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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科62巻1号

2008年01月発行

雑誌目次

連載 Clinical Exercise・5

Q 考えられる疾患は何か?

著者: 岡本祐之

ページ範囲:P.5 - P.6

症例

患 者:67歳,女性

主 訴:四肢の掻痒を伴う皮疹

既往歴:特記すべき事項はない.

家族歴:妹,息子に同様の皮疹を認めるとのことであるが,受診はしていない.

現病歴:幼少期より,四肢にかゆみを伴う水疱が出現し,軽快・増悪を繰り返していた.近医より紹介され当科を受診した.

現 症:両下腿伸側に,激しいかゆみを伴う痒疹様病変と苔癬化局面を認め,瘢痕,びらん,水疱,血疱,稗粒腫が存在した(図1).

総説

アレルギー性皮膚疾患におけるエビデンスに基づいた抗ヒスタミン薬の選択

著者: 川島眞 ,   江藤隆史 ,   江畑俊哉 ,   大谷道輝 ,   片山一朗 ,   幸野健 ,   瀧川雅浩 ,   田邉昇 ,   中川秀己 ,   原田昭太郎 ,   古川福実 ,   森川昭廣 ,   谷内一彦

ページ範囲:P.8 - P.15

要約 本邦の治療ガイドラインにおいて,抗ヒスタミン薬は蕁麻疹においては第1選択薬,アトピー性皮膚炎では掻痒の軽減とかゆみによる搔破のための悪化を予防するための外用療法の補助治療薬として使用が推奨されているが,抗ヒスタミン薬の選択に関しては言及されていない.近年,非鎮静性抗ヒスタミン薬を使用したエビデンスレベルの高い試験においてアトピー性皮膚炎におけるかゆみ抑制効果が報告された.また,脳内H1受容体占拠率の測定ができるようになり,抗ヒスタミン薬の脳内移行性とインペアード・パフォーマンスが関連することが明らかとなった.鎮静性抗ヒスタミン薬の服用による事故リスクの増加や労働生産性低下が報告され,抗ヒスタミン薬の選択の際に安全面は特に重視すべき項目といえる.よって,EBMの観点からは,アレルギー性皮膚疾患の治療においては非鎮静性抗ヒスタミン薬を第1選択薬とすべきと提言したい.

今月の症例

成人の関節リウマチ患者の頭部に生じた多発性伝染性軟属腫の1例

著者: 八木絵里子 ,   鈴木洋介

ページ範囲:P.17 - P.19

要約 72歳,男性.関節リウマチにてプレドニゾロン3mg/日内服加療中.孫に伝染性軟属腫があり,数か月に一度の接触機会があったという.2005年頃より自覚症状を伴わない頭部の皮疹を認めており,近医にて尋常性痤瘡として加療されたが奏効せず,当科を受診した.前頭部から頭頂部にかけて半米粒大までのドーム状に隆起する紅色丘疹が多発しており,病理組織学的所見にて房状に増殖した表皮細胞の細胞質内に好酸性封入体を認め,伝染性軟属腫と診断した.成人発症例は基礎疾患を伴う症例が多く,白血病や膠原病,悪性腫瘍,HIV感染症,アトピー性皮膚炎などの合併が報告されている.本症例も関節リウマチがあり,さらにステロイド投与によって生じた免疫不全状態が発症に寄与したものと考えられた.

症例報告

アルコール多飲者にみられた環状紅斑を呈したcoma blisterと横紋筋融解症

著者: 真弓愛 ,   新谷久恵 ,   多田讓治 ,   松岡睦子

ページ範囲:P.21 - P.23

要約 35歳,女性.アルコール多飲後に半昏睡状態に陥り,自然覚醒した直後から臀部・両大腿の疼痛が出現し,また左臀部に圧痛のある紅斑に気づいた.coma blisterが疑われたが,紅斑の同側大腿骨人工骨頭置換術の既往や血液検査結果から,人工骨頭感染症,深部静脈血栓症,多発性/皮膚筋炎などとの鑑別が必要であった.精査の結果,アルコール多飲を契機に生じた,横紋筋融解症を合併した水疱を伴わないcoma blisterと診断した.補液のみにて腎障害もなく,短期間で軽快した.

軽微な紅斑を呈したANCA関連血管炎の1例

著者: 水谷陽子 ,   荒川智佳子 ,   渋谷佳直 ,   清島真理子

ページ範囲:P.24 - P.26

要約 73歳,女性.2006年8月より38℃台の発熱,全身倦怠感,両下腿の腫脹と淡い紅斑が出現した.血液検査で白血球数,CRP,MPO-ANCAが高値で,皮膚生検で中型動脈の壊死性血管炎がみられた.ANCA関連血管炎と診断し,プレドニゾロン50mg/日を開始したところ,症状は改善し,MPO-ANCAも低下した.自験例は罹患血管が中型動脈でありながら,MPO-ANCAが陽性を示し,結節性多発動脈炎と顕微鏡的多発血管炎の中間の特徴を有した症例である.また,皮膚症状が軽微な紅斑のみであった点が,血管炎の皮膚症状としては非典型的である.

アナフィラクトイド紫斑の経過中に生じた蕁麻疹様血管炎―コルヒチンが有効であった1例

著者: 加倉井真樹 ,   東隆一 ,   飯田絵理 ,   高田大 ,   岡田栄子 ,   平塚裕一郎 ,   山田朋子 ,   出光俊郎

ページ範囲:P.27 - P.30

要約 63歳,男性.腹部症状,関節症状を伴うアナフィラクトイド紫斑(AP)の軽快後に,口唇浮腫,体幹,上肢にかゆみのある浮腫性紅斑が出現した.個疹は24時間以上持続して消退する.来院時,腹部および前腕に浮腫性紅斑が認められ,紅斑の一部は弧状を呈し,淡褐色の色素沈着と紫斑を伴っている.病理組織像は真皮上層から下層,皮下組織にかけて,血管周囲性に核塵を伴う好中球浸潤があり,血管壁は不明瞭である.赤血球の血管外漏出も認められる.免疫蛍光法では真皮血管壁にIgA,C3,フィブリノゲンの沈着をみた.以上より,APを基礎疾患とした蕁麻疹様血管炎(UV)と考えた.UVおよびAPにコルヒチンが有効であった.APに併発した蕁麻疹や蕁麻疹様血管炎の治療では,コルヒチンはよい選択肢になると考えた.AP軽快後にUVがみられた報告例はなく,APとUVの共通点に着目して考察を行った.

塩酸メキシレチンによるacute generalized exanthematous pustulosisの臨床像を呈したDIHSの1例

著者: 加賀麻弥 ,   志村英恵 ,   岩原邦夫 ,   島祐子 ,   島田憲明

ページ範囲:P.31 - P.34

要約 79歳,女性.2006年8月8日より頸部・四肢末梢に粟粒大膿疱が多数出現し,第3病日に発熱・腎障害を認めたため,入院となった.薬疹を疑い内服薬を中止したが,膿疱を伴う紅斑が全身に拡大したため,ステロイドパルス療法を施行したところ,症状は著明に改善した.ステロイド減量に伴い小紅斑の再燃をみたが,外用にて軽快し,第45病日に退院した.第27病日にHHV-6抗体価が2,560倍へ上昇.皮疹消退後に施行した塩酸メキシレチンの貼布試験で陽性を示した.病理組織検査では角層下膿疱を認めた.以上より,acute generalized exanthematous pustulosis (AGEP)の臨床像を呈したDIHSと考えた.同剤はDIHSを含め薬疹報告例は少なくないが,発疹学的にAGEPの臨床像を呈する症例は珍しい.

ペグインターフェロンα-2bによる皮膚障害―潰瘍とびまん性紅斑

著者: 竹内常道 ,   伊藤宗成 ,   幸田公人 ,   石地尚興 ,   中川秀己 ,   銭谷幹男 ,   筋野甫

ページ範囲:P.35 - P.38

要約 症例1:73歳,男性.ペグインターフェロンα-2bとリバビリンの併用療法を始めて3か月後に,左上腕に紅色の硬結が生じ,黒色痂皮となった.デブリードマン後に潰瘍は縫縮し,ペグインターフェロンは部位を変えて継続した.症例2:62歳,女性.ペグインターフェロンα-2bとリバビリンの併用療法を始めて5か月後に,びまん性紅斑が出現した.血管周囲のリンパ球浸潤と表皮基底層の液状変性がみられ,合併する尋常性乾癬の病理組織像ではなかった.プレドニン (R)30mg/日の内服で治療し,その後ペグインターフェロンは再投与していない.ペグインターフェロンは,インターフェロンをペグ化し半減期を長くさせたもので,C型慢性肝炎の治療に用いられる.ペグインターフェロンにはインターフェロンと同様,皮膚潰瘍,びまん性紅斑などの掻痒を伴う皮疹,脱毛,尋常性乾癬,扁平苔癬,サルコイドーシスなどの副作用がさまざまな頻度で起こりうる.

瘢痕性脱毛症と毛髪再生を示した毛孔性扁平苔癬

著者: 石黒麻友子 ,   中島喜美子 ,   池田光徳 ,   小玉肇

ページ範囲:P.39 - P.41

要約 63歳,女性.頭部の不完全脱毛斑および鱗屑を付す紅斑が出現したが,十分な治療は行えず,瘢痕性脱毛となった.半年後に新生した紅斑を伴う脱毛斑部では,プロピオン酸クロベタゾールの外用により紅斑は消失し,毛髪が再生した.紅斑期の病理組織学的所見では,毛包漏斗部および毛包間表皮ともに苔癬型組織反応を認め,脱毛斑部では残存する毛包周囲に限局してリンパ球が浸潤していた.毛孔性扁平苔癬と邦訳されている本疾患は,毛包のみを標的とする扁平苔癬ではなく,同時に毛包間表皮に及ぶこともあり,早期に治療すればpseudopelade of Brocqには至らないと考えた.

Bier's spotの2例

著者: 岡田修子 ,   出口雅敏 ,   國方なぎさ ,   相場節也

ページ範囲:P.42 - P.44

要約 症例1:23歳,女性.家族歴,既往歴に特記すべきことはない.喫煙歴はない.症例2:32歳,女性.家族歴に特記すべきことはない.既往歴に子宮頸癌の手術を受けた.化学療法,放射線療法は行っていない.1日20本,6年間の喫煙歴がある.症例1では初診の3年前より,症例2では2か月前より,自覚症状のない境界不明瞭な白色斑を自覚した.白色斑は後天性で,消長を繰り返した.また,白色斑は圧迫により褪色がみられた.症例1の白色斑はwood灯で不明瞭化した.症例2では上腕の駆血試験で白色斑が増強し,静脈圧の関与が考えられた.また,この患者では,組織学的に色素脱失など他疾患を示唆する特記所見を認めなかった.禁煙指導により約3か月で症状の改善がみられた.本邦におけるBier's spotの報告例は,自験例を含めて延べ8例である.Bier's spotの概念に触れ,考按を加えて報告する.

膜囊胞性病変を伴った外傷性脂肪壊死症の1例

著者: 浅野幸恵 ,   牧野輝彦 ,   清水教子 ,   竹上與志昌 ,   乗杉理 ,   清水忠道

ページ範囲:P.45 - P.47

要約 24歳,女性.約1年前より左大腿に1cm大の皮下結節を自覚した.全切除した病理組織において,膜囊胞性病変を伴う脂肪壊死を認めたため,膜囊胞性変化を伴った脂肪壊死症と診断した.患者は解離性人格障害のため,多動,徘徊行動を繰り返しており,打撲や搔破による外傷性脂肪壊死症に伴う膜囊胞性変化を伴った脂肪壊死症と診断した.皮下結節の全切除後,現在まで再発はみられない.

抗BP180C末端抗体が陽性であった広義の水疱性エリテマトーデスの1例

著者: 馬場ひろみ ,   簗場広一 ,   伊藤宗成 ,   中川秀己

ページ範囲:P.48 - P.51

要約 27歳,男性.全身性エリテマトーデスにてプレドニゾロン内服治療中,前胸部から頸部に弛緩性水疱,口唇の血痂および口腔内アフタが出現した.病理組織検査では,表皮下水疱と軽度の細胞浸潤を認めた.蛍光抗体直接法では,IgG,IgA,IgM,C3が基底膜部に線状に沈着.split skin法では,表皮側にIgGおよびIgAが陽性.免疫ブロット法でIgGが180kDaに陽性.抗BP180抗体のC末端部位のリコンビナント蛋白を用いた免疫ブロット法でIgGが陽性,抗Ⅶ型コラーゲン陰性.以上より,全身性エリテマトーデスに粘膜類天疱瘡が合併した広義の水疱性エリテマトーデスと診断した.プレドニゾロン増量で,皮疹は軽快した.

左膝に生じたglomangiomaの1例

著者: 川口順啓 ,   今門純久

ページ範囲:P.52 - P.54

要約 31歳,男性.初診の2年前より,左膝に皮下結節が出現,徐々に増大し自発痛を伴ってきたため受診した.左膝に8mm大,下床と可動性良好な弾性軟の皮下結節を認めた.外傷の既往はなかった.臨床診断として神経鞘腫,鑑別として皮膚平滑筋腫を考え,切除した.病理組織学的には,真皮深層から皮下組織で比較的境界明瞭な腫瘍塊がみられ,腫瘍細胞巣には拡張した血管腔が多数存在し,その周囲に腫瘍細胞が増殖していた.腫瘍細胞は円形で,異型性はなかった.腫瘍細胞はビメンチン染色,α-SMA染色陽性,デスミン染色,S-100蛋白染色は陰性であった.CD34染色,第Ⅷ因子染色では,腫瘍細胞は陰性で血管内皮細胞のみ染まっていた.以上より,グロムス腫瘍のなかでも血管腔の増生が主でグロムス細胞の増生は著明でないglomangiomaと診断した.グロムス腫瘍が膝に生じることは比較的稀で,1983~2006年まで医学中央雑誌で検索した限りにおいて,自験例を含め20例であった.

Spindle cell squamous cell carcinomaの1例

著者: 八百坂遵 ,   横田浩一 ,   古屋和彦 ,   親松宏 ,   木村中

ページ範囲:P.55 - P.57

要約 83歳,女性.初診の数年前より左下腿伸側の黒色疹を自覚していた.時折,びらん・出血を繰り返しながら増大してきたため,当科を受診した.左下腿伸側に径25×16mm,表面紅色・凹凸のある弾性硬の肉芽腫様,扁平に盛り上がる可動性やや良好な腫瘤が存在した.病理組織学的に,上皮から連続性に真皮全層への紡錘形細胞の密な浸潤を認めた.免疫組織学的にはビメンチンとCAM5.2が陽性で,AE1/3,S-100蛋白,CD34が陰性であった.以上より,本症例をspindle cell squamous cell carcinomaと診断した.

右腋窩皮膚原発アポクリン腺癌の1例

著者: 田口佳代子 ,   大山正彦 ,   岩本菜子 ,   山田朋子 ,   村田哲 ,   大槻マミ太郎

ページ範囲:P.58 - P.61

要約 44歳,女性.初診の5年前に右腋窩に結節が出現し,ゆっくりと増大した.初診時,2.5×7.5×0.7cm大で,舟形,皮膚色,弾性硬で,わずかに圧痛あり,腋毛は消失,下床との可動性は良好であった.皮下に可動性のない結節を複数触れた.病理組織学的所見は,真皮から皮下に浸潤する腺癌で,断頭分泌はみられなかった.免疫組織化学染色では,ケラチン,GCDFP-15,アンドロゲン受容体が陽性で,エストロゲン受容体,プロゲステロン受容体,Her-2が陰性であった.画像診断で乳腺や他臓器に異常はなかった.切除標本で周囲に正常乳腺組織はみつからず,右腋窩リンパ節転移を伴った右腋窩原発のアポクリン腺癌と診断した.腫瘍全摘出術,右腋窩リンパ節郭清術後,放射線療法,多剤併用化学療法を追加した.初診から約3年半の現在,再発・転移はみられない.

Speckled lentiginous nevus上に生じた悪性黒色腫の1例

著者: 後藤由香 ,   青柳哲 ,   夏賀健 ,   秦洋郎 ,   猪熊大輔 ,   澤村大輔 ,   月永一郎 ,   深澤雄一郎 ,   清水宏

ページ範囲:P.62 - P.65

要約 69歳,男性.出生時から腰部に帯状の巨大色素斑が存在し,3年前から色素斑上に黒色局面が出現した.病理組織学的には色素斑は単純黒子と境界部型の母斑細胞母斑が混在しており,また黒色局面はtumor thickness1.2mmの表在拡大型悪性黒色腫であった.センチネルリンパ節転移も認めたため,鼠径リンパ節郭清術と化学療法にて追加治療した.術後12か月を経過して再発,転移を認めない.speckled lentiginous nevusは,稀ながら悪性黒色腫を生じる例もあり,慎重な経過観察が必要であると考えた.

放射線照射が有効であった巨大Merkel細胞癌の1例

著者: 高橋秀典 ,   西川美都子 ,   澤井孝宏 ,   清原隆宏 ,   熊切正信 ,   長谷川義典 ,   小浦場祥夫

ページ範囲:P.67 - P.70

要約 73歳,男性.2002年夏頃,左上眼瞼の紅色腫瘤に気付き,近医での皮膚生検で皮膚癌と診断されたが放置し,次第に増大してきた.当科受診時,左上眼瞼に鵞卵大,左頸部に手拳大,易出血性の紅色腫瘤があり,左鎖骨上部に長径30mm大の皮下腫瘤があった.血中ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)値は99.2ng/mlと高値だが,画像検査上,遠隔転移はなかった.病理組織学的に皮膚・リンパ節とも,クロマチンに富む類円形の核とわずかな胞体を有する細胞が,一部ではtrabecular patternを呈して密に増殖,N/C比は高く核小体は明瞭であった.腫瘍細胞はサイトケラチン20陽性,NSE陽性,クロモグラニンA陰性.電顕的に有芯顆粒がみられた.化学療法,放射線照射により腫瘍は著明に縮小した.NSE値は腫瘍の縮小に合わせて著明に低下し,多発性転移とともに再度上昇したことから,Merkel細胞癌の病勢の有用なマーカーであると考えた.

骨髄異形成症候群に発症したleukemia cutisの1例

著者: 小野敦子 ,   榊原代幸 ,   新谷洋一 ,   森田明理

ページ範囲:P.71 - P.73

要約 78歳,女性.2002年8月,骨髄異形成症候群と診断された.同時期より左腰部に中心部潰瘍,壊死を伴う腫瘤を認め,次第に増大し,発熱も伴うため,来院した.病理組織学的には芽球細胞の密な浸潤を認め,leukemia cutisと診断した.皮疹出現後約3か月で急性転化し,12か月で死亡した.一般的にleukemia cutisの出現は白血病への急性転化を示唆するとされ,本症例も急性骨髄性白血病に移行した.

感染性心内膜炎患者に生じたJaneway斑の1例

著者: 馬場俊右 ,   大原晴香 ,   赤坂俊英

ページ範囲:P.74 - P.77

要約 25歳,女性.心臓弁膜症とアトピー性皮膚炎の既往がある.不明熱で内科に入院し,感染性心内膜炎が疑われ,治療を開始されていた.手掌・足底に無痛性の紫斑と,両下腿から足背にかけて点状出血が出現していたため,当科を紹介された.病理組織では,足底の紫斑部では,真皮浅層血管周囲性に炎症細胞が浸潤し,下腿の点状出血部では,真皮下層の血管腔内にフィブリン析出がみられた.これらの所見より,Janeway斑と点状出血斑と診断した.

1歳児の趾爪白癬の2例

著者: 林美穂 ,   藤広満智子 ,   北島康雄

ページ範囲:P.78 - P.80

要約 症例1:1歳0か月,男児.初診2か月前から右拇趾の爪の白濁に気づく.症例2:1歳10か月,男児.初診1か月前から右第4,5趾爪の白濁と周囲の紅斑,小水疱,鱗屑を認めた.両症例とも病変部からのKOH陽性.平板培養,スライド培養の所見からTrichophyton rubrumと同定した.いずれも足爪白癬で,抗真菌薬外用により加療した.2例とも家族内に足白癬患者が複数おり,家族からの感染が疑われた.抗真菌薬外用による加療によく反応し,短期間にかなり改善したが,1例では2年後に爪先端より菌を認め,長期間の観察が必要と考えた.小児の爪白癬は稀であり,本邦においてその治療についての報告も数少ない.

深在性トリコスポロン症の1例

著者: 小西朝子 ,   樋上敦 ,   太田深雪 ,   酒井利恵 ,   堀口裕治 ,   三浦康生 ,   河崎昌子 ,   安澤数史 ,   田邉洋

ページ範囲:P.81 - P.84

要約 77歳,男性.慢性リンパ性白血病のため血液内科にて化学療法が行われていた.肺炎のため入院し,抗生剤で加療したがスリガラス状陰影を認め,間質性肺炎と診断した.ステロイド薬の内服で全身状態と画像所見は改善したが,再び発熱し,右大腿部に紅斑と紫斑を生じた.皮膚科初診時,同部位にびらん面を形成する紫斑を認めた.皮膚生検で,真皮から皮下脂肪織にかけて出血と血栓を認め,また真菌要素を多数認めた.血液および組織の真菌培養検査でTrichosporon asahiiが検出され,同菌による真菌血症と深在性真菌症と診断した.ミカファンギンの点滴を始めたが,皮膚科受診の5日目に死亡した.本症は強力な化学療法の開発や移植例の増加に伴い,日和見感染症として増加することが予想され,皮膚病変からの生検や培養は,迅速かつ的確な診断と治療につながると考えた.

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あとがき

著者: 渡辺晋一

ページ範囲:P.90 - P.90

 新研修制度が導入されてから,産婦人科医や小児科医の減少傾向が加速され,このままでは,日本では子どもを産めなくなり,たとえ子どもができてもそれを診てくれる小児科医がいなくなってしまう.そのため日本の少子化傾向は悪化の一途をたどり,将来日本を支える労働の担い手がいなくなる.次にくるものは外科医の減少で,日本にいても外科手術を受けられなくなる.その時になって初めて政府が動き,フィリピンなどの外国人医師に日本の医師免許を与えるようになる(今年からフィリピンの看護師が,条件を満たせば日本でも働けるように法律が改正された).日本医師会が外国人医師の誕生に反対しても,日本政府は患者団体の圧力に屈した形で外国人医師を導入するようになる.そうなれば,安い労働力を利用でき,医療費削減をめざす政府にとっては,まさに思うつぼである.一方,皮膚科医は増え続け,飽和状態となる.その結果,多くの皮膚科医は生き残りのために,美容ビジネスに走ることになる.そしてその資金を支えるのがブラック・マネーである….これは単なる空想ではなく,現実味をおびてきている.新研修制度が始まる前は,産婦人科を希望する者は卒後すぐに産婦人科に入局するため,産婦人科の忙しさ,大変さがわからない.しかし新研修制度では,いくつかの診療科を回るため,どの科は大変で,どの科は楽かを身をもって体験する.その結果,産婦人科を希望する医師は減る.もともと診療報酬が安いのであるから,産婦人科の診療報酬を上げたからといって,産婦人科医が増えることはない.このような単純なことを政府がわからないとは驚きである.一番簡単な解決法は,日本以外の国で行われているように,各科のレジデントの定員を決めて,研修修了者を希望と成績により各科に割り振ることである.自由に診療科を選択できるのは日本ぐらいである.アメリカの医学教育のまねをするのであれば,一部ではなく,レジデントから専門医制度まで,すべての制度を導入しないと不完全と言わざるをえない.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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