文献詳細
症例報告
文献概要
要約 84歳,女性.6年前に多発性脳梗塞を発症し,以降の食事は半消化態栄養剤であるテルミールソフト®が中心であった.当科受診の1か月前から顔・陰部・四肢先端の弛緩性水疱を伴う紅斑が出現し,徐々に増悪した.臨床的に典型的な皮疹と血中亜鉛値低下(18μg/dl),および亜鉛の投与により皮疹と低下していた意識レベルが速やかに改善したことから,本症例を亜鉛欠乏症と診断した.亜鉛欠乏は栄養摂取に極端な偏りがなければ通常は生じないとされるが,自験例は経腸栄養剤に栄養を頼らざるをえない状況で亜鉛含有が少ない製品を使用し,亜鉛摂取量が不足して発症した.経腸栄養剤は亜鉛をはじめとする微量元素に関し,製品により含有量のばらつきが比較的大きく,高齢者の皮膚炎を診察する際は,亜鉛含有量が低く設定された製品の偏った使用による本症を念頭に入れる必要がある.
参考文献
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