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Derm.2008
新医師臨床研修制度の思わぬ影響
著者: 柴垣直孝1
所属機関: 1山梨大学大学院医学工学総合研究部皮膚科学講座
ページ範囲:P.50 - P.50
文献購入ページに移動 卒後新臨床研修制度が始まり3年が経過し,地方大学では皮膚科教室だけでなく他科教室への入局者が減少している.山梨県でも勤務医の医師不足は深刻で,その影響は日常診療にも及んでいる.私が4年前より週1日非常勤医として皮膚科診療にあたっている公立病院では,1年前よりついに病院内の全常勤医が4名にまで減少した結果,入院患者の受け入れ,当直体制が機能しなくなってしまい,存続の危機に立たされている.また,外来診療も私の担当曜日には内科医2名,外科医1名,脳外科医1名の常勤医のほか,小児科,眼科,泌尿器科,耳鼻科の非常勤医が勤務しているのみである.近くには大きな病院がないため,当然,日頃大学病院ではあまり遭遇しないような疾患の依頼や診療を行う機会が多くなる.ムカデ咬症,マダニ咬症,マムシ咬症,カミキリモドキによる水疱性皮膚炎,蜂刺症によるショック,重度の接触皮膚炎などは皮膚科領域であるので対応できるが,そのほかにも外傷による切創,交通事故による挫滅創,他科で手術した創部の処置,指の骨折,痛風,壊疽した指の切断依頼もあった.おかげでこの数年で臨床医(救急医?)としての腕はめきめきと上達し,外来患者数も徐々に増加している.また,患者さんともずいぶん親しくさせていただくようになった.大学を卒業して20年,長年研究畑を歩んできた私にとって,臨床医としてかつてないほど多様な患者さんを診察している今が,一番充実している.地方の勤務医不足は,私にとっては良い方向に働いているようである.同様の経験をされている先生もさぞ多いことと推察している.このように地方の皮膚科医は,専門領域を極めるだけでなく,診察する疾患の裾野を広げてゆくことも大切であると考えている.
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