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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科61巻5号

2007年04月発行

文献概要

Derm.2007

水虫とメラノーマ

著者: 森田和政1

所属機関: 1山口大学大学院医学系研究科皮膚科

ページ範囲:P.110 - P.110

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 ある日の外来中,内科病棟に糖尿病で入院している高齢女性の水虫を診察してほしいという依頼が来た.話を聞くと,以前から水虫があったが,たいした治療はしていなかったとのことであった.足をみると,両足趾から踵,両側爪に典型的な白癬病変があった.鱗屑を採り,KOH法による検鏡を行うと,白癬菌を認めた.抗真菌薬の内服が必要かな?と考えながら,よく足趾をみると,右第2,3足趾間が少し黒いように思えた.足趾間を広げてみると,しみ出し,びらん,濃淡あり,母指頭大の黒色の色素性病変であり,臨床的には典型的なメラノーマであった.黒いのがなかなかとれないと気になっていたようであったが,水虫の一部と思っていたようであった.水虫の治療の相談に来たのに手術が必要だと言われて,さぞ驚かれたことと思うが,幸いセンチネルリンパ節生検では転移がなく,局所の手術で済んだ.以前,何かの本で,足のメラノーマの患者には角化型の足白癬を合併している場合をよく経験するという,御高名な先生の文章を読んだことを思い出した.水虫の治療で放射線を当てていると発癌することもあろうが,この患者さんの曝露歴はなかった.そこで,メラノーマと水虫の関連についてMEDLINEを検索した.黒癬とメラノーマ,あるいは黒色調の爪真菌症とメラノーマが間違えやすいという趣旨の論文はいくつかあったが,足白癬とメラノーマ発症の関係についての文献は見つけられなかった.しかし,真菌のなかにはアスペルギルスのように発癌物質を作るものもいるので,全く無関係ともいえないような気もした.また,白癬による慢性炎症が発癌を誘発しやすいという状況もあるかもしれない.あるいは,角化型足白癬の存在を許すような免疫状態が,腫瘍免疫の低下と関係しているかも?といった,こじつけまがいの考えも思いつく.いずれにしても,患者レベルでは,メラノーマさえも水虫と勘違いして放置してしまうことがありうるので,ドクターが水虫の診察をきちんと行っていく必要性を再認識した.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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