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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科64巻1号

2010年01月発行

雑誌目次

連載 Clinical Exercise・29

Q考えられる疾患は何か?

著者: 坂下さゆり

ページ範囲:P.5 - P.6

症 例

患 者:生後3か月,男児

主 訴:左頰部の小丘疹

既往歴:特記すべきことなし.

家族歴:特記すべきことなし.

現病歴:生後1か月頃より左頰部に小丘疹を生じ徐々に増大した.数か所の皮膚科医院で治療を受けたが改善せず,中心部が浅い潰瘍になった.

現 症:左頰部中央に10×8mm大の乾燥固着した痂皮塊があり,その周囲に径20mm程度の境界明瞭で辺縁不整の紅斑を認め,紅斑内に粟粒大の膿疱を伴う紅色小丘疹が数個散在している.所属リンパ節を触知しない(図1).

症例報告

診断に苦慮したアロマテラピーによる接触皮膚炎

著者: 岡﨑亜希 ,   水川良子 ,   狩野葉子 ,   塩原哲夫

ページ範囲:P.8 - P.12

要約 症例1:33歳,女性.上肢,体幹を中心に,特徴ある分布を呈する紅斑と色素沈着が多発した.ステロイド内服・外用,シクロスポリン内服にて増悪と寛解を繰り返すため当科受診した.使用していたエッセンシャルオイルの貼布試験は陽性であった.症例2:31歳,女性.下腿に毛囊一致性の丘疹が多発した.自ら調合したオイルでマッサージを行っていた.特異な臨床像を呈したため,診断に苦慮したが,両者とも香粧品の使用中止により皮疹は軽快した.近年,本邦においてアロマテラピーが流行しているが,エッセンシャルオイルのアレルギーや毒性などはほとんど知られていない.そのうえエッセンシャルオイルは個人によりさまざまな方法で使用されているため,その接触皮膚炎は思いもよらぬ分布や性状を呈することがある.奇妙な分布の皮疹をみた際には,接触源とその使用法について詳細な問診を行うことが重要である.

慢性甲状腺炎とSjögren症候群を合併したSweet病の1例

著者: 高塚由佳 ,   小池裕美子 ,   藤田悦子 ,   山田朋子 ,   小宮根真弓 ,   村田哲 ,   大槻マミ太郎

ページ範囲:P.13 - P.16

要約 66歳,女性.発熱,両下腿の腫脹,四肢に有痛性紅斑が出現し近医を受診した.白血球増多,CRP上昇,抗核抗体陽性を認め当科を紹介受診した.皮膚生検にて真皮浅層にびまん性好中球浸潤を認め,Sweet病と診断した.抗SS-A,抗SS-B抗体陽性,唾液腺シンチ,口唇生検からSjögren症候群(SjS),低Na,低K血症から尿細管障害,抗サイログロブリン抗体陽性から慢性甲状腺炎と診断した.ヨウ化カリウム900mg/日を内服開始し,皮疹は消失した.その後SjSに伴う尿細管障害に対しプレドニゾロンを内服した.Sweet病,SjS症候群,慢性甲状腺炎の3疾患を合併した症例の報告はこれまでになく,その成因も含め文献的に考察した.

難治性下腿潰瘍を伴ったクリオグロブリン血症の1例

著者: 中込大樹 ,   原田和俊 ,   小川陽一 ,   安藤典子 ,   川村龍吉 ,   柴垣直孝 ,   島田眞路

ページ範囲:P.17 - P.20

要約 57歳,男性.2001年冬より,両下腿の難治性下腿潰瘍を他院で加療されていた.冬期に増悪し,入院加療を受けていたが改善せず,確定診断もなされていなかった.2008年3月の入院時,足趾は壊疽のため7本が切断されており,両下腿には,腱が露出し,壊死物質が付着した潰瘍が多発していた.患者血清は4℃にて凝固し,クリオグロブリン定性が陽性であった.IgG-κ typeのM蛋白を認めたが,骨髄穿刺にて多発性骨髄腫は否定され,monoclonal gammopathy of undetermined significance(MGUS)に合併したクリオグロブリン血症と診断した.ステロイド投与,抗凝固療法,温浴療法,外用療法にて,7年ぶりに略治した.

シロスタゾールによる薬疹の1例

著者: 中野敦子 ,   籏持淳 ,   濱直人 ,   古谷野さとみ ,   塚原掌子 ,   石黒恵美子 ,   小池佑美 ,   濱崎洋一郎 ,   山﨑雙次

ページ範囲:P.21 - P.23

要約 60歳,女性.前医で脳梗塞治療中,ニフェジピン,カンデサルタンシレキセチル,イコサペント酸エチル,シロスタゾールを内服後にそう痒を伴う皮疹が出現し,拡大したため,当科紹介入院した.初診時,全身に播種状に浮腫性紅斑,丘疹がみられた.組織所見では,血管周囲性に炎症細胞浸潤を認めた.内服誘発テストを施行し,シロスタゾール投与10時間後に浮腫性紅斑が出現した.シロスタゾールによる薬疹の報告はきわめて稀である.

臭素疹の1例

著者: 洞口由香 ,   吉田亜希 ,   赤坂俊英

ページ範囲:P.25 - P.27

要約 10か月,女児.難治性てんかんで治療中であったが,痙攣のコントロールが不良であり,臭化カリウムの内服が追加された.開始後24日目から下肢,顔面に紅色の丘疹および結節が出現した.血中臭化物濃度は120mg/dlと高値を示し,臭素疹と診断した.臭化ナトリウムの内服を中止としたところ,4週間後には色素沈着を残して消退した.

胃癌を合併した抗p200類天疱瘡の1例

著者: 玉渕尚宏 ,   角田孝彦 ,   橋本隆

ページ範囲:P.29 - P.32

要約 94歳,女性.乾癬,疥癬の既往はなく,認知症と脳血管障害後の後遺症のため,特別養護老人ホームに入所中.1週間前から四肢に痒みと紅斑が出現し,小水疱も認めるようになったため,当科紹介された.両前腕・下腿を中心に搔破痕,びまん性紅斑,緊満性の小水疱が散在しているのを認めた.粘膜疹は認めなかった.病理組織像は表皮下水疱で,その周囲に好酸球を主体とした炎症細胞が浸潤していた.酵素抗体直接法では,基底膜にIgGの沈着を認め,真皮に肥満細胞と思われるIgE陽性細胞の浸潤が目立っていた.真皮抽出液を用いた免疫ブロット法では,患者血清のIgG抗体は200kDa蛋白に反応した.以上より,抗p200類天疱瘡と診断した.治療として,プレドニゾロン30mg/日内服にて皮疹は消退した.治療途中に進行胃癌が発見された.

Blepharochalasisの1例

著者: 藤尾由美 ,   高江雄二郎 ,   石井健 ,   海老原全 ,   天谷雅行 ,   新妻寛 ,   貴志和生

ページ範囲:P.33 - P.36

要約 17歳,女性.11歳頃より自覚症状を伴わない両眼瞼の腫脹を認め,ステロイド薬を含む外用治療に難治であった.初診時,両眼瞼は淡紅色調を呈し腫脹していた.眼瞼皮膚は軟らかく弾力を欠き,表面には細かい皺と毛細血管の拡張を認めた.病理組織所見では,血管の拡張と軽度の表皮の萎縮を認め,elastica van Gieson染色にて弾性線維の著しい減少と断裂・変性を認めた.これらより,blepharochalasisと診断した.余剰皮膚の切除を行ったが,画像検査で涙腺の腫脹と甲状腺腫が指摘され,類似疾患のAscher症候群への移行も考えられる.若年者で持続する両眼瞼の腫脹をみた場合に本疾患も鑑別に挙げることが大切である.

全身性エリテマトーデスの初期症状として発症した腫瘍性紅斑性狼瘡(lupus erythematosus tumidus)の1例

著者: 政次朝子 ,   伊東詩織 ,   太田深雪 ,   荒井利恵 ,   堀口裕治

ページ範囲:P.37 - P.40

要約 42歳,女性.日光曝露後に発熱とともに顔面に浸潤を触れる紅斑が多発した.組織学的には表皮に変化はなく,真皮全層にわたり毛包周囲と血管周囲にリンパ球が浸潤し,毛包周囲と脂肪織にムチンの沈着を認めた.表皮真皮接合部や血管周囲の免疫グロブリンの沈着は陰性であった.血液検査では白血球減少と抗核抗体陽性(2,560倍),抗Sm抗体陽性,抗RNP抗体陽性,抗ssDNA抗体陽性であった.腫瘍性紅斑性狼瘡(lupus erythematosus tumidus:LET)と診断し,プレドニゾロン20mgの内服治療を開始した.皮疹や全身症状は消失したが,プレドニゾロンを10mgまで減量したところ,発熱を伴い蝶形紅斑が出現した.本例は全身性エリテマトーデスの初期症状として発症したLETと考えた.

Mechanic's handを有し,急速進行性間質性肺炎を併発して死に至った皮膚筋炎の1例

著者: 石田正 ,   早川順 ,   横山琢磨 ,   後藤元 ,   塩原哲夫

ページ範囲:P.41 - P.45

要約 55歳,女性.呼吸困難と38℃台の発熱で発症し,膝蓋,肘頭の角化性紅斑とmechanic's hand(MH)を認めた.CKは477IU/lと軽度上昇にとどまり,臨床的に筋炎症状の乏しい皮膚筋炎(clinically amyopathic dermatomyositis:C-ADM)と診断した.急速進行性間質性肺炎を併発し,ステロイドパルス,シクロホスファミドパルス,シクロスポリンAの投与にもかかわらず,1か月で死の転帰をとった.間質性肺炎(IP)は,C-ADMや抗アミノアシルt-RNA合成酵素抗体症候群に合併しやすいとされている.過去の報告例は自験例同様MHとIPの相関をより強く示唆しており,MH報告43例中41例においてIPの合併がみられた.皮膚筋炎の病態に関し,近年はHLAや自己抗体,ウイルス感染などの解析が中心となっているが,皮膚症状との関連についても検討していく必要がある.

顔面に紅色丘疹を伴った再発性多発性軟骨炎の1例

著者: 豊永三恵子 ,   水野可魚 ,   小倉睦実 ,   岡本祐之

ページ範囲:P.47 - P.50

要約 61歳,女性.2005年8月頃から顔面に自覚症状を伴わない紅色丘疹が出現するようになった.6か月後,耳介の腫脹,発赤,熱感が出現し,赤沈の亢進とCRPの上昇がみられた.耳介からの生検にて,軟骨およびその周囲に炎症細胞浸潤を認め,再発性多発性軟骨炎と診断した.耳鼻科にて両耳の難聴,喉頭の狭窄を指摘されたが,気道軟骨炎は明らかではなかった.再発性多発性軟骨炎における皮疹の出現頻度は約1/3とされ,その臨床像は多彩である.

Linear and whorled nevoid hypermelanosisの1例

著者: 飯沼晋 ,   竹田恵子 ,   小松成綱 ,   高橋一朗 ,   本間大 ,   高橋英俊 ,   山本明美 ,   飯塚一

ページ範囲:P.51 - P.54

要約 6歳,男児.出生時からほぼ全身に線状の色素斑を認めた.先行する炎症症状,水疱形成はない.初診時,顔面,体幹,両上腕にBlaschko線に沿った線状,渦状の淡褐色の色素斑を認めた.組織学的に表皮基底層のメラニン増加を認めたが,組織学的色素失調を認めず,Linear and whorled nevoid hypermelanosisと診断した.染色体分析では,過剰な3番染色体由来の環状染色体を伴う47タイプと正常男性核型のモザイク〔47,XY,+r(3)/46,XY〕を認めた.本症はBlaschko線に沿った線状ないし渦状の色素斑を特徴とするまれな疾患で,染色体モザイクを反映した皮膚症状と考えられている.Blaschko線に沿った色素異常は全身性の染色体モザイクを疑う皮膚症状として重要であると考えられる.

多発融合局面を形成した陰囊被角血管腫

著者: 日野上はるな ,   米田真理 ,   菊池麻衣子 ,   大畑千佳

ページ範囲:P.55 - P.58

要約 62歳,男性.1998年頃より陰囊に紅色丘疹が生じ,時々出血していた.次第に増加したため,2008年2月当科を受診した.初診時,陰囊に3~10mm大の角化性黒紫色丘疹が約180個と多発し,一部で癒合傾向を認め,最大30×25mm大の大きな多発融合局面を複数形成していた.また,陰茎にも4mm大の丘疹を1個認めた.生検組織にて,真皮乳頭層に拡張した血管が増殖し,表皮肥厚,表皮突起の延長,角質肥厚を認め,被角血管腫と診断した.患者は直腸癌の治療中であったため,治療を希望されず,経過観察となった.

ダーモスコピーで色素性病変が疑われたBowen病の1例

著者: 林裕嘉 ,   森布衣子 ,   木花いづみ ,   斉藤玲子 ,   田中勝

ページ範囲:P.59 - P.62

要約 89歳,女性.数か月前に左足背の1mm大の褐色点に気付き,徐々に拡大した.初診時,左足背に5mm大表面粗糙でわずかに扁平隆起する黒褐色斑がみられ,ダーモスコピーでは非定型ネットワーク,小点状血管,不規則線条を認めた.上皮内表在拡大型悪性黒色腫を疑い3mm離し切除したが,組織は典型的なBowen病であった.Fontana-Masson染色で,不規則な表皮肥厚のなかに不均一なメラニン沈着があり,ダーモスコピーの非定型色素ネットワークに対応した.色素性Bowen病は,その色調から悪性黒色腫in situと鑑別が困難で,黒色腫の診断での広範囲切除を受けた症例の報告もある.色素性病変をダーモスコピーで評価する際には,稀だが色素性Bowen病も考える必要がある.

外尿道口に病変を認めたHPV16陽性Queyrat紅色肥厚症

著者: 山田大資 ,   吉野公二

ページ範囲:P.63 - P.65

要約 61歳,男性.基礎疾患に重症筋無力症があり,10年来ステロイドによる内服加療している.初診1年前から亀頭部に紅色局面が出現し,徐々に拡大した.初診時,亀頭から冠状溝,包皮にかけて軽度角化,一部びらんを呈する紅色局面を認めた.生検はBowen病の組織所見で,Queyrat紅色肥厚症と診断した.肉眼的病変境界部より5mm離し切除したが,切除標本で広範囲に腫瘍細胞の残存を認めた.肉眼的正常部位にも腫瘍細胞を認めた.Mapping biopsyで外尿道口に腫瘍細胞を認め,陰茎部分切断を施行した.また,PCR-Invader法にてHPV-DNAの検索でHPV16のみ陽性で,本症の発生にHPV感染の関連が示唆された.

頰部に生じた隆起性皮膚線維肉腫の2例

著者: 橋本玲奈 ,   森布衣子 ,   木花いづみ ,   小林尚史

ページ範囲:P.67 - P.71

要約 症例1:55歳,男性.2年前より自覚した表面皮膚の陥凹を伴う左頰部の皮下腫瘤で受診した.腫瘍の浸潤は眼窩脂肪内,頰骨骨膜直上まで及び,二度の追加切除を要した.術後3年が経過するが,再発はない.症例2:64歳,男性.数年前より出現した右頰部の皮内硬結と,それに連続する弾性軟,ドーム状に隆起する粉瘤を疑わせる腫瘤で受診した.下床は頰骨骨膜を含め,粘膜は全層で切除した.2例とも病理組織検査にて断端陰性を確認した後に,二期的に再建術を行った.顔面は機能的,整容的に重要な臓器が密集しているため,腫瘍の浸潤が深部に及び,追加切除の可能性がある場合は,病理組織学的に断端陰性を確認した後に再建する,二期的手術が望ましい.

多発性皮下腫瘤を呈した転移性膀胱癌の1例

著者: 堀内和一朗 ,   児玉雅仁

ページ範囲:P.72 - P.74

要約 80歳,男性.前立腺肥大症にて2004年より泌尿器科に通院していた.2008年肉眼的血尿が出現し,膀胱鏡検査にて2か所の腫瘍性病変を認めた.経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt)にて切除し,病理組織学的診断は移行上皮癌であった.術後約1か月頃から,体幹に皮下腫瘤が多発した.病理組織学的に移行上皮細胞由来と思われる腫瘍巣を認め,膀胱移行上皮癌の皮膚転移と診断した.膀胱癌の多発皮膚転移の報告は稀である.

全身性エリテマトーデス患者に生じた白癬性肉芽腫

著者: 折目真理 ,   田中英一郎 ,   伊藤雅章

ページ範囲:P.75 - P.79

要約 53歳,女性.38歳時より全身性エリテマトーデスに対しプレドニゾロンおよび免疫抑制剤を内服していた.約半年前より左前腕と下腹部にそう痒を伴う皮下結節を自覚し,近医皮膚科を経て当科を受診した.手,足に爪白癬を合併していた.病理組織所見や真菌培養などにより,Trichophyton rubrumによる囊腫型白癬性肉芽腫と診断した.塩酸テルビナフィン125mg/日の内服20週後,左前腕と下腹部の皮下結節の消失と爪白癬の改善を認めた.爪白癬からも同菌が検出され,掻破による外傷によって感染したと考えた.易感染性宿主では,浅在性白癬や爪白癬の治療を適切に行うことが重要である.

壊疽性膿皮症―植皮術を併用した1例

著者: 大口由香 ,   清水聡子 ,   安居千賀子 ,   保科大地 ,   堀内勝巳 ,   土屋喜久夫

ページ範囲:P.80 - P.84

要約 75歳,男性.特に誘因なく,外陰部,四肢に多発性の潰瘍が出現した.外陰部,四肢に径8.5cmまでの潰瘍および紫紅色結節を散在性に認めた.病理組織では,真皮全層にわたり主として好中球が細胞浸潤していた.臨床像,病理所見より壊疽性膿皮症と診断した.プレドニゾロン1mg/kg/日が無効のため,シクロスポリン3~5mg/kg/日を併用した.その後,病変の拡大,新生はとどまったものの,潰瘍は縮小傾向なく,下腿ではアキレス腱の露出も認め,保存的治療での閉鎖は困難であった.病勢は落ち着いていると判断し,4か所に分層植皮術を施行したところ,生着し,すべての潰瘍が治癒した.本疾患では外科的治療は一般的には避けるべきとされているが,病勢が落ち着いている難治性の壊疽性膿皮症には治療の選択肢として有用な症例もあると考えた.

治療

大臀筋を付着させた双葉皮弁により再建した褥瘡の1例

著者: 一宮誠 ,   安倍吉郎 ,   武藤正彦

ページ範囲:P.86 - P.88

要約 78歳,女性.両腸骨稜部の褥瘡にて大臀筋弁および穿通枝皮弁での再建歴あり.今回,同部に褥瘡を再発.右側はデブリードマン施行,一次縫縮したが,左側はデブリードマンをしたところ,死腔を生じた.前回の手術歴のため,上臀動脈を含んだ大臀筋皮弁を用いた再建はできなかったため,残存した大臀筋を皮弁に付着させた筋皮弁にて再建した.自験例では,大臀筋皮弁の筋体は,上臀動脈によっては栄養されず,皮膚からの血行によって栄養されるのが特徴である.

書評

―著:ジョージ・ボダージュ(Georges Bordage)訳:大滝純司,水嶋春朔,當山紀子―今日からはじめられるボダージュ先生の医学英語論文講座

著者: 新保卓郎

ページ範囲:P.28 - P.28

 今やあまたのコミュニケーション技術が利用され,個人は多数の表現手段で社会とつながっている.論文を作成するというのも,1つのコミュニケーションの手段であろう.自分の経験や思考を自分の中だけにとどめず,皆が共有できる情報として伝えていく.

 論文を書くことそのものが,コミュニケーション技能を磨くための重要な医学研修の方法であろう.論文を書こうと思えば,読者の思考の流れに思いをはせなければまとめることができない.この方法の習得に,近道はないものと思われる.多数の医学文献を読み,論文作成の経験を積み,同僚や上司から指摘を繰り返し受け,多数のreject letterを積み重ねて,修得されるものであろう.しかし手引きがあればありがたい.本書はこのような論文作成の優れた手引書である.ポイントが簡潔に整理され,まとめられている.おそらく半日で読み終える分量であろう.その中に重要なエッセンスが多数盛り込まれている.

―著:真野俊樹―医療経済学で読み解く医療のモンダイ

著者: 田中滋

ページ範囲:P.85 - P.85

 世の中,特に医療人の間では「医療経済」を扱う議論はすべて「医療経済学」に属すると思われているのではなかろうか.本書はその違いを知るとともに,経済学の考え方を学び,専門家や官僚と医療政策論議を交わすための基礎能力を与えてくれる解説書である.

 前者,つまり「医療経済論」は,医療費をめぐる論争,医療制度改革のうちファイナンスのあり方,および医療提供体制にかかわる政策論など広範な分野が当てはまる.医療経済論は,医療経済学の技法を使っても使わなくてもこの世に役立つ(役立たない)議論が可能である.ただし実際のところ,経済学の素養を持つ人たちにとっては,客観的な理論体系からは程遠く,思いつきを並べているだけとしか見えない粗雑な医療経済論が目立つことも否定できない.

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あとがき

著者: 渡辺晋一

ページ範囲:P.94 - P.94

 昨年の最大の出来事は政権交代で,そのほかに新型インフルエンザなどがある.そこで今回は日本のワクチン行政の問題点を述べてみたい.

 新型インフルエンザにより老人の肺炎の増加が懸念され,肺炎球菌ワクチンがマスコミの話題に上るようになったが,肺炎球菌ワクチンの接種は,すでにWHOにより推奨されており,1999年のアメリカでは,すでに65歳以上の半数以上の人が接種している.しかし,日本では「脾臓摘出患者の肺炎球菌感染症予防」以外にワクチン接種の保険適用がなく,また再接種は禁じられている.しかし米国では,普通に免疫能を有する人が65歳未満でワクチンを接種した場合,65歳以上になり,かつ前回の接種から5年以上経過した場合は2度目の再接種が推奨されている.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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