文献詳細
文献概要
症例報告
乳頭上に突出した線維腺腫の1例
著者: 秦由美1 伊藤恵子1
所属機関: 1川口市立医療センター皮膚科
ページ範囲:P.779 - P.782
文献購入ページに移動要約 39歳,女性.初診の半年前より左乳頭上に米粒大の腫瘤を自覚した.徐々に増大したため,切除を目的に当科を初診した.左乳頭上に約1.5cmの淡紅色,表面平滑な弾性やや軟の結節がみられ,牽引すると有茎性で乳頭中央内部から連なっていた.病理組織学的には,結節部は菲薄化した重層扁平上皮,茎部は2列円柱上皮で覆われ,真皮中層から断端にかけて線維性被膜に包まれた腫瘍塊が存在していた.構成する細胞は,乳腺排泄管を思わせる類円形に保たれた管腔構造と,その周囲の間質細胞の増生からなっていた.免疫染色にて,estorogen receptor(ER),progesteron receptor(PR)の存在が確認された.以上から,管腔は乳腺組織と判断し,管周囲型主体の線維腺腫と診断した.調べえた限り,乳房内にみられる線維腺腫が乳頭上に突出した報告は今までにない.稀と思われるが乳頭上に突出した腫瘤の鑑別として,線維腺腫も念頭に置くべきと考えた.
参考文献
1) 山本純照, 他:臨皮60: 818, 2006
2) 上村春子, 他:皮膚臨床51: 1039, 2009
3) 脇坂ちひろ, 他:臨皮58: 975, 2004
4) 佐藤優子, 他:臨皮52: 946, 1998
5) 秦 温信, 高橋弘昌:臨婦産50: 922, 1996
6) 泉雄 勝, 妹尾亘明:乳腺疾患, 金原出版, p269, 1993
7) Higaki Y, et al: J Dermatol20: 447, 1993
8) 管又 章, 他:日形会誌22: 460, 2002
9) 長谷川正和, 他:日形会誌28: 140, 2008
掲載誌情報