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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科62巻5号

2008年04月発行

文献概要

Derm.2008

柿の葉

著者: 林伸和1

所属機関: 1東京女子医科大学皮膚科

ページ範囲:P.117 - P.117

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 先輩方から勧誘されて皮膚科医になって,すでに20年近くが経っている.今では新人を勧誘するようになって久しい.私が皮膚科医になった理由はいろいろある.一番印象に残っているのは,学生時代に皮膚科の研究会を手伝いに行き,その後に宴会で会食に参加したときのことである.東京は湯島天神の近くの,私の苗字と同じ名前の懐石料理の店であった.学生はいろいろな先生と接するようにとの配慮からか,私の前には北海道大学の大河原教授が座っておられた.大河原教授は,前菜の下に敷かれた柿の葉を見ながら,「柿の葉は,紅葉すると緑,赤,茶などの色が複雑に混じって,独特の風合いをもつようになる.二枚と同じものはなく,色は刻々と変化し,同じ状態を保存することもできない.その美しさは,自然のつくる芸術である.この色合いを理解するものに皮膚科医になってもらいたい」と,学生の私を相手に熱く語られた.

 皮膚科医の診断には,視診が大切であることは当然であり,色から得られる情報は多い.紅斑を伴う疾患では,色が病勢を察知する最も重要な因子になる.鮮紅色に始まり,紅色,暗紅色,赤褐色,褐色と日々変化する色が,症状や治療効果を判断する最大の根拠となる.同じ赤でも,扁平苔癬やDLEにみられる独特な灰赤色や紫赤色,固定薬疹の紅斑などは独特の色調から生検の必要性を判断する.メラニン色素に関係する疾患でも,太田母斑の青色や青黒色は真皮内メラノサイトーシスを反映し,老人性色素斑の褐色は表皮のメラニンであり,母斑細胞母斑や基底細胞癌の黒色は,真皮直下や基底層の多量のメラニンを反映している.褥瘡では,白色期,黄色期,赤色期,黒色期と色で潰瘍の深さや病期を表現し,色調から治療方針が決まってくる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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