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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科63巻6号

2009年05月発行

雑誌目次

連載 Clinical Exercise・21

Q考えられる疾患は何か?

著者: 川瀬正昭

ページ範囲:P.353 - P.354

症例

患 者:37歳,男性.ブラジル人日系2世でサンパウロ出身.

初 診:1996年8月13日

家族歴:妻,子ども2人に同様の症状なし

現病歴:1981年来日.1993年頃から鼻周囲に紅斑が出現し,徐々に前額部,両頰部,口唇白唇部に拡大した.1996年2月より左肘部伸側に同様の皮疹が出現した.近医を受診し,副腎皮質ステロイド薬の外用による治療を受けていたが軽快しないため,当院を紹介され受診した.

現 症:鼻周囲,前額部,両頰部,口唇白唇部(図1),および左肘部伸側(図2)に境界明瞭な浸潤の触れる鈍い光沢を伴う紅斑を認めた.皮疹部では触覚,痛覚,温冷覚が低下していた.また,触診で尺骨神経に軽度肥厚があった.

原著

道化師様魚鱗癬の兄弟例

著者: 中野さち子 ,   白山純実 ,   牧之段恵里 ,   萬木聡 ,   桑原理充 ,   福本隆也 ,   新関寛徳 ,   浅田秀夫 ,   宮川幸子 ,   秋山真志 ,   清水宏 ,   吉田昭三 ,   小林浩 ,   釜本智之 ,   安原肇 ,   高橋幸博

ページ範囲:P.356 - P.361

要約 症例1:兄は在胎33週3日,出生体重1,876g,症例2:弟は在胎週数33週1日,出生体重1,902g.血族結婚はない.両児とも出生時から全身が板状の角質物質で覆われ,鎧状を呈し,下床の皮膚は著明に発赤し,上眼瞼外反,口唇突出,耳介変形がみられた.出生後数日中から胃管でミルクを開始し,エトレチナート1mg/kg内服も開始した.病理組織像で,著明な角質肥厚と毛孔内の角栓形成を認めた.皮膚電顕像では,角層および顆粒層の細胞内に脂肪滴がみられた.エトレチナート開始後,厚い角質は漸次消失した.兄は日齢96日,弟は日齢72日でそれぞれ退院した.現在,兄は3歳,弟は1歳で,全身に半透明の鱗屑を有するものの,鎧状の角質や眼瞼外反はない.

症例報告

5-フルオロウラシルによる手足症候群の1例

著者: 大東淳子 ,   浅井純 ,   益田浩司 ,   竹中秀也 ,   加藤則人 ,   岸本三郎

ページ範囲:P.363 - P.366

要約 65歳,男性.進行期食道癌に対し,5-フルオロウラシル250mg/日+シスプラチン12mg/日の化学療法を開始したところ,3日目より両側の手指,手掌,足蹠に疼痛を伴う紅斑,水疱が出現したため,当科を受診した.右手掌紅斑部より施行した皮膚生検組織像では,表皮真皮境界部に液状変性,真皮上層に浮腫,毛細血管拡張,リンパ球優位の炎症細胞浸潤などを認めた.以上より,5-フルオロウラシルによる手足症候群を疑い,ステロイド外用とビタミンB6の内服を開始したところ,紅斑と疼痛は軽快した.化学療法終了後,症状は著明に改善した.

コレステロール結晶塞栓症の1例

著者: 浜野真紀 ,   澁谷修一郎 ,   大西誉光 ,   渡辺晋一

ページ範囲:P.367 - P.370

要約 80歳,男性.不安定狭心症で,経皮的冠動脈形成術(以下,PCI)を施行されており,同時期よりアスピリン,クロピドグレル硫酸塩の内服を開始した.PCI後7日ほど経過した頃から両足趾に疼痛を伴う網状の暗紫紅色斑が出現し,徐々に足底にも拡大した.皮疹出現から約1か月後の皮膚生検の結果,真皮下層から脂肪織の血管内に紡錘形の裂隙を認め,コレステロール結晶塞栓症と診断した.原病のため,抗血小板薬の内服は中止できず,プレドニン®(以下,PSL)25mg/日の内服を開始し,その後PSL20mg/日に漸減した.皮疹の再燃はみられなかったが,うっ血性心不全を合併,腎前性腎不全を併発し,3回透析療法を行ったが,感染のコントロールがつかず,敗血症を合併し,永眠した.

掌蹠,口腔粘膜に限局して生じた抗ラミニン5型粘膜類天疱瘡の1例

著者: 堀内和一朗 ,   盛山吉弘 ,   飯田利博 ,   大山文悟 ,   橋本隆

ページ範囲:P.371 - P.374

要約 72歳,女性.初診の3~4年前より,両手指腹に小水疱が出没を繰り返していた.また,その以前より口腔内のびらんを認めていた.初診後,足趾にも小水疱が出現した.手掌の小水疱の病理組織像では,表皮基底層に裂隙形成を認め,蛍光抗体直接法では基底層にIgG抗体,C3の線状の沈着を認めた.1M食塩水剝離ヒト皮膚の蛍光抗体間接法では,真皮側に反応するIgG抗体を認め,精製ラミニン5を用いた免疫ブロット法では,γ2サブユニットに陽性であり,抗ラミニン5型粘膜類天疱瘡と診断した.病変が口腔粘膜および掌蹠に限局しており,稀な臨床像と考えた.

尋常性乾癬の経過中にVogt-小柳-原田病を合併した2例

著者: 福原麻里 ,   岡田アナベル あやめ ,   早川和人

ページ範囲:P.375 - P.379

要約 症例1:38歳,女性.約10年前より尋常性乾癬がある.4か月前から視力低下が出現し,近医でぶどう膜炎として点眼薬にて加療を受けていた.2か月後,前額,両前腕に白斑が出現し,当院眼科でVogt-小柳-原田病(原田病)と診断された.乾癬と白斑は前腕伸側では一部重複して認められた.症例2:66歳,男性.2~3年前より尋常性乾癬がある.約1か月前に原田病を発症し,早期にステロイドパルス療法を施行された後に当科に紹介された.プレドニゾロン,シクロスポリンを内服中,減量の過程で乾癬の皮疹が明らかとなったが,経過中に白斑はみられていない.症例2でHLAの原田病関連タイプDR4が検出された.乾癬と自己免疫疾患の合併は時に経験されるが,原田病の合併は稀である.また,原田病で通常,回復期にみられる白斑などの皮膚症状が症例2で認められなかったことは,早期に自己免疫反応を抑制する強力な治療が行われたためと推測された.

ミノサイクリン塩酸塩が奏効した角層下膿疱症の1例

著者: 蘇原しのぶ ,   籏持淳 ,   古谷野さとみ ,   濱崎洋一郎 ,   山﨑雙次

ページ範囲:P.381 - P.384

要約 70歳,女性.2か月前から体幹に紅斑が出現した.抗ヒスタミン薬内服・ステロイド軟膏外用にて加療するも効果なく,その後,徐々に膿疱も認められるようになった.当科受診時,胸腹部・乳房下・腋窩・背部にかけて辺縁に鱗屑と膿疱を伴う1~4cm大の環状紅斑が多発していた.組織学的所見では,角層下に好中球を主体とする膿疱がみられた.ミノサイクリン塩酸塩200mg/日内服を開始したところ,皮疹はまもなく色素沈着を残し消退した.内服中止後,約半年経過した現在も皮疹の再燃はない.

リンパ節にサルコイド反応がみられた全身性形質細胞増多症の1例

著者: 細川僚子 ,   舩越建 ,   齋藤昌孝 ,   海老原全 ,   塚田唯子 ,   横山健次 ,   岡本真一郎 ,   石河晃

ページ範囲:P.385 - P.388

要約 43歳,男性.10年前より体幹部に自覚症状を伴わない皮疹を認めていた.初診時,体幹部に多発散在する爪甲大までの浸潤を触れる紅褐色斑に加えて,腋窩・鼠径リンパ節腫脹がみられた.血液検査ではCRPの高値,ポリクローナルなIgGの増加,IL-6高値を呈し,M蛋白,B-J蛋白は認めなかった.皮膚およびリンパ節に組織学的に形質細胞の密な浸潤がみられたことから,全身性形質細胞増多症と診断した.さらにリンパ節には,非乾酪性肉芽腫が認められ,ぶどう膜炎の既往歴があったことから,サルコイドーシスの合併が疑われた.しかし,他臓器症状がなく,組織学的にも非乾酪性肉芽腫が散在性で数が少なく,周囲リンパ組織との境界が明瞭でないことから,全身性形質細胞増多症に対するサルコイド反応と考えた.

全身性サルコイドーシス患者に生じた刺青サルコイドーシスの1例

著者: 井汲菜摘 ,   原弘之 ,   照井正

ページ範囲:P.389 - P.392

要約 34歳,男性.約10年前から数回にわたり左上肢全体に黒,緑,黄,赤色の刺青を施した.約4か月前から羞明,眼痛が出現し,眼科にて両側ぶどう膜炎と診断された.ツ反は陰性,血清ACE値軽度上昇,胸部X線で両側肺門リンパ節腫大を認め,Gaシンチ上,左上腕の黒色刺青部に異常集積像あり,当科を紹介された.左上腕の黒色刺青部に落屑のある約2cmの隆起性浸潤局面,左前腕の黒色部と緑色刺青部の一部に軽度浸潤性局面を認める.皮膚病理所見で真皮にリンパ球浸潤を周囲に伴う非乾酪性類上皮細胞肉芽腫が多発し,その内部と周囲に,黒褐色の色素顆粒とそれを貪食するマクロファージが散在する.全身性サルコイドーシスに伴った刺青サルコイドーシスと診断した.電顕的X線微量分析では特異的な金属は検出されない.金属以外でも色素異物が誘因となりえると考えられた.

顔面紅色丘疹を主訴とし,サルコイドーシスの診断に67Gaシンチが有用であった1例

著者: 趙玲愛 ,   谷岡未樹 ,   是枝哲 ,   宇谷厚志 ,   宮地良樹 ,   半田知宏 ,   三嶋理晃 ,   長井苑子

ページ範囲:P.393 - P.395

要約 57歳,女性.1年前より顔面に紅色丘疹が多発してきたため,受診した.臨床所見から酒皶,抗酸菌感染症,顔面播種状粟粒性狼瘡,サルコイドーシスなどを鑑別に挙げた.病理組織学的検査で多核巨細胞を伴う非乾酪壊死性類上皮細胞肉芽腫を認めた.胸部単純X線写真やCTでは異常を認めなかったが,67Gaシンチで肺門リンパ節に集積を認め,気管支肺胞洗浄液検査にてリンパ球数上昇とCD4/CD8比の上昇を認めた.これらの結果は,「サルコイドーシスの診断基準と診断の手引き―2006」を満たしており,サルコイドーシスと診断した.皮膚所見からサルコイドーシスが疑われるが,胸部X線像やCTで明らかな異常所見がみられなかった場合に,サルコイドーシスの診断に67Gaシンチは有用であると考えられた.

鉛筆による刺創部に生じた皮膚石灰沈着症の1例

著者: 樋上敦 ,   井階幸一 ,   武本啓

ページ範囲:P.397 - P.400

要約 50歳,女性.9歳時,左中指に鉛筆を突き刺す外傷を負ったが放置していた.特に自覚症状および他覚症状なく経過していた.2年前より同部位に硬結を触れるようになり,来院した.皮下組織内の境界明瞭な硬い黒色の腫瘍状組織を摘出した.病理組織像にて,線維性皮膜に包まれた黒鉛を含む瘢痕組織と,周囲の肉芽腫性変化を伴う好酸性のヒアリン化した組織を認め,両部位の境界部に好塩基性の石灰沈着が島嶼状に散在していた.本症は先行する病変に伴う皮膚石灰沈着症として異栄養性皮膚石灰沈着症の範疇に入るものと考えられ,その発生機序について考察した.

Calciphylaxisによる両下腿の巨大潰瘍の1例

著者: 安岡英美 ,   濱野英明 ,   松田史雄 ,   木花光 ,   青木敏行 ,   酒井謙

ページ範囲:P.401 - P.404

要約 68歳,女性.5年前より糖尿病性腎不全に対し,血液透析中である.両下腿に疼痛を伴う腫脹が出現し,その後,急速に黒色壊死,全周性潰瘍へ変化した.皮膚生検にて皮下組織の中小の血管,さらに脂肪小葉の毛細血管にまで壁の著明な石灰化を認めた.CTでは気管支軟骨,冠動脈,僧帽弁などにも石灰化がみられた.血液検査上,慢性腎不全に伴う二次性副甲状腺機能亢進症を呈していた.血清Ca,Pの補正や感染コントロールを試みるも潰瘍は拡大し,入院4か月後に敗血症にて死亡した.calciphylaxisはひとたび発症すると生命予後が悪く,慢性腎不全患者の急速に拡大する疼痛性潰瘍をみた際は本症も鑑別診断の1つに入れるべきであると考えた.長期透析患者の増加に伴い,本症の今後の増加が懸念される.

筋緊張性ジストロフィと合併した多発性石灰化上皮腫の1例

著者: 安部美穂 ,   向野哲 ,   沖山良子 ,   佐藤勘治 ,   饗場伸作 ,   金子聡 ,   中山貴博

ページ範囲:P.405 - P.408

要約 32歳,女性.初診の半年前より徐々に頭部,上肢に4個の皮下結節が出現した.組織学的に精査し,すべて石灰化上皮腫と診断した.同時に筋緊張症状を認め,内科的精査も開始され,遺伝子検索により筋緊張性ジストロフィと診断された.石灰化上皮腫は筋緊張性ジストロフィ患者にしばしば合併することが知られている.現在までの両者の合併例を集計し,男女比,発症年齢,腫瘍の数や発症部位,家族内発症率などを検討した結果,一般の石灰化上皮腫とは異なり,男性に多く,発症年齢がやや高い傾向があり,頭部に好発し多発例が多く,家族内発症が多いという特徴を有することがわかった.また,両者の合併する機序について,遺伝子異常の観点から,Wntシグナル系におけるスプライシング異常が示唆された.

生検後に消褪傾向がみられたMerkel細胞癌

著者: 是川あゆ美 ,   金子高英 ,   池永五月 ,   中島康爾 ,   中野創 ,   澤村大輔 ,   今田吏津子

ページ範囲:P.409 - P.413

要約 84歳,女性.初診の3か月前より右頰部に腫瘤が出現した.前医皮膚科での皮膚生検でMerkel細胞癌と診断され,当科を紹介された.右頰部に直径21mmの表面暗赤色の皮内から皮下腫瘤を触知し,皮膚生検で真皮内~皮下組織に好塩基性細胞が充実性・索状に増殖し,cytokeratin 20とNSE染色陽性で,Merkel細胞癌と診断した.生検後35日目の手術時には,腫瘤は縮小しており,組織像ではリンパ濾胞様構造を伴うリンパ球浸潤がほとんどで,cytokeratin 20陽性の腫瘍細胞はわずかで,消褪傾向を示したと判断した.本邦では消褪傾向を示したMerkel細胞癌は自験例が25例目である.消褪機序は,腫瘍細胞のapoptosisやリンパ球による免疫学的攻撃などが考えられており,本症例のリンパ球浸潤は細胞性免疫の自然消褪への関与を示すと考えた.

Mohs' chemosurgeryを施行した頭部血管肉腫の1例

著者: 江川裕美 ,   涌田あすか ,   石川牧子 ,   十一英子

ページ範囲:P.415 - P.418

要約 90歳,男性.右側頭部の紫斑で当科を受診し,皮膚生検で血管肉腫と診断した.肺腺癌による癌性胸膜炎が進行し,生命予後は半年と告知されており,本人・家族とも積極的な治療は希望しなかった.初診5か月後より腫瘤から出血するようになり,呼吸不全が悪化して入院した.末期には腫瘤の増大により右頭部が重いと対症療法を求められたため,出血コントロールと腫瘤の縮小を目的としてMohs' chemosurgeryを試みた.Mohs' pasteを塗布し,翌日腫瘍組織の硬化した部分を切除するという一連の手技を連日行った.右側頭部の腫瘤は195gの減量に成功し,出血も改善した.しかし,その後,顔面に多発した小腫瘤にも試みたところ,腫瘤表面に亀裂を生じ,出血が持続した.Mohs' chemosurgeryの血管肉腫に対する姑息的局所治療としての有用性を検討した.

シクロスポリン内服とステロイド局所注射が有効であった木村病の1例

著者: 古松茜 ,   蔭山晶子 ,   田中将貴 ,   堀啓一郎

ページ範囲:P.419 - P.423

要約 22歳,男性.17歳時より両耳介後部に腫瘤出現,その後,増大縮小を繰り返していた.半年前より急速に増大し始め,精査加療目的にて当科を受診した.初診時,両耳介後部に弾性硬の皮下腫瘤,頸部リンパ節・耳下腺の腫脹,末梢血中好酸球・IgEの著明な増多が認められた.病理組織上,リンパ濾胞様構造,密な好酸球の浸潤を認め,木村病と診断した.シクロスポリン5mg/kg/日(ネオーラル®350mg/日)内服とベタメタゾン酢酸エステル・ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム配合水性懸濁注射液(リンデロン懸濁注®2.5mg/0.5ml)局注併用により,末梢血中好酸球数および血清IgEは低下し,腫瘤は縮小した.

ステロイド治療に加え,メトトレキサート併用でより効果的であった粘膜病変を伴った多中心性細網組織球症の1例

著者: 菊池里奈子 ,   佐藤隆亮 ,   赤坂俊英 ,   小林仁

ページ範囲:P.425 - P.428

要約 64歳,男性.2005年6月頃より両手指PIP関節の腫脹,疼痛,こわばりが出現した.さらに,同年11月頃より手指と手背関節部に圧痛を伴う小結節が多数出現した.皮疹では,真皮内に好酸性,スリガラス様の胞体を有する多核巨細胞を主体とする組織球様細胞が結節状に密に浸潤しており,多中心性細網組織球症と診断した.その後,嗄声が出現し,精査したところ,中咽頭後壁に腫瘍を認めた.病理組織学的に手指の腫瘍と同様の所見であった.当初プレドニン®20mg/日単独で治療したが難治であり,プレドニン®60mg/日へ増量,メトトレキサート7.5mg/週を併用したところ,皮下結節,関節痛ともに改善傾向を示した.

Q-switched alexandrite laserにより口唇粘膜疹が消失したLaugier-Hunziker-Baran症候群の1例

著者: 大内健嗣 ,   吉田哲也 ,   大内結 ,   杉浦丹

ページ範囲:P.429 - P.432

要約 63歳,女性.Laugier-Hunziker-Baran症候群に伴う口唇粘膜メラノーシスに対して,Q-switched alexandrite laser(照射時間100ns,波長755nm)をエネルギー密度5.0J/cm2にて2回照射したところ,完全な粘膜疹の消失を得られた.口唇粘膜メラノーシスに対するレーザー治療は,Laugier-Hunziker-Baran症候群,Peutz-Jeghers症候群,labial melanotic maculeにおいて報告されている.治療例を集計し,その有効性を検証したところ,いずれにおいても低い出力および回数で,劇的な効果が確認された.口唇粘膜メラノーシスに対しては,レーザー治療が第一選択になるといえる.

臨床統計

アトピー性皮膚炎患者における前向きアンケート調査の開始時基礎情報(第1報)

著者: 古江増隆 ,   川島眞 ,   古川福実 ,   飯塚一 ,   伊藤雅章 ,   中川秀己 ,   塩原哲夫 ,   島田眞路 ,   瀧川雅浩 ,   竹原和彦 ,   宮地良樹 ,   片山一朗 ,   岩月啓氏 ,   橋本公二

ページ範囲:P.433 - P.441

要約 同一患者におけるアトピー性皮膚炎(AD)の状態,日常生活および治療について,3年間にわたる前向きアンケート調査を実施している.2006年10月の初回アンケート調査における患者基礎情報の集計結果によると,AD患者346例において,父または母がADである割合は20.5%,兄弟姉妹のいずれかがADである割合は37.4%であり,対照群の4.0%および11.2%と比較して,家族におけるADの有症率が有意に高かった.両親の喫煙に関して,母の過去における喫煙率は対照群よりAD患者群で有意に高かった.ADが悪化すると患者自身が感じる季節(複数回答)は,夏が60.4%と一番多く,次いで冬が47.7%であった.またAD患者の82.7%が,汗で症状が悪化すると考えており,そのうち14.7%は,汗をかかないように気をつけていた.

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あとがき

著者: 伊藤雅章

ページ範囲:P.444 - P.444

 論文の「原著」と「症例報告」ではどのように違うのでしょうか.本誌の投稿規定のごとく,「原著」には「症例報告」よりも多くの紙面を割当てられています.投稿される論文の中に,1例報告で「原著」としての掲載希望がときどきあります.そのほとんどは編集委員会で査読して「症例報告」の形式に縮めていただいています.では,2,3例の報告でしたら「原著」でしょうか.やはり,そうではないと思います.もちろん「症例報告」も何か報告すべき新しい点や意義があって論文とするわけですが,それらが内容に示されれば十分なわけです.一方,原著論文(original article)は,十分な議論を要する珍しい症例を報告する,複数例で新たな疾患概念を提唱する,多数例をまとめて病態を解析する,あるいは研究的な内容を報告するなどのための形式であり,記述すべき内容や考案も長さが必要で,それゆえに多くの紙面の割当があるわけです.また,研究的内容であれば,材料・方法も詳しく記述する必要があります.編集室からお返しして「症例報告」に書き換えていただく「原著」希望論文は,単に冗長や重複記述でだらだらと長いもの,その疾患についての従来の教科書的事柄を並べたてるもの,図や表を不要に多数にしているものなど,いたずらに長くなっているものが多いのです.皮膚科専門医制度の影響があると思いますが,本誌の論文の内訳をみますと,旧来より「症例報告」がきわめて多くなって,「原著」論文は激減しています.真のoriginal articleや研究論文などは英文誌にどんどん投稿されている状況も影響しているでしょう.そのような中で,本誌としては,「症例報告」論文として新しい点があり,有意義な内容で,症例や組織の写真も良好なものを採用していますし,考案内容も十分に審査していますので,学術的にとても有意義なものになっていると考えています.投稿者には,「原著」は単に長いのではなく,それなりの内容を要すること,「症例報告」は症例の“セールスポイント”を明瞭にして簡潔に考案すべきことなどを理解して,論文作成をお願いします.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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