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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科62巻13号

2008年12月発行

文献概要

症例報告

ホタルイカ摂食による旋尾線虫typeXのcreeping eruptionの1例

著者: 湯川まみ1 谷口裕子1 大滝倫子1 石井敏直2 赤尾信明3

所属機関: 1九段坂病院皮膚科 2石井皮膚科医院 3東京医科歯科大学大学院国際環境寄生虫学分野

ページ範囲:P.1020 - P.1022

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要約 44歳,女性.ホタルイカを数回摂食した後,右腰部に疼痛と掻痒を伴う,線状に伸長する紅斑が生じたため,近医を受診した.寄生虫疾患を疑われ,当科を紹介された.初診前日より疼痛・掻痒感ともに消失していたが,右側腹部から臀部にかけて拇指頭大までの紅褐色斑がS字状に配列し,一部に浸潤を伴い,色素沈着を混じていた.血液検査では好酸球増多以外に異常はない.酵素抗体法にて患者血清は旋尾線虫抗原に陽性反応を示した.伸長する紅斑の先端部より生検を行い,真皮上層から中層に好酸球を認めたが,虫体は検出できなかった.以上より,旋尾線虫幼虫typeXによるcreeping eruptionと診断した.無治療のまま,色素沈着を残して軽快した.ホタルイカに寄生する旋尾線虫幼虫は,適切な加熱・冷凍処理により死滅する.本疾患の予防には,ホタルイカの取り扱いに関する行政の指導と,一般消費者への注意の喚起が重要と考える.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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