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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科62巻9号

2008年08月発行

雑誌目次

連載 Clinical Exercise・12

Q考えられる疾患は何か?

著者: 高橋健造

ページ範囲:P.605 - P.606

症例

患 者:1歳9か月の女児

家族歴:母親にアトピー性皮膚炎あり.血族婚ではない.

現病歴:出生前検診では異常は指摘されていない.2,440グラム,35週の早産にて出生.出生直後より全身の角質の肥厚と剝離と紅斑を認め(図1),体重増加不良・低体温・電解質異常などの成長障害を認め,NICU 管理となる.

現 症:1歳9か月時の女児(図2).コロジオン児として出生するが,成長とともに角化性紅斑は軽快し,顕著な紅斑は顔面や間擦部に限局するのみとなる.しかし頭髪が伸びず,切れ毛となる.

症例報告

コルヒチンが著効した遊走性結節性紅斑の1例

著者: 高宮加奈子 ,   馬場俊右 ,   荻野倫子 ,   小野寺英恵 ,   高橋和宏 ,   赤坂俊英

ページ範囲:P.608 - P.610

要約 30歳,男性.2007年6月初旬より右下腿に圧痛を伴う浸潤性紅斑が出現した.抗生剤,消炎鎮痛薬の投与と安静で治療したが,皮疹は改善せず,中心治癒傾向を伴いながら遠心性に拡大した.皮疹は片側性にみられ,通常の結節性紅斑よりも大型で特徴的な拡大傾向を示したことから,遊走性結節性紅斑と診断した.病理組織学的に真皮全層の血管周囲と脂肪隔壁に好中球およびリンパ球の浸潤がみられた.好中球の浸潤が優位であったことから,コルヒチンの好中球機能抑制効果を期待し,投与を開始した.皮疹は数日で速やかに消退し,著効と判断した.好中球浸潤が優位な症例ではコルヒチン投与が有用な治療の選択肢になりえると考えた.

骨髄線維症と早期胃癌に合併したSweet病の1例

著者: 西川深雪 ,   小西研史 ,   嶋田俊秀

ページ範囲:P.611 - P.613

要約 69歳,男性.2か月前から出現した両手の有痛性の紅斑を主訴に受診した.6年前に骨髄線維症と診断され,メテノロン内服により経過観察中であった.生検したところ,真皮表~中層に好中球浸潤を認め,Sweet病と診断し,コルヒチン内服を開始した.Sweet病と診断後,近医にて早期胃癌が発見され,初診から3週後に内視鏡下粘膜切除術を施行された.その後,速やかに皮疹は軽快した.コルヒチンは減量し,さらに中止したが,再燃はない.Sweet病は20%で悪性腫瘍を合併することが知られている.最も多いのは急性骨髄性白血病であり,その他,骨髄増殖性疾患,骨髄異形成症候群などの血液疾患が続き,最も少ないのが固形癌とされている.血液疾患と固形癌との合併例は少なく,自験例で4例目である.

Churg-Strauss症候群の2例

著者: 奥田容子 ,   新田悠紀子 ,   小池文美香 ,   大野稔之 ,   黒木のぞみ ,   倉橋直子 ,   池口宏 ,   峯村信嘉

ページ範囲:P.614 - P.617

要約 症例1:49歳,男性.症例2:66歳,女性.いずれも気管支喘息の既往があり,発熱,下肢の紫斑,下肢痛を主訴とし,血液検査で白血球と好酸球の増加およびCRPと抗好中球細胞質抗体の上昇を認めた.紫斑部の皮膚生検組織像で,血管壁のフィブリノイド変性,出血,核塵,好酸球と好中球の浸潤を認め,壊死性血管炎とした.以上より,Churg-Strauss症候群と診断した.前者はステロイドと免疫抑制薬の内服,後者はステロイドのみの内服で,下肢痛を残すが皮疹は消退し,血液検査異常値は正常化した.再燃なく経過観察中である.また,前者はステロイドなど内服薬の既往なく,後者はロイコトリエン拮抗薬の内服歴があった.

HIV感染患者に生じた好酸球性膿疱性毛包炎の1例

著者: 村井真由美 ,   伊藤恵子 ,   原弘之 ,   照井正

ページ範囲:P.618 - P.620

要約 48歳,男性.2004年4月からHIV感染症で加療中であった.1年前頃から臀部に掻痒のある皮疹が出現した.ステロイド外用にて加療していたが軽快せず,徐々に拡大した.2005年9月の当科初診時,右臀部に毛孔一致性丘疹が癒合し,環状堤防状に隆起する紅褐色局面がみられた.中心治癒傾向があり,強い掻痒を伴っていた.経過中,辺縁に膿疱が散在していた.血中CD4陽性T細胞は14.1%,CD4/8比は0.6と低値であった.病理組織像では毛包を中心に好酸球,好中球,リンパ球などの炎症細胞が著明に浸潤し,毛包が破壊されていた.インドメタシン内服と外用が奏効し,2か月後には色素沈着のみとなった.

17年間確定診断されなかったDarier病

著者: 矢島智子 ,   米田真理 ,   菊池麻衣子 ,   田崎典子 ,   大畑千佳

ページ範囲:P.621 - P.623

要約 37歳,女性.20歳頃より夏に増悪,冬に軽快する融合傾向のある角化性丘疹が前胸部に出現し,掻痒感を伴った.近医を受診したが確定診断が得られず,徐々に増悪したため当科を受診した.背部より皮膚生検を施行し,Darier病と診断した.家族に同症の既往なく,孤発例と考えた.尿素含有ローション外用にて著明に軽快した.

テトラサイクリン少量内服療法が著効した後天性反応性穿孔性膠原線維症の1例

著者: 宮嵜敦 ,   面高進平 ,   高田実

ページ範囲:P.624 - P.627

要約 74歳,女性.コントロール不良の糖尿病,C型慢性肝炎および肝硬変にて加療中.肝機能は悪化傾向である.約3か月前から体幹,四肢の掻痒感を伴う皮疹が出現し,ステロイド外用にて加療されたが改善しなかった.初診時,四肢,体幹の搔破可能な範囲に中心に痂皮を付着する暗紅色調の丘疹が散在し,搔破痕に沿って線状に配列していた.病理組織学的に潰瘍と変性した膠原線維の経表皮排泄像が認められ,後天性反応性穿孔性膠原線維症と診断した.ステロイドや活性型ビタミンD3など種々の外用療法に抵抗したが,塩酸ミノサイクリンの少量内服療法にて著効し6週間の内服で略治した.内服中止後も症状の再燃はみられなかった.

露光部を中心に生じた汎発性環状肉芽腫の小児例

著者: 田口知佐子 ,   田辺恵美子

ページ範囲:P.628 - P.630

要約 3歳,女児.2000年8月より全身に軽いかゆみを伴う丘疹が出現した.同年9月の初診時,顔面,上肢,下腿の日焼けした部分を中心に,米粒大までの皮膚色ないし淡紅色の丘疹が散在性に多発し,一部は線状に配列していた.病理組織学的に,真皮浅層から深層にかけ,ムチン沈着を伴う膠原線維の変性部の周囲に,組織球,リンパ球よりなる細胞浸潤が認められた.深層では組織球が柵状配列を示していた.生検後,トラニラストの内服とステロイドの外用を開始したところ,皮疹は急速に消退し,10週間後に略治した.1972年以降,本邦で報告された小児の汎発性環状肉芽腫は34例あり,春季から夏季(4~9月)に発症したものは,時期の記載があった19例のうち16例であった.本例を含め,日光照射の関与が強く考えられたものは2例であった.

Myeloperoxidase antineutrophil cytoplasmic antibody陽性で壊死性血管炎像を伴ったlimited cutaneous systemic sclerodermaの1例

著者: 新田悠紀子 ,   安成根 ,   大野稔之

ページ範囲:P.631 - P.634

要約 75歳,女性.1985年よりRaynaud症状,手指の小潰瘍,逆流性食道炎,顔面の血管拡張を認め,CREST症候群と診断し,ニコチン酸トコフェロール内服で経過観察中であった.2006年5月,下腿に数個の潰瘍を生じた.生検でleukocytoclastic vasculitisの像を呈し,myeloperoxidase antineutrophil cytoplasmic antibody(MPO-ANCA)60EUと陽性化した.MPO-ANCAが関連した壊死性血管炎の像を伴ったlimited cutaneous systemic sclerodermaと診断した.下腿潰瘍は難治であったが,プレドニゾロン,シクロホスファミドの内服にて,3か月後にはMPO-ANCAは陰性化し,下腿潰瘍も徐々に縮小し,治癒した.近年,systemic sclerodermaではMPO-ANCA高力価陽性の正常血圧強皮症腎クリーゼが報告されているが,低力価では血管炎を示さず,臨床的意義は低いとされている.本症では,MPO-ANCAは低力価陽性であったが,壊死性血管炎の像を呈する下腿潰瘍を伴った.

仙骨部の腫瘤と大臀筋に著明なアミロイドの沈着をみた全身性ALアミロイドーシスの1例

著者: 花川博義 ,   刀川信幸 ,   柳原誠 ,   二村明広 ,   古谷正晴 ,   本多正治 ,   林伸一 ,   星井嘉信 ,   石原得博

ページ範囲:P.635 - P.638

要約 70歳,男性.1年前からの仙骨部の腫瘤を主訴に受診した.仙骨部にクルミ大の淡紅色の腫瘤があり,両臀部に手掌大から児頭大の板状硬結がみられた.腫瘤と板状硬結部はともに,病理組織学的に真皮中層から皮下組織にびまん性にアミロイドの沈着が認められ,アミロイドは免疫グロブリンL鎖(λ型)に対する抗体に陽性であった.胃粘膜生検では血管周囲にアミロイドが沈着していた.血清M蛋白陽性(BJP-λ型),尿中B-J蛋白陽性(λ型)であった.骨髄に異型性のある形質細胞の単クローン性増殖を認め,多発性骨髄腫に伴うALアミロイドーシスと診断した.アミロイドが沈着していた仙骨部腫瘤はMRI T2強調像で高信号を示した.また,臀部硬結部は大臀筋が肥大し,その中に前者と同等の高信号を示す部位が混在し,この信号強度は皮膚にまで及んでいた.大臀筋へのアミロイドの大量の沈着が推測された.剖検で内臓臓器実質への大量なアミロイド沈着は認めなかった.

大量の副腎皮質ホルモン全身投与が奏効したKasabach-Merritt症候群

著者: 福士佐和子 ,   出口雅敏 ,   渡邉昌彦 ,   飯澤理 ,   千葉靖 ,   相場節也

ページ範囲:P.639 - P.642

要約 5か月,男児(体重3.5kg).出生時から右大腿にしこりのような皮疹があり,生後3か月頃から増大し始め,急激に拡大した.初診時,右大腿外側に約8×7cm大の硬結を触れる紫紅色斑を認め,MRIでは長径10cm,短径7cm,深さ5cmの大腿四頭筋内にまで達する腫瘤が存在した.検査にて血小板6.4×104/μl,フィブリノーゲン134mg/dl,FDP34.3μg/mlと異常所見を示したため,Kasabach-Merritt症候群と診断した.入院のうえ,ヘパリン投与とメチルプレドニゾロンパルス療法3クール施行により,血液所見は正常化し,その後プレドニゾロン内服量5mgから漸減,病変部腫瘤は平坦化し,12か月後に投与を終了した.総投与量はプレドニゾロン換算で2,200mgであった.患児は8歳2か月に達したが,日常生活に支障はなく,白内障・成長障害などステロイド投与によると思われる副作用の出現は全くなかった.

Bowen病の大型局面内に生じたMerkel細胞癌の1例

著者: 竹中祐子 ,   林伸和 ,   川島眞

ページ範囲:P.643 - P.645

要約 93歳,女性.7か月前より右頰部に紅斑が出現した.3週間前から紅斑内に急速に拡大する紅色結節を生じたため,受診した.右頰部に10×5cm大の紅色局面があり,その局面内に径8mm大の紅色結節を認めた.病理組織学的に,紅色結節部は真皮内に好塩基性に染色される円形の核を有する腫瘍細胞が増殖しており,免疫組織化学的に腫瘍細胞はCK-20陽性かつNSE陽性で,電顕像で有芯顆粒を認めた.一方,紅斑部は,表皮の肥厚と表皮全層性に有棘細胞の配列の乱れと異型性を認め,clumping cellを混じていた.両者間には病理組織学的に移行像は認めなかった.以上より,Bowen病の局面内に生じたMerkel 細胞癌と診断した.

外陰部悪性黒色腫の1例

著者: 濱坂英里香 ,   青柳哲 ,   保科大地 ,   秦洋郎 ,   澤村大輔 ,   清水宏

ページ範囲:P.646 - P.648

要約 72歳,女性.外陰部に生じた悪性黒色腫を経験した.初診の3か月前頃から下着に血液が付着するのを自覚していた.当院婦人科で,外陰部の皮疹を指摘され,当科を紹介された.悪性黒色腫と診断し,原発巣の拡大切除,および連続的に両側鼠径リンパ節郭清を行った.皮膚欠損部は臀溝皮弁にて再建した.術後11か月を経過した現在,再発や転移を認めていない.外陰部悪性黒色腫では,定型的な治療は確立されておらず,患者のQOLや腫瘍の進展範囲などを考慮しながら,個々に対する治療方法が選択されているのが現状である.本腫瘍でのリンパ節転移の頻度の高さや原発巣と所属リンパ節群の近さ,そして解剖学的リンパ流の複雑さから,可能であればsubtotal integmentectomyを行うのも1つの方法と考えた.

発症から約40年間と思われる経過後に診断した悪性黒色腫の1例

著者: 熊谷聖代 ,   三石剛 ,   川名誠司

ページ範囲:P.649 - P.651

要約 66歳,男性.右側腹部に約40年前より米粒大の黒色斑がみられていた.初診時,右側腹部に5.5×6.5cm大の辺縁不整,境界明瞭で軽度の隆起,角化を伴う色素斑を認めた.病理組織学的に表皮,真皮内に異型メラノサイトを多数認め,メラニンA染色陽性の結果と合わせて表在拡大型悪性黒色腫と診断した.臨床的に病変内に灰白色の局面を認め,部分的に自然消退傾向にあった.センチネルリンパ節生検組織像には,所属リンパ節転移は認められなかった.外科的切除術後,化学療法を3クール施行し,12か月経過した現在,再発はない.

皮膚転移の確認が内視鏡確定診断より先行した胃癌の1例

著者: 早乙女敦子 ,   渡辺彩 ,   日野治子 ,   岡輝明 ,   山口淳子

ページ範囲:P.652 - P.654

要約 67歳,男性.2006年12月に下顎の結節に気づいたが放置していた.次第に増大し,翌年3月に受診した.下顎に示指頭大のドーム状に隆起し,弾性硬,表面毛細血管拡張を伴う淡紅色結節があった.自覚症状はなかった.病理組織像では辺縁に核が環状配列し,中央は胞体が明るく抜けた腫瘍細胞が管腔構造を形成していた.核分裂像もみられた.以上より,腺癌の皮膚転移と診断した.2007年1月,心窩部痛があり,胃内視鏡検査により胃噴門部腺癌が指摘された.これにより下顎の結節は胃癌の皮膚転移と診断した.

Mucinous carcinoma of the skinの1例

著者: 上村春子 ,   井上卓也 ,   平島徳幸 ,   三砂範幸 ,   成澤寛

ページ範囲:P.655 - P.658

要約 59歳,男性.13歳頃より鼻部左側に小豆大の結節が出現し,徐々に増大してきた.初診時,鼻部左側に直径2.5cmの皮下腫瘤の上に,直径1.5cmの毛細血管拡張を伴う淡紅色,弾性硬,透明感のある半球状腫瘤があり,圧痛なく,可動性は良好であった.病理組織像で,真皮内に線維性隔壁で境界された粘液囊胞様構造がみられ,その内部は多量のムチンで満たされ,島状に浮遊するような腫瘍細胞巣を認めた.免疫組織学的検査では腫瘍細胞はCK7陽性,CK20陰性,GCDFP-15陽性であった.全身検索の結果,他臓器の悪性腫瘍の所見を認めなかったことから,mucinous carcinoma of the skinと診断した.全身麻酔下に腫瘍辺縁より1cm離し,骨膜および一部眼窩内脂肪織を含め切除し,前額部皮弁で再建した.術後1年経過するが,局所再発および転移所見は認めない.

成人Langerhans細胞組織球症の1例

著者: 塩原順子 ,   宇原久 ,   河内繁雄 ,   高田実 ,   斎田俊明 ,   佐藤亜位 ,   安達亙

ページ範囲:P.659 - P.662

要約 50歳,男性.35歳時に両側の気胸で胸膜癒着術を受けた.43歳時に画像所見から肺Langerhans細胞組織球症(LCH)と診断された.46歳時,口渇と多尿が出現し,下垂体性尿崩症と診断された.またこの頃より,肛門周囲に有痛性の皮疹を生じた.尿崩症に対してプレドニゾロンの投与を受けたが,汎下垂体機能低下を残した.50歳時,肛門周囲病変の皮膚生検で,表皮と真皮にCD1aおよびS-100蛋白陽性の組織球様の細胞が稠密に浸潤しており,LCHの所見であった.肛門以外には,頭部および外耳道にも紅色局面や米粒大の結節が認められた.PET-CTでは肛門と耳介の皮膚,甲状腺に集積を認めたが,甲状腺の機能に異常はみられなかった.皮膚病変に対してステロイド外用とナローバンドUVB療法を併用して行ったところ,病変は扁平化し,疼痛も軽減した.

デング熱の2例

著者: 井手麻衣子 ,   満山陽子 ,   平原和久 ,   早川和人 ,   塩原哲夫

ページ範囲:P.663 - P.666

要約 症例1:21歳,男性.インドより帰国4日後から発熱を認めた.10日後に解熱とともに掌蹠に紅斑が出現し,全身へ拡大した.四肢には毛孔一致性の小紫斑を認めた.小紫斑の病理組織学的所見は,毛囊周囲の小血管周囲性の出血を伴う小円形細胞浸潤が主体であった.症例2:30歳,女性.ブラジルより帰国2日後から発熱がみられ,8日後に解熱とともに全身に紅斑が出現した.9日後に四肢に症例1と同様の毛孔一致性の紫斑が出現するとともに,四肢の筋痛,筋力低下を認めた.ともに血小板数減少,肝機能障害があり,典型的な臨床症状と海外渡航歴,血清学的にIgM抗体陽性よりデング熱と診断した.デング熱は熱帯・亜熱帯地方では日常的にみられる感染症であり,発熱,皮疹で受診した患者に最近の海外渡航歴がある場合,念頭に置くべき疾患である.本症の皮疹の特徴や重症型であるデング出血熱に関する注意点を中心に考察を加えた.

治療

緩和ケアにおけるMohs' chemosurgeryの応用

著者: 伊藤宗成 ,   堀夏樹 ,   五十嵐敦之

ページ範囲:P.668 - P.671

要約 乳癌の転移性皮膚癌などの4例に対し,腫瘍からの出血抑制などを目的とした緩和ケアの一環として,Mohs' chemosurgeryを施行した.乳癌による転移性皮膚癌と局所皮膚浸潤の2例における持続出血に対しては,十分な止血効果を得ることができ,後者では腫瘍縮小効果もみられ,患者のquality of lifeの改善に大きく寄与できた.しかし,乳癌リンパ節転移の皮膚直接浸潤例では疼痛を生じ,喉頭癌局所再発例では感染を助長し,逆に滲出液の増強をみた.

臨床統計

皮膚科専門医療機関における痤瘡患者実態調査

著者: 川島眞 ,   赤松浩彦 ,   林伸和 ,   渡辺晋一 ,   古川福実 ,   松永佳世子 ,   宮地良樹

ページ範囲:P.673 - P.682

要約 皮膚科専門医療機関を初診した痤瘡患者346名を対象にアンケート調査を実施した.痤瘡の初発年齢は平均15.1歳,痤瘡での初診年齢は平均19.8歳,医療機関以外で初めて対処した年齢は平均16.5歳であった.約90%の患者が医療機関の受診前に痤瘡への何らかの対処を行っていた.今回の調査により,痤瘡を発症してもすぐに医療機関を受診せず,薬局などで薬剤を購入し自己判断で対処している患者が多いことが確認された.DLQI日本語版によるQOL評価では,特に症状・感情面において痤瘡患者のQOLの低下が認められた.痤瘡の悪化時期・誘因について,身体的・精神的ストレスがかかるときや食事との関係を挙げる患者が多かった.また調査協力施設の皮膚科医に対するアンケート結果では,現行の痤瘡治療に対する満足度は,内服抗菌薬と軽症例に対する外用抗菌薬以外では低く,本邦の痤瘡治療への満足度が全体的に低いことが示された.

印象記

「第5回 国際研究皮膚科学会」印象記

著者: 原田和俊

ページ範囲:P.683 - P.685

 第5回国際研究皮膚科学会(IID)が2008年5月14日から17日まで,国立京都国際会館で開催されました.今回の学会は名誉なことに,私ども山梨大学皮膚科学教室の島田眞路教授が会頭を務め,私も学会への参加とともに運営の一部を手伝わせていただきました.

 国際研究皮膚科学会とはSID(Society for Investigative Dermatology),ESDR(European Society for Dermatological Research),JSID(Japanese Society for Investigative Dermatology)が5年に一度開催する合同ミーティングです.米国,日本,ヨーロッパで順番に開催されており,1993年に京都大学の今村教授が日本で主催されて以来,今回15年ぶりに京都で開催されました.参加者の2/3は米国,ヨーロッパから来日した研究者であり,まさに国際研究皮膚科学会でした.

「2nd International Conference of Cutaneous Lupus Erythematosus」印象記

著者: 吉益隆 ,   古川福実

ページ範囲:P.686 - P.687

 皮膚ループスエリテマトーデスの国際学会であるInternational Conference of Cutaneous Lupus Erythematosus(ICCLE)が最初に開催されたのは,2004年9月のドイツのデュッセルドルフである.今回,第2回目となるICCLEが和歌山県立医大皮膚科学教室主幹のもと,2008年5月11日から13日までの3日間,京都市左京区にある京都大学の芝蘭会館(京都大学医学部創立100年事業記念館)で開催された.期間中の京都はやや曇り気味で,木々の小枝やうす緑色の葉が風に大きくなびく日もあったが,気温は暖かく,諸外国からの参加者にも比較的過ごしやすいように思われた.参加者の総数は150人ほどであり,国内外の参加者比率はほぼ半々であった.今回のプログラムには,1つの特別講演,2つの基調講演, 45の口頭発表,56のポスター発表が含まれた.

 学会初日は,Keynote Lectureとして京都大学 坂口志文教授のRegulatory T cells for self-tolerance and immune homeostasisと題した免疫の話があり,T細胞性の自己免疫反応を,いかにRegulatory T cellがコントロールするかを講演した.引き続いて,和歌山県立医大病院長であり麻酔科の畑埜教授によるHistory of Seishu Hanaoka, Wakayama and Kyoto in modern medicineと題した特別講演があった.畑埜教授の思惑どおりに会場は楽しい雰囲気に包まれた.ところで,今回の学会では,Travel grantや 優秀なポスターには「Seishu 賞」が設けられていた.Seishu 賞は和歌山出身の華岡青洲(はなおかせいしゅう)先生の名前由来である.青洲先生は麻酔という概念が存在しない約200年前に,麻酔効果のあるマンダラゲ(大きな白い花:現在和歌山県立医大のシンボルとなっている)の根の部分を野山で集め,マンダラゲを主成分とする麻酔薬「通仙散」を開発した.青洲先生は,この「通仙散」を用いた動物実験や家族への実験的投与などを経て,世界で初めて全身麻酔下に乳癌の手術をした人物である.今回の学会では,Seishu賞(Travel grantと優秀なポスター賞含む)は総勢約20人に贈られ,皮膚ループス研究者へのエールとなった.

書評

―編:内富庸介,藤森麻衣子―がん医療におけるコミュニケーション・スキル悪い知らせをどう伝えるか[DVD付]

著者: 垣添忠生

ページ範囲:P.642 - P.642

 『がん医療におけるコミュニケーション・スキル─悪い知らせをどう伝えるか』が医学書院から刊行された.編集は内富庸介,藤森麻衣子の両氏,執筆は国立がんセンター東病院,同中央病院,聖隷三方原病院,癌研有明病院,静岡県立静岡がんセンターなど,いずれも日々がん患者や家族と濃密に接するベテラン揃いである.

 患者・家族と,医療従事者との関係,特に患者と医師の間の意思疎通,コミュニケーションは医療の原点である.最近の診療現場の多忙さは危機的である.限られた時間の中で患者と医師がコミュニケーションを図ることは至難になりつつある.とはいえ,患者-医師関係を構築するうえでコミュニケーションは避けて通れない.

―著:中村健一―《総合診療ブックス》皮膚科医直伝 皮膚のトラブル解決法

著者: 伊藤澄信

ページ範囲:P.667 - P.667

 自分が医学生のころ,脂漏性皮膚炎を患っていたことがある.左頬部にできた,時々悪化する皮疹が皮膚科のテキストをみてもわからずにいたことを思い出す.通常の教科書は疾患の頻度に応じて記述の順番や量が配慮されていないために,初学者が診断にたどり着くのは容易ではない.この本があれば悩まずに済んだのに,と思う.

 通常の皮膚科の教科書は疾患の頻度を無視して記載してあるから,目の前の患者さんがどの疾患なのかを判断することは容易ではない.プライマリ・ケアに必須なのは頻度の高い疾患の診療と,見落とすと致命傷になる疾患の初期対応である.この本のすばらしさは,遭遇する頻度の高い皮膚疾患とその対応策が述べられていることにある.特に,稀でも落とし穴が隠れている場所と対応策を重点的に書いてある本なんて,そうざらにあるものではない.

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あとがき

著者: 塩原哲夫

ページ範囲:P.690 - P.690

 子供の頃,偉人伝を読むのが好きだった.いつも思ったのは,偉人たちは何と揃いも揃って幼児期に辛い体験をしているのだろうということだった.例えば,明治の偉大な政治家,児玉源太郎は,幼少時に目の前で肉親を殺されるなど,PTSDになってもおかしくないような苛酷な体験を何度もくぐり抜けて成長してきたのである.

 今,日本は若い人に夢を与えられない社会だと言われる.若い人が無差別殺人に走るのも,無気力なのも夢のない社会のせいだという論調が多い.学生時代に挫折したせいで世の中を恨んで殺人に走るような人が出てくると,若い時に挫折を与えるような教育が良くないという意見になる.しかし,いくら小中学校時に成績が良くても,優秀な学生が集まる高校に入れば成績が下がるのは当然ではないだろうか?それを挫折と捉え立ち直れないなら,そうした学校を選ぶべきではない.常に上位にいられるような学校を選び,プライドと自信を失わないようにすればよいのだ.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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