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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科64巻11号

2010年10月発行

文献概要

症例報告

手術瘢痕部位に初発した落葉状天疱瘡の1例

著者: 綿貫(工藤)沙織1 石橋正史1 山本享子1 久保亮治2 陳科榮1

所属機関: 1東京都済生会中央病院皮膚科 2慶應義塾大学医学部皮膚科学教室

ページ範囲:P.835 - P.839

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要約 74歳,男性.2000年から2004年に胆囊摘出術などの腹部手術を4回受けた.2007年に手術瘢痕部位の一部に痂皮を付す紅斑・びらんが出現し,創部感染の疑いで抗菌剤を外用したが改善しなかった.2008年,初診時,腹部の複数の手術瘢痕上に痂皮を付す紅斑があり,病理組織学的検査では表皮上層での水疱形成と棘融解,真皮乳頭層に形質細胞の浸潤を認めた.蛍光抗体直接法で表皮細胞間にIgGとC3が沈着,ELISA法で抗デスモグレイン1抗体が軽度上昇していた.約1か月後には抗デスモグレイン1抗体価の上昇とともに,上背部や頭部・顔面にも同様の皮疹が出現した.以上より手術瘢痕部に初発した落葉状天疱瘡と診断し,ステロイド外用とジアフェニルスルホン内服で加療した.手術瘢痕に沿い天疱瘡の皮疹が初発した報告は稀にあり,自験例を含めて検討した.手術瘢痕部に限局して生じる皮疹であっても,皮疹が難治性である場合,天疱瘡の可能性を考え鑑別のために皮膚生検を行う必要がある.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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