Weber病の1例

著者: 山田和哉 ,   田村政昭 ,   郡隆之

ページ範囲:P.1013 - P.1015

要約 79歳,男性.家系内に鼻出血を繰り返す者が多い.約20年前より鼻出血を起こしていたが,最近その頻度が増加し,息切れも出現するようになった.血液検査で,Hb4.1g/dlと著明な貧血を認めた.両耳介,鼻部,頬部および躯幹に鮮紅色結節が多発し,口腔粘膜,舌には粟粒大~半米粒大の鮮紅色斑を認めた.左Kiesselbach部位のびらんから出血があった.肺や肝臓,消化管などに血管性病変や出血巣は確認できなかった.右頬部の結節より生検を行ったところ,真皮上層から中層にかけて,1層の血管内皮細胞からなる血管の拡張,増生,蛇行がみられた.以上より,Osler病と診断した.輸血,鉄剤,止血剤などの投与を行い,貧血は改善し,鼻出血の回数も減少した.

治療

自己免疫性皮膚疾患に対する血漿交換療法

著者: 石地尚興 ,   谷野千鶴子 ,   上出良一 ,   中川秀己 ,   大森一範

ページ範囲:P.1017 - P.1020

要約 近年,天疱瘡を中心に,ステロイド全身投与に抵抗性の症例において,自己抗体の除去などを目的とした血漿交換療法が施行されるようになった.われわれは,尋常性天疱瘡,水疱性類天疱瘡,抗ラミニン5瘢痕性類天疱瘡,自己抗体の関与が推測された慢性蕁麻疹に対し,血漿交換療法を施行し,良好な結果を得た.そこで治療前後の臨床症状,ステロイド投与量,自己抗体価の関係について検討したところ,臨床症状の改善,ステロイド投与量の減少,自己抗体価の低下がみられた.有害事象として,低血圧,出血,感染症が認められたため,注意深く施行する必要があると考えられた.

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あとがき

著者: 伊藤雅章

ページ範囲:P.1024 - P.1024

 ただ今,第107回日本皮膚科学会総会の準備中です.私が会頭を務めさせていただきますが,新潟ではなく,京都での開催です.何故に京都かというと,103回から総会が皮膚科医のための教育学会へと変身し,学会の運営方針も大きく変わったからです.観光やご馳走目当てで参加し,また主催教室の看板を見せるだけの従来の学会とは違い,日皮会会員による,会員のための,真に有益な学会になりました.年1回開催で会員数約1万人ですので,会場の大きさや交通・宿泊の利便を考え,京都と横浜で交互の開催になりました.実際に,4千人規模の参加者で新潟市での開催は容易ではありません.本来,総会は日皮会の中核事業であり,社会的にも重要な学会ですので,原則としてその運営は日皮会事務が行い,内容は会員の要望や皮膚科の進歩を考慮して担当の委員会が決めるべきと思います.実際,新しい総会になり,開催収支は日皮会会計に包括され,学会の主体である教育講演は学術委員会が多くの皮膚科関連分野を考慮して立案し,土肥講演の演者も同委員会から候補が答申され,また,総会プログラム委員会が日皮会の正式の委員会として組織されています.かなり中央化していますが,私や事務局(教室)がコンベンションとやり取りし,企業展示や寄付を依頼するなど,まだ改善すべき問題が多々あります.会頭としては,皮膚科学への想いを込めて会頭講演をし,特別講演を企画することで十分に名誉なことと思います.

 話は少し変わりますが,総会が教育学会として生まれ変わりましたが,皮膚科専門医の獲得単位は多いものの,専門医制度における総会の位置付けは未だ不十分と感じます.3日目の総会終了間際に参加して単位をもらっていく専門医もいるようです.これでは皮膚科専門医の質が問われますので,専門医資格認定委員会では,総会の教育講演コースをいくつ受講したかを専門医更新要件の一つにしてはと検討しています.日皮会が会員に発行している会員証・会員番号による受講確認や各コース終了時のマークシート提出もよいかもしれません.いずれ,皮膚科専門医でなければ「皮膚科」を標榜できなくなる時が来ると思いますが,それにはわれわれ皮膚科専門医が,社会に認められる形で確かな研鑽を積んでいく必要があるでしょう.多数の会員の参加をお待ちしています.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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