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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科64巻3号

2010年03月発行

雑誌目次

連載 Clinical Exercise・31

Q考えられる疾患は何か?

著者: 石川明子

ページ範囲:P.187 - P.188

症 例
患 者:9歳,女児

主 訴:左下腿の腫瘤

家族歴・既往歴:特記すべきことなし.

現病歴:2歳頃より左下腿内側の小指頭大の皮下結節に気づいていたが,放置していたところ結節は徐々に増大した.6歳頃から圧痛を伴い,局所多汗にも気づいた.さらに同時期より表面から出血するようになり,1か月前ほどから出血が頻回になったため当科を受診した.

現 症:左大腿内側に直径32mmの主に皮下に位置する弾性硬の腫瘤が存在し,下床との可動性は良好で,圧痛を伴っていた.腫瘤の表面の皮膚には数本の発毛と小豆大までの数個の赤褐色痂皮がみられ,その周囲には米粒大までの水疱様の紅色丘疹と色素沈着が混在してみられた(図1a,b).

症例報告

血球貪食症候群を合併した抗アミノアシルtRNA合成酵素抗体症候群の1例

著者: 斎藤佑希 ,   長谷川稔 ,   折戸秀光 ,   藤本学 ,   大畑欣也 ,   山崎雅英 ,   谷内江昭宏 ,   竹原和彦

ページ範囲:P.190 - P.194

要約 30歳,女性.17歳時に発熱,皮疹,筋肉痛,CK上昇から皮膚筋炎と診断された.プレドニゾロン(PSL)60mg/日内服にて軽快し,以後漸減されていた.25歳時,当科にて免疫沈降法を施行したところ,抗EJ抗体陽性が明らかとなり,抗アミノアシルtRNA合成酵素(ARS)抗体症候群と診断した.PSL14mg/日の時点で再燃がみられ,30mg/日への増量とシクロスポリン160mg/日を開始したが,治療抵抗性であった.骨髄生検で貪食像を認め,血球貪食症候群(HPS)の合併と診断した.ステロイドパルス療法を行うも軽快せず,シクロホスファミドパルス療法とγグロブリン大量静注療法を追加して,HPSは治癒した.抗ARS抗体症候群の病勢悪化に伴ってHPSが生じた稀な症例と考えられた.

Blaschko線に一致して生じた顔面のlinear cutaneous lupus erythematosusの男子例

著者: 新田悠紀子 ,   安成根 ,   大野稔之 ,   嘉陽織江 ,   影山潮人

ページ範囲:P.195 - P.199

要約 3歳,男児.2007年7月初診.4か月前より前額正中部に帯状の自覚症状のない浮腫性紅斑が出現した.血液検査では,抗核抗体40倍以下,抗ssDNA抗体・抗dsDNA抗体陰性.病理所見は,discoidの像であった.酵素抗体法で,一部表皮真皮境界に顆粒状にC3の沈着をみた.Blaschko線に沿ったlinear cutaneous lupus erythematosus(LCLE)と診断した.LCLEの自験例と既報告例15症例につき検討した.LCLEは小児の顔面に多く,Blaschko線に沿って線状に配列する紅斑局面で,抗核抗体が時に陽性,組織像はdiscoidの像を呈し,ステロイド軟膏の外用によく反応し,予後は良好ある.LCLEは臨床像が浮腫性紅斑局面を呈し,discoid lupus erythematosus(DLE)と相違するが,組織像がdiscoidの像を示しDLEの亜型と考えた.

皮疹出現後脳出血をきたした薬剤過敏性症候群の1例

著者: 近藤誠 ,   西井正美 ,   水谷仁

ページ範囲:P.201 - P.204

要約 70歳,女性.脳梗塞による合併症のてんかん発作を抑制する目的にて,フェニトイン(アレビアチン®)を内服していた.内服27日後,そう痒性皮疹が出現した.その翌日,後頭葉から頭頂葉に脳出血をきたした.アレビアチン®中止後,皮疹が拡大し,発熱など臨床症状が持続したが,HHV-6再活性化はみられず,非典型の薬剤過敏性症候群(DIHS)と診断した.皮疹出現19日後,リンパ球幼弱化試験(DLST)にてアレビアチン®のstimulation indexが有意に上昇した.DIHSによる皮疹出現後,脳出血が生じHHV-6以外のウイルスの再活性化が脳出血に関与した可能性もあると考えた.

ヒドロクロロチアジド配合剤による光線過敏型薬疹の1例

著者: 谷戸克己 ,   上出良一

ページ範囲:P.205 - P.209

要約 69歳,男性.糖尿病,高血圧,慢性腎不全のため内服治療中.2008年3月にニューロタン®(ロサルタンカリウム)をプレミネント®(ロサルタンカリウム/ヒドロクロロチアジド)に変更したところ,1週間後頃から前額部にそう痒を伴う皮疹が出現した.1か月後より両手背,前腕伸側,耳介,口唇,前胸V字部,項部にも皮疹が拡大し,5月に当科を受診した.好酸球6.4%,光パッチテストは陰性,プレミネント®1錠内服後のMEDは正常範囲内であった.服薬歴ならびに発疹部位よりプレミネント®中のヒドロクロロチアジドによる光線過敏型薬疹と診断した.服薬中止と遮光で軽快したが,6週間後に白斑黒皮症を生じた.チアジド系の降圧利尿薬による光線過敏型薬疹は古くより知られているが,使用頻度の低下とともに稀となった.しかし最近,チアジド系降圧利尿薬とアンジオテンシンII受容体拮抗薬の配合剤が相次いで発売され,チアジド系薬剤による光線過敏型薬疹が再び多発する懸念がある.

慢性ミオパチー型筋サルコイドーシスの1例

著者: 檜垣裕美 ,   瀧玲子 ,   高垣謙二 ,   今田敏宏 ,   杉浦智子 ,   増野純二 ,   金子栄

ページ範囲:P.210 - P.213

要約 60歳,男性.2年前から起床時の両大腿痛があった.徐々に下肢近位筋力が低下し,近医で血清CK高値(4,797IU/l)を指摘されたため,精査目的にて受診した.ACEが30.2IU/lと上昇しており,抗核抗体,抗Jo-1抗体,RA因子はいずれも陰性であった.胸部X線,CTでは両側肺門,縦隔のリンパ節腫脹がみられた.MRIにて炎症がみられた右大腿の筋生検および大腿の紅色結節の皮膚生検の結果,いずれにも類上皮肉芽腫を認めたため,サルコイドーシスと診断した.経過と症状より自験例は慢性ミオパチー型筋サルコイドーシスと考えられた.心筋シンチグラムでは心サルコイドーシスも疑われた.プレドニゾロン30mg/日にて治療開始したところ,CK値は低下し,画像所見,皮疹は著明に改善した.

両側下腿に多発した軽度圧痛を伴う被包性脂肪壊死の1例

著者: 瀬川春奈 ,   高橋和宏 ,   赤坂俊英

ページ範囲:P.214 - P.216

要約 59歳,女性.約2年前に両下腿に軽度の圧痛を伴う皮下結節が出現した.両下腿伸側に可動性良好な皮下の小結節が散在していた.病理組織学的に線維性皮膜に覆われた変性した脂肪組織を認め,膜囊胞性病変と石灰化がみられた.臨床症状および病理組織所見より,被包性脂肪壊死と診断した.

脳腱黄色腫症の1例

著者: 杉山紘子 ,   森下佳子 ,   角南勝利 ,   門田弘明

ページ範囲:P.217 - P.220

要約 34歳,男性.10歳台から関節を中心とした四肢および腱に皮下腫瘤が出現した.徐々に数が増加し,個々の腫瘤も大きくなった.肘関節のクルミ大皮下腫瘤を切除し,病理組織より結節性黄色腫と診断した.初診時の血清では,中性脂肪,総コレステロールは正常値ないし軽度上昇,血清コレスタノールは13.6μg/mlで大幅に上昇,血清シトステロールは1.6μg/mlで軽度に上昇していた.脳神経症状はなく,頭部MRIでも異常を認めなかった.しかし,臨床症状とコレスタノール高値から脳腱黄色腫症と考え,ケノデオキシコール酸とHMG-CoA還元酵素阻害薬の内服治療を開始した.多発する皮下腫瘤で大きく生活に支障をきたすものは,手術で切除をした.

完全型pachydermoperiostosisの1例

著者: 種瀬啓士 ,   若林亜希子 ,   山本晃三 ,   宮川俊一 ,   今西智之

ページ範囲:P.221 - P.224

要約 41歳,男性.17歳時に頭部の皮膚が肥厚していることを自覚した.加齢とともに徐々に顕著となり,皺襞を形成するようになった.初診時頭部は脳回転状皮膚を,指趾末節は太鼓ばち状を呈し,X線では橈骨・尺骨に骨膜性骨肥厚があり,本症例を完全型pachydermoperiostosisと診断した.本疾患は,太鼓ばち状指趾,皮膚の肥厚性変化・脳回転状皮膚,四肢遠位骨の骨膜性骨肥厚を主徴とする皮膚形成異常症である.近年,本疾患家系においてHPGD遺伝子が原因遺伝子として同定され,その病態が明らかになりつつある.

疣状の外観を呈した乳輪下膿瘍の1例

著者: 国本佳代 ,   西山瑞穂 ,   上中智香子 ,   貴志知生 ,   山本有紀 ,   古川福実 ,   高木正

ページ範囲:P.225 - P.227

要約 27歳,女性.2006年6月初旬頃より右乳輪皮下に米粒大の腫瘤が出現した.近医で内服抗菌薬で加療されたが改善傾向なく,徐々に増大し,乳頭全体が疣贅状となった.他院での生検にて乳頭腫と診断され,当科を紹介された.乳頭はつぼみ状の腫瘤となり,内腔には角質様物質が充満していた.陥没乳頭の既往があり,左側も軽度の陥没乳頭を認めた.右乳頭の温存は不可能と考え,全切除術を施行した.術中,切断された乳管より黄色の膿汁分泌を認めた.切除病理標本では異型性の乏しい扁平上皮の乳頭状増殖を認め,乳管の一部は扁平上皮化生を示していた.病理組織所見および陥没乳頭の既往より乳輪下膿瘍と診断し,感染を伴ったことにより乳頭が疣状の外観を呈したと考えた.

アシクロビルによる急性腎不全と脳症を生じた正常腎機能者の帯状疱疹

著者: 光井千慧 ,   速水淳史 ,   岡本祐之

ページ範囲:P.228 - P.230

要約 63歳,男性.高尿酸血症と高脂血症にて加療中.初診の4日前より右側腹部に疼痛と皮疹が生じ,当科を紹介受診した.右Th10領域の帯状疱疹と診断し,正常腎機能であったため,常用量のバラシクロビルを2日間投与した.また,紹介医でアシクロビル(ACV)の点滴を1回受けた.その後,入院にてACVの点滴を行ったが,翌日に急性腎不全となり,それに伴うACV脳症を生じた.ユリノーム®などの常用薬や神経痛に対するロキソプロフェンNaを含むすべての薬剤を中止し,入院5日目には脳症は軽快し,腎機能も徐々に回復した.腎機能正常者においても,抗ウイルス薬投与時には,脱水やユリノーム®やロキソプロフェンNaなどの腎排泄性薬剤の併用が急性腎不全を引き起こす可能性がある.

側頭筋下より頭蓋内に及んだ皮様囊腫の1例

著者: 黒岡定浩 ,   渡邉奈津子 ,   加藤敦子

ページ範囲:P.231 - P.234

要約 47歳,男性.約10年前より気づいた左側頭部の約5cm大の皮下腫瘤を主訴に受診した.腫瘤はMRI上,T1,T2ともに強調像を示し側頭筋下から頭蓋内に及んでいた.生検時には腫瘍内部より毛髪の排出を認め,病理組織所見では悪性所見はなく,線維化した肉芽組織を認めた.臨床経過とあわせて皮様囊腫と考え全摘出術を施行した.腫瘤は側頭筋下に存在し,側頭骨と頰骨の一部を融解し頭蓋内に及び,硬膜に接する形で存在していた.硬膜との癒着は軽度で容易に剝離可能であったため,硬膜は温存できた.頭蓋骨が欠損した硬膜露出部分のみ腸骨移植を行った.全摘した腫瘤の病理組織学的所見では,化膿性炎症を伴う肉芽組織が中心で悪性細胞は認めず,皮様囊腫と診断した.

G群溶連菌感染を伴った大陰唇に発生した巨大懸垂性線維腫の1例

著者: 平井伸幸 ,   田村政昭

ページ範囲:P.235 - P.238

要約 46歳,女性.39℃前後の発熱と左大陰唇の発赤,腫脹,疼痛を伴った腫瘤を主訴に当院を受診した.9.5×7.0×7.0cmの表面にびらん,膿苔を付す弾性軟な懸垂性結節がみられ,巨大懸垂性線維腫の細菌感染と診断し,緊急で切除術を施行した.術後の経過は良好で第5病日に退院した.皮膚病理所見では異型細胞はみられず,真皮内の膠原線維は浮腫状で小血管の増生,著明な炎症細胞浸潤がみられた.膿からの培養ではG群溶連菌が検出され,高熱,悪寒,戦慄などの全身症状より,G群溶連菌感染症と考えられた.外陰部に生じた巨大な懸垂性線維腫は比較的稀であり,二次感染を生じて緊急手術を要した例は,検索しえた限り過去に報告例はなかった.

成人女性の右大腿に発生した巨細胞性線維芽細胞腫の1例

著者: 西田睦美 ,   森安麻美 ,   浅井純 ,   竹中秀也 ,   岸本三郎 ,   中村えり子

ページ範囲:P.239 - P.242

要約 27歳,女性.1~2年前に右大腿外側に結節が出現し,徐々に増大した.初診時,右大腿外側に直径7mm大,紅色弾性軟半球状結節がみられた.病理組織学的所見で,真皮から皮下脂肪組織にかけて紡錘形の腫瘍細胞が束状に配列し,一部に多核巨細胞を認めた.以上より,巨細胞性線維芽細胞腫(giant cell fibroblastoma:GCF)と診断し,拡大切除術を施行した.術後12か月現在,腫瘍の再発や転移はない.GCFは再発頻度の高い腫瘍であり,慎重に経過観察していく必要がある.一般にGCFは主に小児に発症し,成人発症は稀な疾患であるが,成人でもGCFが発症することを念頭に置いて診断する必要があると考える.

囊腫壁のリポフスチンにより,黒色調を呈した外陰部アポクリン囊胞腺腫

著者: 西山有希子 ,   林伸和 ,   石黒直子 ,   川島眞

ページ範囲:P.244 - P.246

要約 59歳,女性.婦人科検診で外陰部の黒色結節を指摘され,当科を受診した.左小陰唇から腟の移行部に径2mm大の黒色結節を2個認めた.母斑細胞母斑,悪性黒色腫などを疑い,一塊として切除した.病理組織学的所見では,真皮内に数層までの円柱上皮からなる壁を有する2個の囊腫を認めた.壁細胞の一部には断頭分泌の像がみられ,CEAおよびEMA陽性,S100陰性で,HE染色で茶褐色の顆粒を有していた.この顆粒はフォンタナ・マッソン染色では黒染し,メラニンも疑われたが,無染色標本を蛍光顕微鏡で観察すると淡く黄橙色の蛍光を発したことから,リポフスチンと同定した.無染色標本の黄橙色の蛍光はリポフスチンに特徴的であり,茶褐色の顆粒物質の同定に有用であった.

急速に進行したMerkel細胞癌の1例

著者: 土肥凌 ,   今井千恵 ,   柴田彩 ,   常深祐一郎 ,   森悦子 ,   アンドレレパヴー ,   門野岳史 ,   渡邊孝弘 ,   佐伯秀久 ,   菊池かな子 ,   玉置邦彦 ,   佐藤伸一 ,   福田覚 ,   服部尚子

ページ範囲:P.247 - P.250

要約 72歳,男性.約3か月前より左臀部に紅褐色の結節が生じ,急速に増大した.初診時左臀部に60×70×15mm大の紅色結節および鼠径リンパ節腫脹を認めた.病理組織にて,真皮内に核/細胞質比の高い小型で円形の好塩基性腫瘍細胞が密に増殖しており,電顕で有芯顆粒を認め,Merkel細胞癌と診断した.画像検査で左鼠径部から傍大動脈領域のリンパ節が腫脹していた.広範囲切除術,リンパ節郭清術および術後放射線療法,化学療法(TS-1+シスプラチン)を施行した.術後に皮膚転移巣が出現したが,放射線療法に反応して一時的に消失し,転移リンパ節も縮小した.しかし,手術2か月後に全身の皮膚転移,縦隔リンパ節転移をきたし,4か月後に死亡した.Merkel細胞癌は予後の悪い皮膚悪性腫瘍であり,このように集学的療法を行ったが,全経過8か月間で急激に進行した.

神経線維腫症Ⅰ型に合併した右足部有棘細胞癌の1例

著者: 吉田益喜 ,   川原繁 ,   川田暁

ページ範囲:P.251 - P.254

要約 75歳,女性.全身に多数のカフェオレ斑と皮膚結節あり,神経線維腫症I型であった.3年前から右足背部に腫瘤が出現し放置していたが,急速に増大したため受診した.腫瘤は紅色で,77×90×30mm大のカリフラワー状であった.生検の結果,有棘細胞癌であった.術前検査で転移はなく,MRIで伸筋腱に浸潤していた.T4N0M0病期IIIaと診断し,拡大切除のみ行った.神経線維腫症Ⅰ型に有棘細胞癌が合併することは稀である.

末梢血行再建術によって切断を免れた糖尿病性足趾壊疽の1例

著者: 趙玲愛 ,   瀧玲子 ,   谷岡未樹 ,   是枝哲 ,   田崎淳一 ,   木村剛 ,   宇谷厚志 ,   宮地良樹

ページ範囲:P.255 - P.258

要約 65歳,男性.30年来の糖尿病で,インスリン治療抵抗性であった.初診の約半年前に右足趾に潰瘍が出現した.保存的治療に反応せず,急速に右足背の発赤腫脹と発熱が出現したため,当科受診.糖尿病性足趾潰瘍から感染を生じた蜂窩織炎と診断した.下肢動脈CT像で両側下肢動脈に高度の石灰化と狭窄性病変を多数認めた.ABPI(ankle brachial pressure index)は正常であったが,患側足背のSPP(skin perfusion pressure)は低値であった.SPPが低値であったことから,局所療法による創傷治癒は困難であり,膝での切断が必要であると考えた.しかし,下肢の血流改善による創傷治癒促進を期待し,下肢血行再建術を施行した.術後,患側のSPP値は著明に改善し,動脈CTでも血流改善を確認できた.血行再建術後,色調不良であった患側足趾のみの切断を行い,術後経過は良好である.糖尿病性足趾壊疽に対して血行再建術を行うことは切断範囲縮小のために有益である.手術前後のSPPを測定することは血流評価の簡便なモニタリング法として有用であると考えられた.

臨床統計

薬剤性過敏症症候群の軽快後にみられる自己抗体産生の増強

著者: 石田正 ,   稲岡峰幸 ,   平原和久 ,   狩野葉子 ,   塩原哲夫

ページ範囲:P.260 - P.264

要約 薬剤性過敏症症候群(DIHS)では,1型糖尿病や甲状腺疾患などのさまざまな自己免疫疾患が続発することが知られている.今回われわれは,多数のDIHS症例において治療後も経時的に自己抗体(抗核抗体:ANA,抗TPO抗体:TPOAb)を測定することにより,DIHSにおける自己免疫反応の変化を検討した.その結果,DIHSでは急性期よりも回復期のほうが自己抗体陽性率が高いことが確認された(ANA陽性率:急性期33.3%→回復期46.1%,TPOAb陽性率:発症時0.0%→回復期46.1%).さらに,その抗体価を経時的に比較検討してみると,ANAでは8例中3例,TPOAbでは5例中2例で上昇を認めた.このような上昇はコントロールとして用いたStevens-Johnson症候群と中毒性表皮壊死症ではみられなかった.以上の結果は,DIHSが自己免疫疾患発症の誘因となる可能性を示唆している.DIHS患者では,治療後も自己抗体の検索を含む長期間の経過観察が必要と思われる.

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あとがき

著者: 瀧川雅浩

ページ範囲:P.270 - P.270

 1~3月は,受験シーズンです.幼稚園から高校まで,生徒は大変です.でも,もっと大変なのは,試験監督官です.試験生がずっこけても,本人の問題ですから,その影響は大きくありません.もちろん本人とその周辺の方は大変でしょうが.当たり前ですが,試験監督の教官がこけると,影響は大です.

 受験で最も大きなイベントはセンター試験でしょう.なんせ,何十万人という生徒が一斉に同じ問題にアタックするわけですから,それはある意味,壮絶です.浜松医科大学の教員は,センター試験は大学と近隣の高校の2か所に分かれて監督します.教授から助手まで,機会均等,不平等条約なしです.昔々,センター試験が共通一次試験などと,別名の時代,監督は本当のボランティアでした.土日つぶれ,一家団欒は踏みにじられ,監督謝礼なし,おまけに昼飯もなかったのです! クレームが出て,弁当が出るようになりましたが,あとは変わらずです.文科省も,ただ働きで,こんな重要なことをさせる,というようなケチな根性は捨ててほしい,と毎年思います.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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