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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科62巻5号

2008年04月発行

文献概要

Derm.2008

原典を読むことの重要性―Hypereosinophilic syndromeの診断基準を例として

著者: 乾重樹1

所属機関: 1大阪大学医学部皮膚・毛髪再生医学寄附講座

ページ範囲:P.61 - P.61

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 Hypereosinophilic syndrome(HES)の症例報告では,Chusidら1)のクライテリア,①末梢血中の好酸球数が1,500/μl以上の増加が6か月以上持続あるいは6か月以内に死亡,②寄生虫感染,アレルギー性疾患などの好酸球増加をきたす基礎疾患のエビデンスがない,③好酸球浸潤による症状や徴候(肝脾腫,基質性心雑音,うっ血性心不全,中枢神経異常,肺線維症,発熱,体重減少,貧血)の存在,が診断基準としてよく引用される.しかし,臓器障害が進展していく可能性がある疾患で,診断基準が満たされるのを確認するため1,500/μl以上の好酸球増多を6か月以上観察するというのは実際的ではない.多くの症例報告でも,この「6か月」は満たさなくてもよいとされる.では,どうしてこのような診断基準を設定したのだろう? そこでChusidらの原典を読んだところ,彼らはeosinophilic leukemiaなど他の診断名で報告されている過去の文献や彼ら自身の過去の症例のなかからHESとしてよい症例をretrospectiveに抽出した.上記クライテリアは,このretrospective studyへの組み入れ基準として記載されたものであり,実際の患者さんをprospectiveに診断するための基準,もしくはその後,診断基準として用いるべきものとして提唱されているわけではなかった.診断基準として採用されるようになったのは,Chusidらの報告の3年後,NIH(国立衛生研究所)からのHESのprospective study2)でこの基準が踏襲されてからと思われる.ただし,好酸球については,persistentな1,500/μl以上の増多を基準としているものの,「6か月」の区切りはない.近年では,異常Tリンパ球によるIL-5の過剰産生3)やFIP1L1-PDGFRαの融合遺伝子4)の関与が報告され,異常Tリンパ球,融合遺伝子の有無や骨髄所見などを組み合わせたフローチャートによる新たな分類も提唱されている5).原典を読むことの重要性を教えてくれる好例である(日本語の総説としては松村到:BIO Clinica22:628,2007が詳しい).

参考文献

1) Chusid MJ, et al:Medicine 54:1,1975
2) Parrillo JE, et al:Ann Intern Med 89:167,1978
3) Simon HU, et al:N Engl J Med 341:1112,1999
4) Cools J, et al:N Engl J Med 348:1201,2003
5) Gotlib J, et al:Blood 103:2879,2004

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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