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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科64巻8号

2010年07月発行

雑誌目次

連載 Clinical Exercise・35

Q考えられる疾患は何か?

著者: 竹中恵美

ページ範囲:P.547 - P.548

症例

患 者:54歳,女性

主 訴:右頰部から頸部・胸腹部に及ぶ発赤,腫脹

既往歴:50歳時,胆石症にて胆囊摘出術.

家族歴:特記すべきことなし.

現病歴: 2年前より右下歯にう歯を自覚したが放置していた.咽頭痛,38℃台の発熱,右頰の発赤・腫脹,開口障害を認め,近医を受診した.う歯による脂肪織炎を疑われ抗生剤が投与された.しかし,紅斑が胸腹部にまで拡大したため,発症から10日後に当科紹介となった.

現 症:右頸部から胸腹部に発赤, 腫脹した板状硬の局面を認め, 圧痛を伴っていた(図1a). 頸胸部では稔髪音を聴取し, 単純X線, CTにて皮下ガス像を認めた(図1b).

今月の症例

カルボシステイン(ムコダイン®)による多発性固定薬疹の1例

著者: 森本亜里 ,   大内健嗣 ,   安田文世 ,   定平知江子 ,   海老原全 ,   谷川瑛子 ,   高江雄二郎

ページ範囲:P.550 - P.553

要約 35歳,女性.数年前より感冒罹患時に複数の薬剤を内服すると掻痒を伴う紅斑が指間・大腿・足背に多発し,内服中止にて色素斑を残し,軽快していた.内服歴のある全薬剤の無疹部・皮疹部の貼布試験は陰性であったが,内服歴よりカルボシステインを疑い,内服試験を行ったところ,紅斑が再現した.一般的に固定薬疹における皮疹部での貼布試験の陽性率は50~100%と報告されている.本邦でのカルボシステインによる固定薬疹の報告では,16例中15例が内服試験で確定診断され,貼布試験を行った症例では全例陰性だった.既報告よりカルボシステインは通常の貼布試験では陽性率が低く,その原因として固定薬疹がカルボシステインの代謝産物により生じていることが考えられる.

症例報告

プレミネント®(合剤中のヒドロクロロチアジド成分)による光線過敏型薬疹の1例

著者: 影山葉月 ,   鈴木倫子 ,   谷岡書彦 ,   岩瀬正紀

ページ範囲:P.554 - P.558

要約 76歳,女性.高血圧治療のためヒドロクロロチアジド成分を含むプレミネント®を約3週間内服後,露光部に掻痒を伴う浸潤性紅斑が出現した.病理組織所見では表皮真皮境界部および真皮上層にリンパ球・組織球を主体とする細胞が浸潤し,表皮内の一部に海綿状態,表皮基底層部には液状変性も認めた.光線テストではUVA領域2.5Jで陽性となり,プレミネント®による光線過敏型薬疹が疑われた.同薬剤を中止したところ,約3週間で皮疹は消失した.最新の循環器領域での高血圧治療ガイドラインにおいて,降圧薬とサイアザイド系利尿薬の併用が推奨されるようになった.その結果,サイアザイド系利尿薬成分による光線過敏型薬疹の発生が今後さらに増加すると考えられる.

熱中症を契機に水疱性類天疱瘡を発症した尋常性乾癬

著者: 中野由美子 ,   川筋綾子 ,   筒井清広

ページ範囲:P.559 - P.562

要約 80歳,男性.10年前に尋常性乾癬を発症し,ステロイドおよび活性化ビタミンD3外用,エトレチナート内服,PUVA療法で症状軽快した.以後,エトレチナート10mg/日内服中である.2007年8月に熱中症にて救急搬送され,胸部・大腿に網状の紅斑を認めた.その後,同部に弛緩性水疱,潰瘍が出現し,外用処置で治療中,緊満性水疱が全身に多数出現した.病理組織で表皮下水疱を認め,蛍光抗体間接法で表皮基底膜部にIgGが陽性,ELISA法で抗BP180抗体と抗BP230抗体が陽性で,水疱性類天疱瘡の合併と診断した.シクロスポリン150mg/日内服で水疱新生は一時軽快したが,減量時に再燃した.プレドニゾロン30mg/日内服で水疱新生は治まり,現在10mg/日内服で水疱新生はない.経過中,乾癬の増悪は認めなかった.

C型肝炎のインターフェロンα療法によって生じた汎発性(尋常性)白斑の1例

著者: 新石健二 ,   村田久仁男 ,   寺田光宏

ページ範囲:P.563 - P.566

要約 68歳,男性.52歳時,C型肝炎に対して,6か月間インターフェロンα(IFNα)の投与を受けた.IFNα投与5か月後より,胸腹部に白斑が出現した.尋常性白斑と診断し,PUVA療法を施行したが軽快せず,ステロイドとビタミンD3外用で治療した.その後,胸腹部の白斑は融合したが,そのほかの部位に白斑の出現はなかった.C型肝炎ウイルスが消失しなかったため,67歳時にリバビリン併用IFNα療法を再度施行した.IFNα投与4か月後より,顔面,頸部に白斑が新たに出現した.白斑の出現に,IFNα投与が関与したと考えた.

下腿に小紅色斑が集簇したサルコイドーシスの1例

著者: 上田喬士 ,   今泉あすか ,   安部美穂 ,   沖山良子 ,   尾山修一 ,   佐藤勘治 ,   饗場伸作 ,   金子聡 ,   森山ゆうき ,   勝岡憲生

ページ範囲:P.567 - P.569

要約 29歳,女性.初診時,両下腿に拇指爪甲大までの紅色斑が多数集簇し,個々の紅色斑には乾燥性の薄いうろこ状の鱗屑が固着していた.病理組織学的には,表皮は過角化を伴い,真皮全層に非乾酪性類上皮細胞肉芽腫が多数みられた.両側肺門部リンパ節腫脹と血清ACE活性高値を認め,サルコイドーシスと診断した.サルコイドーシスは多彩な皮膚症状を呈するが,自験例ではうろこ状の薄い鱗屑が付着した小紅色斑が集簇し,魚鱗癬様にも見えた.

リウマチ性脈管内組織球症の1例

著者: 眞海芳史 ,   澤田美月 ,   石崎純子 ,   田中勝 ,   藤林真理子 ,   相羽元彦 ,   杉沢裕

ページ範囲:P.571 - P.575

要約 72歳,女性.15年前に関節リウマチ(RA)を発症した.サラゾスルファピリジン内服で経過良好であったが,6か月前から右肘部に運動痛,発赤,腫脹が出現し,肘窩から前腕に浸潤性紅斑と紅色丘疹が混在した.右肘関節には約15度の屈曲拘縮がみられた.血清抗シトルリン化ペプチド抗体100以上(正常値:<4.5),MRIでは関節腔内の液体貯留と周囲の浮腫性変化がみられた.病理組織学的には,真皮浅層にD2-40陽性のリンパ管拡張を認め,内腔にCD68陽性の組織球が充満し,リウマチ性脈管内組織球症(intralymphatic histiocytosis associated with rheumatoid arthritis)と診断した.RAの病勢は整形外科的には安定していたが,皮膚科から本疾患がRAに伴うものであることを情報提供し,メトトレキサート内服治療に変更したところ,症状が軽快した.

網状皮斑様の皮疹を呈した透析アミロイドーシスの1例

著者: 宮本園子 ,   津田達也 ,   夏秋優 ,   山西清文

ページ範囲:P.577 - P.580

要約 68歳,男性.43歳時に多発性骨髄腫を発症した.53歳時に骨髄腫腎となり,56歳時に透析導入となった.66歳時に体幹と四肢に網状皮斑様の皮疹が出現した.血清β2-ミクログロブリンが33.9μg/mlと高値であった.網状皮斑様の皮疹からの皮膚生検にて,真皮の血管周囲にアミロイド沈着を認め,免疫組織化学でβ2-ミクログロブリン陽性であった.以上より,網状皮斑様の皮疹を呈した透析アミロイドーシスと診断した.透析アミロイドーシスで網状皮斑様の皮疹を呈する症例は,国内外あわせても報告がなく,稀な症例であった.

下眼瞼外反を生じた巨大な皮膚混合腫瘍の1例

著者: 青木奈津子 ,   中島英貴 ,   三好研 ,   池田光徳 ,   佐野栄紀 ,   吉村彰人

ページ範囲:P.581 - P.584

要約 74歳,女性.左頰部に約10年の経過で皮膚腫瘍が増大した.初診時,小児拳大で有茎性懸垂性の巨大な腫瘤を認めた.腫瘤の重みにより左下眼瞼は外反していた.茎部から腫瘍を全切除し,単純縫縮を行った.腫瘍細胞は真皮内に限局して密に増殖し,一部の胞巣内に管腔形成と,間質に粘液腫様の所見を認めた.以上の所見と腫瘍細胞に悪性所見を認めなかったことから,皮膚混合腫瘍と診断した.自験例の腫瘤が巨大化した原因は,患者が手術に対する恐怖心から受診を忌避したためであった.

11歳男児にみられた乳腺囊胞の1例

著者: 林韻欣 ,   秦洋郎 ,   斎藤奈央 ,   青柳哲 ,   芝木晃彦 ,   清水宏

ページ範囲:P.585 - P.588

要約 11歳,男児.初診の約4か月前から右乳輪部の結節を自覚した.乳頭部を圧迫すると黄白色の液体分泌がみられ,徐々に増大したため,当科を受診した.結節は弾性硬で,下床との可動性は良好であった.超音波検査では,直径12.0×7.7mmの境界明瞭で低エコー域を示す囊腫様構築を表皮下に認め,内部に血流はみられなかった.病理組織像では,細長く蛇行した二層性の管腔周囲に,リンパ球,好酸球などの炎症細胞浸潤がみられ,一部に線維化を伴っていた.囊胞状に拡張した管腔の内腔には好酸性物質が充満し,立方状の腺上皮細胞では,断頭分泌像がみられた.エストロゲンおよびプロゲステロンレセプターは陰性であったが,CEAおよびmammaglobinは管腔の上皮細胞に陽性であった.以上のことより,乳腺囊胞と診断した.調べえた範囲では,男児における乳腺囊胞の報告例は本症例が本邦では初である.

表在性血管粘液腫の1例

著者: 秋好茜 ,   小川純己

ページ範囲:P.589 - P.592

要約 37歳,男性.下腹部に生じた表在性血管粘液腫(SA)を報告した.臨床的に,径30×20×27(高さ)mm,だるま状に隆起し,弾性軟で,表面に毛細血管拡張と皮下の浸潤を伴った紅色透明調の腫瘤を呈していた.皮下の浸潤を含め,脂肪組織の深さで切除した.病理組織学的に,真皮から皮下組織に結節状ないし小葉状に粘液様物質の沈着を認めた.病変内では小~中等大の血管腔が増生し,双極状ないし星芒状の核をもつ異型性に乏しい紡錘形細胞が散在していた.粘液基質はアルシアンブルー陽性で,ヒアルロニダーゼで消化された.紡錘形細胞は,免疫組織学的にビメンチンおよびCD34陽性,デスミン,α-smooth muscle actin,S100陰性であった.SAの不十分な切除例では再発が報告されており,MRIなどによる術前の評価が重要であると考えられた.

手指に生じたBowen病の1例

著者: 中橋伸江 ,   髙栁たかね ,   青木重威 ,   下島博之 ,   原弘之 ,   照井正

ページ範囲:P.593 - P.595

要約 36歳,男性.約2年前より右第1指に反復性亀裂を伴う角化性局面が出現した.初診時,右第1指内側側爪郭付近に径5mmの亀裂を伴う限局性角化局面を認めたため,慢性湿疹を疑いステロイド外用療法を施行したが改善せず,疣状を呈してきた.尋常性疣贅を考え,計10回の冷凍凝固術を施行した.いったん脱落したが,再発してきたため,皮膚生検術を施行したところ,病理組織ではBowen病の診断であった.In situ hybridization法によりhuman papillomavirus (HPV) 検索をしたところ,HPV 31/33陽性であった.

女性外陰部Bowen病の1例

著者: 甲田とも ,   市川尚子 ,   松井はるか ,   河原由恵 ,   貴志和生 ,   能勢由紀子

ページ範囲:P.597 - P.599

要約 78歳,女性.半年前より外陰部に紅斑局面が出現し,次第に拡大,疼痛も伴うようになった.初診時,右大陰唇から腟入口部にかけて,浮腫状の紅色丘疹や色素沈着,びらんを伴う4×2cm大の光沢を有する紅斑局面を認めた.子宮頸癌は合併していなかった.病理組織像では,表皮内における細胞極性の乱れや個細胞角化,大型異型細胞の増殖と多数の核分裂像を認め,Bowen病と診断した.FAP59/64をプライマーとして用いて行ったPCR法にて,病変部よりヒト乳頭腫ウイルス(HPV)DNAが検出された.女性外陰部Bowen病では,HPVとの関連や子宮頸癌の合併が報告されており,十分な検索を要する.

In-transit metastasisを認めたeccrine porocarcinomaの1例

著者: 渡辺彩乃 ,   手代木智美 ,   櫻井英一 ,   佐藤隆亮 ,   馬場俊右 ,   遠藤幸紀 ,   森志朋 ,   前田文彦 ,   高橋和宏 ,   赤坂俊英 ,   大原学

ページ範囲:P.600 - P.604

要約 68歳,女性.2008年7月に左肩の紅色皮疹を自覚した.翌年1月より急激に増大したため,当科を受診した.左肩に35×33mm大の紅色腫瘤を1個認め,皮膚生検にて,eccrine porocarcinoma (EPC)と診断した.腫瘤の7時方向に,小豆大の紅色小結節が新生し,腫瘍のin-transit metastasisが疑われた.腫瘍切除術と左腋窩リンパ節郭清術に加えて,subtotal integumentectomy(STI)を施行した.In-transit metastasis病巣のD2-40染色で,リンパ管内腫瘍塞栓が確認された.さらにこの病巣で経表皮排出現象が認められた.自験例のin-transit metastasis 病巣の所見から,EPC腫瘍細胞のリンパ管接着能と表皮向性が高いことが示唆され,リンパ節転移をきたしやすい理由と考えられた.EPCはin-transit metastasisを含め転移しやすい腫瘍であることを念頭に置き,適切な治療に当たることが肝要と考えた.

Mohs氏軟膏療法を試みた原発性および転移性皮膚悪性腫瘍の6例

著者: 渡邊英里香 ,   加藤直子 ,   村田純子 ,   斎藤奈央 ,   氏家英之 ,   田中寛之

ページ範囲:P.605 - P.608

要約 原発性皮膚癌1例,他癌の皮膚浸潤2例,転移性皮膚癌3例に対し,Mohs氏軟膏療法を施行した.治療の施行回数,固定時間,有効性の程度などは症例によりさまざまであり,個体ごとの状況に応じた治療を行う必要があった.結果として根治的な治療にはならなかったものの,いずれも重篤な副作用なしに腫瘍局所の臨床症状の緩和,患者および家族のQOLの改善を得ることができた.

当科で経験した皮膚原発未分化大細胞リンパ腫の3例と本邦報告62例のまとめ

著者: 笠井麻希 ,   加藤直子 ,   斉藤奈央 ,   渡邊英里香 ,   村田純子 ,   山根尚子

ページ範囲:P.609 - P.613

要約 症例1:67歳,男性.左大腿に褐色結節を認め,組織学的に未分化型の異型大型のリンパ球系細胞の増殖を認め,免疫染色でCD30陽性,anaplastic lymphoma kinase (ALK)陰性で,皮膚原発未分化大細胞リンパ腫(primary cutaneous anaplastic large cell lymphoma:C-ALCL)と診断した.症例2:58歳,男性.全身に紅色結節,腫瘤,局面が多発し,多形型のリンパ球系細胞の増殖を認め,C-ALCLと診断した.症例3:43歳,女性.四肢に潰瘍性腫瘤や結節を認め,C-ALCLと診断した.3例の治療経過に加え,1993~2009年のC-ALCLの本邦報告62例を集計し,疫学,皮疹の分布,発生部位,臨床形態,リンパ節転移の有無,免疫染色,治療経過,転帰についてまとめた.本邦でのC-ALCLは海外報告例と比較し,局面を呈する例が多いことが判明した.

イミキモド5%クリームが奏効したbowenoid papulosisの1例

著者: 篠原綾 ,   山田玉靜 ,   涌田あすか ,   松村由美 ,   十一英子

ページ範囲:P.615 - P.618

要約 21歳,男性.陰茎の黒褐色丘疹を主訴に当院を受診.臨床所見,病理検査結果からbowenoid papulosis(BP)と診断した.液体窒素凍結療法を施行したが,明らかな改善はみられず,イミキモド5%クリーム(IM)外用を開始した.外用開始から2週間の間に,合計6回外用したところ,皮疹はほぼ消褪した.軽度の搔痒を除いて明らかな副作用は生じなかった.現在国内でIMは尖圭コンジローマのみ保険適用があるが,最近ではそのほかのヒトパピローマウイルス関連疾患や前癌病変,悪性腫瘍などにも使用が試みられている. BPの治療において,IM外用は有効な選択肢の1つとなりうると考えられた.

包皮環状切除術により治癒したZoon亀頭炎

著者: 横谷英吏子 ,   日野上はるな ,   米田真理 ,   大畑千佳 ,   高田剛 ,   原恒男

ページ範囲:P.619 - P.622

要約 57歳,男性.1993年頃より亀頭部に難治性の鮮紅色湿潤局面が生じた.2007年近医皮膚科にて,ステロイド外用で治療されたが改善しなかった.包茎が治癒を遷延させている可能性が考えられたが,泌尿器科では,炎症が高度で手術困難と判断された.初診時,亀頭部および包皮に自覚症状を伴わない境界明瞭な鮮紅色湿潤局面がみられた.病理組織にて表皮の脱落,真皮上層の浮腫,真皮への高度な形質細胞浸潤を認め,Zoon亀頭炎と診断した.約1か月間,very strongクラスのステロイド外用で加療したが難治であり,根治には包茎の治療が必要と考えられた.泌尿器科にて包皮環状切除術が施行されたところ,術後7週目に治癒した.

浸潤性紅斑を呈した皮膚Crohn病の1例

著者: 宮本樹里亜 ,   石橋正史 ,   長坂武 ,   陳科榮

ページ範囲:P.623 - P.627

要約 28歳,女性.下痢,発熱,咳嗽,関節痛のため入院した.四肢に圧痛を伴う浸潤性紅斑が出現し,口腔内アフタ,肛囲潰瘍を伴っていた.皮膚病理組織学的所見では,脂肪隔壁の線維化と小葉内の多核巨細胞を伴う肉芽腫性炎症細胞浸潤を認め,皮膚Crohn病の病変と考えた.下部消化管内視鏡では結腸に縦走潰瘍がみられ,Crohn病が疑われたが,腸管病理組織学的所見では肉芽腫性炎症所見は認めなかった.腸管症状と皮膚病理組織学的所見を合わせて検討し,Crohn病と診断した.プレドニゾロン 50mg/日,メサラジン3,000mg/日を開始したところ,消化器症状,皮膚症状ともに速やかに軽快した.皮膚Crohn病の臨床像は多彩であるが,病理組織学的所見はいずれも非乾酪性類上皮細胞肉芽腫性病変を呈するため,皮膚生検が重要である.

印象記

第109回日本皮膚科学会総会 印象記

著者: 石黒直子

ページ範囲:P.628 - P.631

 第109回日本皮膚科学会総会は,2010年(平成22年)4月16日(金)から18日(日)まで大阪国際会議場で開催された.久しぶりの大阪での開催となった初日はあいにくの雨で,しかも近年にない記録的な寒さとなった.今回は来年の総会開催に備え,初日の最初から参加させていただいたが,意外と多くの参加者が初日からすでに来ておられることを初めて知った.

 16日の午前は,片山一朗会頭(大阪大学教授)が,「進化する皮膚科学-21世紀の医療・社会の中での役割と展望」というテーマをご挨拶で掲げられ,幕を開けた(図1).

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あとがき

著者: 渡辺晋一

ページ範囲:P.636 - P.636

 日本では世界の標準治療薬の30%は使用できないといわれているが,その一方で日本でしか通用しない薬剤や治療法がある.その1つがイチゴ状血管腫に対するレーザー治療である.イチゴ状血管腫は自然に消退するため,その治療の原則は今でもwait and seeである.しかし近年日本では,早期にレーザー治療をすべきだと,まことしやかに本や雑誌に記載されていて,このような教育もされている.確かに単純性血管腫にはレーザー治療が世界標準治療になっているが,イチゴ状血管腫に早期からレーザー治療を行ったほうがよいというエビデンスはない.Rookの教科書では,イチゴ状血管腫に対するレーザー治療は賛否両論があると記載されているが,それは公正を期すために英語で書かれた日本からのプラセボを置かない治験論文も引用しているからである.しかし,イチゴ状血管腫はレーザー治療をしなくてもやがて退縮するので,数年すると未治療部位との差がなくなり,むしろ何回もレーザー治療を行ったほうが瘢痕などの副作用が目立つ,というプラセボとの比較試験論文が数編ある.そのためRookの教科書では,残存したイチゴ状血管腫や巨大なものにはレーザー治療をしてもよいが,自然消退を早めるわけではない(実際は多少消退を早める)とネガティブなコメントとなっている.実際タイからの留学生は,日本ではなぜイチゴ状血管腫にレーザー治療をするのかと不思議がっていたし,米国のレーザー治療センターの皮膚科医は,イチゴ状血管腫はwait and seeで,治療をする場合はコルチコステロイドの投与であると断言している.日本ではイチゴ状血管腫はレーザー治療の保険適用があり,しかも乳幼児では医療費が無料であるため,全身麻酔下で(20年以上前から海外にある外用麻酔剤は日本では認可されていないため),不必要なレーザー治療がたくさん行われている.このようにして日本では税金が無駄に使われている.なぜイチゴ状血管腫に保険適用があるのか,誰がそれを決めたのかいまだにわからない.日本の治療レベルは高いと信じている人は多いが,いつまでその化けの皮が剥がれずにすむのであろうか?

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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