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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科61巻5号

2007年04月発行

文献概要

Derm.2007

いやな季節が

著者: 竹中秀也1

所属機関: 1京都府立医科大学大学院医科研究科皮膚病態制御学

ページ範囲:P.60 - P.60

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 皮膚疾患には,季節性があります.アトピー性皮膚炎は,夏には汗により,冬には乾燥により増悪します.春になると,昆虫たちも目覚めて虫刺症や毛虫皮膚炎などがみられ始め,秋には冬眠前なのかダニ刺症が多くなります.梅雨の頃には,私にもできますが,汗疱をよくみます.夏季には,微生物の発育に好条件のため,白癬や癜風などの真菌症,伝染性膿痂疹や蜂窩織炎などの細菌感染症が増加します.ただし,伝染性膿痂疹は暖房の影響か真冬でも見かけることが多くなっているようです.冬季には,空気の乾燥から皮脂欠乏性湿疹や手湿疹が多くみられ,暖房がこれに追い打ちをかけているようです.いったい何人のひとに,冬場は石鹸を控えましょうと説明していることでしょう.

 大学病院で,皮膚外科や皮膚潰瘍治療を専門にやっているせいで,閉塞性動脈硬化症(ASO),Buerger病や強皮症の患者さんを診ることが多いのですが,秋から冬にかけて気温の低下とともに潰瘍,壊疽が進行するのをよくみます.10月の体育の日辺りから,5月の連休明けまでが影響があるようです.このような患者さんには,一冬で指・趾や足を失ったり,激しい疼痛のため夜も眠れなかったりと受難の季節です.とにかく手足を冷やさないことが一番ですと説明しています.プロスタグランディンの点滴をしたり,いろいろな鎮痛薬や院内製剤のリドカインクリームを処方したり,時にはお灸,入浴剤,ニコチンパッチや薬酒などを勧めたりもしますが,治療に難渋することが多いというのが実情です.外用薬では基剤のためかゲーベン(R)クリームが疼痛には多少ましなようです.今は晩秋,紅葉がきれいな京都ですが,これらの患者さんを思うと憂鬱な時期でもあります.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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