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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科63巻10号

2009年09月発行

文献概要

症例報告

糖尿病患者に生じたStaphylococcus haemolyticusによる癰の1例

著者: 石田正1 平原和久1 福田知雄1 早川和人1

所属機関: 1杏林大学医学部皮膚科学教室

ページ範囲:P.767 - P.770

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要約 67歳,男性.コントロール不良の糖尿病があった.1か月前より上背部に皮疹が出現し無治療で放置していたが,増大し発熱を伴ったため,当科に入院した.膿栓を多数伴う径13×10cmの紅色隆起局面を認め,癰と診断した.切開排膿,デブリドマンを施行した後,CEZ4g/日,インスリンの投与により約1か月で軽快した.細菌培養ではコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)の1種であるStaphylococcus haemolyticusが膿汁から2+,デブリドマンで得られた病変部の組織から3+分離された.ほかの菌は嫌気培養も含め検出されず,本菌が癰の原因と考えられた.本来弱毒菌である本菌が病原性を発揮した原因として,コントロール不良の糖尿病(HbA1c11.9%),低栄養状態(Alb2.1g/dl)の関与が推測された.CNSが病変部から検出された場合,弱毒菌として一概に軽視するのではなく,菌量,混合感染の有無,臨床症状を参考にして,症例ごとにその臨床的意義を検討する必要があると思われた.

参考文献

1) 檜垣修一, 西嶋攝子: 最新皮膚科学大系, 14巻, 中山書店, p75, 2003
2) Hay RJ, Adriaans BM: Rook's Textbook of Dermatology 7th ed. vol.2, Blackwell, Massachusetts, p27. 24, 2004
3) Akiyama H, et al: J Dermatol 25: 563, 1998
4) Takeuchi F, et al: J Bacteriol 187: 7292, 2005
5) Fischetti VA, et al(eds): Gram-Positive Pathogens, ASM Press, Washington, p450, 2000
6) Low DE, et al: Pediatrics 89: 696, 1992
7) Isenberg HD(ed): Clinical Microbiology Procedures Handbook, vol.1, ASM Press, Washington, p3. 3. 2. 1, 2004
8) Tan TY, et al: J Clin Microbiol 44: 3413, 2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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