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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科64巻5号

2010年04月発行

Derm.2010

長生きサプリ,エビデンスつき

著者: 今福信一1

所属機関: 1福岡大学医学部皮膚科

ページ範囲:P.125 - P.125

文献概要

 世の中はevidence based medicineが常識となりました.内科領域では数千例という大規模な臨床試験により降圧剤や血糖降下剤による心血管系のイベントの発生率低下が次々に証明されています.高血圧は135/85mmHg以上であれば症状がなくとも診断されます.そのほか脂質や血糖を検査して,その数字により疾患が決定し,それによって最適な薬剤が処方されます.これは見方によっては高血圧・高脂血症の「治療薬」ですが,症状(虚血性心疾患など)の「予防薬」とも言えるでしょう.このような薬のNNT (number needed to treat,何人に投与すれば1人が恩恵に浴するか)は数百というものが多いようです.つまり数百人がずっと内服し続ければそのうち1人の心筋梗塞がこの薬の効果で回避できる,ということです.ちなみに帯状疱疹の神経痛に使う三環系抗うつ剤のNNTは2~4程度で,2人に1人は薬剤の恩恵に浴することができます.ある友人がこのような生活習慣病治療薬を「長生きサプリメント」と称しました.これはまことに当を得た表現だと思います.症状はなくとも飲んでいると長生きできて,しかも厚労省のお墨付き,科学的エビデンス付き,保険適応まであります.さらに処方する側には特定疾患療養管理料(225点,月2回まで)または生活習慣病管理料(900~1,050点)も算定することができます.しかし,数字を治す「管理職」になってしまった医者は現場(症状のある患者を診る)のつらさを忘れないでしょうか.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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