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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科62巻3号

2008年03月発行

雑誌目次

連載 Clinical Exercise・7

Q 考えられる疾患は何か?

著者: 狩野葉子

ページ範囲:P.179 - P.180

症例

患 者:10歳,女児

主 訴:顔面・頸部を除くほぼ全身の皮疹

既往歴:特記すべきことなし.

家族歴:特記すべきことなし.

現病歴:追い炊き湯に入浴した数日後より,大腿部に皮疹が出現し,急激に体幹にも増加してきた.近医でステロイド外用薬を処方されたが,拡大傾向を示したため,当科を受診した.同時に入浴した祖母にも,同様の皮疹が体幹に出現したという.

現 症:体幹・臀部・下肢を中心に,米粒大~大豆大の紅色の毛包性丘疹が多発散在して認められ,一部は中心に膿疱を伴っている.腰部では個疹は擦過部に一致して配列している.発熱はなく,全身状態は良好である.

今月の症例

多彩な神経症状を伴った節外性NK/T細胞リンパ腫の1例

著者: 藤山俊晴 ,   東芝輝臣 ,   八木宏明 ,   橋爪秀夫

ページ範囲:P.183 - P.186

要約 70歳,女性.既往歴に尋常性天疱瘡があり,プレドニゾロン内服中である.2002年11月より鼻閉感,2003年4月より下腿に浸潤性紅斑が出現し,一部は潰瘍化した.同時に,瞳孔の左右不同,右顔面の知覚鈍麻,左下垂足などの多彩な神経症状がみられた.皮疹部の病理組織では,血管中心性に密に異型性のある小円形細胞が浸潤していた.浸潤細胞の90%はCD56陽性,granzyme B陽性,70%はEBV small encoded RNA陽性で,節外性NK/T細胞リンパ腫と診断した.脳脊髄液中から腫瘍細胞が検出されたが,画像学的には中枢神経系における腫瘤病変は確認できなかった.本疾患で末梢神経障害を示唆する多彩な症状を呈することは稀である.

症例報告

Hairy cell leukemia患者に生じたneutrophilic dermatosisの1例

著者: 成田千佐子 ,   服部英子 ,   有川順子 ,   檜垣祐子 ,   川島眞 ,   寺村正尚 ,   泉二登志子

ページ範囲:P.188 - P.191

要約 58歳,男性.1年前にHairy cell leukemiaを発症し,化学療法後の経過観察中であった.初診の1週間前より38℃台の発熱とともに,頭部,顔面,項部に圧痛を伴う紅斑が出現し,上肢へ拡大した.紅斑の病理組織像は,真皮上層の浮腫と,血管,付属器周囲の好中球主体の細胞浸潤であった.抗生剤の点滴投与のみで皮疹は軽快し解熱した.その後,原病による汎血球減少の進行に対しG-CSFを3日間投与したところ,手背,上肢に紅色丘疹が出現した.病理組織学的には,真皮血管周囲への好中球主体の細胞浸潤を認めた.2回のエピソードはおのおの感染症を契機に産生誘導された内因性G-CSFと,G-CSF投与による外因性G-CSFがその発症に関与したneutrophilic dermatosisと考えた.

タクロリムス軟膏が有効であったamyopathic dermatomyositisの1例

著者: 磯貝理恵子 ,   南幸 ,   川原繁 ,   川田暁

ページ範囲:P.192 - P.195

要約 50歳,女性.初診の6か月前より顔面・体幹・四肢にかゆみのある紅斑が出現し,徐々に拡大した.顔面に左右対称性に浸潤のある暗紫色の紅斑がみられ,両手指関節背には,Gottron徴候と爪上皮出血点があり,背部にはかゆみを伴う浮腫性紅斑を認めた.軽度の倦怠感と手関節痛を訴えた.顔面の紅斑の生検組織像では,基底層の液状変性があった.筋力低下はなく,筋原性酵素も正常であった.特徴的な皮膚症状から,amyopathic dermatomyositisと診断した.悪性腫瘍や間質性肺炎の合併はなかった.タクロリムス軟膏の塗布により顔面の皮疹は軽快したが,体幹の皮疹には無効であった.

尋常性乾癬を合併した全身性エリテマトーデスの1例

著者: 鈴木智子 ,   荒川智佳子 ,   渋谷佳直 ,   水谷陽子 ,   清島真理子

ページ範囲:P.196 - P.199

要約 30歳,男性.1か月前より頭皮の厚い銀白色の鱗屑を伴う紅斑,顔面の紅斑,微熱,関節痛が出現した.病理組織学的所見と抗核抗体,抗DNA抗体,抗Sm抗体,抗SS-A/Ro抗体陽性,頰部の蝶形紅斑,肘,膝を中心とした関節炎,脱毛,口腔潰瘍から全身性エリテマトーデス(SLE)と診断した.頭皮の皮疹は尋常性乾癬と考えた.ステロイド内服,ステロイドパルス,シクロスポリン(CyA)内服でSLE症状および乾癬皮疹は軽快し,各種抗体も陰性化した.しかし,ステロイドを中止し,CyAを減量したところ,四肢,体幹に乾癬の皮疹が再発した.CyAの増量により皮疹は軽快している.SLEと尋常性乾癬がほぼ同時期に発症し,治療により抗体は陰性化し,症状も消失した後に尋常性乾癬が再燃した点から,興味深い経過と考えた.

新生児ループスエリテマトーデスの1例

著者: 岩佐智子 ,   貞政裕子 ,   吉池高志

ページ範囲:P.200 - P.202

要約 症例1:1か月,女児.生後2週より顔面部,上腕部に環状紅斑が出現した.皮膚生検で表皮基底細胞層の液状変性を認め,LBT陽性,抗核抗体640倍と陽性,抗Ro/SS-A抗体110.8index,抗La/SS-B抗体25.9indexと高値を示し,定型的な新生児ループスエリテマトーデスと診断した.症例2:25歳,女性(症例1の母親).抗核抗体1,280倍と陽性,抗Ro/SS-A抗体112.7index,抗La/SS-B抗体148.7indexと高値であるものの,無症候であった.その後,患児については生後7か月までに皮疹が消退し,抗核抗体も陰転化したが,患児が11か月時,母親の両下腿に紫斑が出現し,白血球数減少,血沈亢進,抗DNA抗体の陽転化,尿蛋白陽性所見を示し,SLEと診断した.

両手に生じた浮腫結合性肉芽腫症の1例

著者: 新見佳保里 ,   山中正義 ,   永井弥生 ,   石川治

ページ範囲:P.203 - P.206

要約 40歳,女性.初診の約8年前より手湿疹を繰り返していた.2年前より左手の腫脹が出現,蜂窩織炎として治療を受け改善したが,腫脹は残存していた.1年前より右手背も同様に腫脹し,次第に増悪した.初診時,左右の手指から手背にかけてびまん性に腫脹し,軽度の発赤を伴っていた.生検組織像では,真皮から脂肪織にかけての線維化と浮腫があり,巣状の細胞浸潤および類上皮細胞性肉芽腫がみられた.トラニラスト内服は無効であり,プレドニゾロン20mg/日投与したところ,腫脹は改善した.本症は慢性持続性に腫脹を繰り返す限局性の浮腫性肉芽腫性病変で,肉芽腫性口唇炎・眼瞼炎などを包括する疾患概念である.顔面以外の発生は非常に稀であり,文献的検討を加え報告した.

孤立性の丘疹を呈し,トラニラスト内服が奏効した好酸球性膿疱性毛包炎の1例

著者: 藤井弘子 ,   松村由美 ,   宮地良樹

ページ範囲:P.207 - P.209

要約 30歳台,女性.1か月来続く,かゆみの強い顔面の丘疹を主訴に来院した.顔面播種状粟粒性狼瘡あるいは炎症性痤瘡を疑ってミノサイクリンを投与したが,効果はなかった.生検と同時にトラニラスト内服を開始したところ,1週間後に皮疹は著明に改善した.病理組織では表皮から真皮全層にかけて著明な好酸球浸潤を認め,毛包・脂腺系へも好酸球が浸潤していた.好酸球性膿疱性毛包炎と診断し,インドメタシン投与を追加したが,腹痛のため3日間で中止した.トラニラストのみを1か月間内服したところ,寛解に至った.その後も再燃時にトラニラストを内服して症状が軽快した.

出産後に増悪した疱疹状膿痂疹の1例

著者: 大坪紗和 ,   飯塚一 ,   加藤直樹

ページ範囲:P.210 - P.212

要約 27歳,女性.初産婦.妊娠35週頃から頸部および両肩に掻痒を伴う紅斑が出現し,徐々に拡大し,ほぼ全身の連圏状紅斑,辺縁に存在する膿疱となった.臨床像から疱疹状膿痂疹を疑った.ステロイド外用にて経過をみていたが,出産後,発熱とともに皮疹が急激に増悪した.皮膚生検では角層下膿疱とKogoj海綿状膿疱を認めた.プレドニゾロン内服20mg/日から治療開始し,皮疹は約2週間で消退した.プレドニゾロン内服終了後も紅斑の増悪,軽快はみられるが,膿疱,発熱の出現はない.

シクロスポリンAが奏効した小児毛孔性紅色粃糠疹の1例

著者: 赤木愛 ,   谷岡未樹 ,   高橋健造 ,   大桑隆 ,   宮地良樹

ページ範囲:P.213 - P.216

要約 3歳,女児.1歳の頃より手足や膝に角化性丘疹が出現し,小児毛孔性紅色粃糠疹と診断された.9歳頃より手足の過角化と亀裂,痛みの増悪がみられたため,カルシポトリオールやステロイドの外用,イソトレチネートの外用などを試みたが増悪・寛解を繰り返した.15歳時に角化性の紅斑が四肢近位側や体幹へも広がり,紅皮症への移行と考えられた.シクロスポリンAの内服を3mg/kg/日より開始したところ,皮疹は劇的に軽快した.さまざまな治療に抵抗性のある小児毛孔性紅色粃糠疹に対して,シクロスポリンAは選択肢の1つになると考えた.

汎発疹を伴った掌蹠膿疱症の1例

著者: 大久保倫代 ,   藤田優 ,   上原敏敬 ,   西内徹

ページ範囲:P.217 - P.219

要約 45歳,男性.初診の2年前より掌蹠に紅斑・小水疱が出現し,軽快・増悪を繰り返していた.2か月前より皮疹が増悪し,発熱,全身の散発性膿疱,副鼻腔炎が出現した.近医で抗生剤投与を受けたが著効しないため,当科を受診した.初診時,掌蹠を含むほぼ全身に膿疱・丘疹が多発し,微熱を伴っていた.病理組織像は表皮内膿疱で,胸部では角層下膿疱に加えて真皮上~中層に著明な好中球浸潤がみられた.掌蹠膿疱症の汎発化と考え,ネオーラル (R)投与で軽快した.その後二度,手掌の膿疱が再燃し,そのつどネオーラル (R)内服により軽快した.経過中,咽頭より溶連菌が検出された.ASOの上昇はなかった.

眼窩先端部症候群を伴った眼部帯状疱疹の1例

著者: 青田典子 ,   平原和久 ,   早川和人 ,   塩原哲夫 ,   工藤かんな

ページ範囲:P.220 - P.223

要約 80歳,男性.初診の2週間前より右側頭部痛を自覚した.その1週間後より右眼痛が出現し,さらに2日後より右眼周囲から浮腫性紅斑,小水疱が出現した.帯状疱疹の診断にて,アシクロビルの点滴投与を行い,皮疹は軽快した.しかし,入院時より認めていた眼瞼下垂に加えて,全方向性の眼球運動障害と急激な視力低下をきたし,第Ⅱ~Ⅵ脳神経障害の存在が明らかとなり,眼窩先端部症候群と診断した.プレドニゾロン30mgの投与を行い,約6週間後に軽快した.眼部帯状疱疹に伴って急激な視力低下,眼痛,眼瞼下垂などがみられた場合は,脳神経障害に基づく重大な眼合併症の徴候の可能性があり,眼科医と連携して早急に対処する必要がある.

東京都多摩地区で発生した恙虫病の2例

著者: 堀田隆之 ,   満山陽子 ,   浅野祐介 ,   早川和人 ,   狩野葉子 ,   塩原哲夫

ページ範囲:P.224 - P.227

要約 症例1:61歳,男性.症例2:71歳,男性.いずれも東京都多摩地区の雑木林,山中で刺咬を受けたと思われ,発熱,全身の皮疹,刺し口を認め,間接蛍光抗体(IF)法所見と併せ恙虫病と診断した.東京都で最近6年間に届出された恙虫病のほとんどは,島嶼を除くと23区内では他県や外国での感染であり,多摩地区においては全例地元での感染であった.これはいまだに,ツツガムシや宿主の野鼠の生息が十分可能な土壌が残っていることを示している.最近は刺し口を認めない新型も報告されており,届出の少なさを考えると,実際にはその一部は見逃されている可能性もある.また,2例中1例の感染株は,IF法でKuroki型の可能性が考えられた.恙虫病の確定診断は,IF法がその一助となるが,感染株の決定は困難なことも多い.最近はPCR法なども有用であり,感染後の時期に応じて使い分けていく必要があると考えられた.

胃切除とアルコール多飲が誘因と考えられたペラグラの1例

著者: 小川恩 ,   濱崎洋一郎 ,   古谷野さとみ ,   籏持淳 ,   山﨑雙次

ページ範囲:P.228 - P.230

要約 65歳,男性.11年前に胃癌のため胃2/3部分切除を受けた.約半年前より多量飲酒(日本酒4合/日)をしていた.1か月前より両手背,手指背に比較的境界明瞭な鱗屑と亀裂を伴う,かゆみのない暗紫紅色の浮腫性紅斑が出現した.また,口腔内びらんと味覚鈍麻,食欲不振を認めた.手背部の皮膚生検で軽度の過角化,表皮肥厚,血管周囲性のリンパ球浸潤がみられた.血中ニコチン酸値は4.3μg/dlと低値で,ニコチン酸,ビタミンB群内服により皮疹は軽快した.

明らかな誘因なく発症したコレステロール結晶塞栓症の1例

著者: 大内健嗣 ,   吉田哲也 ,   杉浦丹

ページ範囲:P.231 - P.233

要約 67歳,女性.初診の1週間前から,誘因なく右足に疼痛を伴う網状紅斑が出現し,腎機能の増悪を伴った.皮膚生検にて細小動脈に針状の塞栓像を認めた.アルプロスタジル(パルクス (R))およびオルメサルタンメドキソミル(オルメテック (R))の投与で有痛性紅斑は消退し,腎機能も改善した.シンバスタチン(リポバス (R))の併用により,皮膚症状および腎機能ともにコントロールすることができた.コレステロール結晶塞栓症は,各症例に応じてさまざまな治療が施されているが,プロスタグランディン製剤を中心とした治療は,軽症例へのよい適応になると考えられた.

Trichoblastomaの1例

著者: 山口美由紀 ,   出口順啓 ,   原田和俊 ,   岩本拓 ,   島田眞路

ページ範囲:P.234 - P.236

要約 72歳,女性.1年前より右鼻翼部に小結節が出現し,徐々に増大してきた.右鼻翼に10×8mmのドーム状に隆起する淡紅色の小結節を認め,ダーモスコープでは著明に血管が拡張していた.基底細胞癌,trichoblastomaが疑われた.病理組織学的に腫瘍は左右対称性で,構成している細胞は一様で分裂像もなく,毛包・毛乳頭への分化も認めた.さらに,免疫組織化学染色で腫瘍巣内にサイトケラチン20陽性のMerkel細胞が散在しており,trichoblastomaと診断した.臨床像や病理組織学的にtrichoblastomaは基底細胞癌との鑑別が困難な場合があるが,抗サイトケラチン20抗体によるMerkel細胞の免疫組織化学染色は両者の鑑別に有用である.

Nanta骨性母斑の3例

著者: 小林憲 ,   伊藤尚子 ,   原田敬之 ,   田中勝 ,   相羽元彦

ページ範囲:P.237 - P.240

要約 症例1:34歳,男性.20年来,左鼻翼に半球状黒色結節がみられた.症例2:68歳,女性.40歳台より,右前額部に半球状常色結節が生じた.症例3:48歳,女性.出生時からの左頰部半球状黒色結節を認めた.いずれもダーモスコピー上でglobular patternを示した.病理組織学的所見はいずれも真皮内母斑で,中央に脂肪組織を伴う骨形成があり,骨組織に近接して毛包脂腺がみられた.1例に表皮囊腫様構造を認めたが,炎症性細胞浸潤や異物肉芽腫などはなかった.続発性骨形成を伴うNanta骨性母斑と診断した.

機械的刺激部位に悪性腫瘍が多発した疣贅状表皮発育異常症の1例

著者: 玉城裕妃子 ,   神戸直智 ,   藤澤章弘 ,   松村由美 ,   是枝哲 ,   立花隆夫 ,   宮地良樹 ,   鄭淑雲 ,   安立あゆみ

ページ範囲:P.241 - P.244

要約 52歳,男性.両親がいとこ結婚.2~3歳時に,前額部に扁平疣贅様の皮疹および小指頭大の紅斑が出現し,顔面,四肢,体幹へと拡大した.27歳時に当科にて下腹部の基底細胞癌の切除を受け,同時に施行した紅斑部の皮膚生検の結果,顆粒層および有棘層に特有な澄明変性細胞がみられ,疣贅状表皮発育異常症と診断した.その後,患者は再診せず25年が経過した.52歳時に,外陰部の潰瘍を伴う出血性赤色腫瘤および体幹に多発する黒色結節を主訴に当科を再診した.露光部では25年前とほぼ同じ状態である一方,非露光部に有棘細胞癌と基底細胞癌が多発していた.靴下や下着などが擦れる部位に癌化を認めたことから,本症で非露光部に悪性腫瘍が多発する原因として,持続する慢性的な機械的刺激の関与が大きいのではないかと考えた.

皮膚生検後自然消退したprimary cutaneous anaplastic large cell lymphomaの1例

著者: 伊藤志保 ,   向野哲 ,   金子聡 ,   饗場伸作 ,   向井秀樹 ,   戸田陽子 ,   長谷川直樹 ,   高野晃

ページ範囲:P.245 - P.248

要約 66歳,女性.約1か月前より,左耳下部に結節が出現し,急速に増大してきた.初診時,左耳下部に直径2.3cm大の境界明瞭な腫瘤を認めた.病理組織像では真皮全層に腫瘍細胞が増殖し,免疫組織染色にてCD30を発現していた.全身検索で皮膚以外に病変は認めず,primary cutaneous anaplastic large cell lymphomaと診断した.腫瘤は生検後に退縮しはじめ,約3か月間でわずかに硬結を触れる程度となった.この時期での組織検索では,CD30陽性の腫瘍細胞を認めなかった.腫瘤は自然消退し,現在まで再発はない.自験例のような孤立型のタイプは一般的に予後が良いとされているが,報告例では予後不良例もあり,注意深い経過観察が必要である.

治療

表皮ターンオーバーの促進に基づく色素沈着の改善―アデノシン一リン酸二ナトリウムの肝斑に対する臨床効果

著者: 川島眞 ,   水野惇子 ,   村田恭子

ページ範囲:P.250 - P.257

要約 アデノシン一リン酸二ナトリウム(disodium adenosine monophosphate:AMP2Na)が表皮ターンオーバー(turnover:TO)促進効果を介して,加齢に伴い表皮に滞留しやすくなっているメラニンの排泄を促すとの新作用機序を証明すべく,肝斑を主訴とする27~60歳(平均年齢43.6歳)の女性27例にAMP2Naを3%配合した乳液を1日2回,16週間継続使用させた.表皮TO速度の指標となる角層細胞面積は,使用16週後には使用前と比較して有意に縮小した.皮膚の明るさの指標である皮膚明度L値は,使用16週後には使用前に比べて有意に上昇した.また,医師の判定による全般改善度は,使用16週後において「やや改善」以上が92.3%(24/26)であった.以上より,AMP2Naを3%配合した乳液が表皮TO促進効果を介して表皮に滞留したメラニンを排泄する新しい作用機序により,色素沈着を改善することが示された.

書評

―著:徳田安春,岸本暢将,森 雅紀―メディカルポケットカード プライマリケア

著者: 岩田健太郎

ページ範囲:P.195 - P.195

 アメリカの研修医はアンチョコが大好きである.サンフォードガイドやワシントンマニュアルに代表されるマニュアル類.VINDICATE-P,CAGE,PECOといったアクロニム(頭字語).「A型肝炎だけが,ウイルス性肝炎でspiking feverを起こす」,なんていう含蓄に満ちたメディカルパール(箴言).そしてpalm pilotなどのPDA.アメリカの研修医のポケットにはたくさんの知識の元が詰まっている.

 ポケットカードも,彼らのお気に入りの一つである.一枚のカード,表裏にびっしりと情報.その科をローテートしているときにポケットに携えておけば,パッと取り出してさっと読める.破れないし,濡れても大丈夫.ちょっと長めで,少しポケットからはみ出すくらいの方が取り出しやすい.

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あとがき

著者: 瀧川雅浩

ページ範囲:P.262 - P.262

 動物園の起源を調べると(homepage3.nifty.com/zooedu/czoo3.html),紀元前数世紀には,中国,エジプトで大掛かりな動物飼育場があったことが確認されている.一方,近代動物園のスタートは1828年にロンドン動物学協会が設立したロンドン動物園である. 珍しい動物を見るという体験や知的好奇心から,さらに進んで,人間と動物との関係はどうあるべきかを模索するなかで誕生したと考えられている.その後,欧米では,幼い子どもたちのイベントが催され,動物たちと接触できる場所として,各国に「子ども動物園」が生まれた. というわけで,小さい頃から動物,特に野獣類が好きで,小学校のとき,神戸から名古屋の東山動物園にインドサイを見に行った記憶がある.頭の中で野生の姿を思い浮かべながら眺めたわけである.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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