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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科62巻12号

2008年11月発行

雑誌目次

連載 Clinical Exercise・15

Q考えられる疾患は何か?

著者: 益田浩司

ページ範囲:P.869 - P.870

症例

患 者:61歳,男性

主 訴:体幹,四肢の掻痒を伴う紅斑,水疱

家族歴・既往歴:特記すべきことなし.

現病歴:初診の約半年前より体幹,四肢に掻痒を伴う紅斑が出現,しだいに皮疹は環状を示し,紅斑の辺縁に沿って小水疱を生じるようになった.市販のステロイド軟膏を外用したが軽快しないため当科を受診した.

現 症:体幹,四肢に蛇行状あるいは環状の浮腫性紅斑がみられ,紅斑上には多環状に配列するびらん,痂皮と,その辺縁に小水疱の形成を認めた(図1).大腿部では同心円状に痂皮が配列し,辺縁に浮腫とびらんを伴う紅斑が認められた.両手関節部では小水疱以外に緊満性水疱もみられた.なお,口腔内病変はなかった.

今月の症例

巨大石灰化上皮腫の1例

著者: 金田智子 ,   堀田健人 ,   佐々木一 ,   萩原正則 ,   本田まりこ ,   中川秀己

ページ範囲:P.872 - P.875

要約 66歳,女性.初診の5年前に後頸部の結節に気づいた.初診時,後頸部の10×6×6cm大紅色広基性腫瘤を認めた.生検組織像は好塩基性細胞と好酸性細胞の集合より形成されており,石灰化上皮腫の像を呈していた.中高齢に発生し,長径が10cmを超えていたことから,悪性石灰化上皮腫をまず最初に考えた.腫瘍全体の病理組織学的所見は異型性および侵襲性に乏しいことから,良性石灰化上皮腫と診断した.術後3か月経過した現在,再発および転移はない.

症例報告

ブフェキサマク外用による急性汎発性発疹性膿疱症様の臨床像を呈した接触皮膚炎の1例

著者: 中川雄仁 ,   藤井弘子 ,   西村陽一

ページ範囲:P.877 - P.879

要約 51歳,男性.アンダーム ®軟膏外用後に全身に紅斑・膿疱が拡大した.病理組織学的所見では角層下に海綿状膿疱が認められ,表皮細胞には好酸性壊死も散見された.急性汎発性発疹性膿疱症(AGEP)を疑い,直ちにアンダーム ®軟膏外用を中止し,ベタメタゾン1.5mg/日内服およびステロイド軟膏を外用したところ,速やかに症状は軽快した.その後,皮疹の再燃はない.パッチテストの結果ではアンダーム ®軟膏の主剤であるブフェキサマクに陽性を示し,ブフェキサマク外用により,AGEP様の臨床像を呈した接触皮膚炎と最終診断した.

ペースメーカー皮膚炎の1例

著者: 井口愛 ,   井上和之 ,   小泉直人 ,   浅井純 ,   竹中秀也 ,   加藤則人 ,   岸本三郎

ページ範囲:P.880 - P.883

要約 77歳,男性.10年前に洞不全症候群に対し,左鎖骨部ペースメーカー植え込み術を施行された.約1年前より,ペースメーカー挿入部の皮膚に自壊を繰り返すようになり,ペースメーカー皮膚炎の疑いで受診した.シリコンラバー,各種金属などに対するパッチテストの結果はすべて陰性であり,ペースメーカーにより被覆皮膚が過伸展されることで生じるpressure dermatitis typeのペースメーカー皮膚炎と考えた.ステロイド内服により,潰瘍は速やかに改善した.ステロイドの漸減にて潰瘍の再発を繰り返したため,約2年間のステロイド内服治療後に右大胸筋直上にペースメーカー再植え込み術が施行された.

タイル洗浄作業で生じた低濃度フッ化水素酸による化学熱傷

著者: 石名航 ,   中川浩一 ,   大磯直毅 ,   田嶋敏彦 ,   石井正光

ページ範囲:P.884 - P.887

要約 34歳,男性.タイル洗浄中にフッ化水素酸(濃度5~10%)が左母指に付着し,疼痛と腫脹が出現した.近医で外用処置を受けたが,症状が改善しないため,当院を受診した.フッ化水素による化学熱傷と診断し,酢酸ジフロラゾン軟膏の塗布,デブリードマン,アルギン酸被覆材による湿潤療法を行った.2か月後に略治したが,爪の変形を残した.フッ化水素酸化学熱傷は過去5年間で倍増しており,特に清掃作業で使用されるフッ化水素酸系洗剤による受傷が急増している.フッ化水素酸系洗剤による化学熱傷は今後も増加する傾向にあり,注意が必要である.

トニックウォーター(シュウェップス®)による固定疹の1例

著者: 野本正志

ページ範囲:P.888 - P.890

要約 27歳,男性.2003年10月頃より年に数回の頻度で口唇部に水疱が出現し,約2週間前後で治癒するといったエピソードを繰り返すようになった.初診時,主として下口唇の両外側,皮膚・粘膜移行部を中心にして比較的境界鮮明な紅斑上に水疱,びらん,色素沈着を認めた.時々内服していた鎮痛薬による固定薬疹を疑ったが,その後,非内服時にも同様の皮疹が出現したため薬疹は否定された.そこで詳細に問診をしたところ,トニックウォーターを使用したカクテルを好んで飲用することが判明した.シュウェップス ®トニックウォーターによる摂取試験を行ったところ,口唇部に皮疹が再現した.同トニックウォーターに含まれるキニーネが原因と思われる.

グルコン酸カルシウムによる医原性石灰沈着症の1例

著者: 馬場ひろみ ,   濱谷詩織 ,   尾上智彦 ,   堀和彦 ,   長井泰樹 ,   幸田公人 ,   中川秀己

ページ範囲:P.891 - P.893

要約 生後1か月,男児.左副腎原発神経芽細胞腫の手術目的で当院小児外科に入院した.入院時,低カルシウム血症を認めたため,8日間グルコン酸カルシウム点滴静注施行後,補液を継続していたところ,左前腕の留置針刺入部に発赤および腫脹を認めたため,点滴剤漏出を疑い,留置針を抜去した.湿布薬貼布により発赤は徐々に軽減したが,皮下硬結が残存した.単純X線写真で左手関節手背側の軟部組織内に石灰化を有する境界不明瞭な腫瘤を認め,病理組織像では真皮中層から皮下脂肪織にかけて好塩基性でvon Kossa染色陽性の無構造物質および異物巨細胞を混じる炎症性細胞浸潤を認め,皮膚石灰沈着症と診断した.皮下硬結は徐々に縮小し,約2か月で自然消退した.

ロイコトリエン拮抗薬内服患者に発症したChurg-Strauss症候群

著者: 志賀建夫 ,   中島喜美子 ,   横川真紀 ,   池田光徳 ,   佐野栄紀 ,   小玉肇

ページ範囲:P.894 - P.897

要約 78歳,女性.初診の1か月ほど前より両下腿に紫斑が生じ,同時に足趾のしびれ感が出現した.初診時,両下腿に紫斑が散在し,一部では血疱を形成していた.背部に手掌大の紅褐色局面がみられた.多発単神経炎のため,歩行不可能であった.紫斑,紅褐色局面ともに病理組織学的には真皮全層にわたる著明な好酸球浸潤がみられた.末梢血中好酸球増多,気管支喘息に対する6年間のロイコトリエン拮抗薬内服歴,多発神経炎からChurg-Strauss症候群(CSS)と診断した.プレドニン ®の投与にて皮疹は速やかに消退し,末梢血好酸球数も正常範囲内に低下した.多発単神経炎に対してはNSAIDsの投与とリハビリテーションを行い,歩行可能な状態まで改善した.ステロイドの全身投与歴がなく,ロイコトリエン拮抗薬の内服中にCSSを発症しており,CSSは気管支喘息患者において投薬歴によらず,念頭に置くべき疾患と考えた.

蜂窩織炎に続発したアナフィラクトイド紫斑の1例

著者: 白石由佳 ,   五味方樹 ,   満山陽子 ,   平原和久 ,   水川良子 ,   塩原哲夫

ページ範囲:P.898 - P.901

要約 78歳,男性.初診4日前より発熱を認め,その2日後より右下肢に発赤・疼痛・腫脹が出現した.臨床所見・炎症反応高値より蜂窩織炎と診断し,入院のうえ,抗生剤投与と局所の安静・冷却を行った.解熱傾向は認めたが蜂窩織炎は改善せず,発症6日後には胸部・腹部・四肢に,浸潤を触れる粟粒大の紫斑が出現した.紫斑部の皮膚生検では,表皮・真皮浅層に好中球を混じるリンパ球優位の細胞浸潤と,血管内皮細胞の膨化・腫大,赤血球の血管外漏出を認め,アナフィラクトイド紫斑と診断した.紫斑は出現後9日間で消退したが,蜂窩織炎はその後も遷延した.蜂窩織炎発症1か月後,抗ストレプトリジンO(ASO)287IU/ml・抗ストレプトキナーゼ(ASK)2,560倍と有意な上昇を認め,溶連菌の関与が考えられた.皮膚局所に常在する溶連菌は,蜂窩織炎の原因となるだけでなく,全身性の細菌アレルギーの原因ともなりうると考えた.

くすぶり型骨髄腫(IgA-λ型)に伴った壊疽性膿皮症の1例

著者: 寺田知音 ,   中林康靑

ページ範囲:P.902 - P.905

要約 74歳,男性.13年前に急性虫垂炎,腸閉塞にて手術を施行された.9年前にcardiac syndrome Xを指摘される.8年前より壊疽性膿皮症にて外来加療中のところ,難治なため,入院にてプレドニゾロン,塩酸ミノサイクリン,ジアフェニルスルホン内服を試みたが,途中から治療に反応しなくなった.全身検索にて高IgA血症,全身性アミロイドーシスを認めたことから,背景に骨髄腫の存在を疑ったが,骨髄生検を施行する前に,全身状態の悪化により死の転帰をとった.後の病理解剖によりくすぶり型骨髄腫(IgA-λ型)を確認した.壊疽性膿皮症と高IgA血症,くすぶり型骨髄腫(IgA-λ型),全身性アミロイドーシスとの関連,および治療に関して考察した.

皮下型サルコイドーシスの2例

著者: 丹生名都子 ,   森上純子 ,   森上徹也 ,   中井浩三 ,   横井郁美 ,   宮本泉 ,   米田耕造 ,   窪田泰夫

ページ範囲:P.906 - P.908

要約 症例1:83歳,女性.両上肢,両膝に10cm大の弾性硬皮下結節が散在していた.胸部X線,CTにて縦隔,傍大動脈リンパ節の腫脹がみられた.Gaシンチでは検出できなかった他臓器病変がPETで検出された.生検により非乾酪性類上皮細胞肉芽腫像を得た.現在,ミノサイクリン内服にて経過観察中.症例2:51歳,女性.四肢に1cm大までの弾性硬皮下結節が多発し,両膝蓋に浸潤性暗紅色局面を認めた.胸部X線,CTにて両側肺門部リンパ節腫脹(BHL),粒状影がみられた.呼吸機能は正常.ACE高値であった.同様に非乾酪性類上皮細胞肉芽腫像がみられた.偏光顕微鏡で異物は認めなかった.皮下型と結節型の混合型と診断した.皮下結節は経過観察で消失した.

抗Mi-2抗体陽性を示した皮膚筋炎の1例

著者: 藤沢智美 ,   清島真理子 ,   加治賢三 ,   藤本学 ,   桑名正隆

ページ範囲:P.909 - P.912

要約 64歳,男性.2か月前より筋肉痛,口内炎に気づき当科を受診した.38℃以上の発熱,倦怠感があり,顔面,頸部,肩,手背,膝にびまん性紅斑,上背部に線状紅斑がみられた.末梢血で筋原性酵素の著しい上昇がみられ,抗核抗体1,280倍,抗Jo-1抗体陰性,抗Mi-2抗体陽性であった.間質性肺炎,内臓悪性腫瘍の合併はなかった.病理組織像は,真皮血管周囲と筋層内にリンパ球浸潤がみられた.皮膚筋炎と診断し,治療はプレドニゾロン60mg/日より開始した.皮疹,筋症状ともに消失し,検査値も正常化した.抗Mi-2抗体陽性皮膚筋炎は急性発症で,典型的な皮膚筋炎の像をとり,予後が良好な例が多いが,本邦での報告は稀である.

尋常性乾癬に併発した自己免疫性水疱症の1例

著者: 吉澤学 ,   納さつき ,   竹腰知紀 ,   長山隆志 ,   大西誉光 ,   渡辺晋一 ,   石井文人 ,   橋本隆

ページ範囲:P.913 - P.916

要約 70歳,男性.63歳より尋常性乾癬にて当科でステロイドとビタミンD3を外用し経過良好であった.約1か月前から両上腕に掻痒を伴う水疱が2~3個出現したが,ステロイド外用でいったん軽快した.1週間前より下腹部から大腿に新生水疱と浮腫性紅斑がみられ,2日前から全身各所に水疱が拡大した.体幹・四肢全体にびまん性に軽度鱗屑が付着する紅褐色調局面がみられ,一部に径3~4mm大の紅色丘疹を少数混じていた.局面上に浮腫性紅斑を伴う小指頭大の緊満性水疱が多数散在し,一部にびらんを形成していた.口腔内に水疱はなかった.血清抗BP180抗体,抗BP230抗体は陰性であった.病理組織像は,表皮下水疱を形成し,直下にリンパ球主体の細胞浸潤を認め,少数の好中球と好酸球を混じていた.蛍光抗体直接法で表皮基底膜部にIgG・C3が線状に沈着し,1M食塩水剝離皮膚を用いた蛍光抗体間接法では真皮側に反応した.このことより抗p200類天疱瘡や後天性表皮水疱症などの合併が考えられたが,免疫ブロット法で既知の対応抗原は検出できず,診断確定には至らなかった.プレドニゾロンを60mg/日から開始し,水疱は軽快したが漸減時に乾癬の一時的な増悪がみられた.

陰茎に生じた汗孔角化症の1例

著者: 片山宏賢 ,   太田有史 ,   中川秀己

ページ範囲:P.917 - P.919

要約 36歳,男性.半年前から陰茎に疼痛を伴う皮疹が生じ,徐々に増大した.初診時,陰茎側面に鱗屑を伴い,辺縁が堤防状に隆起した直径1cm大の環状局面を認めた.切除標本で辺縁部に一致して錯角化円柱(cornoid lamella)を認め,汗孔角化症と診断した.術後6か月経過した現在,再発はない.外陰部,特に陰茎に生じた汗孔角化症の報告は少なく,発症部位からみると比較的稀な症例と考えられた.

爪床に生じた表皮囊腫の1例

著者: 石川理穂 ,   安藤浩一 ,   服部玲子

ページ範囲:P.920 - P.922

要約 44歳,女性.初診の1か月前より左母趾の爪甲が浮いて隆起してきた.爪甲は内側の近位部から剝離し,全体として黄白色調,一部淡い緑色を呈し,爪母付近に爪甲下出血を認めた.爪甲を除去したところ,爪床の一部が隆起し,赤色調を呈していた.赤色隆起部を生検したところ,真皮内に爪床上皮とは標本上,連続性を認めない表皮囊腫を認めた.

Eccrine angiomatous hamartomaの1例

著者: 岡田玲奈 ,   森布衣子 ,   木花いづみ

ページ範囲:P.923 - P.925

要約 9歳,女児.乳児期より臀裂横に小結節があり,違和感を感じるようになったため,受診した.初診時,常色,表面平滑,弾性硬,角状に突起する5mm大の小結節を認めた.圧痛があり,局所多汗は認めなかった.病理組織像では真皮中層から周囲皮膚より突起する形で,エクリン腺・汗管,大小の血管腔,末梢神経が混在しながら,周囲に膠原線維を伴い増加していた.上皮性・非上皮性成分より構成されるhamartomaであり,エクリン汗腺・汗管と血管の増生が主体であったため,eccrine angiomatous hamartomaと診断した.本症は四肢発生例が多く,自験例のような臀部にskin tag様の臨床像を呈する症例は稀である.

先天性絞扼輪症候群にeccrine angiomatous hamartomaを合併した1例

著者: 小島令子 ,   苅谷清徳 ,   榊原代幸 ,   山口裕史 ,   森田明理

ページ範囲:P.926 - P.929

要約 10歳,女児.先天性絞扼輪症候群のため,右第3指DIP関節遠位端および,右第4指先端の一部に欠損がある.5歳時よりその右第3指先端に疼痛を自覚,整形外科にて皮下腫瘤を指摘された.次第に疼痛が増悪し,当科を紹介された.疼痛除去を目的に切除したところ,病理組織像で真皮内の膠原線維の増殖と脂肪織の不整な分布を認め,真皮中層~深層に増生した膠原線維内にエクリン汗腺と小血管の増生,特に神経の増加を認め,eccrine angiomatous hamartomaと診断した.切除後,疼痛は消失した.これまで先天性絞扼輪症候群とeccrine angiomatous hamartomaの合併例報告はなく,詳細は不明であるが,両疾患の発生・特徴から,この2つの疾患には関連があると考えられた.

シネMRI検査により眼球摘出を選択した基底細胞癌の1例

著者: 末廣敬祐 ,   鎌田憲明 ,   小野泰伸 ,   塚本利朗 ,   神戸直智 ,   花澤豊行 ,   松江弘之

ページ範囲:P.930 - P.932

要約 58歳,男性.約4年前より右鼻根部に潰瘍を自覚した.徐々に増大したが,放置していた.鼻根部から右内眼角にかけ4×3.4cmの出血を伴う潰瘍病変を認め,生検にて基底細胞癌と診断した.画像精査(シネMRI検査)により,眼内直筋の浸潤が疑われたため,腫瘍より1cm離し,眼球もen blocに合併切除した.術前のシネMRI検査による評価の重要性を再認識させられた症例であった.

尿膜管膿瘍の1例

著者: 岩﨑純也 ,   武藤潤 ,   青木繁 ,   藤本典宏 ,   小林孝志 ,   多島新吾 ,   木村文宏 ,   番場圭介

ページ範囲:P.933 - P.935

要約 27歳,男性.臍部の疼痛を伴う結節を主訴に来院した.MRI上,臍から連続して腹壁内に突出する囊胞性腫瘤と,それに連続して膀胱前上部に伸びる索状構造を認めた.尿膜管膿瘍の診断で炎症の鎮静化をはかった後,尿膜管摘出術を施行した.病理組織学的に尿膜管膿瘍で,悪性所見は認められなかった.臨床的に臍部結節をみた場合,尿膜管遺残を考慮し,早期に画像診断を行うことが重要であると思われた.

イベルメクチン(ストロメクトール®)が著効したcreeping diseaseの1例

著者: 横田日高 ,   秋山創

ページ範囲:P.937 - P.939

要約 22歳,男性.2007年4月15日にホタルイカの生食歴あり.翌日から右下肢に線状発赤が出現した.4月20日に皮膚生検および旋尾線虫の抗体価を測定し,旋尾線虫によるcreeping diseaseと診断した.外科的に虫体の摘出はできなかったが,イベルメクチン(ストロメクトール ®)投与にて4月23日には線状発赤は改善した.Creeping diseaseに対してイベルメクチン投与が治療選択肢になると考えた.

イベルメクチンが奏効したcreeping diseaseの1例

著者: 大森香央 ,   土肥凌 ,   金子健彦 ,   信崎幹夫 ,   赤尾信明

ページ範囲:P.940 - P.942

要約 52歳,男性.初診の約1週間前にホタルイカを約15匹生食した.その4日後に腹部に爬行状皮疹が出現し,徐々に拡大したため,当院を受診した.病理組織学的所見では,表皮の浮腫と表皮内水疱を認め,真皮上層から中層にかけてリンパ球を主体とする炎症細胞が浸潤していた.虫体は検索した切片では認められなかったが,旋尾線虫幼虫TypeⅩの抗体価の上昇が確認され,原因と考えた.生検後に新たに爬行状皮疹の伸長が出現したため,虫体が残存していると考え,イベルメクチン15mgの内服を試みたところ,皮疹の伸長が停止した.伸長の停止と症状の軽快は内服開始後4日以内,皮疹出現後から8日以内の早期に認められたことから,旋尾線虫幼虫症に対してイベルメクチンは有効であったと考えた.

書評

―著:中村健一―《総合診療ブックス》 皮膚科医直伝 皮膚のトラブル解決法

著者: 池田正行

ページ範囲:P.883 - P.883

 医学書の書評は,普通,その分野に通暁した専門家に依頼が来る.しかし,皮膚科研修の既往も予定もない私に書評の依頼が来たのはなぜだろうか.

 日本皮膚科学会によれば,2007年11月現在,皮膚科専門医数は5,439名.これは,医師数全体27万人の2%にあたる.しかし,私を含めた残り98%の医師も,様々な事情でしばしば皮膚科診療をせざるを得ない.

―編:松村真司,箕輪良行―コミュニケーションスキル・トレーニング―患者満足度の向上と効果的な診療のために

著者: 有賀徹

ページ範囲:P.929 - P.929

 このたび松村,箕輪両氏の編集による『コミュニケーションスキル・トレーニング─患者満足度の向上と効果的な診療のために』が出版された.その帯には「ベテラン医師を対象とした云々」とある.患者面接などに関する実践的な手法については,最近の医学部での教育や臨床研修医の採用において用いられていて,自らもおおよそのことを知ってはいたが,「ベテラン医師」から見ても確かに一読するとうなずくところが多々ある.

 さて,日本語はもともと敬語が発達していて,対話する相手との距離などを測りながらそれを巧みに使うことになっていて,そこにこそ言わば教養のなせる技がある.したがって,医師はこの面でも研鑽すべきだろうと自らは漠然と考えていた.本書にはさすがにそのような言及はないが,それよりもっと基本的な面接などに関する体系的な仕組みについて解説されている.コミュニケーションスキル・トレーニングなどという教育が微塵もなかったわれわれでも,本書にある標準的な仕組みを頭に入れて医療を展開するなら,内科診断学やSings & Symptomsの基本である患者情報をまずは効果的に得ることに役立つ.引き続く治療についても患者に大いにその気になってもらううえで,この体系的な仕組みを実践する意義は大いにあると言うべきであろう.

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あとがき

著者: 伊藤雅章

ページ範囲:P.946 - P.946

 「主研修施設」と「責任指導医」というのをご存知ですか?これらは,皮膚科専門医制度において,今年4月に新たに定めた事柄です.従来,皮膚科専門医資格を取得するためには,指導医のいる研修施設で5年間の研修をすることになっていて,現在,600を超える研修施設があります.しかし,これまでは,1名の皮膚科専門医が常勤していて総合病院であれば,研修施設としていました.もちろん,このような病院での研修もある程度認められるべきですが,それだけでは皮膚科としての専門性を身に着けるための研修は不十分と言わざるをえません.言い換えますと,皮膚科専門医1人常勤の病院と,多数の専門医が常勤し,研究,学会活動,高度な診療,さらに医学教育をしている大学病院とが,同じレベルの「研修施設」という基準で皮膚科専門医制度が運営されていたわけです.現在,60を超える学会が専門医制度を運営していますが,皮膚科のような研修施設の安易な基準は他にありません.専門医制度が発足した数十年前であれば,やむをえないことと言えますが,今となっては,皮膚科が遅れをとってしまったことは否めません.そこで,複数の皮膚科専門医が常勤して,十分な研修ができ,研修の中心となる「主研修施設」を認定し,いわゆる研修施設群で研修するシステムに規則を変えたわけです.「主研修施設」の指導医の最高責任者が「責任指導医」ですが,「責任指導医」はすでに専門医を更新していて,十分な指導経験と皮膚科分野の業績のある者でなくてはなりません.今年度中に「主研修施設」と「責任指導医」の認定を行い,来年度の新入会者から「最低1年以上」の「主研修施設」での研修が義務付けられます.このところ,本誌の編集委員会で問題とみていることとして,若い人の投稿で指導医による原稿チェックが十分にされていないとみられるものが少なからずあります.研修医にとって適切な論文作成も研修の1つですので,責任指導医や指導医の方々にはよろしくご指導をお願いします.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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