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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科61巻4号

2007年04月発行

雑誌目次

今月の症例

小水疱性類天疱瘡の1例

著者: 吉澤学 ,   石川武子 ,   長山隆志 ,   大西誉光 ,   渡辺晋一

ページ範囲:P.303 - P.305

要約 76歳,女性.約3か月前より掻痒を自覚し,2か月前より全身に浮腫性紅斑が出現した.近医でセレスタミン®を内服し,いったん改善するものの,手掌,膝,足底に再燃し,全身へ拡大した.体幹,四肢に広範な浮腫性紅斑を認め,3mm程度の小水疱が集簇し,手掌,足底では,主に半米粒大の小水疱が散在する.抗BP180抗体68(index値).病理組織では,表皮に好酸球性海綿状態,基底層に裂隙形成,真皮浅層に好酸球の浸潤がみられる.直接蛍光抗体法で基底膜部にIgG,C3が陽性で,小水疱性類天疱瘡と診断した.プレドニゾロン50mg/日の内服を開始し,徐々に漸減し,皮疹の新生を認めない.

症例報告

骨髄移植後に生じた,タクロリムス(プログラフ(R))の関与が疑われた薬疹の1例

著者: 吉田寿斗志 ,   中村友紀 ,   塚原菜々子 ,   上出良一 ,   中川秀己

ページ範囲:P.307 - P.310

要約 50歳,男性.1997年1月(44歳時),急性骨髄性白血病を発症.2003年3月,骨髄バンクドナーからの骨髄移植を施行し,移植後,タクロリムス内服開始した.移植後110日頃より,発熱と紅斑が出現したため,同年7月3日当科を受診した.骨髄移植後GVHDを考え,顔面と体幹の紅斑より皮膚生検を施行した.病理所見上,表皮基底層液状変性や表皮細胞壊死を認めず,真皮上層の好酸球浸潤が顕著であり,血液検査にて好酸球増多を認めたことから薬疹と診断した.タクロリムスによる薬疹の報告はなく,骨髄移植後のため免疫抑制薬は必須と考え,タクロリムスのみ内服継続とし,他の薬剤は中止とした,ステロイド内服にて皮疹は軽快したため,漸減したところ皮疹が再燃した.内服継続していたタクロリムスを原因薬剤と考え,免疫抑制薬をシクロスポリンへ変更した.変更後,皮疹は消退した.当初中止していた他の薬剤を再開したが,皮疹の再燃はみられなかった.

Rheumatoid vasculitisの1例

著者: 山下範子 ,   福井利光 ,   渡辺大輔 ,   玉田康彦 ,   松本義也 ,   原一夫 ,   服部大哉

ページ範囲:P.311 - P.314

要約 53歳,女性.関節リウマチ治療中,左下腿に潰瘍が出現し,その後,両下肢の網状皮斑と左足第1趾の紫斑がみられた.病理組織像は真皮血管にフィブリノイド壊死と核破砕を伴う好中球浸潤を認め,壊死性血管炎の像を呈し,rheumatoid vasculitisと診断した.プレドニゾロン50mg内服で治療を開始して約1か月後には,潰瘍の縮小と網状皮斑の軽快をみた.自験例は,RA診断時よりサラゾスルファピリジンを内服し,その後,抗TNF-α阻害薬のエタネルセプト使用中に皮疹の悪化をみたため,サラゾスルファピリジンや抗TNF-α阻害薬が血管炎の誘発に関連した可能性も考えられる.

皮下結節を主訴とした全身性強皮症の1例

著者: 片田桐子 ,   橋本姿惠 ,   永井弥生 ,   石川治 ,   北畠雅人

ページ範囲:P.315 - P.317

要約 44歳,女性.右足底の圧痛あるしこりを主訴に近医を受診し,皮膚硬化を指摘され,当科を紹介された.両手掌および右足底に小指頭大までの硬い皮内から皮下の結節があり,圧痛を伴っていた.手指から前腕,顔面に皮膚硬化がみられ,limited cutaneous typeの全身性強皮症と診断した.四肢X線で手足部および前腕に複数の皮下石灰沈着がみられた.皮下石灰沈着は強皮症における主要な皮膚所見の1つであるが,比較的晩期に生じる症状であり,X線検査で初めて指摘されることも多い.自験例は皮膚硬化を自覚しておらず,比較的大型の皮下結節を主訴として受診し,診断に至った1例であった.強皮症における皮下石灰化病変につき,若干の文献的検討を加え,報告した.

タクロリムスが有効であったsclerodermatous chronic GVHDの1例

著者: 冨田幸希 ,   加藤直子 ,   夏賀健 ,   氏家英之 ,   笠井正晴

ページ範囲:P.318 - P.321

要約 41歳,女性.1999年8月(35歳時)急性骨髄性白血病(AML)を発症した.化学療法施行後,2000年9月に非血縁者間同種骨髄移植(allo-BMT)を受けた.完全寛解に至ったが,急性および慢性移植片対宿主病(GVHD)を併発した.移植2年半後から肘窩に萎縮性硬化性局面が出現し,主として間擦部に拡大した.頸部,躯幹,上腕に皮膚硬化と関節の可動制限を伴った.病理組織学的に膠原線維の増生がみられた.抗核抗体は80倍と陽性,その他の自己抗体は陰性であった.sclerodermatous chronic GVHDと診断した.プレドニゾロンとシクロスポリンに加え,2005年5月からエトレチナートを開始したが,皮膚硬化の著明な改善は認められなかった.その後,ミコフェノール酸モフェチルを開始し,さらにタクロリムスを追加したところ,皮膚硬化と関節の可動制限の改善が認められた.

Infantile acropustulosisの3例

著者: 久原友江 ,   渡辺大輔 ,   玉田康彦 ,   髙間弘道 ,   松本義也 ,   原一夫

ページ範囲:P.322 - P.325

要約 症例1:生後14日,男児.生後13日目より両手足に膿疱が出現した.受診時には,両手背,足背に直径2mm大の境界明瞭な膿疱を認めた.症例2:生後10か月,男児.生後6か月頃より両手足に小水疱,膿疱が出現した.約1か月周期の増悪,緩解を繰り返し,当院受診した.症例3:2歳8か月,女児.約半年前から両手足に掻痒を伴う小水疱,膿疱が出現した.近医でステロイド外用したが無効であった.その後も約2週間周期の増悪,緩解を繰り返し,当院受診した.3症例の皮膚生検では,表皮内に単房性の膿疱がみられ,膿疱内には多数の好中球と好酸球を認めた.小膿疱の直接検鏡では疥癬虫体,卵,糞,および真菌要素を認めず,一般細菌培養,真菌培養検査も陰性であった.以上の所見から,IAP (infantile acropustulosis)と診断した.

メシル酸ガベキサート(FOY(R))による皮膚血管障害を生じた1例

著者: 宮本樹里亜 ,   永尾香子 ,   布袋祐子 ,   陳科栄 ,   小澤裕理 ,   西亨

ページ範囲:P.326 - P.328

要約 81歳,男性.誤嚥性肺炎によるDICに対し,両下腿末梢静脈から0.8%のFOY(R)持続点滴を11日間施行した.投与後約2週間で,血管に沿って索状の紅斑と皮下硬結が出現し,やがて潰瘍・瘻孔を形成した.病理組織学的に真皮,皮下組織の肉芽腫性炎症と血管内異物が認められた.FOY(R)は0.2%以下の濃度で,単独で投与することが望ましく,また皮膚血管障害は遅発性に生じることが多いため,薬剤を使用する場合,これらを念頭に置くことが重要と思われた.

長期治療を要したPasteurella multocidaによる皮膚感染症の1例

著者: 水谷公彦 ,   近藤章生 ,   馬渕智生 ,   梅澤慶紀 ,   太田幸則 ,   松山孝 ,   小澤明

ページ範囲:P.329 - P.332

要約 63歳,男性.初診の1週間前,草刈りをして右手を誤って受傷した.腫脹してきたため6日後に近医を受診したが,症状増悪のためその翌日に当科を受診した.右手関節より遠位に軽度熱感を伴う発赤,腫脹を認めた.初診時検査で糖尿病が判明した.3日後には腫脹はさらに増強し,皮下に波動を触れ,切開排膿した.膿よりPasteurella multocidaが同定された.症状の改善に約2か月を要した.今回,1991~2004年までに本邦で報告されたPasteurella multocida皮膚感染症について集計したところ,その平均治療期間は20.3日であった.21日以上加療を必要とされた症例を集計(自験例を含め11例)し検討した.その結果,免疫能の低下を生じる基礎疾患を有するものにおいては,治療期間が長期化することを念頭に置き,合併症に注意しながら注意深い診療を行うことが必要と思われた.

胃亜全摘と多量飲酒が誘因となったペラグラの1例

著者: 西村真智子 ,   芝木晃彦 ,   澤村大輔 ,   清水宏

ページ範囲:P.333 - P.335

要約 58歳,男性.3か月前に出現した両手背の皮疹を主訴に来院した.初診時,両側手背にびらん,鱗屑を伴う淡紅色紅斑,下顎に多数の嚢胞を伴う紅斑を認めた.血清学的にはニコチン酸を含む各種ビタミン群の低下は認めなかった.しかし,特徴的な臨床所見および胃癌による胃亜全摘術後,多量飲酒の既往があることからペラグラと診断した.ニコチン酸アミドを含む複合ビタミン剤投与を行ったところ,投与開始後,皮疹は速やかに消退した.

橋本病にみられた脛骨前粘液水腫の1例

著者: 楠瀬智子 ,   檜垣祐子 ,   川島眞

ページ範囲:P.336 - P.338

要約 44歳,女性.2年前に発症した橋本病で乾燥甲状腺末(チラーヂン(R))100mg/日内服中であった.初診の4か月前より両側下腿前面に隆起性局面が出現し,同時期より両眼球突出があったため,自己判断で乾燥甲状腺末を50mg/日に減量した.その後も皮疹の拡大を認めるため,当科を受診した.初診時は,両下腿前面に弾性硬の境界明瞭な浮腫性局面を認めた.組織学的には,真皮全層が浮腫となり,膠原線維間に淡い好塩基性物質が沈着していた.沈着物質は,アルシアンブルー染色で淡青色に染色され,酸性ムコ多糖と考えた.血液検査では,FT3,FT4は正常範囲であったが,TSHは低値であり,甲状腺刺激抗体(TSAb),TSH受容体抗体(TRAb)は高値であった.その後,乾燥甲状腺末を75mg/日に変更し,皮疹部にはステロイド外用を開始し,皮疹は徐々に縮小してきている.

下肢に多発した痛風結節の1例

著者: 新石健二 ,   梅原康次 ,   海崎泰治 ,   光戸勇

ページ範囲:P.339 - P.342

要約 58歳,女性.血清尿酸値が高値で,52~54歳時までアロプリノールの内服治療を行った.53歳時に慢性腎不全のため持続携帯式腹膜透析療法(CAPD)を開始した.57歳頃より,下肢に皮下結節が多数出現したため,受診した.下肢伸側・屈側に米粒大の皮下結節が多数存在し,皮膚表面に褐色の色素沈着を伴うものもあった.病理組織学的に,皮下組織内に金平糖状の褐色針状結晶構造を取り囲む異物肉芽腫が認められた.肉芽腫の一部には骨化や出血を認めた.血清尿酸値高値であり,deGalantha染色で,針状結晶は尿酸塩結晶と判明した.その後,関節の腫脹・疼痛を生じ,アロプリノールの内服治療を開始,血清尿酸値は低下し,経過は良好である.

両側下腿に板状硬結を呈した皮下型サルコイドーシスの1例

著者: 藤川沙恵子 ,   米澤理雄 ,   谷岡未樹 ,   松村由美 ,   是枝哲 ,   宮地良樹

ページ範囲:P.343 - P.345

要約 67歳,女性.両側下腿の板状硬結を主訴に受診した.皮膚生検にて真皮上層から筋膜にかけて広範囲に非乾酪性類上皮肉芽腫を認めた.血清のアンギオテンシン変換酵素値が上昇していたが,全身検索で他臓器に病変がなかったため,皮膚サルコイドーシスと診断した.臨床像から板状硬結を示した皮下型サルコイドーシスと考えた.トラニラスト内服2か月で症状が軽快したが,自然軽快した可能性も考えられる.

潰瘍性大腸炎に伴った肉芽腫性変化を示す小葉性脂肪織炎

著者: 志賀建夫 ,   横川真紀 ,   宮本敬子 ,   上田弘

ページ範囲:P.346 - P.349

要約 43歳,女性.腹痛,下痢,下血とともに発熱および関節痛が出現し,両肘,両下肢に圧痛を伴う紅斑が生じた.結節性紅斑と考え,ステロイドの全身投与を行い,いったん軽快傾向を示したが,ステロイドの漸減とともに再燃した.皮疹部の病理組織像で小葉を主体とする脂肪織炎と肉芽腫性変化を認めた.炎症性腸疾患の存在を疑い,大腸ファイバーを施行し,潰瘍性大腸炎と診断した.潰瘍性大腸炎の治療薬であるメサラジンの開始にて,皮疹を含め症状はすべて速やかに消退し,ステロイドの漸減後も症状は再燃していない.潰瘍性大腸炎に伴う皮疹として特異な病理組織像を呈したと考えた.

酵素補充療法を試みたFabry病の1例

著者: 林美穂 ,   日置加奈 ,   遠渡舞 ,   米田和史 ,   山田鉄也 ,   鷹津久登

ページ範囲:P.350 - P.352

要約 23歳,男性.母方の祖母の妹2人が心Fabry病.小児期より上肢の疼痛発作,頭痛,発汗低下,体幹に多発する暗赤色丘疹を自覚していた.下肢の疼痛が出現し,当院内科を受診した.体幹の皮疹について被角血管腫を疑われ,当科を紹介された.体幹に黒色~暗赤色の自覚症状のない粟粒大の小丘疹が多発し,病理組織では真皮乳頭層に毛細血管の拡張を認め,被角血管腫と診断した.電顕的に真皮血管内皮細胞内に層状の高電子密度の顆粒が多数みられた.血液検査にて白血球中のαガラクトシダーゼAの酵素活性が0.8nmol/mg protein/hと低値であり,Fabry病と診断した.酵素補充療法にて治療を開始した.これにより,皮疹の変化はみられていない.

Brooke-Spiegler症候群の1例

著者: 山田玉静 ,   谷岡未樹 ,   神戸直智 ,   藤井秀孝 ,   是枝哲 ,   宮地良樹 ,   山本鉄郎 ,   塩見達志

ページ範囲:P.353 - P.356

要約 64歳,男性.20年前から頭部および体幹に腫瘤ができ,そのつど近医で切除術を受けていた.4年前に右大腿部腫瘤切除術を当院で受け,円柱腫と診断された.患者および患者の長男には鼻周囲に腫瘤があり,以前長男は切除術を受け多発性丘疹状毛包上皮腫と診断されていた.当科を再受診時,頭部および前胸部に腫瘤を認めた.腫瘤切除後の病理診断はいずれも円柱腫であった.多発性毛包上皮腫と多発性円柱腫の合併はBrooke-Spiegler症候群と呼ばれ,本邦ではきわめて稀である.

一部に悪性変化を伴った巨大尖圭コンジローマの1例

著者: 高橋明仁 ,   竹之内辰也

ページ範囲:P.357 - P.359

要約 50歳,男性.20年来,両鼠径部に小腫瘤があり,徐々に増大した.初診時,左右の鼠径部におのおの,13×3cm,6×3cmの乳頭腫状腫瘤を認めた.臨床・組織像から巨大尖圭コンジローマと診断したが,組織の一部に比較的多くの分裂像と大小のタマネギ様角化像を認め,悪性変化と考えた.両鼠径の腫脹したリンパ節に転移は認められなかった.腫瘤切除後は陰嚢表皮の伸展を利用して再建し,良好な結果を得た.

Benign cephalic histiocytosisの1例―本邦報告例と海外報告例の検討を含めて

著者: 新見やよい ,   青木見佳子 ,   川名誠司

ページ範囲:P.360 - P.362

要約 1歳4か月,女児.生後6か月頃より顔面に自覚症状のない皮疹が出現し,徐々に拡大した.初診時,両頬部,右前腕に黄褐色の丘疹が散在していた.病理組織学的所見は真皮上層の組織球の浸潤で,これらの細胞はCD1a陰性であった.電子顕微鏡所見で,組織球の胞体内にcomma-shaped bodyを認めたが,Birbeck顆粒は認めなかった.発症後20か月の時点で皮疹に変化はなかった.benign cephalic histiocytosisの海外報告例は42例あった.その検討では,男女比は1.6:1,発症時期は2~66か月で,45%で生後6か月以内に発症していた.初発部位は93%で顔面であった.全例で4年以内に消退を始め,完全消退した例は10例あった.本邦報告例は自験例を含め6例のみであった.

Solitary fibrofolliculomaの1例

著者: 菅野正芳 ,   上尾礼子 ,   福澤正男 ,   森田明理

ページ範囲:P.363 - P.365

要約 43歳,男性.初診の2年前に右顎部の腫瘤に気づいた.その後,徐々に増大するため近医を受診し,当院を紹介され受診した.初診時,右顎部に常色の小結節が認められ,全摘術を施行した.病理組織学的に真皮浅層から中層にかけて角栓を入れた毛包漏斗部を中心とする線維性結合織の増殖が認められた.毛包漏斗部からは上皮細胞索が形成されていたが,毛球および毛乳頭への分化は認めなかったことから,solitary fibrofolliculomaと診断した.

舌に生じた再発性化膿性肉芽腫―液体窒素スプレーが奏効した1例

著者: 松本孝治 ,   川瀬正昭 ,   竹内常道 ,   中川秀己 ,   齋藤孝夫

ページ範囲:P.366 - P.368

要約 49歳,男性.2000年(44歳時),舌右側縁の乳頭腫状腫瘤に気づいていたが放置していた.2002年,他院耳鼻科で5mm離して切除されたが,2週間後に再発した.2004年11月,当院耳鼻咽喉科で15mm離して再度切除したが,再発した.2005年4月,当科を紹介され,受診した.病理組織は異型性を伴わない表皮の肥厚および真皮に浮腫を伴う血管の拡張と増生があり,pyogenic granulomaと診断した.再切除時の組織像は一部にpyogenic granulomaの残存を伴う線維腫と考えた.週2回の液体窒素スプレーによる凍結療法で消失した.

Spindle cell hemangioendotheliomaの1例

著者: 佐藤寛子 ,   中村泰大 ,   高橋毅法 ,   梅林芳弘 ,   川内康弘 ,   大塚藤男

ページ範囲:P.370 - P.372

要約 61歳,女性.15年前,右足底内側に径1cm大の結節が2個出現した.4年後に切除されたが,さらにその4年後に同部位に再発し,増数・拡大したため,今回再切除し,spindle cell hemangioendotheliomaと診断した.本症は組織学的に血管増生部分と充実性細胞部分の両者よりなり,記載当初は低悪性度の腫瘍とされていたが,最近では血栓や再疎通を繰り返すことで生じる非腫瘍性反応性病変と考えられている.高再発率を示すが,基礎疾患を合併しない症例においては,その再発機序の詳細はいまだ解明されていない.

神経線維腫症1型に合併した悪性末梢神経鞘腫瘍の1例

著者: 秦洋郎 ,   青柳哲 ,   西村真智子 ,   小玉和郎 ,   清水宏

ページ範囲:P.373 - P.375

要約 69歳,男性.20歳時,神経線維腫症1型と診断されたが,医療機関への受診は不定期だった.初診の3年前から左下腿に硬い結節が出現し,徐々に増大したため,当科を受診した.MRIでは高信号域の結節の内部に境界明瞭な低信号域を認め,腫瘍内の質的な変化が示唆された.切除標本にて,神経線維腫の内部に境界明瞭な細胞密度の高い異型な紡錘形細胞の増殖を認め,悪性末梢神経鞘腫瘍と病理学的に確定診断した.悪性末梢神経鞘腫瘍の診断におけるMRIの有用性が示唆された.

Spindle cell squamous cell carcinomaの1例

著者: 花川博義 ,   柳原誠 ,   石崎康子

ページ範囲:P.376 - P.379

要約 96歳,男性.頭頂部に14×18×5mmの紅色結節があり,周辺に淡紅色の萎縮斑が多数存在した.腫瘍は充実性で表皮と連続し,帽状腱膜まで浸潤していた.真皮上層には核異型のある類円形から紡錘形の腫瘍細胞が表皮に接して存在し,真皮中層から下層にかけては腫瘍細胞が束状に錯綜し,storiform pattern類似の配列を呈した.腫瘍細胞はビメンチンが陽性,サイトケラチンは陰性だった.電顕で腫瘍細胞間にデスモゾームが存在した.腫瘍を覆う表皮の基底細胞が軽い核異型を伴い,p-53染色が陽性であることより,日光角化症を母地としたspindle cell squamous cell carcinomaと診断した.なお,表皮細胞に接する腫瘍細胞と表皮細胞の間には明らかな接着装置はなかった.

放射線療法を併用したMerkel細胞癌の1例

著者: 佐々木雅美 ,   浜口太造 ,   宋寅傑

ページ範囲:P.380 - P.383

要約 82歳,女性.2005年5月上旬より,左頬部に自覚症状のない結節が出現し,5月31日に来院した.左頬部にドーム状に隆起し,光沢を伴う径8mmの紅色結節を認め,下床に15×20mm,弾性硬の皮下硬結を触れた.病理組織像では真皮から皮下脂肪織にかけて,胞体の乏しい類円形でやや大型の腫瘍細胞が充実性に増殖していた.腫瘍細胞はCK20,NSE,chromogranin A,N-CAM,synaptophysin染色に陽性,CK7,EMA,CEA,LCA,PE-10,TTF-1,vimentin染色で陰性であった.これらの結果よりMerkel細胞癌と診断した.明らかな転移はなく,切除後に放射線療法を加え,切除後18か月の現在,再発・転移は認められていない.

治療

Distally-based sural flapを用いて再建した足底部熱傷瘢痕癌の1例

著者: 一宮誠 ,   秋田浩二 ,   武藤正彦

ページ範囲:P.385 - P.387

要約 45歳,男性.生後11か月時,たき火により両足から下腿にかけて熱傷受傷した.幼少期に植皮術,瘢痕形成術を繰り返した.初診時,右足底に,クルミ大の皮膚潰瘍を生じ,生検にて有棘細胞癌と診断した.自験例では,足底部に植皮術を施行されており,切除後,内側足底皮弁で再建することができず,distally-based sural flapにて再建した.同皮弁は,マイクロサージェリーの技術や器具がなくても比較的容易に施行できる有用な手術法と考えられた.

書評

―著:岡田正人―レジデントのためのアレルギー疾患診療マニュアル

著者: 狩野庄吾

ページ範囲:P.314 - P.314

 『レジデントのためのアレルギー疾患診療マニュアル』は,アレルギー専門医をめざすレジデントだけでなく,他の分野に進む臨床研修医,プライマリケア医にもお勧めしたい本である.

 著者の岡田正人氏は,医師免許取得後,横須賀米海軍病院で卒後研修生として1年間,臨床研修を受けた.1991年に渡米してNewYork のBeth Israel M edicalCenterで3年間,内科レジデントとして臨床のトレーニングを受け,さらにYale Universityで3年間,フェローとしてリウマチ学とアレルギー学の臨床と研究に従事した経歴をもつ.米国の内科専門医,アレルギー・臨床免疫科専門医,リウマチ科専門医の資格を取得している.その後,フランスのAmerican Hospital of Parisで内科,アレルギー,リウマチの診療を続け,2006年4月から聖路加国際病院のアレルギー膠原病科に勤務している.日本,米国(コネチカット州),フランスの医師免許を取得している.

―編集:日本フットケア学会―フットケア―基礎的知識から専門的技術まで

著者: 松尾汎

ページ範囲:P.383 - P.383

 欧米では靴を常用する環境のためか,足への関心が高い.靴を履き続けることによる功罪はあるが,その歴史は古く,生活のなかからその知識や経験が活かされていると聞く.

 わが国はどうであろうか? 履き物の習慣や生活習慣の違いからはもちろん,わが国では診療の面でも,より生命に関連する領域(心臓,脳など)に多くの関心が割かれ,足にはあまり関心がもたれなかった.

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あとがき

著者: 川島眞

ページ範囲:P.390 - P.390

 “Conflict of interest”,「利益相反」という言葉をご存知であろうか?本誌の編集会議で最近論議されている問題である.欧米の医学雑誌をみていて気付くことは,薬剤などの治験論文の最後に,著者がその薬剤の開発会社のみならず,どこの会社から研究費の支援を受けているか,メディカルアドバイザーとしての報酬をもらっているかなど,詳細に明示している点である.治験論文の内容を評価する上では,利害関係を明らかにすることが必要という考えに基づくものであるが,どうもすんなりとは受け入れ難い.治験論文の質は,そのプロトコルの妥当性,評価法の客観性,結果の正確な解釈から判断するものであり,治験の成績そのものは報酬次第で左右できるものではない.邦文の雑誌で「利益相反」について明示することを厳格に義務付けたものはまだないが,情報公開の世の流れからはその方向に向かう可能性はある.しかし,タミフル(R)に関する異常行動の研究班班長が販売会社から教室への正当な研究費をもらっていただけで,説明のための記者会見まで開かなければならないのが本邦の現状である.他人の懐具合をのぞくような三流週刊誌の悪趣味に終わらない情報公開として,「利益相反」が読者の目に正しく映るような時代にはまだ至っていないと感ずるがいかがであろうか.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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