臨床皮膚科63巻6号

2009年05月発行

症例報告

筋緊張性ジストロフィと合併した多発性石灰化上皮腫の1例

著者： 安部美穂¹ 向野哲¹ 沖山良子¹ 佐藤勘治¹ 饗場伸作¹ 金子聡¹ 中山貴博²

所属機関： ¹横浜労災病院皮膚科 ²横浜労災病院神経内科

ページ範囲：P.405 - P.408

要約　32歳，女性．初診の半年前より徐々に頭部，上肢に4個の皮下結節が出現した．組織学的に精査し，すべて石灰化上皮腫と診断した．同時に筋緊張症状を認め，内科的精査も開始され，遺伝子検索により筋緊張性ジストロフィと診断された．石灰化上皮腫は筋緊張性ジストロフィ患者にしばしば合併することが知られている．現在までの両者の合併例を集計し，男女比，発症年齢，腫瘍の数や発症部位，家族内発症率などを検討した結果，一般の石灰化上皮腫とは異なり，男性に多く，発症年齢がやや高い傾向があり，頭部に好発し多発例が多く，家族内発症が多いという特徴を有することがわかった．また，両者の合併する機序について，遺伝子異常の観点から，Wntシグナル系におけるスプライシング異常が示唆された．

参考文献

1) 藤田長久, 他: 日本臨牀 32: 554, 1974

2) Harper PS: Birth Delects 7: 343, 1972

3) 九志本東: 皮病診療 9: 76, 1987

4) 斎田恭子, 他: 筋ジストロフィー症の遺伝, 疫学および治療開発に関する研究, 昭和60年度研究報告書, p91, 1988

5) 村上信之, 他: 臨床神経学 26: 505, 1986

6) 原田俊英, 他: 広島医 43: 1795, 1990

7) 原田和俊: 現代医療 34: 69, 2002

8) 中森雅之, 他: ゲノム医学 6: 83, 2006