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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科61巻3号

2007年03月発行

雑誌目次

今月の症例

尖圭コンジローマに対するインターフェロン筋注療法の試み

著者: 萩原正則 ,   本田まりこ ,   相澤良夫 ,   松尾光馬 ,   中川秀己

ページ範囲:P.201 - P.204

要約 64歳,ヘテロセクシャルの男性.半年前より肛門周囲に腫瘤が出現した.疼痛を伴い座れなくなったため,近医より当科を紹介された.肛門周囲に手拳大の乳頭腫状の灰色角化性腫瘤を認めた.組織学的に,乳頭腫状の表皮過形成,角層の肥厚がみられ,顆粒層表皮細胞の空胞化を認めた.核異型や異常な分裂像はなかった.polymerase chain reaction (PCR)およびloop-mediated isothermal amplification (LAMP)でhuman papillomavirus(HPV)-11型を検出した.腰椎麻酔下に腫瘍切除の方針であったが,術前検査でHCV抗体陽性であることが判明した.肝炎に対するインターフェロン(IFN)療法により腫瘍縮小効果を期待できると考え,IFN-α-2b筋注(6×106IU/日,週3回)を開始した.投与3か月後には腫瘤は著明に扁平化し,5か月後に色素沈着主体となった.

症例報告

クロラムフェニコール腟錠によるsystemic contact dermatitisの1例

著者: 渋谷佳直 ,   長澤智佳子 ,   水谷陽子 ,   清島真理子

ページ範囲:P.207 - P.209

要約 31歳,女性.過去に腟錠で接触皮膚炎の既往があった.初診3日前およびその約1年後の2回,外陰腟炎で産婦人科を受診しクロラムフェニコール(CP)腟錠を投与された.同日夜,下腹部に紅斑が出現し,その後,急速に拡大してきた.発熱,リンパ節腫脹,粘膜疹は認めなかった.薬疹を考え,プレドニゾロン20mg/日,ベジル酸ベポスタチン投与により皮膚症状は消失した.パッチテストおよびリンパ球刺激試験を行ったところ,CP腟錠で陽性を示したため,本剤によるsystemic contact dermatitisと診断した.

高齢者に発症した肉芽腫性口唇炎の1例

著者: 山下史記 ,   植木理恵 ,   池田志斈

ページ範囲:P.210 - P.213

要約 74歳,女性.当科初診1年前より上口唇の発赤・腫脹が出現した.他院にてステロイド薬の内服,外用などで治療されたが,症状が改善しないため当科を受診した.顔面神経麻痺,舌の変化は認められなかった.血中ACEは低値であった.上口唇皮膚の病理組織所見では真皮に巨細胞,類上皮細胞よりなる肉芽腫性の変化がみられた.臨床症状と併せ,肉芽腫性口唇炎と診断した.金属貼布試験を施行したところ,Co,Ni,Znで陽性となった.トラニラストの内服を行ったところ,発赤・腫脹が消退した.また,併せて歯科にて歯科金属の除去を行った.本症の本邦報告例の解析では金属貼布試験の陽性例が多く,また本症の高齢発症は比較的稀であった.

周術期にアナクトC®を使用したプロテインC欠乏症の1例

著者: 宮本真由美 ,   谷岡未樹 ,   松村由美 ,   是枝哲 ,   宮地良樹

ページ範囲:P.214 - P.216

要約 30歳,女性.26歳のときに先天性プロテインC(PC)欠乏症と診断され,ワーファリン®,塩酸チクロピジン内服中であった.今まで肝梗塞,肺塞栓,視床梗塞の既往がある.今回,左足潰瘍に対する下腿切断術施行に際し,抗凝固薬を中止する必要があったため,血栓の発症を予防するために周術期に活性型プロテインC(PC)製剤を投与した.重篤な血栓症を発症することなく,術後経過は順調である.先天性PC欠乏症患者に活性型PC製剤を予防的投与した報告例は少なく,貴重な症例であると思われた.

食道の扁平上皮癌を伴ったacrokeratosis paraneoplastica Bazexの1例

著者: 吉澤順子 ,   木根淵智子 ,   三橋善比古 ,   杉木浩

ページ範囲:P.217 - P.220

要約 77歳,男性.初診の3年前より両手,両足に角化性紅斑を認め,治療抵抗性であった.皮疹は半年前には体幹に拡大した.1か月前より嚥下困難が出現し,上部消化管内視鏡検査で食道癌(扁平上皮癌,StageⅣ)が発見された.症状緩和目的に食道病変に対する姑息的放射線照射が行われた.当初,皮膚病変は外用治療に全く反応しなかったが,照射6回目頃より皮膚病変の改善がみられ,20回の照射終了時には略治の状態になった. CTでは原発巣は著明に縮小していた.食道癌に伴ったacrokeratosis paraneoplastica と診断し,Bazex分類Ⅲ期の定型例と思われた.

糖尿病と肝硬変・肝細胞癌患者にみられた後天性反応性穿孔性膠原線維症の1例

著者: 松井矢寿恵 ,   山本都美 ,   坪井廣美

ページ範囲:P.221 - P.223

要約 76歳,男性.52歳より2型糖尿病に罹患し,インスリンの投与でコントロールされていた.75歳時,C型肝炎に伴って肝細胞癌を発症し,同時期より体幹に皮疹が出現,拡大した.初診時,全身皮膚の黄染・腹部膨満がみられ,両肩から上腕・上背部には小豆大までの,褐色の痂皮が付着する病変が散見された.病理組織所見では,経皮排出像を認めた.塩酸ミノサイクリンの経口投与開始から7週後に皮疹は軽快した.自験例は糖尿病と肝細胞癌を基礎にもつ後天性反応性穿孔性膠原線維症(ARPC)の症例であった.ARPCは糖尿病患者に多く発症し,時に肝硬変・肝細胞癌にも合併する.自験例においてはその両者のARPC発症における関与を考えた.

皮膚限局性結節性アミロイドーシスの1例

著者: 嘉陽織江 ,   加藤陽一 ,   工藤清孝

ページ範囲:P.224 - P.226

要約 63歳,男性.1999年より下顎に自覚症状のない結節が出現した.HE染色では真皮全層に好酸性無構造物質が沈着していた.この物質はアルカリコンゴーレッド染色にて淡紅色に染まり,偏光顕微鏡下において黄緑色の偏光を呈し,アミロイドと同定した.抗AL抗体(κ,λ)との反応性は陰性であった.全身性アミロイドーシスを示唆する所見はなく,皮膚限局性結節性アミロイドーシスと診断した.過去の本邦報告例について若干の文献的考察を加えた.

乳癌の両側副腎転移により発症したAddison病の1例

著者: 福岡美友紀 ,   石田祐哉 ,   西村陽一

ページ範囲:P.228 - P.230

要約 56歳,女性.32年前に乳癌の切除術を施行されている.約5年前より全身の皮膚,粘膜および両手足の爪に色素沈着が出現し,徐々に増強してきた.臨床所見および内分泌検査よりAddison病と診断した.さらにSister Joseph結節様の皮疹を臍部に認め,病理所見より乳癌の皮膚転移と診断した.全身検索にて両側副腎の腫大および多発性転移巣を認めた.以上より,乳癌の副腎転移によりAddison病を呈したものと判断した.化学療法により腫瘍は縮小し,ステロイド全身投与によって色素沈着も著明に改善した.

伝染性膿痂疹の二卵性双生児の一児のみに生じたSSSS

著者: 中井真理子 ,   佐々木一 ,   萩原正則 ,   松尾光馬 ,   本田まりこ ,   中川秀己 ,   河野緑

ページ範囲:P.231 - P.234

要約 2歳,二卵性双生児の兄弟.兄弟ともほぼ同時期に四肢,体幹に水疱,びらんが出現.近医にて伝染性膿痂疹と診断され,抗菌薬の内服,外用治療を行われた.その後,兄は顔面の浮腫,発赤,落屑,全身の表皮剥離が出現し,ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)と診断された.一方,弟は体幹にびらんを伴う紅斑のみを呈し,全身の潮紅はみられなかった.兄弟ともに塩酸ミノサイクリン内服で皮疹の改善をみた.皮膚細菌培養にて兄弟ともにMRSAを検出し,PCR法では表皮剥脱毒素ET-B産生株と同定された.さらにパルスフィールド電気泳動による型別判定(Sma I digest)により両者は同一株と判定した.二卵性双生児が同一株のMRSAに感染しながら異なる経過をとり,健常小児においてMRSAへの感受性やSSSSへの発症機転に個人差があることが示唆された.

高齢者に生じた尋常性狼瘡の2例

著者: 長澤智佳子 ,   渋谷佳直 ,   水谷陽子 ,   清島真理子 ,   大楠清文

ページ範囲:P.235 - P.238

要約 症例1:91歳,女性.50年前に肺結核,4年前に結核性胸膜炎の既往あり.約2年前より右耳前部に紅斑が出現し,徐々に拡大した.右下顎~右眼瞼に紅斑,硬結を形成した.症例2:82歳,女性.脳梗塞の既往あり.約2か月前より前胸部に難治性潰瘍が出現した.2例ともツベルクリン反応強陽性.皮膚生検組織で真皮内非乾酪性肉芽腫がみられた.症例1は組織の抗酸菌培養陰性,組織片塗沫標本の抗酸菌染色陽性およびPCR法で結核菌DNAを検出した.症例2は抗酸菌培養陽性,抗酸菌塗沫陽性,PCR法で結核菌DNAを検出した.2例とも抗結核薬の投与により症状は消失した.

梅毒血清反応高値,尖圭コンジローマより発見されたHIV感染症

著者: 篠島由一 ,   當間由子

ページ範囲:P.239 - P.241

要約 29歳,男性.7年前,両手掌,足底の皮疹にて梅毒を指摘され,駆梅療法の既往がある.2005年4月,水痘のため当科に入院した.入院時の梅毒定性検査でRPR,TPHAともに陽性であった.HIV検査は希望せず,未施行である.梅毒を思わせる皮疹や脱毛を認めないが,梅毒定量検査にてガラス板法256倍,TPHA法20,480倍と異常高値を呈した.同年5月よりベンジルペニシリンベンザチンの内服を開始した.2006年1月,肛門周囲の腫瘤を主訴に再診した際,生検から尖圭コンジローマと診断された.HIV検査施行により,HIV抗体(EIA法)陽性で,HIV-1抗体(Western Blot法)も陽性であり,CD4陽性T細胞数180/μl,CD4/CD8比0.2と低下を認め,HIV感染症と診断した.

Rothmund-Thomson症候群の1例

著者: 田子修 ,   永井弥生 ,   田村敦志 ,   石川治

ページ範囲:P.242 - P.245

要約 3歳,女児.低出生体重児で出生時より両前腕形成異常がみられた.生後2か月より体幹ついで顔面,上肢に淡褐色斑が出現し,次第に拡大した.初診時,顔面に米粒大前後の淡褐色斑と脱色素斑が多発し,毛細血管拡張を伴っていた.四肢にも粗大網状の紅斑と淡褐色斑,脱色素斑を伴った多形皮膚萎縮がみられた.橈側列形成不全症および白内障も合併していた.Rothmund-Thomson症候群は,先天性多形皮膚萎縮症に種々の形成異常を伴う稀な疾患である.

Rippled-pattern sebaceomaの1例

著者: 山本純照 ,   榎本美生 ,   多田英之 ,   福本隆也 ,   宮川幸子

ページ範囲:P.246 - P.248

要約 72歳,女性. 2001年8月頃に頭頂部に淡黄色結節が出現し,以後徐々に増大した.2004年8月には8×7mm,弾性硬となり,同8月25日に当科を受診した.病理組織学的に腫瘍は表皮と連続して存在し,周囲との境界は明瞭であった.腫瘍塊は主に基底細胞様細胞で構成され,病変全体には膠原線維の増生と腫瘍細胞が平行に走行するいわゆるさざ波模様(rippled-pattern)があり,脂腺分化細胞も混在していた.また,腫瘍巣内の一部にはクチクラで縁取られた脂腺導管様構造もみられ,rippled-pattern sebaceomaと診断した.

Papillary eccrine adenomaの1例

著者: 新保有佳里 ,   森脇真一 ,   草壁秀成 ,   清金公裕

ページ範囲:P.249 - P.251

要約 55歳,女性.左下腿内側上方に径10×8mm,高さ4mmの半球状に隆起する表面平滑な赤褐色の結節を主訴に来院した.軽度掻痒を伴っていた.病理組織学的に,表皮とは非連続性の腫瘍巣であり,多数の腺管腔様構造で構成されていた.管腔構造は1層ないし数層の立方状の細胞からなり,内側の細胞は乳頭状に内腔に突出していた.腫瘍細胞はCEA染色,EMA染色ともに陽性,S-100蛋白染色は陰性であった.以上より,papillary eccrine adenomaと診断した.

Spindle cell lipomaの2例

著者: 田中京子 ,   吉田理恵 ,   石原幸子 ,   木本雅之 ,   木花光

ページ範囲:P.252 - P.254

要約 症例1:77歳,男性.左項部の皮下結節.症例2:57歳,男性.右項部の皮下結節.それぞれ自覚症状はなかった.病理組織にて成熟脂肪細胞,膠原線維の増生,紡錘形細胞を認め,特殊染色にて紡錘形細胞はvimentin,CD34陽性,S-100蛋白陰性であった.2例ともspindle cell lipomaと診断した.spindle cell lipomaは通常の脂肪腫の約1/60の頻度でみられる脂肪腫の一亜型である.腫瘍内部の多様な内部構造を反映して,画像検査で不均一な信号を呈することが多く,高分化脂肪肉腫,血管腫などとの鑑別が問題となるが,発生部位や周囲への浸潤像の有無などから,ある程度の鑑別は可能である.

潜在性二分脊椎と鎖肛を合併した仙骨部血管腫の1例

著者: 森安麻美 ,   末廣晃宏 ,   竹中秀也 ,   加藤則人 ,   岸本三郎 ,   佐々木康成 ,   木村修 ,   笹島浩泰

ページ範囲:P.256 - P.259

要約 2か月,女児.出生時より直腸肛門奇形,会陰部腫瘤があり,その後,肛門から仙骨部にかけて紅斑局面が出現した.初診時,仙骨部に扁平隆起した鮮紅色の紅斑局面を認め,苺状血管腫と診断した.精査のためMRI検査を行ったところ,腰仙部に潜在性二分脊椎がみられた.本症例のように腰仙部近傍に腫瘤や血管腫などの皮膚病変がみられた場合には,潜在性二分脊椎や脊髄脂肪腫が存在する可能性を念頭に置く必要がある.

Balloon cell nevusの1例

著者: 栗本貴弘 ,   吉田益喜 ,   川原繁 ,   川田暁

ページ範囲:P.260 - P.262

本論文は抹消されました。

多毛を伴ったfibrous hamartoma of infancy の1例

著者: 攝田麻里 ,   安倍邦子 ,   林徳真吉 ,   木下直江 ,   今泉敏史 ,   野中大樹 ,   皆川知広 ,   秋田定伯 ,   上谷雅孝 ,   平野明喜

ページ範囲:P.263 - P.266

要約 1歳,女児.多毛を伴う背部の腫瘤で受診した.画像検索で血管腫を疑ったが,病理組織学的には皮下に索状の線維性組織,未分化間葉系細胞巣と成熟脂肪組織の3成分が増殖する特徴的な組織像を示し,乳児線維性過誤腫(fibrous hamartoma of infancy)と診断した.

無色素性基底細胞癌の1例

著者: 大藤聡 ,   中島圭子 ,   山田七子 ,   安岐敏行 ,   山元修

ページ範囲:P.267 - P.269

要約 69歳,女性.右上唇にあった小豆大の結節が徐々に増大し,1.3×1.7×0.7cmの淡紅色で広基性の結節になった.病理組織診断で基底細胞癌と診断し,切除した.基底細胞癌は邦人において無色素性のものは少ない.さらに本例は広基性の形態を示したため,ダーモスコピーの所見を加味しても臨床所見のみで基底細胞癌と診断することは困難であった.病理組織学的に腫瘍胞巣は基底細胞様細胞からなり,周囲間質と裂隙を形成していた.腫瘍間質はCD34陰性であった.電子顕微鏡で腫瘍内にメラノサイトは見いだせなかった.

基底細胞癌の残存病変に対する光線力学的療法(PDT)の試み

著者: 山下範子 ,   福井利光 ,   渡辺大輔 ,   玉田康彦 ,   松本義也 ,   原一夫

ページ範囲:P.270 - P.272

要約 70歳,男性.左鼻翼の基底細胞癌(BCC)を外科的に切除したが,深部断端に腫瘍細胞を認めた.追加切除を施行したが,再び深部断端に腫瘍細胞の残存をみた.病理組織学的にメラニンが少なかったこと,開放創であり光線力学的療法(PDT)が下床まで十分届きうると考え,残存病変に対してPDTを施行し,腫瘍細胞の消失をみた.整容面において,より大きな外科的侵襲を加えることが困難なBCCの症例では,PDTも選択肢になりうると考えた.

Merkel細胞癌の1例

著者: 清原忠彦 ,   池田大助 ,   大津詩子 ,   草壁秀成 ,   森脇真一 ,   清金公裕

ページ範囲:P.273 - P.275

要約 89歳,女性.2か月前より右大腿部内側に結節が出現し,徐々に増大してきた.初診時,右大腿部内側に直径1.2cm大,赤色の半球状に隆起する腫瘤が存在した.病理組織学的に真皮浅層から皮下脂肪織にかけて腫瘍細胞が増殖し,腫瘍塊は比較的小型の好塩基性の細胞より構成され,核分裂像が多数認められた.腫瘍細胞は免疫組織学的にサイトケラチン8,18,19,20,クロモグラニンA,エピセリアルメンブランアンチゲン,神経特異的エノラーゼ,シナプトフィジンいずれも陽性で,電顕所見にて有芯小体と中間径フィラメントの集積が確認された.以上より,本症をMerkel細胞癌と診断し,外科的切除を施行した.

紅色局面を呈したamelanotic melanomaの1例

著者: 横内麻里子 ,   小林昌和 ,   稲積豊子 ,   大畑恵之 ,   森本照子

ページ範囲:P.276 - P.279

要約 78歳,女性.初診の約2か月前に右足底の紅色皮疹を自覚,ステロイド外用に反応せず拡大した.初診時,右踵部に自覚症状を伴わない径約2cm,類円形の鱗屑を付す紅色局面を認めた.組織学的に,表皮基底層を中心にメラノサイト様の腫瘍細胞が増殖し,一部真皮上層に浸潤していた.腫瘍細胞にはメラニン顆粒を認めず,HMB-45,S-100蛋白染色陽性であり,amelanotic melanoma(術後診断Stage IA:pT1aN0M0)と診断した.拡大切除術を施行し,術後5か月の現在,再発・転移は認めていない.なお,骨盤CTにて子宮頸部から体部に腫瘍性病変が発見され,婦人科的検索にて子宮頸癌StageⅣと診断された.いわゆる重複癌であり,偶発的に合併したものと考えた.

CD30陽性細胞浸潤を伴った扁平浸潤期の菌状息肉症の1例

著者: 岸本恵美 ,   赤坂季代美 ,   江藤隆史

ページ範囲:P.280 - P.283

要約 49歳,女性.34歳頃より体幹,四肢に自然消退する自覚症状のない落屑性紅斑の出没を繰り返し,44歳から左上腕と臀部,大腿に紅斑が出現した.49歳時に初診した.左上腕に多形皮膚萎縮を伴う不整形落屑性紅斑,左臀部,右大腿屈側に浸潤性落屑性紅斑が存在した.病理組織で,左上腕では表皮内への異型リンパ球浸潤,微小膿瘍形成を認め,典型的な菌状息肉症の組織像だが,大腿屈側では真皮内にCD30陽性大型細胞の浸潤を認めた.リンパ節を含め他臓器浸潤はなかった.CD30陽性細胞浸潤を伴った扁平浸潤期の菌状息肉症と診断し,内服PUVA療法と電子線の照射を併用した.治療には良好に反応した.

臨床統計

AD Forum:アトピー性皮膚炎の経時的推移に関するアンケート調査研究

著者: 古江増隆 ,   川島眞 ,   古川福実 ,   飯塚一 ,   伊藤雅章 ,   中川秀己 ,   塩原哲夫 ,   島田眞路 ,   瀧川雅浩 ,   竹原和彦 ,   宮地良樹 ,   片山一朗 ,   岩月啓氏 ,   橋本公二

ページ範囲:P.286 - P.295

要約 現在10~20歳であるアトピー性皮膚炎(AD)患者を対象にアンケート調査を実施し,ADの経時的推移を検討した.794名のうち約半数の患者に,良くなって病院に行かなくなった時期があった.良くなった期間の長さは,5年未満が73.5%を占めていた.また,悪くなった時期は二峰性を示し,小学校入学前と中学生の時であった.これらの結果から,ADは小学校高学年に改善することが多いが,再燃も稀ならず生じることが確認された.

書評

―編集:日本フットケア学会―フットケア―基礎的知識から専門的技術まで

著者: 吉原広和

ページ範囲:P.204 - P.204

 「人間の生活において『歩く』ことは単なる日常生活動作の範疇ではなく,より高度な文化的活動の維持・向上に不可欠な身体活動である」.このように考えると,歩行を支える足機能の維持・ケアはないがしろにはできず,足病変のアプローチがいかに人の営みに影響を与えるかが窺える.

 フットケアの分野は特に欧米において進歩・発展してきた診療分野ではあるが,日本ではやっと取り組みが始まった段階でしかない.欧米とは違った文化をもつわが国では,「フットケア」技術の発展にも生活習慣の違いが影を落とす状況にあったことは否めないが,今後,足病変に対する集学的治療分野としての「フットケア」が日本でも確立されることを望む医療者は多いのではないだろうか.

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あとがき

著者: 瀧川雅浩

ページ範囲:P.298 - P.298

 医学の進歩は日進月歩というが,皮膚病治療においてもつくづく実感させられている.代表的な皮膚病である乾癬の治療の進歩には目をみはるものがある.今から約35年前が一昔前になるかどうかわからないが,当時の乾癬の治療はステロイド外用とゲッケルマン療法であった.当時私がいた大学では,ゲッケルマン療法の時は2人同時に入院させて,お互いにコールタールを塗り(特に背中),病院の屋上で日光浴,そしてコールタールを塗る綿棒は自分たちで作って暇を慰めるというのが標準,つまりお決まりの治療であった.その後,ビタミンD3外用薬,レチノイドおよびシクロスポリン内服,PUVAやナローバンドUVBなどの光線療法の進化,そして抗TNF-α抗体療法である.特に,抗TNF-α抗体療法は現在治験が進行しているが,その効果は素晴らしいの一言に尽きる.Sさんという30年来の乾癬患者さんであるが,手背や前腕など人目につくところに発疹があるため,さまざまな治療をしていたが今一つであった.抗TNF-α抗体療法の治験に参加したわけであるが,プラセボにあたってしまい,徐々に悪化し,ついには紅皮症状態になってしまった.あまりにひどいので,我々は治験脱落を勧めたのであるが,本人は何とか終了まで頑張り通した.その後,実薬投与したところ,1回の注射でPASIがほぼ0になり,30年ぶりに半袖のシャツを買ってきたとのこと,Sさんともども喜んだわけである.この間,基礎および臨床免疫学が進歩し,乾癬病態が大いに解明されてきたことが,この治療法につながったことは間違いない.今後,乾癬を含め多くの皮膚病でさまざまな画期的治療法が生まれることを予見させることではないだろうか.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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