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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科64巻10号

2010年09月発行

雑誌目次

連載 Clinical Exercise・37

Q考えられる疾患は何か?

著者: 大沼すみ

ページ範囲:P.731 - P.732

症例

患 者:66歳,男性

主 訴:体幹,四肢のそう痒を伴う難治性皮疹

既往歴:56歳より花粉症.58歳時,直腸癌手術.

家族歴:第1子,第2子にアトピー性皮膚炎.

飲酒歴:18歳より1日に日本酒1升,ビール大ビン1本飲酒.61歳より1日に焼酎1.5合,ビール350ml飲酒.

現病歴:初診2か月前より四肢にそう痒を伴う皮疹が出現した.某医受診しステロイド外用剤を投与されたが軽快しなかった.初診1か月前より体幹にも皮疹が出現し,徐々に拡大するため当科を受診した.

現 症:体幹,四肢に拇指頭大~鶏卵大の軽度浸潤を伴った紅斑が認められた(図1).

原著

顔面に環状紅斑の出没を繰り返した小児Sjögren症候群

著者: 太田馨 ,   岡本祐之 ,   二村省三

ページ範囲:P.734 - P.738

要約 10歳,男児.初診の半年前から虫刺症を契機に顔面に環状紅斑が出現した.抗核抗体と抗SS-A抗体,抗SS-B抗体が陽性のため,当科を紹介受診した.一部に鱗屑,痂皮を伴った環状紅斑が両頰部,左額部にみられた.乾燥症状はなく,耳下腺造影MRI像では導管の拡張とapple tree appearance(1mm以下の点状陰影)を呈していた.以上より,小児Sjögren症候群と診断した.ステロイド内服投与にて皮疹は改善したが,6か月後,再び虫刺症後に顔面に同様の皮疹が生じた.環状紅斑はSjögren症候群の代表的皮膚病変であり,抗SS-A抗体関連病変として知られている.その誘因には日光曝露が重要であるが,虫刺症も皮疹の誘発に関連している可能性があるものと考えられた.

今月の症例

ランダム皮膚生検により診断したintravascular large B-cell lymphomaの1例

著者: 御子柴舞子 ,   小口真司 ,   西島健 ,   森勇一

ページ範囲:P.739 - P.742

要約 90歳,男性.持続する発熱,全身倦怠感のため当院内科に入院した.血液検査にて,汎血球減少,LDH508IU/l,可溶性IL-2レセプター5,920IU/mlと高値だったため,悪性リンパ腫が疑われた.表在リンパ節の腫脹はなく,各種画像検査,骨髄生検,肝生検を施行されたが,確定診断には至らなかった.入院経過中に意識障害,低酸素血症が出現し,全身状態が急速に悪化した.臨床検査所見より,intravascular large B-cell lymphomaが疑われた.皮疹はなく,正常に見える皮膚からのランダム皮膚生検を施行した.病理組織像では,皮下脂肪織の毛細血管内に大型で異型性を有する腫瘍細胞を認めた.免疫組織化学染色で,CD79a陽性であり,自験例をintravascular large B-cell lymphomaと診断した.

症例報告

フキノトウアレルギーの4例

著者: 田中飛鳥 ,   宮嵜敦 ,   面高信平 ,   高田実

ページ範囲:P.743 - P.746

要約 フキノトウ摂食後に生じた即時型アレルギーの4例を報告した.症例1:35歳,男性.フキノトウ摂食4時間後に顔の腫脹が出現した.症例2:75歳,女性.フキノトウ摂食10分後に眼周囲のそう痒と咽頭の違和感を自覚した.症例3:71歳,女性.フキノトウ摂食3時間後に全身のそう痒性皮疹を自覚した.症例4:66歳,女性.フキノトウ摂食数分後に嘔気と手のそう痒感を自覚した.摂食から症状出現までの時間は直後から数時間と幅広く,症状も口腔内アレルギー様症状から全身症状まで多岐にわたった.フキノトウのプリック・プリックテストでは全例において雄花のみが陽性であった.また,4例中3例でほかのキク科植物の花粉の特異的IgE抗体(CAP-RAST)が陽性を示した.フキノトウは花粉を摂食する珍しい食物であり,抗原は熱や消化酵素に耐性であることから,花粉による完全食物アレルゲンと考えられる.

右下肢の同一部位に5年を隔てて再発した線状苔癬

著者: 井上桐子 ,   狩野葉子 ,   稲岡峰幸 ,   塩原哲夫

ページ範囲:P.747 - P.750

要約 7歳,女児.1歳時に右足部から臀部に線状に配列する帽針頭大の淡紅褐色の丘疹が出現し,臨床的にBlaschko lineに沿って生じた線状苔癬(lichen striatus:LS)と診断した.発疹は16か月で消退したが,5年後の7歳時に同一部位に再発した.臨床的には紫紅褐色の米粒大丘疹であり,病理組織学的にはLSに合致していた.小児のLSを文献検索したところ,同一施設内での10~17年の調査期間における再発率は2~6%,再発までの最長期間は4年で,同一もしくは同側部位に再発しやすい傾向がみられた.しかしたとえ同一部位でも,自験例のように再発時の発疹の性状が初発時とかなり異なっている場合には,同一施設を受診しなければ再発と認識することは難しい.こうした小児におけるLSの再発を確認する困難さを考え合わせると,過去の統計は実際の再発率を反映していない可能性がある.今後はLSを経験した際には同一Blaschko line上の過去の発疹の有無を聴取する必要がある.

肥厚性皮膚骨膜症の1例

著者: 重松由紀子 ,   新関寛徳 ,   野崎誠 ,   佐々木りか子 ,   堀川玲子 ,   関敦仁 ,   中川温子 ,   土居博美 ,   椛島健治

ページ範囲:P.751 - P.754

要約 19歳,男性.既往歴,家族歴に特記することはない.13歳頃より手指末端肥大が出現した.ばち指を認めたが,内分泌系・呼吸器・循環器系の疾患の異常はみられなかった.四肢の骨X線像では,長管骨骨幹部骨皮質が肥厚していた.頭部に脳回転状皮膚は明らかではなかった.前額部左側皮膚生検で膠原線維の増生と脂腺の過形成,および汗腺の増加がみられた.本症の3主徴であるばち指,骨膜性骨肥厚,皮膚肥厚性変化を認めたが,頭部脳回転状皮膚がなかったため,不全型肥厚性皮膚骨膜症と診断した.本症は,疾患特異的検査が存在せず,加齢とともに特徴的な症状が揃うため,時に診断に苦慮する.近年,原因遺伝子の検索がきっかけとなり,血中・尿中プロスタグランジン(PG)E2濃度が高い症例が報告されたが自験例では正常範囲であった.今後PGE2を含む生理活性物質の検索が,診断や臨床病型分類に活用されよう.

尋常性乾癬を合併した皮膚筋炎の2例

著者: 新田悠紀子 ,   影山潮人 ,   大野稔之 ,   嘉陽織江 ,   松下佳代

ページ範囲:P.755 - P.760

要約 症例1:56歳,男性.1988年,尋常性乾癬に罹患.2004年に皮膚筋炎と診断され,プレドニゾロン(prednisolone:PSL)60mg/日の内服で軽快.2007年にCK値上昇,臀部の鱗屑を伴う紅斑局面の増悪をみた.症例2:69歳,男性.1997年に皮膚筋炎と診断,精査にて大腸癌が判明,手術施行し,経過良好であった.2005年に皮膚筋炎再燃,腰と両膝の角化性紅斑局面が出現増悪,生検で尋常性乾癬と診断した.2症例ともPSL内服にてコントロール中の皮膚筋炎が再燃し,経過良好であった尋常性乾癬も増悪した.少量のPSL投与のみでは皮膚筋炎,尋常性乾癬ともに寛解せず,シクロスポリン(200mg/日)あるいはシクロホスファミド(100mg/日)の併用にて2疾患とも軽快した.自験例2例とも,皮膚筋炎再燃時に乾癬の増悪を認め,治療はステロイドと乾癬に有用な免疫抑制薬の投与が必要かつ有効であった.

再発性多発性軟骨炎の1例

著者: 糟谷啓 ,   松下佳代

ページ範囲:P.761 - P.764

要約 32歳,男性.4年前に潰瘍性大腸炎を発症し,サラゾスルファピリジン1.5g/日にて加療を受け,経過は良好であった.初診の4週間前に右耳介が腫脹し,近医にて再発性多発性軟骨炎(relapsing polychondritis:RPC)を疑われた.プレドニゾロン(PSL)15mg/日で治療し,耳介腫脹は消失した.PSL投与終了4か月後,ぶどう膜炎を発症し,続いて左耳介腫脹が出現した.病理組織像では,真皮から真皮軟骨境界部に多核球およびリンパ球が多数浸潤していた.Damiani & Levineの基準により,RPCと確定診断した.PSL10mg/日を再開し,2週間後にぶどう膜炎は軽快した.しかし,左耳介腫脹は軽快しないため,PSLを15mg/日に増量し,コルヒチン1mg/日を追加したところ,2週間後に軽快した.以降,耳介腫脹の再発は認めない.全経過中に潰瘍性大腸炎の増悪はなかった.

ステロイド減量中に症状の再燃がみられた好酸球性筋膜炎の1例

著者: 松山阿美子 ,   松倉節子 ,   大野滋 ,   池澤善郎 ,   蒲原毅

ページ範囲:P.765 - P.768

要約 57歳,女性.エアロビクスを熱心に行っていた.手指,足趾を除く両側の下腿,前腕に浮腫と皮膚硬化が出現した.末梢血好酸球が増多し,病理組織学的検査で筋膜の肥厚と真皮から筋膜にかけて好酸球浸潤がみられ,好酸球性筋膜炎と診断した.プレドニゾロン30mg/日で症状の著明な改善が得られた.しかし,開始約2か月後,同剤を25mg/日から20mg/日に減量したところ,症状が再燃した.プレドニゾロン30mg/日の増量とアザチオプリン50mg/日を内服し,2週間後にアザチオプリン100mg/日に増量したが,皮膚硬化が残存している.過去の報告でも,ステロイドの減量中に症状が再燃して治療に難渋する例が少なからずある.好酸球性筋膜炎の治療では,ステロイドの減量法と症状再燃後の対処法の確立が必要であると考えられた.

全身性エリテマトーデスに対するステロイド長期内服中に生じた壊死性筋膜炎による広範囲皮膚欠損を上皮化しえた1例

著者: 川西恵美子 ,   田嶋佐妃 ,   水谷浩美 ,   西田睦美 ,   浅井純 ,   竹中秀也 ,   岸本三郎

ページ範囲:P.769 - P.773

要約 45歳,女性.全身性エリテマトーデスに対しステロイドを長期内服中,左下腿の腫脹,激痛を主訴に当科を受診した.左下腿から足背にかけて広範囲に皮膚の壊死を認め,壊死性筋膜炎の診断で緊急入院のうえ,デブリードマン,抗生薬投与を行った.その後,感染は制御されたが,左下腿全周と足背にかけて皮膚潰瘍が残存した.分層植皮は,ステロイド長期内服による高度皮膚萎縮のため,デルマトームによる採皮が困難であった.サクションブリスター,全層植皮,頭皮からのThiersch植皮を繰り返し行い,潰瘍は略治した.なかでも頭皮からのThiersch植皮は,採皮後の上皮化が早く,同部位から何度も採皮することができるため,本症例のように採皮部の選択に難渋する広範囲皮膚欠損に対して,有効な手段であると考えられた.

頸部右側に生じた軟骨母斑の1例

著者: 櫻井英一 ,   前田文彦 ,   高橋和宏 ,   赤坂俊英

ページ範囲:P.775 - P.778

要約 4歳,男児.出生時より頸部右側に常色結節がみられた.病理組織学的に,軟骨細胞と間質よりなる腫瘍塊を認めた.腫瘍塊は,Elastica-van Gieson染色にて軟骨成分に加えて豊富な弾性線維を認め,軟骨母斑と診断した.MRI検査において軟骨組織に一致した部位が低信号を呈し,その周囲の脂肪組織を反映した部位は高信号で描出された.MRIなどの画像検査は,鑑別やその病変の深さを知るうえで有用である.

乳頭上に突出した線維腺腫の1例

著者: 秦由美 ,   伊藤恵子

ページ範囲:P.779 - P.782

要約 39歳,女性.初診の半年前より左乳頭上に米粒大の腫瘤を自覚した.徐々に増大したため,切除を目的に当科を初診した.左乳頭上に約1.5cmの淡紅色,表面平滑な弾性やや軟の結節がみられ,牽引すると有茎性で乳頭中央内部から連なっていた.病理組織学的には,結節部は菲薄化した重層扁平上皮,茎部は2列円柱上皮で覆われ,真皮中層から断端にかけて線維性被膜に包まれた腫瘍塊が存在していた.構成する細胞は,乳腺排泄管を思わせる類円形に保たれた管腔構造と,その周囲の間質細胞の増生からなっていた.免疫染色にて,estorogen receptor(ER),progesteron receptor(PR)の存在が確認された.以上から,管腔は乳腺組織と判断し,管周囲型主体の線維腺腫と診断した.調べえた限り,乳房内にみられる線維腺腫が乳頭上に突出した報告は今までにない.稀と思われるが乳頭上に突出した腫瘤の鑑別として,線維腺腫も念頭に置くべきと考えた.

類血管型線維性組織球腫の1例

著者: 山岡華児 ,   加藤正幸 ,   生駒憲広 ,   松山孝 ,   小澤明

ページ範囲:P.783 - P.786

要約 39歳,女性.2008年1月,右前腕伸側に時々痛みを伴う腫瘤が出現した.同年5月,当科初診時,同部位に15×10mm大の表面平滑で淡褐色調,可動性良好な弾性軟の皮下腫瘤を認め,全摘切除術を施行した.病理組織より類血管型線維性組織球腫(angiomatoid fibrous histiocytoma;AFH)と診断した.本邦のAFHの報告は良性と悪性の分類が混同して報告されている.MIB-1 labeling indexを用いた腫瘍細胞増殖能の検討が悪性度の補助診断として有用であるのではないかと考えた.

局在型多発性グロムス腫瘍の1例

著者: 岸田大 ,   中川浩一 ,   吉田康彦 ,   上原慎司 ,   吉田慶子

ページ範囲:P.787 - P.790

要約 30歳,女性.10歳頃に虐待を受けた腰部に,表面上は淡い青色を呈する皮内ないしは皮下の結節が集簇する腫瘍が発生した.腫瘍の出現は虐待を受けた直後からであった.自発痛はなかったが圧痛は認めた.すべての結節を一塊に摘出した.摘出標本の病理組織像では,拡張した血管腔とそれを取り囲む立方形の腫瘍細胞が観察され,免疫組織化学染色でα-SMAが陽性であった.以上の臨床像と病理組織像から,glomangiomaの像を呈した局在型多発性グロムス腫瘍と診断した.臨床型が局在型多発性で組織型がglomangiomaであった点が特異的であった.従来より,この組織像は汎発型多発性の病型に多くみられるとされてきたが,文献を渉猟すると,同様に臨床像と組織型が一致しない症例が散見され,これらの関連性についてはさらなる症例の集積が必要であると考えた.

ビメンチン陽性の棘融解型有棘細胞癌の1例

著者: 山田大資 ,   吉野公二

ページ範囲:P.791 - P.793

要約 85歳,男性.右3指背側の難治性潰瘍を主訴に受診し,皮膚生検にて有棘細胞癌と診断した.肉眼的病変境界部から1cm離し,深部は伸筋腱の直上で切除した.センチネルリンパ節転移は陰性であった.術後2年経過した現在まで再発・転移はみられていない.病理組織学的に腫瘍細胞は胞巣内で棘融解を示し,免疫組織学所見はビメンチン,サイトケラチンが陽性であった.ビメンチンを発現する棘融解型有棘細胞癌は転移能が高い可能性が指摘されており,文献的考察とともに報告する.

両側腋窩リンパ節に転移したエクリンらせん腺癌の1例

著者: 山田元人 ,   鈴木教之 ,   稲坂優 ,   有本理恵

ページ範囲:P.795 - P.798

要約 74歳,男性.30年前より背部正中に皮膚腫瘍があった.2008年5月頃より増大してきたため,近医外科にて切除術を受けた.病理組織が低分化悪性腫瘍であり,断端陽性であったため,当科を受診した.初診時背部正中に切除後の皮膚潰瘍を認め,両側腋窩にリンパ節腫脹を認めた.近医での切除標本は当院の病理で低分化腺癌と診断され,他部位からの転移性腫瘍である可能性も示唆された.消化管を含め全身検索を行ったが,ほかに原発と思われる腫瘍を認めなかった.2008年11月,切除術を施行した.切除標本では残存腫瘍とそのすぐ近傍にエクリンらせん腺腫を認め,腫瘍本体は低分化のエクリンらせん腺癌であると考えた.エクリンらせん腺癌は報告例が少なく,きわめて稀な腫瘍である.

ランダム皮膚生検にて確診されたintravascular large B-cell lymphomaの2例

著者: 石川明子 ,   山田ひかり ,   横林ひとみ ,   石浦信子 ,   渡辺玲 ,   玉木毅

ページ範囲:P.799 - P.803

要約 症例1:66歳,男性.半年前より不明熱があり,PETにて両肺の浸潤影を指摘された.呼吸状態が急速に増悪し,肺生検は施行できなかったが,ランダム皮膚生検にて皮下脂肪織の血管内に異型リンパ球を認めた.Intravascular large B-cell lymphomaと診断し,直ちにR(リツキシマブ)-CHOP(シクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン+プレドニゾロン)療法開始し,著効した.症例2:81歳,男性.2か月前より歩行困難が出現し,多発脳梗塞の再発,腎機能の悪化, 急速な呼吸状態の悪化を認めた.ランダム皮膚生検にて,症例1と同様に皮下脂肪織の血管内に異型リンパ球を認め,intravascular large B-cell lymphomaと診断した.R-CHOP療法が著効した.

臨床統計

中等症~重症乾癬における寛解後維持療法(ネオーラル®内服vsビタミンD3軟膏)の比較検討

著者: 守屋千賀子 ,   萱島研一 ,   栗崎道紀 ,   深町幸一郎 ,   小串葉月 ,   牧野公司 ,   山田理子 ,   松井珠乃 ,   三宅大我 ,   牧野貴充 ,   若杉正司 ,   木下美佳 ,   木村達 ,   平井俊二 ,   大石空 ,   木藤正人 ,   前川嘉洋 ,   小野友道 ,   尹浩信

ページ範囲:P.804 - P.808

要約 PASIスコア12以上(中等症以上)の尋常性乾癬患者に対して,ネオーラル®内服による寛解導入療法を施行した.PASIスコアが75%以上改善した症例を対象に,低用量ネオーラル®単独投与群(A群)と高濃度ビタミンD3外用薬単独投与群(B群)の2群に分けて,寛解後維持療法を12週間施行した.PASIスコアの変動およびそう痒の程度の推移,またネオーラル®の安全性の指標として血清クレアチニン値および血圧値を観察した.その結果,A群はPASIスコアの改善がみられ,B群はPASIスコア,そう痒の悪化傾向がみられた.A群において維持療法前後の血清クレアチニン値・血圧値に有意差はなかった.乾癬治療のアドヒアランスを維持するためには,寛解後維持療法において外用薬中心の治療だけでなく,内服薬による治療も考慮する必要がある.そう痒,皮疹の改善など高い有効性を認めるネオーラル®による寛解維持も選択肢の1つであると考えられた.

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あとがき

著者: 瀧川雅浩

ページ範囲:P.812 - P.812

 猿が庭先に来る,というと,なにか里山ののんびりした風景を思い浮かべますが,実際は全く違うのです. 私の京都の家は,北山地区の山の中腹にあります.後ろは,上賀茂神社の寺領である神山とそれに続く国有林(一部は京大農学部演習林)で,うっそうとした森です.2年前から,そこに住む猿の軍団が,近辺に現れるようになったのです.わが家的には,2年前の春のある休みの日でした.朝早く,どたどたと家を揺るがす物音がしたので,女房が階段から落ちたかと思って,見に行ってみました.なんと,庭に猿が数匹おり,屋根の上から飛んだ音だったのです.ちょうど,庭にできていた季節はずれのみかんを食べられました.もちろん,棒をもって追いかけましたが,相手は猿のこと,あっという間に山の中に姿を消したのです.それが,ことの発端で,その後,数か月に1回,多いときは,30匹ぐらい,お父さん,お母さん,息子,娘,赤ちゃん,とやってきて,庭をまるでわが家のようにうろつき,ささやかな家庭菜園のレタスなどを食べるのです.最近では,月に1回,まるで,回診のようにやってきては,悪さをする次第です.あるときなどは,女房がメールをしていて,ひょいと窓の外を除いてみると,猿が庭のぶどうを食べながら,じっと窓越しに見ていた,というような笑えぬ話もあります.聞いてみると,山には,約6家族の猿の集団が住んでいるようです.これが,交代に出没するのです.もちろん,出てくるたびに,おまわりさん,市の職員がやってきて,花火を打ち上げて,音で驚かします.はじめは逃げていたようですが,8月のお盆のときは,既に学習済みで,音だけで怖くないとわかったようで,逃げもしません.もっとも,市職員の乗ってくる軽自動車に猿のステッカーを貼っているので,なめられているのかもしれません.おまわりさんに聞くと,猿に囲まれて襲われそうになったこともあるとのこと.驚いたことに,猿が出てきた数日後には,なぜか鹿も近辺に出てくるのです.この話を孫にしたら,「ライオンも出てくるの?」「お庭は動物園ではありません!」

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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