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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科62巻5号

2008年04月発行

文献概要

Derm.2008

皮膚科の醍醐味

著者: 長谷川稔1

所属機関: 1金沢大学大学院医学系研究科皮膚科学教室

ページ範囲:P.142 - P.142

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 皮膚科医になって15年が過ぎますが,数ある診療科のなかで皮膚科を選択して本当に良かったと思います.血液検査,画像検査などますます検査が複雑化しているなかで,検査に頼らずとも,皮膚症状を診るだけで即時に大半の疾患を診断したり,治療することのできるのが皮膚科だと思います.皮膚科医は,特に診断能力が問われますが,これは勉強はもちろん大事ですが,その疾患を以前に診たことがあるかどうかという経験が何より大事になってきます.また,これまで診たことのなかった疾患を初めて診断したときは,非常に感慨深い気持ちになります.

 皮膚病変から内臓疾患を診断できた場合には,皮膚科の重要性を再認識させられます.今から10年くらい前ですが,頭の疣状丘疹を主訴に来られた方を診察する機会がありました.高齢男性でしたので,脂漏性角化症と説明して液体窒素療法をしようとしましたが,納得していただけません.何となく,顔面の肌が黒ずんでいるのも気になりましたので,全身を診せてもらいました.すると,腋窩,鼠径部などの間擦部や乳暈部に,特に強い色素沈着と角質増殖による皮野の著明化,乳頭状増殖がみられ,全身に色素沈着がみられました.悪性黒色表皮腫が頭に浮かびましたので,すぐに教科書で調べたところ,典型的な症状であり,間違いないと思われました.皮膚生検で確認する一方で,胃に腫瘍がある可能性が高いと説明し,すぐに内科で上部消化管内視鏡を受けていただいたところ,進行胃癌が発見されました.残念ながら,手術にもかかわらず患者様は間もなく亡くなられましたが,皮膚症状からすぐに胃癌を発見したことには驚いたらしく,最後までとても感謝されたことが印象的でした.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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