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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科64巻6号

2010年05月発行

雑誌目次

連載 Clinical Exercise・33

Q考えられる疾患は何か?

著者: 高橋一郎

ページ範囲:P.363 - P.364

症 例

患 者:47歳,男性,皮膚科診療所事務

主 訴:左下肢の紅色局面

既往歴:特記すべきことなし.

家族歴:特記すべきことなし.

現病歴:初診の1年前から左下腿伸側に虫刺症様の紅色丘疹が出現した.近医皮膚科にて体部白癬の診断でグリセオフルビンを内服し,抗真菌剤外用により一時軽快した.その後,再び紅色丘疹,紅斑が出現し,患者の自己判断でステロイド外用を行っていたところ,皮疹が徐々に拡大したため当科を受診した.

現 症:左膝および下腿伸側に鱗屑を伴う軽度の浸潤を触れる紅色局面と,一部に鱗屑,痂皮を伴う疣状の結節を認める(図1,2).左鼠径部に約1cmの表在リンパ節を触知する.

症例報告

初診時にStevens-Johnson症候群が疑われたヘルペス関連多形紅斑

著者: 井上桐子 ,   青田典子 ,   平原和久 ,   狩野葉子 ,   塩原哲夫

ページ範囲:P.366 - P.369

要約 16歳,男性.全身の多形紅斑,口腔・陰部の紅斑・びらん,高熱を主訴に受診した.14歳より口唇ヘルペス出現後に多形紅斑が出現し,抗ウイルス薬,ステロイド薬の短期間の内服を繰り返していた.初診時,重症の粘膜疹に加え軀幹に非典型的なtarget lesionが多発混在し,バルトレックス®の薬剤添加リンパ球刺激試験が陽性に近いstimulation index値を示したことから,薬剤性Stevens-Johnson症候群の可能性を考えた.しかし,薬剤の中止と補液のみで軽快した.その後,口唇ヘルペス後に多形紅斑の再発を認め,ヘルペス関連多形紅斑(HAEM)と診断し,バルトレックス®による再発抑制療法を開始した.開始後,再発が減少し,症状も軽症化した.過去のHAEM例に比べ重症化した原因として,ステロイドの不規則投与が薬剤に対する一過性の感作を誘発した可能性を考えた.

尋常性痤瘡治療目的に使用したスピロノラクトンによる播種状紅斑丘疹型薬疹の1例

著者: 喜多川千恵 ,   池野史典 ,   佐野栄紀

ページ範囲:P.370 - P.372

要約 29歳,女性.尋常性痤瘡に対するホルモン療法目的にスピロノラクトン150mg/日の内服を開始した.内服開始10日目に腹部より紅斑,丘疹が出現し,全身に拡大した.パッチテストが陽性であり,スピロノラクトンによる播種状紅斑丘疹型薬疹と診断した.スピロノラクトンによる薬疹は稀であるが,尋常性痤瘡に対し使用する場合は,通常使用より多くの用量が必要であり,薬疹の発現に十分注意すべきである.また,その治療適応に関しても慎重であるべきと考えた.

トニックウォーターに含まれるキナ抽出物による固定疹の1例

著者: 高野藍子 ,   松倉節子 ,   蒲原毅 ,   相原道子 ,   池澤善郎

ページ範囲:P.373 - P.375

要約 23歳,女性.某社トニックウォーターを含むアルコール飲料を摂取後,口囲および会陰部に強いそう痒と灼熱感を伴う浮腫性紅斑が出現するというエピソードを数回繰り返していた.当該トニックウォーターの単独投与試験を施行したところ,口囲および会陰部に同様の症状が誘発された.さらにopen application testを施行し,同製品に添加物として含まれるキナ抽出物による固定疹と診断した.

ミノサイクリンが奏効した急性苔癬状痘瘡状粃糠疹の1例

著者: 永岡譲 ,   水野京子 ,   足立真

ページ範囲:P.377 - P.379

要約 46歳,男性.14日前より誘因なく突然,四肢・体幹に紅斑が多数出現し,びらんや血痂も伴うようになった.ステロイド外用薬と抗ヒスタミン薬の内服は無効であった.病理組織像は苔癬型組織反応を示し,臨床症状と併せて急性苔癬状痘瘡状粃糠疹と診断した.ミノサイクリン1日100mgを3週間内服して軽快した.

びまん浸潤型皮膚サルコイドーシスを併発したlimited cutaneous systemic sclerosisの2例

著者: 新田悠紀子 ,   原真由 ,   大野稔之 ,   嘉陽織江

ページ範囲:P.380 - P.384

要約 症例1:75歳,女性.1983年,ソーセージ指とRaynaud症状を認め,抗セントロメア抗体陽性,前腕伸側からの組織像で膠原線維の増生を認めた.1997年に両手背に浸潤性紅斑,顔面の瘢痕部に結節が出現し,両側肺門リンパ節腫大(BHL)を認め,手背と顔面の組織像で類上皮細胞肉芽腫をみた.症例2:59歳,女性.2001年ソーセージ指とRaynaud症状あり.抗セントロメア抗体陽性であった.2003年に顔面,手背,大腿部に紅斑が出現し,BHL(+).顔面,手背,大腿部の組織像で類上皮細胞肉芽腫をみた.2例ともlimited cutaneous systemic sclerosis(lSSc)が先行したびまん浸潤型を伴ったサルコイドーシスと診断した.強皮症とサルコイドーシスの合併例は自験例を含め47例あり,強皮症が先行する例は34例,lSScが28例を占め,そのうち,皮膚サルコイドーシスを呈したのは16例で,びまん浸潤型を60%に認めた.

ヘルペス様小水疱を伴い,乳癌と大腸癌を合併した皮膚筋炎

著者: 小南賢吉郎 ,   大塚正樹 ,   中西元 ,   阪上陽子 ,   大野貴司 ,   岩月啓氏 ,   浦岡俊夫 ,   小笠原豊

ページ範囲:P.385 - P.388

要約 54歳,女性.2007年5月下旬から易疲労感があり,そう痒を伴う皮疹が出現したため,6月中旬当科受診した.Gottron徴候,ヘリオトロープ疹,scratch dermatitis様紅斑,爪囲紅斑,顔面の脂漏性湿疹様紅斑以外に,胸部,背部,上肢に米粒大の中心陥凹のあるヘルペス様小水疱が多発していた.血清中の筋酵素上昇を認めた.皮膚生検で表皮下の浮腫,表皮下水疱と基底層の液状変性があり,筋生検では筋線維に炎症細胞浸潤が認められた.蛍光抗体直接法と血清学的診断から自己免疫性水疱症を否定した.乳癌(T2N2aM0 stage IIIA),大腸癌〔M,ly0,v0,LM(-),VM(-),stage 0〕の重複癌を合併していた.プレドニゾロン投与で皮膚筋炎の急性期を抑え,大腸癌,次いで乳癌を切除したあとに皮膚筋炎の病勢は改善した.しかし,乳癌の転移で死亡した.

うつ病による活動性低下と考えられていた皮膚筋炎の1例

著者: 日野上はるな ,   横谷英吏子 ,   米田真理 ,   大畑千佳

ページ範囲:P.389 - P.392

要約 75歳,女性.2008年2月頃より顔面,両腕,背部にそう痒を伴う紅斑が出現した.紅斑は次第に全身へ拡大した.また,4月頃より活動性低下もみられていたが,うつ病や加齢によるものと考えられていた.CKは正常であったが,活動性低下の背景に筋力低下がある可能性を疑い,精査した.筋炎の所見があり,皮膚筋炎の診断基準を満たした.プレドニゾロン投与で症状は軽快した.悪性腫瘍検索では,以前より指摘されていた肝細胞癌再発巣が増大していた.高齢者では筋力低下や筋肉痛を訴えず,筋症状が見逃される可能性がある.したがって,高齢者の活動性低下の背景に筋力低下をきたす疾患の存在を疑うことが重要であると考えた.

Superficial granulomatous pyodermaの1例

著者: 高塚由佳 ,   増田智一 ,   若旅功二 ,   藤田悦子 ,   山田朋子 ,   小宮根真弓 ,   村田哲 ,   大槻マミ太郎

ページ範囲:P.393 - P.396

要約 64歳,男性.6年前,右足外踝周囲に米粒大の潰瘍が出現した.数年の経過で下肢,体幹に母指頭大までの潰瘍が多発したが,いずれも4か月前後で上皮化し,再発を繰り返していた.初診時,最も大きな皮疹は下背部で手拳大,楕円形萎縮瘢痕で,辺縁は環状に小潰瘍が並んでいた.局面辺縁を圧迫すると,点状に排膿がみられた.組織は潰瘍と表皮の陥入,真皮内好中球性膿瘍,それを取り囲むように類上皮性肉芽腫と好酸球を混じるリンパ球,形質細胞の浸潤であった.Superficial granulomatous pyodermaと診断し,プレドニゾロン30mg/日の内服,タクロリムス軟膏の外用を開始し,約2週間で上皮化した.本疾患と壊疽性膿皮症との共通点と相違点について,文献的に検討した.

乳児の多発性皮膚骨腫より診断に至った偽性副甲状腺機能低下症Ia型の母子例

著者: 眞部恵子 ,   山崎修 ,   宮島悠子 ,   古城真秀子

ページ範囲:P.397 - P.401

要約 症例1:6か月,女児.生後3か月より体幹・四肢に表面が紫斑様の皮下結節が多発し来院した.生検で皮膚骨腫と診断した.症例2:35歳,女性.症例1の母親.いつ頃からか同様の結節を自覚していた.精査の結果,母子ともに偽性副甲状腺機能低下症Ia型と診断した.ビタミンD3内服開始後,児には皮下結節の新生を認めていない.偽性副甲状腺機能低下症Ia型は低身長,肥満,短指症,皮膚骨腫などのAlbright徴候と呼ばれる身体的特徴を呈する.これらの症状のうち,皮膚骨腫は発現頻度は低いが最も早期より観察される症状であり,初発症状としては最多である.乳幼児に多発する皮膚骨腫をみた場合には,本症を念頭に置いた精査が必要である.

全身性エリテマトーデスに合併した栄養障害性皮膚石灰沈着症の1例

著者: 若林亜希子 ,   種瀬啓士 ,   山本晃三 ,   宮川俊一 ,   美田誠二

ページ範囲:P.402 - P.406

要約 61歳,女性.全身性エリテマトーデスにて加療中.初診の約1年前より左前腕伸側に出現した硬い索状の皮下腫瘤と前腕近位端の柔らかく触れる皮下腫瘤を主訴に受診.X線写真上,左前腕の皮下硬結部に一致して明瞭な石灰沈着像を認めた.肘頭部の柔らかい皮下腫瘤を切開したところ,内部より乳白色調のクリーム状,チョーク状物質が排出した.病理組織学的には皮下脂肪織を置換するようにして,好塩基性に染まる無構造物質の沈着を認め,石灰沈着症と診断した.血清カルシウム,リン値は正常であり,本症例を全身性エリテマトーデスに伴う栄養障害性皮膚石灰沈着症と診断した.本症例では,外的刺激および慢性炎症による脂肪壊死を契機として石灰沈着が生じたと考えた.

悪性増殖性外毛根鞘性囊腫の1例

著者: 水谷浩美 ,   宮崎愛 ,   峠岡理沙 ,   益田浩司 ,   竹中秀也 ,   加藤則人 ,   岸本三郎

ページ範囲:P.407 - P.410

要約 81歳,女性.約10年前より後頭部に小豆大の結節を認め,約1年前より徐々に増大し,易出血性となった.初診時,後頭部に10×7×4cmの広茎性で潰瘍を伴う腫瘤を認めた.病理組織学的に表皮から筋層にまで及ぶ腫瘍塊を認め,腫瘍は被膜を有していたが,一部で周囲脂肪織に浸潤していた.腫瘍は大小さまざまな囊腫様構造からなり,囊腫壁は外毛根鞘性角化を示し,細胞異型や核分裂像を認め,悪性増殖性外毛根鞘性囊腫と診断した.当教室の経験例や既存の報告から,悪性増殖性外毛根鞘性囊腫は転移の頻度が高く,悪性度の高い腫瘍と考えられる.

Bowen病の過去5年間の当科症例13例の検討

著者: 濱田和俊 ,   佐藤弘行 ,   今門純久

ページ範囲:P.411 - P.414

要約 Bowen病の過去5年間の当科症例13例のhigh-risk human papillomavirus(HPV)の感染は13例中5例が陽性で,陽性率は38.5%であった.顔面を除く上肢,手,軀幹,下腿にhigh-risk HPV感染があった.男性2例はともに陽性,女性は11例中3例が陽性であった.Ki-67陽性細胞率は10~69%で,平均値は29.5%であった.p53は3+が2例,2+が1例,+が5例,-が5例であった.High-risk HPV感染の有無とKi-67陽性率,またhigh-risk HPV感染の有無とp53陽性・陰性例との関係では,有意な相関はなかった.露光部と非露光部のhigh-risk HPV感染率,p53陽性率を比較したが有意差はなかった.今回high-risk HPV感染により細胞増殖が加速される可能性を考えたが,Ki-67の陽性率は感染の有無により左右されなかった.また,high-risk HPV感染の陰性例では,p53の陽性率が上昇すると予想したがhigh-risk HPV感染の有無とp53の陽性率に有意差はなかった.

多発性骨髄腫のサリドマイド治療中に生じたB細胞リンパ腫の1例

著者: 森志朋 ,   沼岡英晴 ,   上杉憲幸 ,   森康記 ,   赤坂俊英

ページ範囲:P.415 - P.418

要約 70歳,男性.2004年9月より多発性骨髄腫〔IgG-κ,BJP(+)型〕を発症し,多剤化学療法を開始した.2005年年7月より自己輸入によるサリドマイド内服治療に変更した.以降,病勢の進行なく経過していた.2008年5月より,前胸部,左側腹部に浸潤性の紅斑が生じた.臨床症状,病理組織検査の結果からは,診断確定には至らず,リンパ球腫として,ステロイド外用治療で消退した.しかし,11月上旬より顔面に発疹が出現し,急速に多発した.精査にてdiffuse large B cell lymphomaと判明した.THP-COP,リツキサン治療により,発疹は速やかに消退した.多発性骨髄腫に対するサリドマイド治療がB細胞リンパ腫の発症に関連したと考えた.

Mantle-omaの1例

著者: 橋本玲奈 ,   洲崎玲子 ,   木花いづみ

ページ範囲:P.419 - P.422

要約 71歳,男性.10年前より左側頭部に結節が生じ,徐々に増大した.20×16mm大,なだらかに隆起する弾性硬,単発の皮下結節を認めた.表面皮膚は毛髪が粗で正常皮膚色,下床との可動性は良好であった.病理組織像では,毛囊漏斗部に付着する皮脂腺周囲の結合織から連続性に膠原線維と線維芽細胞が血管を伴い結節状に増生していた.周囲正常部の膠原線維との間には裂隙形成を認め,mantle-omaと診断した.血管周囲にはマスト細胞が多数散在し,特殊染色で脱顆粒を認め,膠原線維の増生とマスト細胞の間に何らかの関係があると考えた.Mantleの分化の程度によりtrichodiscoma,fibrofolliculomaの呼称で報告されてきた本症の本邦報告例をまとめた.

Clostridium tertiumによる敗血症をきたした壊死性筋膜炎の1例

著者: 佐藤有紀 ,   横関真由美 ,   月永一郎 ,   南崎哲史 ,   深澤雄一郎 ,   鈴木昭

ページ範囲:P.423 - P.426

要約 68歳,男性.2型糖尿病で血糖降下薬内服中.初診17日前に両足を損傷した.その後,両足の腫脹と滲出液の増加を主訴に受診し,右足底・足趾に悪臭のある滲出液を伴う黒色壊死病変を認めた.壊死性筋膜炎から敗血症,DICを併発し,ICUにて治療を行った.局所の滲出液と静脈血からグラム陽性桿菌であるClostridium tertiumが検出された.呼吸循環管理と抗生剤投与で全身状態は改善したが,発熱と炎症反応が遷延した.感染のコントロールが不十分で患肢の温存は困難と考え,右下腿切断術を施行した.術後経過は良好であった.

新生児に生じたPasteurella感染症の1例

著者: 平井伸幸 ,   田村政昭 ,   高野洋子 ,   前田昇三

ページ範囲:P.427 - P.430

要約 日齢8日,女児.初診2日前に自宅で飼い猫に右大腿を咬まれた.同部の発赤や腫脹が増悪し,39℃の発熱が出現したため,近医より紹介され受診した.右大腿内側に猫の咬傷痕を伴う手拳大の発赤,腫脹がみられた.細菌培養でPasteurella multocidaが検出された.アンピシリン投与により,翌日にはほぼ解熱し,局所の発赤や腫脹も消退した.本症例は検索しえた限り,最年少のPasteurella感染症の報告例であった.

Nocardia brasiliensisによる限局型皮膚ノカルジア症の1例

著者: 亀頭晶子 ,   北野文朗 ,   森川博文 ,   池部晃司 ,   鶴田理奈

ページ範囲:P.431 - P.434

要約 75歳,男性.初診の約半年前に左膝を打撲後,発赤・腫脹が出現した.放置していたところ,同部に紅色腫瘤が出現,増大し,受診した.左膝下部に潰瘍を伴い,水平方向に連続性,一部孤立性に増生する紅色腫瘤を認めた.腫瘤の一部を切除したところ,病理組織像は膿瘍形成を伴う非特異的肉芽腫で,組織の細菌培養では小川培地,血液寒天培地でコロニー形成を認めた.菌の生理・生化学的性状からNocardia brasiliensisと同定し,限局型皮膚ノカルジア症と診断した.切除後4か月間,塩酸ミノサイクリンの内服とクロロマイセチン含有マクロゴール軟膏の外用を行った.縫合部の状態は良好で再発は認めなかったが,残存する腫瘤部には効果が乏しかった.その後,5-FU軟膏のODT を行ったところ,腫瘤は縮小・消退し,治癒に至った.

治療

皮膚疾患患者におけるステロイド骨粗鬆症予防的治療としてのアレンドロネート投与中の骨密度,尿中NTx値の検討

著者: 楠瀬智子 ,   石黒直子 ,   速水千佐子 ,   竹中祐子 ,   川島眞

ページ範囲:P.437 - P.441

要約 2002~2005年に当科を受診し,プレドニゾロン換算で5mg/日以上,3か月以上のステロイド内服を要した患者19例(男:女=2:17)で,ステロイド骨粗鬆症の予防的治療として,アレンドロネート1日5mgを投与し,腰椎骨密度と尿中NTx値の推移を検討した.平均年齢は49.6歳で,基礎疾患として,全身性エリテマトーデス,結節性多発動脈炎,尋常性天疱瘡などがあった.治療前と比較して,治療約6か月後,約12か月後の骨密度は,変化率がおのおの2.4%,7.1%で軽度上昇を認め,尿中NTx値は変化率がおのおの-64.3%,-51.5%で著明な減少を認めた.骨密度,尿中NTx値の動態において,アレンドロネート単独投与群とそのほかのカルシウム代謝にかかわる薬剤併用群との間,および50歳以上の群と50歳未満の群との間に有意差はなかった.長期観察例では,骨密度,尿中NTx値は12か月以降も一定の値で維持され,アレンドロネートによる骨吸収に対する持続的抑制効果を反映しているものと考えた.

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あとがき

著者: 中川秀己

ページ範囲:P.446 - P.446

 新しい年度が始まり,皆様心機一転,診療,教育,研究に邁進されていると思います.診療報酬改定も決まり,特に小児科,救急,産婦人科に厚い手当となりました.さて,私は今年の1月3日から数日ドイツに訪問し,当地の専門医制度の実態を調査してきました.今後,わが国でも専門医制度変革の波が押し寄せるかもしれないので参考になれば幸いです.

 ドイツの専門医制度は,その認定が国の管轄から完全に独立した連邦医師会と各州医師会によって規約が策定され運営管理されています.連邦医師会ならびに州医師会は,専門医の教育カリキュラムや認定および研修指導医とその施設認定に関する権限を有しています.連邦医師会は専門医の種類,習得すべき技術や症例経験数と内容,研修年限などの案を,学識経験者と検討してとりまとめ,州医師会代表から構成される医療協議会で協議し,各州は基本的にはその協議に基づいた専門医研修内容に沿って研修を行いますが,研修内容の一部を改変することは可能であり,州政府がそれを認可することによって法的拘束力を持ちます.専門医養成の施設認定,指導者認定も一定の資格基準に基づいて医師会が行っています.専門医試験は症例経験,診断技術経験,臨床研修年限などの資格要件を満たす申請者に対して,州医師会が委員を任命し,3名の試験委員による口頭試問の形式で行われます.専門医資格は5年間で必要な教育単位,臨床症例数などを記載した報告書の提出により更新されます.医師会には医師全員が加盟を義務付けられており,その会費で医師会業務全般が運営されており,財源的に政府から完全に独立しています.さらにEUとの調和から,専門医ストレート研修で有資格者となった他国の医師は,ドイツでも専門医として認められる取り決めに従う必要があります.専門医の地域分布は社会基盤が十分でない地域やへき地では少ないのが現状で,医師会が専門医の配置の決定や数的規制への対応は行っていません.これらの専門医地域偏在の問題に加え,ドイツ人医師国外流出,女性医師早期離職などによる医師不足の傾向が続いており,それを東欧やロシアからの外国人医師によって充当しているため,医療の質の維持が懸念されています.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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