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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科62巻2号

2008年02月発行

雑誌目次

連載 Clinical Exercise・6

Q 考えられる疾患は何か?

著者: 木花いづみ

ページ範囲:P.95 - P.96

症例

患 者:72歳,男性

主 訴:皮疹の増悪,発熱

既往歴:10年前(62歳時),胸部大動脈瘤で手術.同年より尋常性乾癬にて当科通院中.副腎皮質ホルモン薬の外用およびPUVA療法で加療していた.

家族歴:特記すべきことなし.

現病歴:4か月前からPUVA bath療法に変更して経過観察していたところ,今回,四肢を中心に浮腫性紅斑が出現,拡大するとともに,発熱を伴ってきた.

現 症:四肢および臀部に浮腫性紅斑を認め,紅斑上に小膿疱が一部環状を呈して多発していた.これらの膿疱は時間の経過とともに癒合し,薄い落屑に変化していった.また,膿疱出現から数日後には,おもに紅斑上に径1~2cmの緊満性水疱が出現してきた.

原著

面皰に対する活性型ビタミンD3誘導体外用薬の有用性の検討

著者: 林伸和 ,   津村睦子 ,   川島眞

ページ範囲:P.98 - P.102

要約 顔面に非炎症性皮疹(面皰)を20個以上有する尋常性痤瘡患者20例(男性1例,女性19例,平均年齢25.0歳)に対して,活性型ビタミンD3誘導体外用薬(オキサロール (R)軟膏)を全顔に1日1~2回の塗布を8週間継続し,面皰に対する有用性についてオープン試験により評価した.有効性解析対象部分集団18例の8週後の面皰減少率は,39.1±44.9%(p=0.002)であり,試験開始日に比較して面皰数は有意に減少した.また,安全性解析集団20例のうち5例に発現した副作用7件は,投与部位の皮膚反応(乾燥2件,掻痒感2件,刺激感1件,偶発的に合併したと考えられる湿疹1件)および原疾患の悪化(1件)で,いずれも軽度であった.活性型ビタミンD3誘導体外用薬で懸念される血清カルシウム値への影響は認められなかった.以上より,活性型ビタミンD3誘導体外用薬の面皰に対する有用性が示唆された.

今月の症例

脂質代謝異常を伴い全身に多発した若年性黄色肉芽腫の1例

著者: 松尾光馬 ,   伊東秀記 ,   本田まりこ ,   中川秀己

ページ範囲:P.104 - P.107

要約 6か月,女児.初診の1か月前より,胸部に粟粒大から小豆大の紅褐色丘疹が出現した.次第に全身に拡大してきたため,当科を紹介された.初診時,一部に黄色調の丘疹が混在し,皮疹部の生検所見から若年性黄色肉芽腫と診断した.同疾患には高脂血症の合併はないとされるが,自験例では高トリグリセリド血症を伴うⅣ型高脂血症,アポリポ蛋白の異常がみられた.臨床症状も顔,軀幹を中心に小豆大から2cm大の丘疹が皮膚を埋め尽くすように多発する特異なものであった.高脂血症を合併する黄色肉芽腫の過去の報告例をみると,その臨床は多彩であり,一定の傾向は認められなかった.

症例報告

S状結腸癌を伴った外陰部Paget病の1例

著者: 舛貴志 ,   奥山隆平 ,   芳賀貴裕 ,   橋本彰 ,   福士佐和子 ,   玉渕尚宏 ,   佐藤章子 ,   相場節也

ページ範囲:P.109 - P.111

要約 72歳,女性.初診の4か月前に外陰部のかゆみを伴う皮疹を自覚した.病理組織学的に外陰部Paget病と診断した.精査の結果,S状結腸癌がみつかったが,肛門・直腸部に明らかな病変はみられず,連続性は認められなかった.外陰部病変はサイトケラチン(CK)7陽性/CK20陰性であったが,S状結腸癌はCK7陰性/CK20陽性と異なる染色性を示した.以上より,自験例はS状結腸癌からのPaget現象ではなく,外陰部原発のPaget病と診断した.外陰部Paget病の場合,Paget現象との鑑別にCK7とCK20の免疫組織化学染色が有用である.

皮膚転移を生じた多発性骨髄腫の4例

著者: 山根尚子 ,   加藤直子 ,   柳輝希 ,   大澤倫子 ,   鈴木左知子

ページ範囲:P.112 - P.115

要約 症例1:50歳,男性.多発性の骨病変でIgG-κ型多発性骨髄腫と診断され,4年後に体幹に皮下結節が多数出現し,7か月後に死亡した.症例2:43歳,男性.発熱および高カルシウム血症でIgG-λ型多発性骨髄腫と診断され,2か月後に体幹,上肢に多発性の紅色腫瘤が出現し,5か月後に死亡した.症例3:59歳,男性.HTLV-Iキャリア.骨病変による背部痛でIgA-κ型多発性骨髄腫と診断され,1年7か月後に右鼠径部に紅色腫瘤が出現し,2か月後に死亡した.症例4:65歳,女性.骨病変による腰痛でIgA-λ型多発性骨髄腫と診断され,6か月後に体幹および上肢に多発性の皮下腫瘤が出現した.サリドマイド療法により多発性骨髄腫は寛解に入り,皮下腫瘤も消退した.いずれも皮膚病変は多発性骨髄腫の特異疹と考えた.

下行結腸癌を合併したアナフィラクトイド紫斑の1例

著者: 大内健嗣 ,   吉澤奈穂 ,   杉浦丹 ,   谷口正美

ページ範囲:P.116 - P.119

要約 54歳,男性.四肢の紫斑および腹痛を主訴に当科を初診し,臨床像・病理組織学的所見からアナフィラクトイド紫斑と診断した.下部消化管内視鏡で粘膜下の出血斑および腫瘍性病変を認めた.副腎皮質ホルモン・血液凝固第ⅩⅢ因子製剤による皮疹および消化管出血消退後,結腸切除を施行した.腫瘍は早期の中分化型腺癌であった.術後,四肢を中心に紫斑および腹痛が再燃した.血液凝固第ⅩⅢ因子製剤を再投与したところ,症状は鎮静し,再発は認めていない.高齢者および治療抵抗性のアナフィラクトイド紫斑は悪性腫瘍のデルマドロームの可能性がある.

マイコプラズマ肺炎の経過中に発症したtoxic epidermal necrolysisの1例

著者: 五味方樹 ,   白石由佳 ,   満山陽子 ,   平原和久 ,   堀田隆之 ,   水川良子 ,   塩原哲夫

ページ範囲:P.120 - P.123

要約 47歳,女性.マイコプラズマ肺炎に対し,内科で挿管,人工呼吸器管理下にステロイドパルス療法を行った.パルス後プレドニゾロン(PSL)を急速に漸減し,7.5mg/日まで減量したところで,全身に大豆大のtarget様紅斑が出現した.紅斑は急速に多発融合し,体表面積の約80%以上のびらん局面を形成した.病理組織学的所見で表皮全層にアポトーシスを認め,toxic epidermal necrolysis(TEN)と診断した.PSLを50mg/日に増量したが,びらんの新生は止まらず,血漿交換を2日間施行した.びらんの新生は止まり,徐々に上皮化を認めた.被疑薬のDLSTは陰性であり,マイコプラズマが関与したTENと考えた.マイコプラズマによるTENの報告は少なく,しかも重症マイコプラズマ肺炎と同時発症例がほとんどである.自験例はマイコプラズマ肺炎の発症初期にステロイドパルスを行ったことがTENの発症を一時抑えたものの,その後のPSLの急激な減量が発症を誘導したものと考えられた.

シアナミドを原因薬剤とするtoxic epidermal necrolysis (TEN)型薬疹の1例

著者: 髙田昌幸 ,   谷岡未樹 ,   中東恭子 ,   松村由美 ,   是枝哲 ,   宮地良樹

ページ範囲:P.124 - P.127

要約 84歳,男性.アルコール依存症に対してシアナミドの内服治療中であった.シアナミド内服12日後に四肢に紅斑が出現したが,軽度であったため,放置していた.29日目から全身性に皮疹が出現し,内服開始から39日目には急速にびらん,表皮剝離が出現した.表皮壊死・紅斑部分は体表面積90%以上で,正常皮膚は足背部分のみであった.眼瞼結膜および口腔粘膜もびらんとなり,開口困難であった.TEN型薬疹と診断し,メチルプレドニゾロン1,000mg/日を2日間,免疫グロブリン2.5gを2日間投与した.その後,皮膚症状は後遺症を残さずに治癒した.完全に上皮化した後に施行したパッチテストにおいて,シアナミドが陽性であった.

シクロスポリン,塩酸ミノサイクリンおよびニコチン酸アミドの併用療法が奏効した抗ラミニン5型粘膜類天疱瘡の1例

著者: 大関正彦 ,   伊藤治夫 ,   齊藤玲子 ,   田中勝 ,   原田敬之 ,   小野沢基太郎 ,   橋本隆

ページ範囲:P.129 - P.132

要約 硬口蓋の多発性水疱および,びらんを主訴に受診した75歳,女性.疼痛のため食事摂取が困難であった.眼瞼眼球間の結膜癒着を両側性に認めた.全身皮膚に異常なく,外陰部に粘膜疹はなかった.病理組織学的には,粘膜上皮下に水疱を認め,粘膜固有層に炎症細胞浸潤を伴った.ELISAにて抗デスモグレイン1および3抗体ともに陰性.蛍光抗体直接法にてIgG,IgM,C3はいずれも陰性であった.蛍光抗体間接法では,IgG抗体は陰性であったが,IgA抗体は1M食塩水剝離皮膚を基質とすると,表皮側に線状に陽性であった.ラミニン5を用いた免疫ブロット法では,γ2サブユニットにIgGが陽性であったため,粘膜類天疱瘡と診断した.シクロスポリン(ネオーラル (R))100mg/日投与を開始し,さらに塩酸ミノサイクリンとニコチン酸アミドも併用し,良好な経過を得ている.

発達遅滞児に生じた線状扁平苔癬

著者: 荒川智佳子 ,   渋谷佳直 ,   水谷陽子 ,   清島真理子 ,   岩田晶子

ページ範囲:P.133 - P.135

要約 1歳9か月,女児.食道閉鎖症,胃食道逆流症による根治術の既往がある.検診で体重増加不良および発達遅滞を指摘された.右下腿~右大腿~足趾の鱗屑を伴う線状丘疹,紅斑がみられた.紅斑部の病理組織像で表皮は鋸歯状を呈し,コロイド小体が多数存在した.真皮上層には帯状リンパ球浸潤,上中層の毛細血管周囲にもリンパ球浸潤がみられた.皮疹はステロイドの短期外用によって軽快した.小児での発症が多い線状苔癬との鑑別が難しかったが,臨床像および組織像より線状扁平苔癬と診断した.両疾患は同一スペクトラム上の疾患とする考え方もあり,その異同を考察した.

静脈抜去術が奏効したうっ滞性下腿潰瘍

著者: 谷口友則 ,   天羽康之 ,   白井京美 ,   齊藤典充 ,   増澤幹男 ,   勝岡憲生 ,   平田光博

ページ範囲:P.136 - P.138

要約 66歳,男性.1995年(55歳),左側内踝に下肢静脈瘤を伴ううっ滞性潰瘍を生じた.外用療法を行うも軽快せず,翌1996年に静脈瘤硬化療法と分層植皮術を施行し治癒した.しかし,7年後の2003年に同部位に潰瘍が再発した.その後しばらく自宅で処置をしていたが,潰瘍底からの動脈性の出血を生じ,2006年(8月)に入院となった.安静を保ち保存的療法を継続したが,潰瘍は難治であった.そこで,静脈抜去術を施行したところ,速やかに潰瘍底から良好な肉芽が増生したので,分層植皮術を行い治癒に至った.保存的療法に抵抗性である難治性のうっ滞性潰瘍には,可能であれば早期に静脈抜去術を実施すべきと考えた.

骨髄異形成症候群経過中にカテーテル刺入部に初発したneutrophilic dermatosisの1例

著者: 端本宇志 ,   高山かおる ,   佐藤貴浩 ,   横関博雄

ページ範囲:P.139 - P.142

要約 43歳,男性.骨髄異形成症候群の白血化に対する化学療法中に,高熱とともに中心静脈カテーテル刺入部に鶉卵大の境界明瞭な浸潤を触れる暗紫紅色紅斑が出現した.表面には血疱を形成して急速に拡大し,体幹部にも同様の紅斑が多発した.末梢血では好中球主体の白血球増多とCRP高値を認め,HLA-B51は陽性であった.病理組織像では真皮上層の著明な浮腫と真皮全層に好中球の稠密な浸潤を認め,neutrophilic dermatosisと診断した.ステロイド投与で改善したが,漸減すると再燃し,併発した肺炎のため,発症60日で死亡した.血液疾患に合併したSweet病やneutrophilic dermatosisでは注射針刺入など外傷部位に一致して有痛性紅斑が出現しやすい.好中球機能亢進に伴う反応であると考えられる.

上腕の紅色皮疹と肝障害を伴いSjögren症候群を疑った1例

著者: 花川博義 ,   柳原誠 ,   真野鋭志 ,   刀塚俊起 ,   渡邉晴二 ,   小川晴子

ページ範囲:P.143 - P.146

要約 29歳,女性.初診3か月前より,両上腕伸側に自覚症状のない発赤が生じ,皮疹は拡大して網状となった.初診後,両顎部と頸部に小指頭大の浸潤性紅斑が数個,さらに胸部,臀部,大腿に網状の紅斑が出現した.AST,ALTの上昇,抗核抗体40倍,抗SS-A抗体陽性,抗ミトコンドリアM2抗体陽性であった.

 上腕の皮膚病理組織は,汗腺周囲のリンパ球浸潤と真皮全層に膠原線維を囲んだ細胞浸潤病巣(膠原線維アタック型反応)を多数認めた.肝臓の病理組織学的所見は,肝小葉内とGrisson鞘に軽度のリンパ球浸潤と細胞壊死がみられた.眼や口の乾燥感はなかった.ステロイドの全身投与によって皮疹と肝障害は速やかに軽快した.

難治性てんかんに対する臭化ナトリウム投与により生じた臭素疹

著者: 保科大地 ,   清水聡子 ,   安居千賀子 ,   土屋喜久夫

ページ範囲:P.147 - P.149

要約 23歳,女性.症候性てんかんで治療中であった.コントロール不良につき,臭化ナトリウム内服が追加された.開始2週後より顔面,頭部,下肢に径2cm大までの紅色丘疹・結節が散在性に出現し,下肢では膿疱も混在していた.細菌・真菌培養は陰性であった.病理組織学的には,表皮肥厚と真皮に稠密な好中球の浸潤を認めた.血中臭化物濃度を測定したところ,中毒域に達しており,臭素疹と診断した.臭化ナトリウム内服中止4週後には色素沈着を残すのみとなった.

脂腺小葉への分化傾向をもつ囊腫状脂腺腫の1例

著者: 井上織部 ,   杉本恭子

ページ範囲:P.150 - P.152

要約 74歳,女性.初診の1年半前より頭頂部に腫瘤が出現し,徐々に増大した.病理組織学的には脂腺腫の特徴である基底細胞様細胞と脂腺細胞,小型の脂腺管が混在する所見が大部分を占めるにもかかわらず,部分的に脂腺腺腫の特徴である脂腺小葉を模倣する構造をとることから,脂腺腫と脂腺腺腫の境界例と考えた.また,囊腫内には異所性骨形成を伴っていた.骨形成を伴う脂腺系腫瘍は非常に稀である.

シクロスポリン内服中に生じた巨大ケラトアカントーマの1例

著者: 塚原菜々子 ,   伊東秀記 ,   松尾光馬 ,   上出良一 ,   中川秀己

ページ範囲:P.153 - P.155

要約 59歳,男性.尋常性乾癬でシクロスポリン内服中,鼻尖部に25×20mm大の表面に角栓を伴う紅色腫瘤が生じ,2か月後には37×20×24mmに増大した.臨床症状より,ケラトアカントーマを考え切除した.病理組織学的所見では,表皮から連続性に上皮性細胞からなる腫瘍巣が塊状にみられ,核異型や核分裂像はなく,有棘細胞様細胞が増殖していた.また,本症例は径が2.5cm以上あり,臨床と病理所見から巨大ケラトアカントーマ(giant keratoacanthoma)と診断した.ケラトアカントーマは自然消退する可能性があるが,本症例のように増大の可能性があるものや,有棘細胞癌との鑑別が困難な場合は,積極的な外科的治療が望まれる.

脂漏性角化症に隣接して生じた基底細胞癌の1例

著者: 平塚裕一郎 ,   東隆一 ,   岡田栄子 ,   岩田基子 ,   高田大 ,   飯田絵理 ,   加倉井真樹 ,   出光俊郎 ,   山田茂樹

ページ範囲:P.156 - P.158

要約 77歳,男性.青年期より左乳暈部に黒色色素斑があり,次第に増大してきた.左乳暈部の径18×13mm大,3mm高の黒褐色の角化性局面で,表面は粗造,疣贅状を呈する.その一部に径9×5mm大,3mm高の表面平滑,ドーム状の黒色結節を認める.病理組織学的には偽角質囊腫を有する脂漏性角化症と連続性に基底細胞癌の腫瘍巣がみられ,一部は脂漏性角化症の直下の真皮にも浸潤している.脂漏性角化症と基底細胞癌が密接して生じ,特異な臨床像を示したものと考えた.

Immune cytopeniaに伴う外陰部皮膚潰瘍がサイトメガロウイルス感染により難治化した1例

著者: 相楽玲 ,   山本真里 ,   永田茂樹 ,   藤田彰 ,   大坂顯通

ページ範囲:P.159 - P.162

要約 77歳,女性.非Hodgkinリンパ腫に対し化学療法後,汎血球減少症にて血液内科に通院中,大陰唇左側に潰瘍を形成した.骨髄生検では血球形態異常は認められず,Immune cytopeniaと診断した.皮膚潰瘍を免疫異常に伴う壊疽性膿皮症(PG)と考え,プレドニゾロン(PSL)の全身投与で軽快した.3か月後,同様の潰瘍が再発し,増数・増悪したため,PGの再燃と考え,PSLの全身投与を2週間施行するも軽快しなかった.血中サイトメガロウイルス(CMV)抗原陽性と皮膚生検にて核内および細胞質封入体を有する巨細胞が散見され,抗CMV抗体免疫組織化学染色で陽性細胞があり,免疫不全状態下でのCMV感染による皮膚潰瘍を考えた.PGとCMVの再活性化,再感染とが皮膚潰瘍の再発,増悪の原因と考えた.

81歳の修飾麻疹の1例

著者: 福山國太郎 ,   堀内和一朗 ,   鷲見浩史

ページ範囲:P.163 - P.165

要約 81歳,男性.2006年4月下旬に感冒様症状の後,多形滲出性紅斑を発症し1週間ほどで略治した.初診2日前から全身に丘疹性紅斑が多発し,頭痛,めまい,発熱を伴うようになり,5月16日に初診し,初診時,顔面,前胸部および上背部を中心に米粒大までの丘疹性紅斑が多発していた.口腔内にKoplik斑は認めなかった.翌日には解熱し,4日後には紅斑は消退した.抗麻疹ウイルス抗体はEIA法で,初診時IgM1.31,IgG36.3,2週間後はIgM6.98,IgG128以上であったことから,既感染者にsecondary vaccine failureが起こり,再感染したものと考えた.一般的なワクチン接種後のsecondary vaccine failureによるものとは異なるが,一種の修飾麻疹であったと考えた.

これすぽんでんす

「Mucinous nevusの1例」を読んで

著者: 若新多汪

ページ範囲:P.166 - P.166

 田村舞,他論文『Mucinous nevusの1例』(臨皮61(11):869,2007)を拝読いたしました.

 貴著の図4電子顕微鏡像についてですが,固定の悪い細胞内小器官(organella)の所見から,おそらくホルマリン固定試料から電子顕微鏡用再固定を行って得た写真と思われ,a図からプロテオグリカンと同定することは困難と考えます.

ご意見に答えて

著者: 石河晃

ページ範囲:P.167 - P.167

 拙著をお読みいただき,また,貴重なご意見を賜りありがとうございました.固定に関しましてはホルマリン固定試料の再固定ではなく,2%グルタルアルデヒドと1%オスミウム酸の二重固定を用いております.固定の悪い細胞内小器官とご指摘になられたものは,おそらく内容物が消失したライソゾームと思われる多数の空胞構造と思われますが,いかがでしょうか.図に枚数制限があり,電顕写真を無理やり一枚の組写真にしたため,予想外に小さい印刷となってしまい,詳細がご覧いただけず申し訳ありませんでした.同じ部位の拡大図を提示させていただきます.原図4dの中央下部の拡大(図1)で電子密顆粒を有するミトコンドリアを見ますと,固定は観察に堪えるものと考えております.また,空胞は限界膜で包まれております.自己融解したミトコンドリアではありません.

印象記

第21回世界皮膚科学会に参加して

著者: 大野貴司

ページ範囲:P.169 - P.171

 第21回世界皮膚科学会が,2007年9月30日から10月5日までアルゼンチン共和国の首都,ブエノス・アイレスで開催された.日本からの直行便はないので,アメリカ経由で参加した.利用する航空会社によりニューヨーク,ダラス,ヒューストンでの乗り換えが必要である.所要時間は乗り換えを入れて26時間程度で,私の場合はヒューストンで8時間の乗り換え時間があり,約30時間かかった.地球の反対側にあるので当然だが,交通の便がいいとは言いがたい.

 ヒューストンを出発すると,アンデス山脈上空を通過してアルゼンチンに到着したが,着陸直前には広大に広がるパンパ(ブエノス・アイレスから内陸に広がる大草原)が見渡せ,その広さには驚いた.空からの玄関口はエセイサ国際空港で,市街地までは車で30分程度であり,レミースというハイヤーや通常のタクシー,バスなどが利用できる.ブエノス・アイレスは,ラ・プラタ川のほとりにある港町で,市街地に入るとヨーロッパ風の町並みが広がる.学会参加者が多く泊まった市街地はカサ・ロサーダ(大統領府)とサン・マルティン広場の周囲で,モンセラート地区,サン・ニコラス地区にある(図1).日本との時差はちょうど12時間,昼夜がまったく反対で朝8時に電話をすると日本では夜8時なので,真夜中に電話をしてしまう心配はない.電話も携帯電話は電波状態が悪く通じにくいと聞いていたが,ホテルの電話はまったく問題なく通じた.

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あとがき

著者: 塩原哲夫

ページ範囲:P.174 - P.174

 “強いばかりが男じゃないよ”とは昭和30年代の流行歌の歌詞である.しかし,かつてそんな時代があったとは信じられないほど,今,男性に求められているのは“やさしさ”ばかりである.しかし本当に“やさしく”なるためには“強さ”が必要であり,“強さ”の裏付けのない“やさしさ”は“弱さ”でしかない.

 昔,ある若手医師が医局のカンファレンスで,端から見ていても気の毒なほどの叱責を受けたことがあった.あまりに可哀想に思い同情の声をかけたところ,「僕のことを想って言ってくれたのだから」との答えが返ってきた時には,驚くとともに彼はきっと将来大人物になると確信した.これはH教授の若き日の姿である.昔はこのようなやり方で若い人を鍛え,人は強くなっていったように思う.ところが,今は“やさしさ”を求める声に負け,表面上の“やさしさ”のポーズを取りたがる人が多い.本当にその人のことを思えば叱責しなければならない場面で,やさしい言葉をかけてしまえば,その人は“やさしさ”のみを要求する人になってしまう.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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