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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科61巻6号

2007年05月発行

文献概要

連載

アメリカで皮膚科医になって(13)

著者: 藤田真由美1

所属機関: 1コロラド大学皮膚科

ページ範囲:P.472 - P.472

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日本からの医療相談(Medical consultation from Japan)

 アメリカに来てからも,日本にいる知人や友人などから医療相談をされることがたまにある.先日も,胃癌の弟さんを持った友人から,治療や予後について一般情報を教えてほしい,と依頼があった.昔,内科インターンで鍛えた知識の見せ所,と思ったが,平生勉強していないことについて,しかも人の命にかかわる発言をするのは医者として責任重大であるので,ネット検索をしてから答えることにした.しかし,最近は本当に便利な世の中になったものだ.以前は古い教科書を大事に保管し,古くなっていく知識を長年使ったり,図書館に行って調べたりしていたものだが,今はコンピュータさえあれば最新の情報が即座に手に入るようになった.教科書,雑誌,ニュース,辞書,テレビの情報も瞬時に全世界に流れる.日本の地震ニュースの直後に友人に安否の電話を入れたら,アメリカの私からの電話が日本の友人からの電話よりも早く,大層驚かれたこともある.

 さて,この医療相談だが,これによって日本とアメリカの医療制度の違いを気づかされることがたまにある.ある日,別の知人から,3か月にわたる足のしびれについて電話相談があった.質問は,「何科を受診したらよいか」とのこと.「主治医にまず簡単に診察してもらって目安をつけてから専門科に行ったら」と答えると,主治医制度は日本ではまだないから訊いているんだ,という.そうだった,失礼しました,と難問をぶつけられた私は真剣に考えねばならない.はてさて,多分神経内科だろうけれど,糖尿などがあると内分泌内科かな,いや,腰痛(本人は長時間の机仕事のせいで,関係ないという)があるから整形外科か,はたまた血栓か,などと考えて随伴症状などをきいてみる.ここで面白いのは,人によって反応が2種類あることである.「しびれ以外の症状は全くないし,あっても昔からだから,全く関係ない(一体,他の症状はあるのかないのか?).」というタイプと,「そういわれればその症状がある気がする.」とすべての症状を肯定して悲観するタイプとである.何はともあれ,こちらは問診症状のみを元に診断しないといけないのに症状が不確かだと診断のしようがない.最後には,「とりあえず神経内科に行ってみては」と一番確率の高い病名に落ち着く.電話の向こうの友人は「でも,間違った科に行くと医者に冷たくあしらわれ,あっちこっちの科にたらい回しになる」と言うが,こちらもこれ以上は助けようがない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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