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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科62巻4号

2008年04月発行

雑誌目次

連載 Clinical Exercise・8

Q考えられる疾患は何か?

著者: 福屋泰子

ページ範囲:P.267 - P.268

症例

患 者:53歳,男性.

主 訴:両下肢の紫斑,浮腫,しびれ感

既往歴:20年前より慢性B型肝炎,15年前より高血圧,2年前より気管支喘息

家族歴:父に脳血管障害,兄に高血圧

現病歴:初診の1週間前より両下肢に紫斑,浮腫,しびれ感が出現したため当科を受診した.

現 症:両下肢全体に著明な浮腫を認め,大小の紫斑が多発,融合し,一部では大豆大の水疱を伴っていた.手背にも著明な浮腫を認め,左手背では大豆大の紫斑を認めた.下腿外側では温痛覚,触覚が低下していた.

今月の症例

右内顆に有棘細胞癌を伴った色素性乾皮症D群の1例

著者: 塚原掌子 ,   籏持淳 ,   濱崎洋一郎 ,   山﨑雙次 ,   森脇真一

ページ範囲:P.270 - P.272

要約 57歳,男性.家族に同症および血族結婚はない.小児期より顔面,手背に雀卵斑様の色素斑を認めていた.初診の1年前より右内顆に潰瘍が出現した.初診時,右内顆に表面潰瘍を呈する鶏卵大の結節と,顔面,両手背から前腕にかけてびまん性に小色素斑を認めた.右内顆の結節は病理組織学的に有棘細胞癌と診断した.皮膚光線テストでMEDは正常であった.患者細胞の紫外線照射後の不定期DNA合成能は正常の58%を示した.相補正試験で色素性乾皮症D群遺伝子を発現するベクターを導入時のみDNA修復能が回復した.これらの所見により,色素性乾皮症D群と診断した.

症例報告

局所性寒冷蕁麻疹の2例

著者: 水谷陽子 ,   荒川智佳子 ,   渋谷佳直 ,   清島真理子 ,   種田靖久

ページ範囲:P.274 - P.277

 症例1:10歳,女児.2006年8月,海水浴後,膨疹が出現した.症例2:67歳,女性.2007年1月から寒風曝露後に両耳垂の紅斑・腫脹が出現した.両者ともice cube test陽性であり,局所性寒冷蕁麻疹と診断した.症例1では誘発温度の測定も行い,9℃で膨疹が誘発された.治療は2例ともエバスチン内服を行い,症例1では減感作療法も行っている.なお,2例とも冷水負荷直後の血漿ヒスタミン濃度は負荷前と有意な差はなかった.冷水負荷後に経時的な血漿ヒスタミン濃度の検討が必要と思われた.

サイトメガロウイルスによる消化管出血をきたした薬剤性過敏症症候群の1例

著者: 何川宇啓 ,   浅野祐介 ,   福田知雄 ,   狩野葉子 ,   塩原哲夫

ページ範囲:P.278 - P.281

要約 81歳,男性.アロプリノール(アロシトール®)内服32日目に発熱と紅斑が出現した.発症26日目に全血からヒト6型ヘルペスウイルスDNAを検出し,薬剤性過敏症症候群と診断した.ステロイドの全身投与をせずに免疫グロブリン製剤のみで加療したが,発症30日目に突然,消化管潰瘍から大量出血を生じ,内視鏡下クリッピング術と輸血を施行した.同時期に生じた皮膚潰瘍の生検組織よりサイトメガロウイルス(CMV)抗原が検出され,CMV抗原血症も認めたため,CMV感染症と考え,ガンシクロビルを投与した.臨床症状と発症時期よりCMV再活性化が予測され,速やかな検査で確認できた.CMVによる胃十二指腸潰瘍はしばしば致命的であり,早期の診断,治療が必須である.

レボフロキサシン(クラビット®)により麻痺性イレウスと薬疹を生じた1例

著者: 鶴見純也 ,   伊藤幸恵 ,   小田佐智子 ,   沖田博 ,   濱崎洋一郎 ,   籏持淳 ,   山﨑雙次

ページ範囲:P.282 - P.284

要約 53歳,男性.前立腺炎のため,レボフロキサシン(クラビット®),メフェナム酸(ポンタール®)を約5年前よりたびたび内服していた.5日前より腹痛と体幹に紅斑が出現した.軽度の発熱を伴い,徐々に紅斑が四肢に拡大した.播種性紅斑丘疹型薬疹を疑い,レボフロキサシン,メフェナム酸を中止し,プレドニゾロン投与で皮疹は消退した.レボフロキサシン,メフェナム酸のパッチテストとDLSTは陰性であったが,レボフロキサシンの内服テストで腹痛,偽腸閉塞症状とともに全身に紅斑が誘発された.メフェナム酸の内服テストは陰性であった.レボフロキサシンは,副作用として腸閉塞,偽膜性腸炎などの消化器症状を呈することがあるが,薬疹と同時に消化器症状を生じた報告例はない.

9歳の女児に発症したerythema nodosum migrans

著者: 川村哲也 ,   龍野一樹 ,   八木宏明

ページ範囲:P.285 - P.288

要約 9歳,女児.6週前に,右下腿前面に紅色の結節が出現し,その後中央が消退し,遠心性に拡大した.初診時の皮疹は,10~20mm幅の強い浸潤を伴う環状紅斑で,径は90×60mmであった.局所熱感を伴うが,圧痛はなかった.病理組織学的には皮下脂肪織隔壁が肥厚し,隔壁から近接脂肪小葉にリンパ球や組織球が浸潤し,肉芽腫様構造を呈した.皮膚組織培養から,一般細菌・真菌・抗酸菌は検出されなかった.全身状態は良好で,血液検査所見に異常はなかった.erythema nodosum migrans (ENM)と診断し,アモキシシリンを投与したところ,約2か月で消退した.投薬中止後6か月間,再燃はない.病勢に応じて病変部の多毛が著明であった.小児のENMはきわめて稀である.

アナフィラクトイド紫斑の経過中に膵癌が発見された1例

著者: 宮本真由美 ,   石川牧子 ,   本田えり子 ,   十一英子

ページ範囲:P.289 - P.292

要約 58歳,男性.膵仮性囊胞内感染,膵炎再発を疑われ,2005年7月に当院消化器科へ入院.9月初旬,両足関節部から足背に掻痒のある紅色丘疹が出現し,当科を受診した.1週間後,皮疹は両下腿に拡大し,浸潤を触れる紫斑が出現したため,アナフィラクトイド紫斑(以下,AP)を疑い,生検を施行した.病理所見では真皮浅層の血管周囲に好中球の浸潤,核塵,赤血球の漏出,フィブリンの沈着があり,leukocytoclastic vasculitisを呈しており,蛍光抗体直接法では血管周囲にIgAの沈着を認めたため,APと診断した.止血剤投与,下肢安静で経過観察中に膵癌(malignant spindle cell tumor)が発見された.経過中に下血,腎機能障害が出現したため,PSL30mg/日を開始し,下血の消失,腎機能改善,皮疹の消退を認めた.悪性腫瘍がAPの発症に関与したparaneoplastic vasculitisであった可能性が考えられた.

骨髄線維症を合併した骨髄異形成症候群にみられた皮下髄外造血の1例

著者: 児玉真紀子 ,   福井利光 ,   渡辺大輔 ,   玉田康彦 ,   松本義也

ページ範囲:P.293 - P.295

要約 85歳,男性.2006年より骨髄線維症を合併した骨髄異形成症候群と診断され,頻回の輸血とステロイド内服にて加療されていた.同年11月,左上腕に皮下結節が出現した.皮膚生検にて皮下脂肪織内に密な細胞浸潤がみられ,浸潤細胞は顆粒球系細胞,巨核球系細胞,赤芽球系細胞の3系統の造血細胞から構成され,髄外造血と診断した.その後,基礎疾患の治療を継続していたが,汎血球減少が進行し,約1か月で永眠した.

日光曝露により皮疹の増悪を認めた新生児エリテマトーデスの1例

著者: 清水愛 ,   山本敬三

ページ範囲:P.296 - P.298

要約 日齢29日,男児.日齢15日頃より顔面・体幹・足底に環状紅斑が多発した.母は無症候であった.患児・母ともに抗核抗体・抗SS-A抗体・抗SS-B抗体陽性であった.患児は心ブロックを認めなかった.顔面・体幹の紅斑は日齢とともに徐々に消退した.顔面の紅斑は日光曝露後一時的に増悪したが,日齢200日頃にはほぼ消退し,自己抗体も日齢とともに減少した.新生児エリテマトーデスの皮疹に対しても日光が増悪因子となることが示された.

経過中に血栓性血小板減少性紫斑病を併発した全身性強皮症と皮膚筋炎の合併例

著者: 藤沢智美 ,   清島真理子 ,   伸健浩

ページ範囲:P.299 - P.302

要約 43歳,女性.2003年1月,微熱,倦怠感,両手指の浮腫を自覚した.その2か月後,Raynaud症状,両手指から前腕の硬化,腫脹悪化,CK,KL-6の著明上昇,および胸部CTで間質性肺炎がみられた.全身性強皮症(SSc)と皮膚筋炎の合併と診断した.ステロイド全身投与により軽快し,症状は安定していた.2年後の2005年7月より下痢,嘔吐,9月には発熱,腹痛が出現した.破砕赤血球を認める溶血性貧血,血小板減少,急性腎不全,不穏症状,ADAMTS13活性低下により,血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)と診断した.血漿交換,透析を行い救命し得た.TTPは,膠原病では全身性エリテマトーデスとSScの合併が多いが,SScと皮膚筋炎合併例での報告は稀である.TTPは治療開始が遅れると致死的であり,ADAMTS13活性測定を含めた早期の診断が必要である.

ナローバンドUVB照射とステロイド外用が奏効した角層下膿疱症の1例

著者: 間山淳 ,   竹本啓伸 ,   原田研

ページ範囲:P.303 - P.305

要約 58歳,女性.2年前から軀幹の間擦部に紅斑が出没していた.紅斑辺縁部に小膿疱が配列し,皮膚生検により角層下膿疱症と診断した.ジアフェニルスルホン内服とステロイド外用で皮疹の著明改善をみたが,肝機能障害が出現したため,中止した.皮疹が再び増悪したため,ナローバンドUVB照射を開始したところ,皮疹は鱗屑を残し軽快した.本症に対するナローバンドUVB照射の報告は少ないが有効と考えられ,今後試みるべき治療の1つと考える.

頭部の脂漏性皮膚炎様皮疹を初発症状とした落葉状天疱瘡の1例

著者: 芦川大介 ,   町田秀樹

ページ範囲:P.306 - P.308

要約 67歳,男性.左前頭部にやや痛みを伴う落屑性紅斑が出現した.臨床および病理所見から脂漏性皮膚炎または整髪料による接触皮膚炎と診断した.整髪料の中止と副腎皮質ステロイド薬の外用を行ったが,症状は悪化した.初診から10か月後,体幹に掻痒を伴う紅斑が出現し,その後,弛緩性水疱も伴った.病理組織学的所見,血中抗デスモグレイン1抗体が陽性であることより,頭部の皮疹も含めて落葉状天疱瘡と診断した.副腎皮質ステロイド内服を開始し,皮疹は速やかに軽快した.皮疹の範囲が限局し,かつ明らかな水疱を呈さない落葉状天疱瘡は,診断の確定までに長期間を要することがある.

舌蜂窩織炎の1例

著者: 森原潔 ,   黄原久美子 ,   岸本芳久 ,   渡邉大樹

ページ範囲:P.309 - P.312

要約 10歳,男児.2週間前から舌に痛みを自覚していた.頸部リンパ節腫脹とともに,舌全体が腫脹し潰瘍が出現してきたため,耳鼻科から紹介され,当科を受診した.生検では舌組織全体に好中球の著明な浸潤があり,グラム染色では連鎖球菌が舌組織内にみられた.血液検査上,好中球優位の白血球の上昇,抗ストレプトリジンOの上昇を認めた.以上から,溶血性連鎖球菌による舌蜂窩織炎と診断し,セフェム系抗生剤内服を投与した.1週間で舌の腫脹は略治したが,その1か月後に舌の腫脹が再燃してきた.丹毒に類似した経過をとった舌蜂窩織炎の興味深い症例と考え,報告する.

糖尿病患者にみられた黄色ブドウ球菌によるガス壊疽の1例

著者: 岩佐智子 ,   村松重典 ,   貞政裕子 ,   吉池高志

ページ範囲:P.313 - P.315

要約 51歳,女性.30歳時から糖尿病に罹患して治療を受けていた.閉塞性動脈硬化症も合併している.2005年10月14日,左下腿の外傷によって生じた遷延性潰瘍に対して植皮術を施行したところ,術後3日目より発熱と局所に軽度の疼痛を生じた.徐々に腫脹し握雪感を触知したため,X線像で確認したところ,皮下に帯状のガス像を認めた.ガス壊疽の診断のもと,デブリードマンを実施した.創部培養ではStaphylococcus aureusを検出した.本邦におけるガス壊疽の報告例をまとめ,その疫学,臨床像,合併症などについて,併せて考察した.

下腹部に発生した懸垂性eccrine poromaの1例

著者: 黄原久美子 ,   森原潔

ページ範囲:P.316 - P.318

要約 76歳,男性.約40年前に右下腹部に暗赤色の腫瘤が出現した.自覚症状がないため放置していたところ,徐々に増大し懸垂性となったため,来院した.右下腹部に25×19×12mmの懸垂性で暗赤色,弾性軟の腫瘤を認めた.基部は正常皮膚色で,幅1mm,長さ15mmであった.病理組織学的には,腫瘍は表皮と連続して真皮内に増殖していた.腫瘍細胞は核が好塩基性で正常の有棘細胞よりやや小型のいわゆるporoma cell で,異型性や核分裂像,メラニン色素はなかった.また,好酸性の胞体をもつcuticular cellを内壁とした管腔様構造も認められた.以上の所見から,eccrine poromaと診断した.本邦報告例で懸垂性を呈した症例は,過去20年間で調べえた限りでは自験例を含めて部位を問わず7例しかなく,稀と考えた.

乳頭状汗腺腫の1例

著者: 川崎洋 ,   清水智子 ,   甲田とも ,   山本奈緒 ,   海老原全

ページ範囲:P.319 - P.321

要約 39歳,女性.初診1週間前に左大陰唇に結節と圧痛を自覚した.初診時,左大陰唇に表面に小びらんを有する径1cm大で境界明瞭,下床との可動性良好な結節を認めた.病理組織像では,真皮内に,表皮との連続性を欠き多くの裂隙が複雑に入り組む境界明瞭な腫瘍塊がみられた.腫瘍細胞は,裂隙の内側を構成し断頭分泌像を呈する円柱状の細胞と,その外側に並ぶ小型で立方形の細胞の2種類よりなった.以上より,乳頭状汗腺腫と診断した.乳頭状汗腺腫は中年女性外陰部に好発する比較的稀な良性腫瘍である.約50年間の本邦報告例を検討し,本腫瘍の特徴について考察を加えた.

Deep penetrating dermatofibromaの2例

著者: 小谷はるみ ,   井上智子 ,   野村祥代 ,   早川あずさ ,   岸本三郎

ページ範囲:P.322 - P.325

要約 症例1:41歳,男性.38歳頃より下腹部に紅色結節が出現し,徐々に隆起してきた.症例2:48歳,女性.47歳頃より左胸部に紅色結節が出現し,徐々に増大した.いずれも近医にて隆起性皮膚線維肉腫(dermatofibrosarcoma protuberans:DFSP)を疑われ,当科に紹介された.ともに摘出標本の全体的組織像では真皮内に腫瘍巣が認められ,皮下組織内に楔状に浸潤していた.また,免疫学的染色ではFactorⅩⅢa陽性,CD34陰性であった.以上より,deep penetrating dermatofibroma(DPDF)と診断した.DPDFは皮膚線維腫(dermatofibroma)の亜型であり,腫瘍細胞が皮下組織内に深く浸潤しているのが特徴で,時にDFSPとの鑑別を要する.

頭部の植皮片に14年後に生じた表在型基底細胞癌の1例

著者: 齋藤京 ,   清水智子

ページ範囲:P.326 - P.329

要約 83歳,女性.1991年(69歳時)に頭頂部の充実型基底細胞癌(以下,BCC)を摘出し,鼠径部からの植皮にて再建した.2005年当科受診時,植皮部内の色素斑を認め,その後徐々に拡大した.摘出術を施行し,病理学的に表在型BCCを確認した.1991年の摘出術は十分な広さで,今回が再発である可能性は低く,植皮部内に新たにBCCが発生したと考えた.自験例には,①非露光部である鼠径部の皮膚を露光部である頭頂部に植皮したところ14年を経てBCCが発症し,②毛包のある頭皮に充実型が発症し,同じ場所で毛包のない植皮片に表在型が発症したという2つの着目点があり,BCC発症における紫外線の遺伝子障害作用の関与や増殖様式の特異性に関しても貴重な症例と考えた.

限界線照射部位に発生した基底細胞癌と神経鞘腫

著者: 緒方真貴子 ,   杉田和成 ,   島内隆寿 ,   椛島健治 ,   戸倉新樹

ページ範囲:P.330 - P.332

要約 73歳,男性.約40年前,足白癬で左足に限界線照射を3年間施行した.約20年前より,左第3~4趾間から足背にかけての黒褐色皮疹と,左第3趾の皮下結節を自覚していた.当科初診時,上記病変に加え,その周囲に多形皮膚萎縮を認めた.両病変とも全摘し,病理組織学的に検討し,黒褐色角化性局面は基底細胞癌,皮下結節は神経鞘腫と診断した.基底細胞癌の好発部位として趾間は稀な部位であり,多形皮膚萎縮を背景として出現していることより,限界線照射が原因であると考えた.神経鞘腫については,一般的に限界線誘発性腫瘍には属さないものの,基底細胞癌の近傍に同時期に発生しており,少なくとも限界線が誘因になったと考えた.

右鼠径リンパ節転移をみた原発不明Merkel細胞癌の1例

著者: 洞口由香 ,   前田文彦 ,   高橋和宏 ,   赤坂俊英

ページ範囲:P.334 - P.336

要約 82歳,男性.初診の3か月前,右鼠径部に腫瘤の出現を自覚した.リンパ節生検でMerkel細胞癌の右鼠径リンパ節転移と診断した.全身精査を行うも原発巣を発見できなかった.また,精査中に早期胃癌を発見した.自験例はリンパ節のみの腫瘍存在例であると同時に胃癌の合併例であった.リンパ節郭清術を行い,後療法として放射線療法を施行した.

治療

テルビナフィン製剤の爪白癬治療における爪中薬物濃度および臨床効果に関する検討

著者: 渡辺晋一

ページ範囲:P.339 - P.343

要約 テルビナフィン(TBF)内服患者の爪中薬物濃度と無効症例の関連性の検討ならびに先発医薬品と後発医薬品の比較を目的に,ラミシール ®錠125mgまたはネドリール ®錠125mgを1錠/日24週間投与したときの爪中TBF濃度と爪甲混濁比の改善度および安全性を検討した.試験薬は,被験者をラミシール ®投与群(L群)とネドリール ®投与群(N群)に無作為に割り付け投与した.安全性は全症例のL群25例,N群30例,爪中TBF濃度はL群22例,N群26例,改善度はL群22例,N群27例で解析を実施した.試験薬投与24週後の爪中TBF濃度の平均は,L群331.5pg/mg,N群291.4pg/mg,最終評価時の改善率はL群86.7%,N群77.8%,副作用発現率はL群28.0%,N群16.7%でいずれも投与群間に有意差はなかった.以上より,爪中のTBF濃度と有効性に関連性は認められなかったが,これは被験者数が少なかったためか,あるいは重症度など他の因子の関連が推察された.また,後発医薬品と先発医薬品で爪中薬物濃度と有効性に差のないことを確認した.

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あとがき

著者: 川島眞

ページ範囲:P.346 - P.346

 東京女子医科大学皮膚科教授に就任した直後の平成4年5月より16年間務めた本誌の編集委員を退任させていただくこととした.大学の定年とともに退くのが通常であり,体調が芳しくないということでもないので,他の編集委員からは疑問も発せられた.最大の理由は,まだ定年まで10年あり,このまま通算四半世紀以上も本誌の編集を担当することの「弊害」(老害に近いか?)が気になり始めたからである.

 編集委員としての最大の職務は論文査読であるが,審査はfairでなければならないのは当然である.もちろん自分の教室からの論文を審査することはないが,知人の関連する論文に甘くしてもならないし,その逆も許されない.また,論文を評価するには内容の理解が前提だが,そのためには自らの知識の確認あるいは新たな学習も必要となる.そうとわかっていても,長年編集委員を務めていると,fairを保つことにいろいろな雑音が入りこむ要素が増え,マンネリ化からか十分に深い査読を行うことが必ずしもできなくなってきたのが主な理由である.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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