臨床皮膚科62巻12号

2008年11月発行

症例報告

タイル洗浄作業で生じた低濃度フッ化水素酸による化学熱傷

著者： 石名航¹ 中川浩一¹ 大磯直毅² 田嶋敏彦³ 石井正光⁴

所属機関： ¹済生会富田林病院皮膚科 ²近畿大学医学部皮膚科 ³大阪市立大学大学院医学研究科形成外科学 ⁴大阪市立大学大学院医学研究科皮膚病態学

ページ範囲：P.884 - P.887

要約　34歳，男性．タイル洗浄中にフッ化水素酸(濃度5～10%)が左母指に付着し，疼痛と腫脹が出現した．近医で外用処置を受けたが，症状が改善しないため，当院を受診した．フッ化水素による化学熱傷と診断し，酢酸ジフロラゾン軟膏の塗布，デブリードマン，アルギン酸被覆材による湿潤療法を行った．2か月後に略治したが，爪の変形を残した．フッ化水素酸化学熱傷は過去5年間で倍増しており，特に清掃作業で使用されるフッ化水素酸系洗剤による受傷が急増している．フッ化水素酸系洗剤による化学熱傷は今後も増加する傾向にあり，注意が必要である．

参考文献

1) 永井隆吉, 野村　茂(編)：臨床産業医学全書, 第4巻, 産業皮膚科学, 医歯薬出版, p171, 1987

2) McCarthy JG: Plastic Surgery, Vol.8, Part2, Saunders, Philadelphia, p5437, 1990

3) 谷垣武彦, 他：皮膚臨床23: 49, 2001

4) 内藤裕史：中毒百科, 南江堂, p143, 2001

5) 梅原真紀子, 他：皮病診療26: 735, 2004

6) 伊藤治夫, 他：臨皮56: 633, 2002

7) 安原尚昭, 他：臨皮56: 13, 2002

8) 木村光成：ビル新聞5月29日号, BM技術講座93, 2006

9) 木村光成：ビル新聞6月12日号, BM技術講座94, 2006